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【視座-IT投資の話】
 効果はもっと大きく構え、
 確実に生み出そう




November 2012




                   Satoe Kuwahara
                Sapporo Sparkle k.k.
【視座-IT投資の話】 効果はもっと大きく構え、確実に生み出そう




   【視座-IT投資の話】
    効果はもっと大きく構え、確実に生み出そう
   Satoe Kuwahara
   System coordinator at Sapporo Sparkle K.K.


   「費用対効果」はIT投資における重要な判断                            うちに、「費用を超える効果が得られること」
   基準だが、費用と効果、それぞれの中身や質に                            を意味してきた。投資である以上、それが最小
   ついて語られることは案外少ない。                                 限の条件であることは間違いがない。しかし、
   かつては「費用に合わせて機能を絞り込む」こ                            それで十分なのだろうか?現実に、経営者はそ
   とが必須とされてきたが、その結果、「システ                            のような基準で投資を判断しているのだろう
   ムを動かすのに不可欠な機能が優先され、事業                            か? ………答えはノーだ。「費用対効果」か
   から見て大事な機能は“贅沢品”として後送り                            らみた効果の大きさで投資を判断する経営者は
   される」ことが日常化した。プロジェクトが後                            ほとんどいない。少なくとも、見たことがな
   半に入り稼働時期や費用が切迫してくると、                             い。
   真っ先に議論されるのは「機能の削減」。シス                            投資に要するお金も人材も有限で、経営の重要
   テムの稼働を優先し、当初の目的との乖離がお                            な判断基準に時間軸がある以上、「よりインパ
   きていく。「次フェーズで必ず実現しますか                             クトの大きなもの」を優先することは投資の道
   ら」と事業側をなだめたところで、実現のタイ                            理である。「費用を越える効果がある」程度で
   ミングが遅れることも、一時的にせよ全体像が                            は、投資に値しない。その内容が、どれだけの
   崩れることも違いがない。                                     インパクトがあるのか、事業の方向性にどれだ
   現実に今日の開発環境では、機能をいくつか                             け合っているのかが第一に問われるはずだ。そ
   削ったところで、開発負担を大きく下げること                            の投資によって、「どれだけ大きな効果が得ら
   はできない。逆に、それで下がる程度の作り方                            れるか」ではなく、それによって「何がどう変
   で あ っ た な ら、初 め か ら「勝 算 は あ っ た の                わるのか」、その変化がどれほど今の事業に
   か?」と問われるべきだろう。それほど今日の                            とって重要で、どのような未来につながってい
   開発には選択肢が多く、「要件が単純に開発規                            くのか。それはなぜ今なのか?投資の判断にお
   模に比例しない」ための策がある。しかも、事                            いて見るべきことは一点、「変化」の質、対象
   業とITの一体化が進み、事業側の動機が明確                            と大きさ、そしてタイミングである。
   なプロジェクトが増えている。システム開発の                            その意味では、「費用対効果」は期間や工程、
   都合で機能を絞り込む発想は、そこにはない。                            体制などと同じく、実現性をはかる一要素でし
                                                    かない。「効果から見た費用の妥当性」として
   「費用対効果」は不変の判断基準だが、それが                            「費用対効果」の評価がある。よって、「費用
   意味するものは変わってきている。システムの                            対効果」は効果を積み上げることよりも、むし
   位置づけが変わり、システムに対する価値観が                            ろ、費用の観点から実現策を精査し、最適な費
   変化すれば、自ずと、IT投資に求めるものも                            用モデルを作り出すことに価値観がある。当
   違ってくる。                                           然、ムダな機能や稚拙な手段はあってはならな
   今、「費用対効果」について、2つの考えるべ                            い。
   き観点がある。ひとつは、「費用対効果」のト
   レードオフ・バランスをいかにブレークスルー                            こうして考えると、効果をあれこれと細かに積
   するか。技術やデザインによって実現効率を高                            み上げていくことには、ほとんど意味がない。
   めれば、効果として得られるものは大きくな                             従来よく見られた、作業効率化やペーパーレス
   る。これは費用側の問題。そこには、共同利用                            化などを金額に換算する方式。その合算がどれ
   やライフサイクルの見直しによって、費用の実                            ほど費用より大きくとも、事業から見たインパ
   負担を変える策も含まれる。そしてもうひとつ                            クトはない。むしろ、たったひとつの利用シー
   が、効果の側面。ここから先は、この「効果」                            ン(業務プロセスの一場面)が、投資全体の価
   に注目していきたい。                                       値を訴える。あるいは、一画面が投資の意義を
   従来から、「費用対効果」という言葉は暗黙の                            明らかにし、そこから背景にある全体像を伝



                                                2                  Sapporo Sparkle k.k.
【視座-IT投資の話】 効果はもっと大きく構え、確実に生み出そう



   え、その広がり感へと話を展開する方が、よ                    く責任が生じている。
   ほど説得力に長ける。
   投資申請の場面では、たくさんの期待効果を                    効果の大きさは第一に、「実現像の規模感」
   並べるよりも、たった一人、特定の一部門に                    によって決まる。機能内容や成果の歩留まり
   よるコミットが強い意味を持つことがよくあ                    以前に、対象が持つ規模感がある。規模には
   る。他への広がりに対するシナリオさえ備え                    3つの指数がある。ひとつは対象の数。2つ
   ていれば、ひとつの強い意志が投資の意義と                    めは利用頻度。そして3つめが一つ当たりの
   妥当性を証明する。最近は特に、既存業務を                    影響度の大きさ。この3つに利用内容が合わ
   システムにおきかえる形ではなく、業務とI                    さ っ て、事業 から 見た変 化の 大き さが 決 ま
   Tの両面から新しいしくみを実現するプロ                     る。しかし、業務プロセスや機能内容を精査
   ジ ェク トが 増え てい る。そ うし たケ ース で            する一方で、規模を疎かにする例が少なくな
   は、すべての人が「すでに必要としている」                    い。もちろん、パイロットとして小規模で先
   例はまれだ。パイロットとして共に挑む意志                    行 す る プ ロ ジ ェ ク ト も あ る。し か し、パ イ
   を 持つ 人が いる かど うか。その 意志 の強 さ             ロットだからこそ、効果は濃くなければなら
   が、経営者を判断に踏み切らせる。後は、い                    ない。規模の3つめ、一つ当たりの影響度が
   かに実現するのかを描くデザインの問題だ。                    大きいことが必須条件になる。
                                           今求められていることは、効果を大きく構え
   で は、効 果 の 大 き さ は 問 わ れ な い の か?当       る こと だ。そ れは 事業の 視点 から 実現 像 を
   然、問われる。ただし、問われている効果の                    しっかりと捉え、より大きく使いこなすこと
   意味が違う。第一に、「費用対効果」の公式                    を意味する。そして、その実現に向けて、シ
   にとどまらない。効果は単体で、事業規模や                    ス テム 開発 だけ でな く、着 実に 業務 に適 用
   方向性とのバランスで評価すべきものだ。そ                    し、効果へと導く策を用意する。稼働後には
   して第二に、事業とITが一体である以上、                    利用状況や成果を評価し、持続的に改善や拡
   投資の結果はシステムを利用した事業の状態                    張を続けて行く。逆にみれば、システムをつ
   にある。業務プロセスがいかに変わり、お客                    くるだけでは、IT投資のごく一部を果たし
   様にどういった価値がもたらされるのか。効                    ているにすぎない。もはや、ソフト・メリッ
   果はシステムの利用による直接効果ではな                     ト 部 分 を「そ れ は 利 用 部 門 と の 兼 ね 合 い
   く、それ によ る事 業の変 化に よっ て得 ら れ             が…」と避けることはありえない。
   る。だから、たった一つの利用シーン、たっ
   た一人の事業側からのコミットが投資全体の                    だから今、効果は大きく構え、確実に生み出
   説得力を持つ。                                 そう。効果を大きく描く勇気を持とう。その
   かつて、ハード・メリット、ソフト・メリッ                    大きな絵を描くためのデザイン力、そして、
   トという言葉が盛んに使われた。それに習え                    業務適用を含む全体の工程。「費用対効果」
   ば、事業とITが一体化した今、すべてのI                    の話は、効果をいかに大きく描き、確実に生
   T投資には、ソフト・メリットである事業の                    み 出 し て い く の か と い う、「効 果 の デ ザ イ
   変化に対するコミットが求められている。情                    ン」へと移行している。もっと大らかにIT
   報基盤や基幹系システムなどの事業基盤型の                    化に取り組んでいきたい。そんな願いを込め
   システムであっても、利用シーンのひとつと                    ながら、「効果は大きく構え、確実に生み出
   共に、それがなかった場合に何が起きるのか                    そう」と訴えていきたい。今の技術にも、事
   という“存在の必要”を明らかにしなければ                    業環境にも、それに応えるだけの可能性があ
   ならない。                                   る。
   以前には、システムによって確実に得られる
   ハード・メリットまでがIT部門の役割であ                    <関連>
   り、ソフト・メリットは利用側の問題として                    11月15日 のIT Leaders Live!第69回 で、同タ イ
   切り離すことも多かった。いたずらに効果の                    ト ル の 内 容 を お 送 り し ま し た。番 組 で は、
   範囲を広げることへの問題指摘もあった。し                    「規模感に欠ける取り組み」のいくつかの例
   か し、「事 業 と I T の 一 体 化」と い う 言 葉        か ら「費 用 対 効 果」の あ り 方 を 考 え て い ま
   は、ソフト・メリットの視点でIT投資を考                    す。あわせてぜひご覧ください
   えることを意味する。無根拠に効果を広げる                    http://bit.ly/UI1LMD
   のではなく、実現に向けた姿として効果を描


                                       3                            Sapporo Sparkle k.k.
Publisher Sapporo Sparkle k.k.
Date of Issue January 8, 2013
No. 2013010801

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【視座-IT投資の話】  効果はもっと大きく構え、  確実に生み出そう

  • 2. 【視座-IT投資の話】 効果はもっと大きく構え、確実に生み出そう 【視座-IT投資の話】 効果はもっと大きく構え、確実に生み出そう Satoe Kuwahara System coordinator at Sapporo Sparkle K.K. 「費用対効果」はIT投資における重要な判断 うちに、「費用を超える効果が得られること」 基準だが、費用と効果、それぞれの中身や質に を意味してきた。投資である以上、それが最小 ついて語られることは案外少ない。 限の条件であることは間違いがない。しかし、 かつては「費用に合わせて機能を絞り込む」こ それで十分なのだろうか?現実に、経営者はそ とが必須とされてきたが、その結果、「システ のような基準で投資を判断しているのだろう ムを動かすのに不可欠な機能が優先され、事業 か? ………答えはノーだ。「費用対効果」か から見て大事な機能は“贅沢品”として後送り らみた効果の大きさで投資を判断する経営者は される」ことが日常化した。プロジェクトが後 ほとんどいない。少なくとも、見たことがな 半に入り稼働時期や費用が切迫してくると、 い。 真っ先に議論されるのは「機能の削減」。シス 投資に要するお金も人材も有限で、経営の重要 テムの稼働を優先し、当初の目的との乖離がお な判断基準に時間軸がある以上、「よりインパ きていく。「次フェーズで必ず実現しますか クトの大きなもの」を優先することは投資の道 ら」と事業側をなだめたところで、実現のタイ 理である。「費用を越える効果がある」程度で ミングが遅れることも、一時的にせよ全体像が は、投資に値しない。その内容が、どれだけの 崩れることも違いがない。 インパクトがあるのか、事業の方向性にどれだ 現実に今日の開発環境では、機能をいくつか け合っているのかが第一に問われるはずだ。そ 削ったところで、開発負担を大きく下げること の投資によって、「どれだけ大きな効果が得ら はできない。逆に、それで下がる程度の作り方 れるか」ではなく、それによって「何がどう変 で あ っ た な ら、初 め か ら「勝 算 は あ っ た の わるのか」、その変化がどれほど今の事業に か?」と問われるべきだろう。それほど今日の とって重要で、どのような未来につながってい 開発には選択肢が多く、「要件が単純に開発規 くのか。それはなぜ今なのか?投資の判断にお 模に比例しない」ための策がある。しかも、事 いて見るべきことは一点、「変化」の質、対象 業とITの一体化が進み、事業側の動機が明確 と大きさ、そしてタイミングである。 なプロジェクトが増えている。システム開発の その意味では、「費用対効果」は期間や工程、 都合で機能を絞り込む発想は、そこにはない。 体制などと同じく、実現性をはかる一要素でし かない。「効果から見た費用の妥当性」として 「費用対効果」は不変の判断基準だが、それが 「費用対効果」の評価がある。よって、「費用 意味するものは変わってきている。システムの 対効果」は効果を積み上げることよりも、むし 位置づけが変わり、システムに対する価値観が ろ、費用の観点から実現策を精査し、最適な費 変化すれば、自ずと、IT投資に求めるものも 用モデルを作り出すことに価値観がある。当 違ってくる。 然、ムダな機能や稚拙な手段はあってはならな 今、「費用対効果」について、2つの考えるべ い。 き観点がある。ひとつは、「費用対効果」のト レードオフ・バランスをいかにブレークスルー こうして考えると、効果をあれこれと細かに積 するか。技術やデザインによって実現効率を高 み上げていくことには、ほとんど意味がない。 めれば、効果として得られるものは大きくな 従来よく見られた、作業効率化やペーパーレス る。これは費用側の問題。そこには、共同利用 化などを金額に換算する方式。その合算がどれ やライフサイクルの見直しによって、費用の実 ほど費用より大きくとも、事業から見たインパ 負担を変える策も含まれる。そしてもうひとつ クトはない。むしろ、たったひとつの利用シー が、効果の側面。ここから先は、この「効果」 ン(業務プロセスの一場面)が、投資全体の価 に注目していきたい。 値を訴える。あるいは、一画面が投資の意義を 従来から、「費用対効果」という言葉は暗黙の 明らかにし、そこから背景にある全体像を伝 2 Sapporo Sparkle k.k.
  • 3. 【視座-IT投資の話】 効果はもっと大きく構え、確実に生み出そう え、その広がり感へと話を展開する方が、よ く責任が生じている。 ほど説得力に長ける。 投資申請の場面では、たくさんの期待効果を 効果の大きさは第一に、「実現像の規模感」 並べるよりも、たった一人、特定の一部門に によって決まる。機能内容や成果の歩留まり よるコミットが強い意味を持つことがよくあ 以前に、対象が持つ規模感がある。規模には る。他への広がりに対するシナリオさえ備え 3つの指数がある。ひとつは対象の数。2つ ていれば、ひとつの強い意志が投資の意義と めは利用頻度。そして3つめが一つ当たりの 妥当性を証明する。最近は特に、既存業務を 影響度の大きさ。この3つに利用内容が合わ システムにおきかえる形ではなく、業務とI さ っ て、事業 から 見た変 化の 大き さが 決 ま Tの両面から新しいしくみを実現するプロ る。しかし、業務プロセスや機能内容を精査 ジ ェク トが 増え てい る。そ うし たケ ース で する一方で、規模を疎かにする例が少なくな は、すべての人が「すでに必要としている」 い。もちろん、パイロットとして小規模で先 例はまれだ。パイロットとして共に挑む意志 行 す る プ ロ ジ ェ ク ト も あ る。し か し、パ イ を 持つ 人が いる かど うか。その 意志 の強 さ ロットだからこそ、効果は濃くなければなら が、経営者を判断に踏み切らせる。後は、い ない。規模の3つめ、一つ当たりの影響度が かに実現するのかを描くデザインの問題だ。 大きいことが必須条件になる。 今求められていることは、効果を大きく構え で は、効 果 の 大 き さ は 問 わ れ な い の か?当 る こと だ。そ れは 事業の 視点 から 実現 像 を 然、問われる。ただし、問われている効果の しっかりと捉え、より大きく使いこなすこと 意味が違う。第一に、「費用対効果」の公式 を意味する。そして、その実現に向けて、シ にとどまらない。効果は単体で、事業規模や ス テム 開発 だけ でな く、着 実に 業務 に適 用 方向性とのバランスで評価すべきものだ。そ し、効果へと導く策を用意する。稼働後には して第二に、事業とITが一体である以上、 利用状況や成果を評価し、持続的に改善や拡 投資の結果はシステムを利用した事業の状態 張を続けて行く。逆にみれば、システムをつ にある。業務プロセスがいかに変わり、お客 くるだけでは、IT投資のごく一部を果たし 様にどういった価値がもたらされるのか。効 ているにすぎない。もはや、ソフト・メリッ 果はシステムの利用による直接効果ではな ト 部 分 を「そ れ は 利 用 部 門 と の 兼 ね 合 い く、それ によ る事 業の変 化に よっ て得 ら れ が…」と避けることはありえない。 る。だから、たった一つの利用シーン、たっ た一人の事業側からのコミットが投資全体の だから今、効果は大きく構え、確実に生み出 説得力を持つ。 そう。効果を大きく描く勇気を持とう。その かつて、ハード・メリット、ソフト・メリッ 大きな絵を描くためのデザイン力、そして、 トという言葉が盛んに使われた。それに習え 業務適用を含む全体の工程。「費用対効果」 ば、事業とITが一体化した今、すべてのI の話は、効果をいかに大きく描き、確実に生 T投資には、ソフト・メリットである事業の み 出 し て い く の か と い う、「効 果 の デ ザ イ 変化に対するコミットが求められている。情 ン」へと移行している。もっと大らかにIT 報基盤や基幹系システムなどの事業基盤型の 化に取り組んでいきたい。そんな願いを込め システムであっても、利用シーンのひとつと ながら、「効果は大きく構え、確実に生み出 共に、それがなかった場合に何が起きるのか そう」と訴えていきたい。今の技術にも、事 という“存在の必要”を明らかにしなければ 業環境にも、それに応えるだけの可能性があ ならない。 る。 以前には、システムによって確実に得られる ハード・メリットまでがIT部門の役割であ <関連> り、ソフト・メリットは利用側の問題として 11月15日 のIT Leaders Live!第69回 で、同タ イ 切り離すことも多かった。いたずらに効果の ト ル の 内 容 を お 送 り し ま し た。番 組 で は、 範囲を広げることへの問題指摘もあった。し 「規模感に欠ける取り組み」のいくつかの例 か し、「事 業 と I T の 一 体 化」と い う 言 葉 か ら「費 用 対 効 果」の あ り 方 を 考 え て い ま は、ソフト・メリットの視点でIT投資を考 す。あわせてぜひご覧ください えることを意味する。無根拠に効果を広げる http://bit.ly/UI1LMD のではなく、実現に向けた姿として効果を描 3 Sapporo Sparkle k.k.
  • 4. Publisher Sapporo Sparkle k.k. Date of Issue January 8, 2013 No. 2013010801