福岡ブロックチェーンエコノミー勉強会のキックオフセミナー資料

1. 福岡ブロックチェーンエコノミー勉強会
公開セミナー
ブロックチェーン・エコノミーを志向する
ユースケースとエコシステムの知見蓄積のための組織
近畿大学
山崎重一郎
2017年3月27日

2. この会のアウトプット
今年度
福岡に実施的な研究開発と実験の能力があるコミュニティの設立
勉強会の体制とスケジュール
来年度
福岡をブロックチェーン研究開発と実証実験世界的な拠点にする

3. 福岡のアドバンテージ
ハウ・インターナショナル（飯塚市）
NAYUTA（福岡市）

4. ブロックチェーンとは？
なんと未定義用語
「分散台帳？」や「共有台帳？」
いま定義するのは時期尚早
ユースケースの積み上げが必要
参照モデルの検討などで用語の定義
ステークホルダーの具体化
成長のためのエコシステムは？

5. ブロックチェーン関連用語定義に向けて
参照アーキテクチャからのアプローチ
テクニカルタームのピックアップ
アーキテクチャ
要件定義
ステークホルダー、エコシステムからのアプローチ
利害関係者
システムのレイヤとサービスのレイヤの分離
ブロックチェーン間の相互運用性
ユースケースの積み上げが必要

6. インターネットとブロックチェーン
多くの技術者が類似性を感じている
類似点の分析からブロックチェーンを定義してみる

7. インターネットの発明
インターネットは核戦争の恐怖の下で発明された
回線交換方式：回線を専有する（一時的に）
全米の回線網は、交換局が核攻撃を受けると全身不随に陥る

8. インターネット
IPパケット(宛先IPアドレスを持つデータ）
ネットワークは共有財（パブリックなネットワーク）

9. IPパケットによる自律的な通信
ネットワークに故障があれば、IPパケットは迂回する
障害点がない
回線を専有しない、共有資源のコストを互恵的に負担
障害点
障害点

10. データベースの「トランザクション」
データベースへの処理の最小単位
銀行の振込手続きはトランザクションになる
ファイアーウォールの中の処理
フ
ァ
イ
ア
ー
ウ
ォ
ー
ル

11. ビットコインのトランザクション
トランザクションのrepresentation
時制式三式簿記形式 ＋ スクリプトによる処理
過去 現在 未来処理の実行

12. ブロックチェーンのトランザクション
送金先アドレスと処理の「表現」となる自律的データ
送金：トランザクションの作成、登録、複製の連鎖、合意

13. ブロックチェーンとインターネットの類似性
トランザクション＝IPパケット （転送／送金の「表現」）
障害点がない、頑強性
資源を専有せず、互恵的に共有資源のコストを負担
障害点
障害点

14. すべての記録の正当性を全員で確認し保存
互恵的なコスト分散
見かけのコスト削減の効果
台帳の分散的ガバナンスとコスト
確認
コードコード
コード
コード
コード
コード
コード
コード
コード コード
コード
確認
確認
確認確認
確認
確認
確認
確認 確認 確認
36

15. ブロックチェーンはEDIブームの再来?
データ交換様式の統一（業界横断的な情報流通）20年前
ブロックチェーンへの期待も似ている
実際は、業界限定：金融、鉄鋼、化学プラント、旅行、物流 ...
ファイアーウォールの中のプライバシは守られる
データ ベース
（ 銀行Aの世界）
データ ベースのレコ ード
事実
事実
事実（ 送金）
事実
事実（ 送金）
事実
事実（ 受領）
銀行A
データ ベース
（ 銀行Bの世界）
データ ベースのレコ ード
事実
事実
事実（ 受領）
事実
事実（ 送金）
事実
事実
銀行B
データ ベース
（ 銀行Cの世界）
データ ベースのレコ ード
事実
事実（ 受領）
事実
事実
事実（ 受領）
事実
事実（ 送金）
銀行C
全銀ネッ ト
フ
ァ
イ
ア
ー
ウ
ォ
ー
ル
フ
ァ
イ
ア
ー
ウ
ォ
ー
ル
金融EDI

16. ブロックチェーンによる送金
当事者間で直接送金できる
送金という用途には、銀行は不要になる
ブロックチェーンは
時間軸方向に情報を累積
したホログラム
ブロックチェーンは
RDBではない
「現在の論理的世界」を記述
していないので、論理式で
検索はできない

17. なぜインターネットを使うのか？
専用線は、遅延がない、通信の秘匿性が守られる
インターネットは、遅延がある、通信内容が見えてしまう
ルーター
ルーター

18. なぜインターネットを使うのか？
地球上の１００箇所と専用線接続するには莫大なコストが必要
（参考）1Gbps 120Km で月額7,280,000円
インターネットなら一般個人でも同等なことがコスト的に可能

19. データベース
トランザクションは瞬時に完了。
処理内容の秘匿性を守れる
ブロックチェーン
トランザクションの完了には、放送、複製と合意の遅延がある
処理内容の秘匿性が守れない
なぜブロックチェーンを使うのか？
フ
ァ
イ
ア
ー
ウ
ォ
ー
ル

20. 銀行の台帳DB、勘定系トランザクション維持コストは莫大
故障時の代替、大規模災害への備え（立地、建築物）のコスト
台帳記録の正真性の維持コスト
組織犯罪やテロ攻撃への対策のコスト
従事者のモラルの維持コスト
ブロックチェーン
単一障害点がなく、堅牢な故障耐性を持つ（故障耐性コスト不要）
台帳記録の非可逆性が保証されている（非可逆性コスト不要）
参加者全員によって会計監査が行われる（監査コスト不要）
強力な外部攻撃耐性を持つ（外部攻撃耐性コスト不要）
強力な内部不正への耐性を持つ（モラル維持コスト不要）
なぜブロックチェーンを使うのか？

21. コンソーシアム型ブロックチェーンは
ブロックチェーンの利点を持つのか？
２０ノード程度の場合（PBFTでのノード数の限界）
外部攻撃や故障耐性
例：全ノードに対する回線や電源の物理的切断
内部不正への耐性
例：一人のキーパーソンへの買収（参加する全金融機関の社員のモラル維持）
なぜブロックチェーンを使うのか？
従来のデータベースの方が合理的ではないのか？

22. 銀行APIエコノミーと銀行法改正
銀行法改正：原則API公開、電子決済等代行業者（登録制）
人間向けのホームページ → コンピュータ向けのWeb API
google Map
API による
連携
A銀行 口座番号 12345
山崎重一郎
口座残高 10,000円
入出金履歴
3月１日 Amazon 1,000円
銀行API
による
口座情報
連携
電子決済等
代行業者
（登録制）

23. 銀行APIエコノミーのエコシステム
誰がビッグデータを手に入れるのか？
銀行：決済サービスの地位を維持、API使用量収入
APIの維持コストを負担、断片的な情報しか得られない
API API API API API
A銀行 B銀行 C銀行 D銀行 E銀行
Big Data
API使用料
電子決済等
代行業者
FinTech企業
認証／認可
トークン
OAuth,
OpenID connect
による認証／認可API

24. 銀行APIエコノミーのエコシステム
スマートロックの場合
利用者が使用料を支払う → 鍵が開く
API API API API API
A銀行 B銀行 C銀行 D銀行 E銀行
Big Data
API使用料
電子決済等
代行業者
利用者
スマートロック
制御サーバ
認証／認可
トークン
FinTech企業が
支配力を持つ
OAuth,
OpenID connect
による認証／認可API

25. ブロックチェーン・エコノミーにおける
銀行の役割
銀行にしかできないこと
「銀行券」＝決済用アセットを発行すること
（銀行の信用創造機能）
例：XXコインなど（発行者が存在する仮想通貨）

26. ブロックチェーン・エコノミーにおける
銀行の役割
支払いが必要な状況が発生したとき
機会を逃さず、いつでも即座に「通貨」が入手可能
汎用的な通貨よりも用途が限定された方が情報量が多い
例：銀行発行のスマートロック解除用通貨（原資は個人口座など）
法定通貨への精算は、発行した銀行が行う

27. ブロックチェーン・エコノミー
銀行の役割
銀行
[利用者の口座]
目的限定
通貨
自分が発行した
通貨の流通を追跡可能
利用者
口座残高を原資に
通貨発行
サービス
目的限定
通貨
目的限定
通貨
目的限定
通貨
支払い
転々流通
精算

28. ブロックチェーン・エコノミー
スマートロックの場合のエコシステム
利用者は、ロック解除用通貨を入手→ 使用料を支払う→ 鍵が開く
銀行
スマートロック
制御ノード
ロック解除用
通貨
通貨の流通を
追跡可能
利用者
ロック解除用
通貨
通貨
発行
支払い
Big Data

29. ブロックチェーン・エコノミー
Code is Law（プログラムの仕様＝法律）
ソフトウェアのコードの仕様が法や法執行の力を持つ領域
コードの仕様
経済／ビジネスモデル
法／制度いかにして
統治するか？

30. Code (法律) = Code (プログラム)
ローレンス・レッシグ
34

31. The DAO 問題とCODEのバグ
ethereumのクラウドファウンディグ基盤
・プログラムのバグによって大量の資金が流失
ブロックチェーンへのプログラムの登録は
宇宙に探査機を打ち上げるようなもの
故障しても、永久に修理は不可能
ハードフォークしなければ
100年後もthe DAOのプログラムは動き続けただろう

32. ブロックチェーン・エコノミー
新しい仕事を創り出すプラットフォーム
AI（人工知能）は人間から既存の仕事を奪っていく技術
ブロックチェーンは、人間の仕事を創出を支援する技術
シェアリングエコノミー
（個人が雇用者から事業者なる経済）
所有資産の商材化の支援、創作物や二次創作物の利益を得やすい流通

33. 分散型のシェアリングエコノミープロジェクト
La'Zooz :分散型Uber （ライドシェア）)
都市ごとにクリティカルマスに達するまで利便性は
低い
●分散リワード
●投票システム
●独自仮想通貨
初期参加者ほど有利

34. ★ブロックチェーンによる
シェアリングエコノミープロジェクトの例
Factom ：貸付記録、証券、保険、医療記録のタイムスタンプ保存
ビットコインのブロックチェーンの上位レイヤのデータベース
●記録をカテゴリごとに分類
●最終的にビットコインの
ブロックチェーンに埋め込む
●記録自体は秘匿可能

35. シェアオフィス事業者のセットを設置だけでビジネスできる
福岡市ブロックチェーン・エコノミー実験
仮想通貨による支払い
（マイクロペイメントチャネル）
利用者
事業者セット
評判情報
bitcoin ノードスマートロック
評判情報用
分散データベース評判情報
事業者

36. シェアオフィス事業者が増えたとき
評判情報用データベースも複製される
事業者が減っても記録は消えない
福岡市ブロックチェーン・エコノミー実験
事業者セット
bitcoin ノードスマートロック
評判情報用
分散データベース
事業者セット
bitcoin ノードスマートロック
評判情報用
分散データベース
事業者セット
bitcoin ノードスマートロック
評判情報用
分散データベース

37. 福岡市ブロックチェーン・エコノミー実験
評判情報のシェアが本質
AirBnbの例

38. 福岡市ブロックチェーン・エコノミー実験
ブロックチェーンは大きなデータの管理にはむいていない
IPFS (InterPlanetary File System)
P2P 型の分散ファイルシステム
PKIベースのIPNSと呼ばれるネームサービスがある
●分散型のGithub

39. 突然のオフィス需要

40. ブロックチェーン・エコノミー
Code is Law（プログラムの仕様＝法律）
ソフトウェアのコードの仕様が法や法執行の力を持つ領域
コードの仕様
経済／ビジネスモデル
法／制度いかにして
統治するか？

41. ブロックチェーン・エコノミーの
ガバナンス
経済：ビジネス・モデルの登録、修正、廃止
そのための、ソフトウェアのコードの登録や修正などが必要
コードのガバナンス：githubのプルリクエストなど
ビジネスモデルのガバナンス：電子投票システムの利用
法的ガバナンス：定期的監査受け入れ、事業内容の開示

42. githubのプルリクエスト
git バージョン管理システム
●ソースコードの修正
修正案を提案する仕組み
コアメンバーがテストして承認すると、正式なソースコードに反映
●文書の修正
仕様を規定するドキュメント
方針そのものを規定するドキュメント

43. ブロックチェーン・エコノミー
ドキュメント管理によるガバナンス
コードの仕様
経済／ビジネスモデル
法／制度
部屋を汚した場合の罰則
部屋の備品を壊した場合の罰則
部屋の目的外使用の罰則
日時による部屋の利用料の設定
利用者による利用料の設定
受験生を優先
するルール
プルリクエスト

44. パブリックな法とプライベートな法
国家が立法し執行する法と「コード」によるプライベートな法の関連
づけの定義が必要
公的な法
プライベートな
コード
プライベートな
コード
プライベートな
コード
プライベートな
コード
民法第1条
1.私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2.権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わ
なければならない。
3.権利の濫用は、これを許さない。
☓

45. この会のアウトプット
今年度
福岡に実施的な研究開発と実験の能力があるコミュニティの設立
（リストの作成と実証実験へのコミットメントの明確化）
勉強会の体制とスケジュール
（月に１回程度）
来年度
福岡をブロックチェーン研究開発と実証実験世界的な拠点にする