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- 1. 『経営学』をどう学んでいくか
◆大学は将来を自分で拓く時期
君は何のために勉強しているか。あなたはどんな人生を歩みたいと思っているのか。何がしたい
のか。あるいは、なぜ仕事をしなければならないのか。
大学生は、多かれ尐なかれこうした真正面からの疑問に悩むものである。今の大人達も若い頃に
は皆それを考えていた。自分で進む道を決めた者、決められずにやりすごした者はさまざまである
が、ともかくもそれぞれの力で今を生きている。
過去に歴史に名を残した人間も、若き時代には同じように進むべき道を考えていた。土佐に生ま
れた坂本龍馬は倒幕運動の志士として身を立てようし、埼玉で育った渋沢栄一は尊王攘夷に本気に
なって横浜を焼き打ちにする企てを考えた。ソフトバンクの孫正義社長は福岡県久留米の高校を中
退してアメリカに渡り自分の人生を切り拓こうとした。
それとは逆に、自分で人生を考えて選択することができずに、生きるために定められた道を歩ま
ざるを得なかった者も多い。パナソニックを創業した松下幸之助は家が貧しいために小学4年生で
商店に奉公に出された。トヨタの祖である豊田佐吉は父親の大工の仕事を継ぐしかなく、ホンダを
創った本田宗一郎は家が鍛冶屋だったから自動車修理店に入って子守の仕事をさせられた。皆がそ
ういう人生を歩まざるを得なかった時代であった。
幸いなことに、現代は昔とは異なる。若い時期に考える時間や環境が決して不足しているわけで
はない。日本の若者の半分以上は大学に進学し、尐なくとも4年間は社会に出る前の訓練と準備を
する時間がある。大学は社会で自分を拓いていくために用意された、学びの機会と環境である。
◆重要なのは、社会における「取り決め」
人は、憲法の基本的人権にあるように、社会で自由に活動することを許されている。学校を卒業
すれば、学校の中の指導や強制からも「自由」になる。しかし、社会では他人が学校のように手取
り足取りでは人生を導いてくれないし、多くの場合は叱ってもくれない。
人間の実社会とは、自分と他の組織や個人との間で何かを決めて、自分が働き、その分の価値を
金銭で得ることを基本とする世界である。これは当たり前の話だが、わかりやすく言えば、自分が
働いてお金を稼ぐことだ。サラリーマンはもちろん、お笑いタレントでもプロ野球選手でも大学の
教員でも、日々の労働で収入を得ていることには変わりがない。人間でなくとも、生きるためのも
のを稼ぐことはすべての生物が行っている行為である。ライオンは獲物を追わなければすぐに飢え
てしまう。
人間が賢いのは、生きるための稼ぎ方を「組織的」に行うことができることである。人間は頭を
使えるから、会社という集団の組織を作って、ものを個人が分担して生
産し販売し、金を稼いでいる。しかし、人間がその組織をうまく運営す
るには、さまざまな「取り決め」を学び理解した上で円滑に処理をしな
ければ、ものがうまく作れない、製品を売っても損が出てしまう、ある
いは代金が回収できないことになる。