More Related Content Similar to 官民データの利活用社会に向けて (20) More from Masahiko Shoji (20) 官民データの利活用社会に向けて8. 自己紹介:情報社会研究と実践活動の両輪
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- 情報社会学
- 電子行政
- オープンガバメント
- 社会イノベーション
- 地域情報化
地域資源を十分に活用し、
地域の課題を自分たちで
解決していく社会
• 所属:
• 国際大学GLOCO 准教授・主任研究員
• その他の研究活動:
• 東京大学 公共政策大学院 客員研究員
• 情報通信学会 常務理事・研究企画委員長
• 公的活動・社会的活動:
• (一社)Open Knowledge Japan 代表理事
• 内閣官房 オープンデータ伝道師
• 総務省 地域情報化アドバイザー
• 総務省 情報通信白書アドバイザリーボード
• 東京都
ICT先進都市・東京のあり方懇談会 構成員
公共データ活用分科会 会長
お問合せ・その他
e-mail: shoji@glocom.ac.jp Twitter: @mshouji
17. なぜオープンデータなのか
• 透明性・信頼性向上
– 政治:民主主義の質を高める
– Open by Default:原則オープン
• 国民参加・官民協働
– 行政:自分たちで社会を作る
– Government as a Platform:大きな社会
• 経済活性化・効率化
– 経済:価値を生み社会を豊かにする
– Oil of the 21st Century:社会的な資源
17
• 経済活性化だけでない。
• 教育や官民のコミュニケーション、社会課題解決など影響は広範。
• アプリ開発は手段の一つ。紙に印刷することも立派な利活用。
• 情報や文書の問題でもある。IT(情報技術)分野だけの問題ではない。
オープンデータ
(=開放資料)
誰もが、いかなる目的でも、
自由に使用・編集・共有
できるデータ
18. 18
• 行政が作る情報 (→ 行政オープンデータ)
• 市民が作る情報 (→ Wikipedia、OpenStreetMap等 )
• 企業が作る情報 (→ 企業オープンデータ )
“官民データ活用”
行政オープンデータから「官民データ」へ
20. 政府は「1.0」から「2.0」へ
20
年 キーワード 概要
2009 米国オバマ政権 「透明性とオープンガバメントに関する覚書」
2011 東日本大震災 多数の自発的取組み(電力、避難所、物資等)
課題の露呈
2012 萌芽的取組み 電子行政オープンデータ戦略
・行政の透明性・信頼性向上
・国民参加・官民協働
・経済活性化・行政効率化
民間支援団体(Open Knowledge、LODI)
先進自治体(鯖江、横浜、千葉、会津若松等)
2013 政府の取組み 政府データカタログサイトβ版
G8オープンデータ憲章
2014 民間活動の活性化 シビックテック(Code for Japanほか各地)
2015 オープンデータ1.0完成 政府標準利用規約2.0版
2016 オープンデータ2.0開始 1.0+課題解決型
官民データ活用推進基本法
27. 経団連が示した利用目的
1. 消費者や顧客に対する新サービス創出
① 混雑回避に向け、道路工事や交通事故のリアルタイム情報をスマホやカーナビに連動
② 不動産取得・賃貸時の判断材料として、地域ごとに世帯構成・年収・大気汚染濃度・騒音測定
値などを提示
③ 公共インフラ構造図・維持運営データ等を維持管理やリニューアル提案に利用
④ 避難場所や事故多発地域をスマートフォンで表示・警報
⑤ 抗がん剤治療の臨床データや高齢者医療費データに基づき高齢者向け保険商品を開発
2. 企業経営の意思決定への活用
① 町丁目単位の要介護者情報をサービス必要地域の特定やサービス提供に利用
② 都市計画や大規模商業施設・マンション等の開発申請・建築申請を鉄道やコンビニ等の事業計
画策定に利用
3. 企業の業務の効率化
① 地質調査結果(ボーリングデータ)を建設工事の際に利用
② 建設物の新設の際に、該当地域の規制内容(各種法令・条例等)を確認
27
経団連:公共データの産業利用に関する調査結果【概要】(2013年3月)より
28. 商用目的の情報公開請求
名称 計 割合(%)
金額入り工事設計書 1260 45.9
金額入り委託設計書 329 12.0
一覧・台帳 238 8.7
教育関連資料 40 1.5
教育委員会配布資料 38 1.4
その他 708 28.0
総請求数 2744 100
• 法人による商用目的が大半
• 9割以上が全部開示
• オープン化・ウェブ提供へ
– 行政負担軽減
– 企業の利便性向上
※金入り設計書を利用した積算ビジ
ネスが存在
※一覧・台帳の内訳
食品営業許可施設一覧が突出
理美容所や施術所(整骨院、はり等)、
病院・診療所等が続く
平成25年度川崎市情報公開請求 Innovation Nippon報告書より
金入り設計書
57.9%
一覧・台帳
8.7%
28
30. オープンデータ最新利用実績(H28.1.1-1.30)
カタログサイトアクセス数 17,087
件
データダウンロード数 3,465
件
(うち、画像データ 2
42件)
データセット数 316件
データファイル数 4,41
5件
提 供 利 用
※H28.1.31現在
順位 組織 データセット データファイル名 DL数
1食品衛生課 食品衛生関係営業許可台帳 H27.12新規許可施設 47
2食品衛生課 食品衛生関係営業許可台帳 許可全施設(H27.3.31現在) 37
3道路保全課 ヒヤリハットマップ 葵区ヒヤリハットマップ 25
4観光交流課 静岡市の主要観光地の画像データ 静岡市の主要観光地の画像データ 24
5生活安心安全課 価格調査結果 価格調査結果(結果データ)_pdf 20
6食品衛生課 食品衛生関係営業許可台帳 H27.11新規許可施設 19
7保健衛生総務課 AED配置状況(公共施設) 市内の公共施設におけるAED配置状況 18
8道路保全課 静岡市交通事故対策計画箇所
静岡市内で、死亡事故等の重大事故が、多発
している箇所図
16
9道路保全課 静岡市交通事故対策計画箇所 静岡市交通事故対策計画箇所リスト 14
10中央卸売市場
静岡市中央卸売市場統計データ
(年度報)
静岡市中央卸売市場 年度報データ 平成
26年度_csv
13
データアクセスTOP10
資料提供:静岡市
30
31. 活発な民間活動
CODE for JAPAN, CODE for X
• 地域社会の課題解決に
参加するエンジニア
コミュニティ
• 鯖江、金沢、会津など
約70地域で活動
• 自治体に有志エンジニアを派遣
(例:浪江)
Open Knowledge Japan
• データ アイデア テクノロ
ジー をつなぐ活動
• 政策提言、コミュニティ形成、
情報提供・創発
• International
Open Data Day in Japan
31
ともに考え、ともにつくる
=コ・デザイン Co-Design
39. My City Forecast(東京大学 関本研究室)
39
• 2015~40年の地域を14の指標(人口、高齢化率、商店の距離等)で可視化
• 総務省・国土交通省等のデータを活用
• 自治体と協力し各地で市民参加活用ワークショップを開催
https://mycityforecast.net/
48. オープンデータ活用企業の資金調達
• ハッカソンを機に心停止発生現場に素早くAEDを届け救命率を高めるシステムを開発
• クラウドファンディングで300万円強を調達。プロトタイプ開発に充当
• 経産省ベンチャー事業化支援事業採択。石巻で市民参加実証実験を実施
• 孫泰蔵氏のMISTLETOEから転換社債型新株予約権付社債による資金調達を実施
• SVP東京2015年の投資協働先団体として採択(100-200万円/年、協働先支援)
• リクルートの会員制コワーキングTECH LAB PAAK採択(協働先支援ほか)
• ETICの社会起業家アクセラレータープログラム「SUSANOO」採択
• 社会起業家アクセラレーターUnreasonable lab(米国)東京プログラムに選出
• 経済産業省IoT推進ラボ「IoT Lab Selection」グランプリ
伴野智樹「ソーシャルベンチャーの資金調達の今とこれから「CTF2016」」『Civic Wave』2016年5月10日
http://www.civicwave.jp/archives/52131127.html
Coaido 119
by コエイド
50. 全国水利台帳
• placeOnが提供する消防団向けアプリ(Android, iOS)
• 全国各地の防災用水利(災害対応用水場)を検索可能。
(防火水槽、消火栓、自然水利、防災設備)
• 総数7万件以上のデータを掲載
• 利用者登録によりユーザーも登録・修正・削除が可能
• 水利名称、水利住所、GoogleMap地図情報をLINEで転送
することも可能
• AndroidアプリのDL数は1,000~5,000
http://www.placeon.jp/blog/product/soft/zenkokusuiridaityou/
51. 全国避難所データベース
• ゼンリンデータコム+電通
• 特長
– 全国の避難所約15万件をカバー、
年複数回更新
– 高い座標精度
– 1件あたり17項目の詳細さ
– CSV, ASP, APIで提供
– 地方自治体と在日外国大使館に無
償提供
• 実績
– 2013年度 経済産業省・総務省
主催「オープンデータ・ユース
ケースコンテスト」優秀アプロー
チ賞
– 2014年度 経済産業省主催
「オープンデータ・ビジネス・コ
ンペティション」ビジネス賞
– Yahoo! Japan、FNNニュースコム
が採用
51ゼンリンデータコム
https://www.zenrin-datacom.net/business/lifeline/index.html
64. Mobility as a Service
• 電車・路面電車・バス等公共交通機関、タクシー・レンタカー
等の車両、自転車シェア・ライドシェア、その他の多様な移動
手段を組み合わせて、効率的な移動を一体的、包括的に提供
• ルート検索、予約・決済機能等がアプリで完結
日本経済新聞2017年3月24日、2017年6月20日
65. “Mobility-as-a-Service (MaaS) launches first on-demand mobility service in Finland” TELEMATICS WIRE, 10 February, 2016.
http://telematicswire.net/mobility-as-a-service-maas-launches-first-on-demand-mobility-service-in-finland/
67. 公的機関がデータを公開しない理由
• 関心がない
• 混乱
– 明確な事例がない
– どんなデータが必要なのかわからな
い
– 目的や便益を明確にしてほしい
• 困難
– とにかく複雑で難しい
– データ量が膨大である
– 自分の時間の大部分が取られる
• 費用
• スタッフ問題
– それは私の仕事ではない
– 上司や政治家は公開を望んでいない
– やり方を知っている人がいない
• プライバシー
– プライバシー保護の懸念がある
• 既に公開している
– 情報公開制度があるではないか
• 合法性
– 公開する法的な権限を持っていない
– 私達がデータ所有者なのかわからな
い
– データは販売するべきである。
– 収集に膨大な資源を投入した
– 誰かがパッケージして売払うのでは
– 誰が何を行ったかコントロールした
い
• 正確さ
– 誰かがそれを変更してしまう
– 人々が誤解する危険がある
– データ品質が高くない
• その他
– デジタルデバイドが深刻化する
67
Tomihiko Azumaの記事を編集 http://okfn.jp/2013/10/23/reasons-to-not-release-data-sunlight-foundation/
出典: Reasons to Not Release Data, Part 1-Part 10, Sunlight Foundation
68. でも、行政内部でもデータに関する
不満や課題はある(はず)
• 他の部署
– あの情報が欲しい
– 欲しいデータがどこにあるのかわからない。問合せが面倒
– Excelが高度に作りこまれ、統合して使う時に修正が大変
– 自分の部署と他部署で言葉遣い(意味や用語)が違う
– 似たようなデータや掛けあわせた方がいいデータを作っている
• 外部との関係
– 議員があれを出せこれを出せと言ってくる
– 市民が「思い込み」で何か言ってくる
– 根拠を示して説明したい、もっとアピールしたい
– 「協働」をする必要がある
68
←オープンデータは効率化に役立つ
←オープンデータを信頼構築と協働に活かす
70. 実際にあった質問
• アプリのセキュリティや安全性
をどう確保するか
• 開発されたアプリで何らかの被
害が出た場合どう対応するのか
• 提供したデータが正しく反映さ
れていない場合、責任の所在は
どこにあるのか
• 利用規約に免責事項を記載して
いますが、他に有益な対応など
があればお教えください。
• 免責事項でデータ利用者の責任
にすれば十分だと思います
– 情報公開制度や統計データ、ウェ
ブサイトと同様
– 政府標準利用規約
6) 免責について
ア 国は、利用者がコンテンツを
用いて行う一切の行為(コンテン
ツを編集・加工等した情報を利用
することを含む。)について何ら
責任を負うものではありません。
イ コンテンツは、予告なく変更、
移転、削除等が行われることがあ
ります。
• 相談窓口が明示されていると親
切ですね
70
71. 個人情報に関する問題
プライバシーの保護
• 特に、プライバシーは厳守
– 一般人の感受性を基準として
公開を欲しないと認められる
事柄
• 技術的・制度的な保護
– 適切な非識別加工を行う
– 再識別化の禁止
• 心理的問題
– 取扱者の姿勢(透明性、信頼
性)が問われる
– 組織・ルールを整備しておく
– 個別判断・対話プロセスも必要
71
• 生データ公開は科学的検討に貢献します
が、回答者との約束を破るのはNG。変更
するなら許諾をとりましょう
• 許諾なしで出すなら非識別加工が必要
(改正行政機関個人情報保護法参照)
• プライバシーに関連する可能性のある調
査データは匿名加工し条件付きの提供を
するべき
アンケート調査結果等の生データをオープン
データ公開すると、用途が特定できなくなり
ます。調査票には「○○の用途のみに使用し
ます」と記載するのが通例ですが、オープン
データを見据えた場合、どのような文言で回
答者へ説明するのが適切でしょうか。
オープンデータはより細かいデータではなく、
より使い易いデータを求めるものです!
72. 実際にあった質問
• 広報誌をオープンデータ化す
る際に、写真の扱いはどのよ
うにすれば良いか。広報に載
せるという目的で了解を得て
撮った写真が、広報から切り
取られて使用された場合、問
題にならないか。
政府標準利用規約(2.0版)
• 1.2) 第三者の権利を侵害しな
いようにしてください
– ア コンテンツの中には、第三者が著
作権その他の権利を有 している場合
があります。第三者が著作権を有して
いるコンテンツや、第三者が著作権以
外の権利(例:写真における肖像権、
パブリシティ権等)を有しているコン
テンツについては、特に権利処理済で
あることが明示されているものを除き、
利用者の責任で、当該第三者から利用
の許諾を得てください。
– イ コンテンツのうち第三者が権利を
有しているものについては、出典の表
記等によって第三者が 権利を有して
いることを直接的又は間接的に表示・
示唆しているものもありますが、明確
に第三者が権利を有している部分の特
定・明示等を行っていないものもあり
ます。利用する場合は利用者の責任に
おいて確認してください。
– エ 第三者が著作権等を有しているコ
ンテンツであっても、著作権法上認め
られている引用など、著作権者等の許
諾なしに利用できる場合があります。 72
• 問題になります!
• そのような写真や、第三者が権
利を持っている著作物はオープ
ンデータ化しないか、含まれて
いること(可能性)を示す。さ
らに利用規約で利用者が確認す
るよう求める。
74. 実際にあった質問
• 持続的に取り組むに当たり、
経費負担の工夫はないか
• 「投資対効果」は、どのよう
な考え方で算定するのか
• ニーズや利活用実態などを踏
まえたい
• 効果の把握
– 掲載件数、DL数は目安
– 計測困難。効果には時間
– 事例、エピソードでの評価も
– アウトカムは子育てやごみ問
題等の施策全体で評価を
• ニーズ把握
– 経団連、他自治体等の既存調
査や事例を参考にする
– ユーザーに聞く、共に考える
– 「オープン化可能リスト」
– アピールしたい分野や、協働
を進めたい分野で公開する
74
• Open by Default (!!)
• そもそも情報は誰のものか?
• 無理のないコスト負担
– ウェブ情報発信に組込む等、
無理のない業務フロー作り
– 調達の条件にも組み込む
76. 明日からできるアクションは?
1. オープンデータに関する情報を収集する
– 内閣官房IT総合戦略本部「オープンデータをはじめよう~地方公共団体のための最初の手引
書」は意義、体制、事例、参考資料等がコンパクトにまとまっています。
2. 使われるべきなのに制限している情報に「オープンデータ」と明記する
– たとえば防災分野では、自由な編集ができない、紙媒体しかない等、応用しにくい情報が
多いです。誰もが必要に応じ自由に組み合わせ編集して使えるよう、著作権やデータ形式
を改めてウェブ提供することが望まれます。また前述手引書には、法的問題がなく、すぐ
にオープンデータ提供可能な24種類の情報が列挙されています。
3. ユーザーとの対話や先進事例の参照によるユースケースのイメージ
– データ活用は官民の連携や協働を深めることでより効果的になります。各地のオープン
ソースコミュニティや社会課題解決に取り組むITエンジニアとの対話や、企業が請求してい
る情報の調査、先進事例の参照等が、具体的な利用の想定に役立ちます。
4. 体制整備:情報の棚卸し、取組方針の策定、ウェブページの作成
– どこに何のデータがどの様な形式でどの程度存在するか、ニーズが高いものや広く利用を
促したいものは何か、等を判断するための棚卸しをし、判断基準となる方針を策定すると
進めやすくなります。利用者向けにもウェブ公開しましょう。 76