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集団的自衛権
13jp1105 松下隼也
第二部 日本の集団的自衛権の変遷
1947 年 日本国憲法施行
→吉田茂首相「憲法 9 条 2 項によって、一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権
の発動としての戦争も、また交戦権も放棄した」
↓
日本は自衛権を持っているが、憲法によって自衛権の行使が認められないと解釈。
日本は国連軍が守る。
この時期冷戦が勃発
1950 年 朝鮮戦争
→警察予備隊の組織。
1951 年 旧日米安全保障条約成立
→武力によらない自衛権が認められる。
吉田首相「武力によらざる自衛権を日本は持つ」と発言。
↓
軍事同盟を結んで、「他国に守ってもらう自衛権を行使すること」は可能。
1954 年 自衛隊を組織
→鳩山一郎首相は「自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められている」
↓
自衛隊=「自衛のための必要最小限度を超える実力」ではない
自衛隊≠軍隊
→参院本会議で「海外出動は行わない」とする決議が参議院本会議で可決。自衛権の活動
の限界が設けられる。その後自衛隊発動の旧 3 要件が決められる。
自衛隊は発動のための 3 要件(旧)
・我が国に対する急迫不正の侵害があること
・これを排除するためにほかの適当な手段がないこと
・必要最小限の実力行使
↓
国(日本の領土?)を守るための最低限の武力(=個別的自衛権?)は行使できる。
しかし海外で活動できないため「集団的自衛権」は発動できず。
1960 年 日米安全保障条約締結(改定)
1970 年 日米安全保障条約の延長
1991 年 湾岸戦争
1992 年 「国際平和協力法(PKO 協力法)」成立
→自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に参加できるようになる。
↓
PKO は紛争当事者間の停戦合意が成立している為、「武力行使にあたらない」とされた。
↓
PKO でのみ、海外での活動が可能になる。
(ただし集団的自衛権ではない?)
1993 年 北朝鮮が核兵器不拡散条約(NPT)から脱退
1996 年 中国が台湾を威嚇(台湾海峡ミサイル危機)
→「周辺事態法」の成立。アメリカの後方地域1(=日本の領土外)での自衛隊の活動が可
能になる。
↓
PKO と米軍への支援でのみ、自衛隊が海外で活動できるようになる。
(ただし集団的自衛権ではない?)。
2001 年 9.11 テロ
→テロ特別支援法が成立。米軍だけではなく、多国籍軍への支援を可能となる。
↓
自衛隊が活動できる地理的範囲が拡大。
日本領域に加えて、公海及びその上空、外国の領域での支援活動などが認められた。
↓
PKO と多国籍軍への支援でのみ、自衛隊が海外で活動できるようになる。
2014 年 安倍内閣が憲法解釈の変更を行う。
→国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の閣議
決定を行い、憲法解釈の変更を行う。
閣議決定までのステップと内容
2014 年 5 月 安倍首相が安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会2を開催
1 日本の領域と戦闘地域を除く日本周辺の公海やその上空のこと
2 2007 年 5 月に第一次安倍内閣で設置された、日本の集団的自衛権の問題と日本国憲法の
→報告書をまとめ上げ、以下の提言を出す。
① 憲法は国民の生存の確保、主権である国民を守るためのものであることを確認。
日本国憲法は、前文で「平和的生存権」を確認し、第 13 条で「生命、自由及び幸福
追求に対する国民の権利」を定めているが、(中略)これらを守るためには、主権者
である国民の生存の確保、そして主権者である国民を守る国家の存立が前提条件であ
る。また、憲法は、国際協調主義を掲げている。平和は国民の希求するところであり、
国際協調主義を前提とした日本国憲法の平和主義は、今後ともこれを堅持していくべ
きである。その際、主権者である国民の生存、国家の存立を危機に陥れることは、そ
のような憲法上の観点からしてもあってはならない。
② 従来の憲法解釈では国家の安全を維持できない。
我が国を取り巻く安全保障環境は、技術の進歩や国境を超える脅威の拡大、国家間の
パワーバランスの変化等によって、より一層厳しさを増している。また、日米同盟の
深化や地域の安全保障協力枠組みの広がり、国際社会全体による対応が必要な事例の
増大により、我が国が幅広い分野で一層の役割を担うことが必要となっている。この
ように、安全保障環境が顕著な規模と速度で変化している中で、我が国は、我が国の
平和と安全を維持し、地域・国際社会の平和と安定を実現していく上で、従来の憲法
解釈では十分対応できない状況に立ち至っている。
③ 第 9 条の解釈変更は「許される」。
(中略)すなわち、憲法第 9 条は、第 1 項で、我が国が当事国である国際紛争の解
決のために武力による威嚇又は武力の行使を行うことを禁止したものと解すべきで
あり、自衛のための武力の行使は禁じられておらず、国際法上合法な活動への憲法上
の制約はないと解すべきである。同条第 2 項は、「前項の目的を達成するため」戦力
を保持しないと定めたものと解すべきであり、自衛やいわゆる国際貢献のための実
力の保持は禁止されていないと解すべきである。「(自衛のための)措置は、必要最小
限度の範囲にとどまるべき」であるというこれまでの政府の憲法解釈に立ったとし
ても、「必要最小限度」の中に個別的自衛権は含まれるが集団的自衛権は含まれない
としてきた政府の憲法解釈は、「必要最小限度」について抽象的な法理だけで形式的
に線を引こうとした点で適当ではなく、「必要最小限度」の中に集団的自衛権の行使
も含まれると解すべきである。
④ 集団的自衛権発動および国連の集団安全保障措置等への参加には国会の承認が必要。
(省略)
関係整理および研究を行うための「私的諮問機関(懇談会)」(=首相が意見を聞くための
機関)のこと。2012 年の第二次安倍内閣で再建された。
⑤ 国連の集団安全保障措置への参加は「武力の行使」には当たらない。
軍事的措置を伴う国連の集団安全保障措置への参加については、我が国が当事国であ
る国際紛争を解決する手段としての「武力の行使」には当たらず、憲法上の制約はな
いと解すべきである。
⑥ 個別的自衛権の行使も憲法解釈で許可されたため、集団的自衛権も憲法解釈で許可され
る。
遡ってみれば、そもそも憲法には個別的自衛権や集団的自衛権についての明文の規定
はなく、個別的自衛権の行使についても、我が国政府は憲法改正ではなく憲法解釈を
整理することによって、認められるとした経緯がある。こうした経緯に鑑みれば、必
要最小限度の範囲の自衛権の行使には個別的自衛権に加えて集団的自衛権の行使が
認められるという判断も、政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることによって
可能であり、憲法改正が必要だという指摘は当たらない。(中略)
2014 年 7 月 閣議決定を行う。
「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議
決定する。
↓
閣議決定により、その関連法案が通った場合、集団的自衛権の行使が可能となる。
安倍内閣は以下の方針に基づいて法整備を行うことを決定した。
① 武力攻撃に至らない侵害への対処
→尖閣諸島沖で繰り返される中国の挑発行為を念頭に、他国からの武力攻撃に至る前の侵
害など「グレーゾーン」事態に迅速に対応する為、自衛隊の出動手続きの見直しを行う。
(中略)離島の周辺地域等において外部から武力攻撃に至らない侵害が発生し、近傍に
警察力が存在しない場合や警察機関が直ちに対応できない場合(武装集団の所持する武
器等のために対応できない場合を含む。)の対応において、治安出動や海上における警
備行動を発令するための関連規定の適用関係についてあらかじめ十分に検討し、関係機
関において共通の認識を確立しておくとともに、手続を経ている間に、不法行為による
被害が拡大することがないよう、状況に応じた早期の下令や手続の迅速化のための方策
について具体的に検討することとする。
② 国際社会の平和と安定への一層の貢献
→PKOでの駆けつけ警護が可能にするため。
(中略)国際連合平和維持活動などの「武力の行使」を伴わない国際的な平和協力活動
におけるいわゆる「駆け付け警護」に伴う武器使用及び「任務遂行のための武器使用」
のほか、領域国の同意に基づく邦人救出などの「武力の行使」を伴わない警察的な活動
ができるよう、(中略)法整備を進めることとする。
→安全保障理事会の常任理事国入りを狙うため?=国際社会に対する発言力の強化。
(ちなみに日本は 2016 年 1 月から 2017 年 12 月まで非常任理事国。11 回目。)
(中略)自衛隊は、各種の支援活動を着実に積み重ね、我が国に対する期待と信頼は高
まっている。安全保障環境が更に大きく変化する中で、国際協調主義に基づく「積極的
平和主義」の立場から、国際社会の平和と安定のために、自衛隊が幅広い支援活動で十
分に役割を果たすことができるようにすることが必要である。(中略)
③ 憲法第 9 条の下でも集団的自衛権は行使できる。
日本国憲法第 9 条
1、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦
争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこ
れを放棄する。
2、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦
権は、これを認めない。
→幸福の追求の権利が侵される事態であれば、それを守るための最低限の武力は可能とす
る。
憲法第9条はその文言からすると、国際関係における「武力の行使」を一切禁じている
ように見えるが、憲法前文で確認している「国民の平和的生存権」や憲法第 13 条が
「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要とする
旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条が、我が国が自国の平和と安全を維
持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解
されない。
→武力行使を抑制する歯止めとして、自衛権発動の 3 要件を見直し(新 3 要件)を行う。
自衛権発動の新 3 要件
1、(NEW)密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、
国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある。
2、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない
3、必要最小限度の実力行使にとどまる
2015 年 4 月 新「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)制定
→平時から戦争までのあらゆる状況で「切れ目のない対応」を目指す。
2015 年 5 月 安保法制の関連 11 法案を閣議決定
「周辺事態法」の名前を「重要影響事態法案」と変更。
「国際平和支援法」制定。日本に影響がなくても国際社会が一致して対応すべき
戦争や紛争が起きた場合に、自衛隊を派遣するための法。
自衛隊による武器・弾薬の補給なども可能になる。
2015 年 7 月 安全保障関連法案衆議院通過
2015 年 9 月 参議院通過
2016 年春ごろ? 施行
↓
自衛隊は地球上どこでも派遣できるようになり、集団的自衛権行使が可能になる。
まとめ
憲法の解釈は歴史や国際情勢とともに大きく変化している。その中で自衛隊が誕生し、個
別的自衛権が行使できるようになった。そして現在も憲法解釈は変更されており、集団的自
衛権の行使も可能となった。
しかし憲法解釈の改定や集団的自衛権の行使には批判の声もあり、行使ができるように
なったとしても世論を無視することになりかねない。日本国が集団的自衛権を適切に行使
できるようになるためには、議論を継続していかなくてはならない。
参考文献
朝日新聞デジタル(2015/4/28)「ガイドラインってなに? 日米防衛協力のための指針改定」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11727974.html
日本経済新聞(2014/7/1)憲法解釈変更を閣議決定 集団的自衛権の行使容認
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0103O_R00C14A7MM8000/
THE HUFFINGTON POST (2014/7/16) 「【安保法案】集団的自衛権、憲法制定時からこん
なに変わった」
http://www.huffingtonpost.jp/2015/07/15/japan-security-bills_n_7313158.html
安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(2014)「「安全保障の法的基盤の再構築に関
する懇談会」報告書」
内閣官房(2014)「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備
について」

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日本の集団的自衛権

  • 1. 集団的自衛権 13jp1105 松下隼也 第二部 日本の集団的自衛権の変遷 1947 年 日本国憲法施行 →吉田茂首相「憲法 9 条 2 項によって、一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権 の発動としての戦争も、また交戦権も放棄した」 ↓ 日本は自衛権を持っているが、憲法によって自衛権の行使が認められないと解釈。 日本は国連軍が守る。 この時期冷戦が勃発 1950 年 朝鮮戦争 →警察予備隊の組織。 1951 年 旧日米安全保障条約成立 →武力によらない自衛権が認められる。 吉田首相「武力によらざる自衛権を日本は持つ」と発言。 ↓ 軍事同盟を結んで、「他国に守ってもらう自衛権を行使すること」は可能。 1954 年 自衛隊を組織 →鳩山一郎首相は「自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められている」 ↓ 自衛隊=「自衛のための必要最小限度を超える実力」ではない 自衛隊≠軍隊 →参院本会議で「海外出動は行わない」とする決議が参議院本会議で可決。自衛権の活動 の限界が設けられる。その後自衛隊発動の旧 3 要件が決められる。 自衛隊は発動のための 3 要件(旧) ・我が国に対する急迫不正の侵害があること ・これを排除するためにほかの適当な手段がないこと ・必要最小限の実力行使 ↓ 国(日本の領土?)を守るための最低限の武力(=個別的自衛権?)は行使できる。 しかし海外で活動できないため「集団的自衛権」は発動できず。
  • 2. 1960 年 日米安全保障条約締結(改定) 1970 年 日米安全保障条約の延長 1991 年 湾岸戦争 1992 年 「国際平和協力法(PKO 協力法)」成立 →自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に参加できるようになる。 ↓ PKO は紛争当事者間の停戦合意が成立している為、「武力行使にあたらない」とされた。 ↓ PKO でのみ、海外での活動が可能になる。 (ただし集団的自衛権ではない?) 1993 年 北朝鮮が核兵器不拡散条約(NPT)から脱退 1996 年 中国が台湾を威嚇(台湾海峡ミサイル危機) →「周辺事態法」の成立。アメリカの後方地域1(=日本の領土外)での自衛隊の活動が可 能になる。 ↓ PKO と米軍への支援でのみ、自衛隊が海外で活動できるようになる。 (ただし集団的自衛権ではない?)。 2001 年 9.11 テロ →テロ特別支援法が成立。米軍だけではなく、多国籍軍への支援を可能となる。 ↓ 自衛隊が活動できる地理的範囲が拡大。 日本領域に加えて、公海及びその上空、外国の領域での支援活動などが認められた。 ↓ PKO と多国籍軍への支援でのみ、自衛隊が海外で活動できるようになる。 2014 年 安倍内閣が憲法解釈の変更を行う。 →国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」の閣議 決定を行い、憲法解釈の変更を行う。 閣議決定までのステップと内容 2014 年 5 月 安倍首相が安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会2を開催 1 日本の領域と戦闘地域を除く日本周辺の公海やその上空のこと 2 2007 年 5 月に第一次安倍内閣で設置された、日本の集団的自衛権の問題と日本国憲法の
  • 3. →報告書をまとめ上げ、以下の提言を出す。 ① 憲法は国民の生存の確保、主権である国民を守るためのものであることを確認。 日本国憲法は、前文で「平和的生存権」を確認し、第 13 条で「生命、自由及び幸福 追求に対する国民の権利」を定めているが、(中略)これらを守るためには、主権者 である国民の生存の確保、そして主権者である国民を守る国家の存立が前提条件であ る。また、憲法は、国際協調主義を掲げている。平和は国民の希求するところであり、 国際協調主義を前提とした日本国憲法の平和主義は、今後ともこれを堅持していくべ きである。その際、主権者である国民の生存、国家の存立を危機に陥れることは、そ のような憲法上の観点からしてもあってはならない。 ② 従来の憲法解釈では国家の安全を維持できない。 我が国を取り巻く安全保障環境は、技術の進歩や国境を超える脅威の拡大、国家間の パワーバランスの変化等によって、より一層厳しさを増している。また、日米同盟の 深化や地域の安全保障協力枠組みの広がり、国際社会全体による対応が必要な事例の 増大により、我が国が幅広い分野で一層の役割を担うことが必要となっている。この ように、安全保障環境が顕著な規模と速度で変化している中で、我が国は、我が国の 平和と安全を維持し、地域・国際社会の平和と安定を実現していく上で、従来の憲法 解釈では十分対応できない状況に立ち至っている。 ③ 第 9 条の解釈変更は「許される」。 (中略)すなわち、憲法第 9 条は、第 1 項で、我が国が当事国である国際紛争の解 決のために武力による威嚇又は武力の行使を行うことを禁止したものと解すべきで あり、自衛のための武力の行使は禁じられておらず、国際法上合法な活動への憲法上 の制約はないと解すべきである。同条第 2 項は、「前項の目的を達成するため」戦力 を保持しないと定めたものと解すべきであり、自衛やいわゆる国際貢献のための実 力の保持は禁止されていないと解すべきである。「(自衛のための)措置は、必要最小 限度の範囲にとどまるべき」であるというこれまでの政府の憲法解釈に立ったとし ても、「必要最小限度」の中に個別的自衛権は含まれるが集団的自衛権は含まれない としてきた政府の憲法解釈は、「必要最小限度」について抽象的な法理だけで形式的 に線を引こうとした点で適当ではなく、「必要最小限度」の中に集団的自衛権の行使 も含まれると解すべきである。 ④ 集団的自衛権発動および国連の集団安全保障措置等への参加には国会の承認が必要。 (省略) 関係整理および研究を行うための「私的諮問機関(懇談会)」(=首相が意見を聞くための 機関)のこと。2012 年の第二次安倍内閣で再建された。
  • 4. ⑤ 国連の集団安全保障措置への参加は「武力の行使」には当たらない。 軍事的措置を伴う国連の集団安全保障措置への参加については、我が国が当事国であ る国際紛争を解決する手段としての「武力の行使」には当たらず、憲法上の制約はな いと解すべきである。 ⑥ 個別的自衛権の行使も憲法解釈で許可されたため、集団的自衛権も憲法解釈で許可され る。 遡ってみれば、そもそも憲法には個別的自衛権や集団的自衛権についての明文の規定 はなく、個別的自衛権の行使についても、我が国政府は憲法改正ではなく憲法解釈を 整理することによって、認められるとした経緯がある。こうした経緯に鑑みれば、必 要最小限度の範囲の自衛権の行使には個別的自衛権に加えて集団的自衛権の行使が 認められるという判断も、政府が適切な形で新しい解釈を明らかにすることによって 可能であり、憲法改正が必要だという指摘は当たらない。(中略) 2014 年 7 月 閣議決定を行う。 「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議 決定する。 ↓ 閣議決定により、その関連法案が通った場合、集団的自衛権の行使が可能となる。 安倍内閣は以下の方針に基づいて法整備を行うことを決定した。 ① 武力攻撃に至らない侵害への対処 →尖閣諸島沖で繰り返される中国の挑発行為を念頭に、他国からの武力攻撃に至る前の侵 害など「グレーゾーン」事態に迅速に対応する為、自衛隊の出動手続きの見直しを行う。 (中略)離島の周辺地域等において外部から武力攻撃に至らない侵害が発生し、近傍に 警察力が存在しない場合や警察機関が直ちに対応できない場合(武装集団の所持する武 器等のために対応できない場合を含む。)の対応において、治安出動や海上における警 備行動を発令するための関連規定の適用関係についてあらかじめ十分に検討し、関係機 関において共通の認識を確立しておくとともに、手続を経ている間に、不法行為による 被害が拡大することがないよう、状況に応じた早期の下令や手続の迅速化のための方策 について具体的に検討することとする。 ② 国際社会の平和と安定への一層の貢献 →PKOでの駆けつけ警護が可能にするため。 (中略)国際連合平和維持活動などの「武力の行使」を伴わない国際的な平和協力活動 におけるいわゆる「駆け付け警護」に伴う武器使用及び「任務遂行のための武器使用」
  • 5. のほか、領域国の同意に基づく邦人救出などの「武力の行使」を伴わない警察的な活動 ができるよう、(中略)法整備を進めることとする。 →安全保障理事会の常任理事国入りを狙うため?=国際社会に対する発言力の強化。 (ちなみに日本は 2016 年 1 月から 2017 年 12 月まで非常任理事国。11 回目。) (中略)自衛隊は、各種の支援活動を着実に積み重ね、我が国に対する期待と信頼は高 まっている。安全保障環境が更に大きく変化する中で、国際協調主義に基づく「積極的 平和主義」の立場から、国際社会の平和と安定のために、自衛隊が幅広い支援活動で十 分に役割を果たすことができるようにすることが必要である。(中略) ③ 憲法第 9 条の下でも集団的自衛権は行使できる。 日本国憲法第 9 条 1、日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦 争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこ れを放棄する。 2、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦 権は、これを認めない。 →幸福の追求の権利が侵される事態であれば、それを守るための最低限の武力は可能とす る。 憲法第9条はその文言からすると、国際関係における「武力の行使」を一切禁じている ように見えるが、憲法前文で確認している「国民の平和的生存権」や憲法第 13 条が 「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要とする 旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条が、我が国が自国の平和と安全を維 持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解 されない。 →武力行使を抑制する歯止めとして、自衛権発動の 3 要件を見直し(新 3 要件)を行う。 自衛権発動の新 3 要件 1、(NEW)密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、 国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある。 2、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない 3、必要最小限度の実力行使にとどまる 2015 年 4 月 新「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)制定 →平時から戦争までのあらゆる状況で「切れ目のない対応」を目指す。
  • 6. 2015 年 5 月 安保法制の関連 11 法案を閣議決定 「周辺事態法」の名前を「重要影響事態法案」と変更。 「国際平和支援法」制定。日本に影響がなくても国際社会が一致して対応すべき 戦争や紛争が起きた場合に、自衛隊を派遣するための法。 自衛隊による武器・弾薬の補給なども可能になる。 2015 年 7 月 安全保障関連法案衆議院通過 2015 年 9 月 参議院通過 2016 年春ごろ? 施行 ↓ 自衛隊は地球上どこでも派遣できるようになり、集団的自衛権行使が可能になる。 まとめ 憲法の解釈は歴史や国際情勢とともに大きく変化している。その中で自衛隊が誕生し、個 別的自衛権が行使できるようになった。そして現在も憲法解釈は変更されており、集団的自 衛権の行使も可能となった。 しかし憲法解釈の改定や集団的自衛権の行使には批判の声もあり、行使ができるように なったとしても世論を無視することになりかねない。日本国が集団的自衛権を適切に行使 できるようになるためには、議論を継続していかなくてはならない。 参考文献 朝日新聞デジタル(2015/4/28)「ガイドラインってなに? 日米防衛協力のための指針改定」 http://digital.asahi.com/articles/DA3S11727974.html 日本経済新聞(2014/7/1)憲法解釈変更を閣議決定 集団的自衛権の行使容認 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0103O_R00C14A7MM8000/ THE HUFFINGTON POST (2014/7/16) 「【安保法案】集団的自衛権、憲法制定時からこん なに変わった」 http://www.huffingtonpost.jp/2015/07/15/japan-security-bills_n_7313158.html 安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(2014)「「安全保障の法的基盤の再構築に関 する懇談会」報告書」 内閣官房(2014)「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備 について」