トラブルを未然に防ぐために必要なアジア諸国の法制度の理解【インド】 第1 インドの社会制度 1. 「世界最大の民主主義国家」 人口:12億1600万人 行政府の長は首相で、下院議員の総選挙後に大統領が任命。内閣は下院議員の過半数を獲得した政党が組閣を行う 閣僚は首相の指名に基づき大統領が任命 内閣は下院に対して連帯して責任を負う また、連邦議会の議事運営、重要問題の審議・立法化と国家予算の審議・決定を行う 2. 地域 インドは28の州と6つの連邦直轄領とデリー首都圏から構成される。 第2 インドの文化・慣習 1. 宗教 ・ヒンドゥー教徒 80.5% ・イスラム教徒 13.4% ・キリスト教徒 2.3% ・シーク教徒 1.9% ・仏教徒 0.8% ・ジャイナ教徒 0.4% ・その他 0.7% 2. カースト制度はまだ存在するか? 3. 格差社会 4. 議論好きな人種 5. Family Businessが基本 -パパ・ママショップ 第3 インドの法制度 ・基本的に英国の法律システムがモデル ・判例および先例拘束の原則という基本的なコモン・ローの伝統に従ったコモン・ローシステム ・但し、インド固有の特徴があるものとして、家族法と相続法など。 ・契約法、パートナーシップ法、流通証券法、個人税法の分野においても影響あり。 第4 インドの司法制度 ・単一かつ統一された司法制度 → 連邦と州による法廷の区別はない ・司法制度は3階層構造。最も上位の法廷はニューデリーのインド最高裁判所 ・最高裁判所は憲法、民事、刑事上の全ての事項について最終裁判権をもつ ・最高裁判所の下には高等裁判所があり国内のほとんどの州に設置されているが、2つ以上の州により共有される場合もある ・高等裁判所も全ての事項についての管轄権を持つが、2つの州間における紛争など、最高裁判所が排他的な権限をもつ事項もあり。 ・3階層の司法制度において最も下に位置するのが地方裁判所であり、その地方当局の行政官庁所在都市に設置されている。 ・上記に加えて、離婚裁判所、労働裁判所や家賃統制裁判所など法の特定の分野を扱う専門の法廷も数多く存在する。一般的にこれらの法廷は地方裁判所と同等とされ、通常その判決に対する上訴は土地管轄権をもつ高等裁判所に対して行われる。 ・インドの裁判においての留意点 ・裁判の長期化 ・10年以上かかる訴訟も多い ・特に不動産に関する訴訟は、「親の代で訴訟提起すれば孫の代で終結」 ・関連裁判の増殖 ・ 弁護士の戦略もあり、議論を「拡散」させる傾向あり ・弁護士の選択 ・デリーだけで2万人の弁護士 ・クオリティーにばらつきあり 第5 仲裁 ・インドにおける仲裁 仲裁合意がなされた場合には、合意に従った仲裁がなされることになる。インドを仲裁地とする仲裁の他、第三国を仲裁地とする仲裁も可能である。 ・仲裁裁定の執行力 インドも仲裁に関するニューヨーク条約加盟国であり、インドにおいて行われた仲裁裁定は日本においても執行可能である(日本において行われた仲裁裁定もインドにおいて執行可能である)。 ・インド仲裁法 インドにおいて行われる仲裁については、インド仲裁法が適用される。