2011年9月11日 長崎県美術館

1. スペイン美術史セミナー 第１回 中世の美術：二つの世界とその遺産 ～イスラム王朝の美術、アストゥリアスからゴシックまでのキリスト美術 2011年9月11日 長崎県美術館 長崎県美術館学芸員 川瀬佑介

3. ・アストゥリアス美術 イスラム侵入後、半島北西部に設立されたキリスト教国、アストゥリアス王国(718-910)の美術。 ・アストゥリアス王国 アストゥリアス王朝は、半島内最初のキリスト教王国である西ゴート王国(418-711)の後継者を自任し、その権威の正当化に努めた。 718 ペラヨによって設立 アルフォンソ2世（在791－842） ラミロ1世（842－850） 910 レオンに遷都しレオン王国に。

4. サントゥリャーノ（サン・フリアン・デ・ロス・プラードス聖堂）、オビエド、812-42年

5. サントゥリャーノ（サン・フリアン・デ・ロス・プラードス聖堂）、オビエド、812-42年

7. サンタ・マリア・デ・ナランコ聖堂、オビエド、9世紀半ば頃

8. サンタ・マリア・デ・ナランコ聖堂、 オビエド、9世紀半ば頃

9. サン・ミゲル・デ・リーリョ聖堂、外観と角柱浮彫 オビエド、857年頃

10. 勝利の十字架、908年、オビエド大聖堂

11. スペインにおけるイスラム美術 前期（後ウマイヤ朝） 「アル・アンダルス」：イベリア半島内のイスラム教徒の支配領域。 711 イスラム教徒のイベリア半島侵入 732 トゥール・ポワティエの戦い 756 アブド・アッラーフマン1世(-788) 785 コルドバのメスキータ建造開始 アブド・アッラフマーン3世（929年 - 961年） 936 メディナ・アサーラ創建開始 ヒシャム2世（961年 - 976年） 1031 内乱の結果滅亡 ＞ これ以降第一次タイファ（諸王国）時代

12. メスキータ、コルドバ、784-10世紀末

13. メスキータ、 コルドバ、 784年-10世紀末

15. ミフラーブの前のヴォールト装飾、メスキータ、コルドバ、965年

16. ミフラーブのモザイク メスキータ、コルドバ 971年

17. サロン・リコ、メディナ・アサーラ（マーディナト・アッ・ザハラー）遺跡、953-57年

18. 王子ムギーラの小箱 制作地メディナ・アサーラ、 象牙 ルーヴル美術館、パリ

19. モサラベ美術 「モサラベ」二つの意味 １．イスラム支配下に住む、文化的にはアラブ化したキリスト教徒 ２．イスラム支配地と隣接したキリスト教王国（アストゥリアス王国、レオン王国）で、とりわけ9－11世紀初頭、イスラム美術の要素を様々に取り入れながら制作された美術。 「再入植時代の美術」と呼ばれることもある。

20. サン・ミゲル聖堂、エスカラーダ（レオン）、913年

21. ←サンティアゴ聖堂、 ペニャルバ（レオン）、 931-951年

22. ←サンティアゴ聖堂、 ペニャルバ（レオン）、 931-951年

23. 「ビブリア・イスパレンセ」より 対観表(f.375v)、 10世紀中半、 マドリード国立図書館

25. 「ジローナ・ベアトゥス」より 《キリスト教騎士の勝利》975年、ジローナ大聖堂

26. 「モーガン・ベアトゥス」より 左《ベルシャザール王の饗宴》、右《天井のイェルサレム》 10世紀半ば頃、モーガン図書館、ニューヨーク

27. 「モーガン・ベアトゥス」より 《天井のイェルサレム》 10世紀半ば頃、モーガン図書館 メスキータ、コルドバ

28. 「モーガン・ベアトゥス」より 《太陽をまとう女と竜》 10世紀半ば頃、モーガン図書館、ニューヨーク

29. 「フェルナンドとサンチャのベアトゥス」より 《第一の封印：4人の騎士》 1047年、マドリード国立図書館

30. ロマネスク美術 11世紀フランス各地で起こり、ほどなくしてスペインにも伝播する。西欧社会の政情安定、クリュニー会の修道院活動、サンティアゴ巡礼などが伝播と展開の大きなきっかけとなった。 古典伝統の復興 半円アーチ トンネルヴォールト サンティアゴの巡礼路 アストゥリアス王国時代の814年頃、サンティアゴ・デ・コンポステラでヤコブの墓が発見されたという伝承に基づく。 その後11-13世紀に最盛期を迎え、イェルサレム、ローマと並ぶキリスト教三大巡礼地となる。

31. サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂

32. サン・マルティン聖堂、フロミスタ、1066年頃

33. サント・ドミンゴ修道院聖堂回廊、シロス、1073年頃‐12世紀後半

34. サン・マルティン聖堂、フロミスタ、1066年頃 サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂 身廊、1124年頃

35. 回廊角柱浮彫彫刻《トマスの否認》 1073年頃‐1100年 サント・ドミンゴ修道院聖堂、シロス

36. 回廊柱頭彫刻 ↑「バスケット文様」 ->「鹿」 サント・ドミンゴ修道院聖堂、シロス

37. 左 預言者ダヴィデ像、 サンティアゴ・デ・ コンポステーラ大聖堂 南扉口（「金銀細工師の門」） 1100年頃 右 ライオンと小羊を抱えた 二人の女性像 （サン・セルナン聖堂由来） 1115－20年頃 オーギュスタン美術館 トゥールーズ

38. 王家霊廟壁画《羊飼いへのお告げ》、12世紀初頭、サン・イシドロ参事会聖堂、レオン

39. サン・イシドロ参事会聖堂、レオン ← 南扉口（「許しの門」） タンパン彫刻 1120年代

40. 《栄光のキリスト》 旧在：サン・クリメン聖堂、 タウイ（北部カタルーニャ） 1123年

41. 《天地創造の刺繍布》、1100年頃、ジローナ大聖堂博物館

43. スペインにおけるイスラム美術 後期 1031 後ウマイヤ朝滅亡、第１次タイファ（諸王国）時代に 1086 北アフリカよりムラービト朝上陸、アル・アンダルスを支配 1146 ムラービト朝解体に向かい、第２次タイファ（諸王国）時代に その中からムワッヒド朝が上陸 1228 ムラービト朝解体に向かい、第３次タイファ（諸王国）時代に 1237 ナスル朝成立 1492 グラナダ陥落、ナスル朝滅亡し、イベリア半島よりイスラム王国が消滅する＝レコンキスタの完了。

44. アルハフェリア、サラゴサ、11世紀後半 左）パティオ 右）ミフラーブ

45. ヒラルダの塔、セビーリャ、1185－95年建造黄金の塔、セビーリャ、13世紀前半

46. アルハンブラ宮殿、グラナダ、主に14世紀

47. ライオンのパティオ、アルハンブラ宮殿、グラナダ、14世紀後半

48. ミルトのパティオ、アルハンブラ宮殿、グラナダ、14世紀後半

49. アベンセラーヘ家の間、アルハンブラ宮殿、グラナダ、14世紀後半

51. ムデハル アラビア語で「残留者」の意味。キリスト教徒に再征服された後のイベリア半島で、自分たちの新稿、法監修を維持しながらその地に被支配者として残留したイスラム教徒。 とりわけ1085年のトレド陥落後に数が増加し、イスラム文化と中世キリスト教文化を融合させた独自の文化を作り出す。

52. クリスト・デ・ラ・ルス聖堂（アル・マルドゥンのモスク）、999年、トレド

53. サンタ・マリア・ラ・ブランカ聖堂（シナゴーグ） 13世紀後半、トレド

54. 鐘楼、テルエル大聖堂、1257年

55. 乙女たちのパティオ、1356－66年、アルカサル、セビーリャ

56. 大使の間アーチ 1356－66年、 アルカサル、セビーリャ

57. ピエダー礼拝堂丸天井、サンタ・マリーナ聖堂、セビーリャ、1415年頃

58. ゴシック美術 1130－40年代にフランスのイル・ド・フランス地方で興り、12世紀後半から15世紀にかけて、全ヨーロッパ的に伝播した美術。 尖頭アーチ 交差リブヴォールト 垂直性 フライング・バットレス スペインには早くから伝播しただけでなく、様々な土着の要素を吸収しながら独自の展開を見せた。 また、長期にわたり、一部16世紀の前半に至るまで引き継がれたたことも特徴の一つである。 勝利者様式としてのゴシック

59. トレド大聖堂、1226－1493年 アミアン大聖堂、1220－88年

60. ブルゴス大聖堂 交差部と採光窓付きドーム 1540－68年（再建）

61. ブルゴス大聖堂 西正面 1221－60年

62. サンタ・マリア・デル・マル聖堂、バルセロナ、1329－1383年

63. ラ・ロンハ（リョッジャ） バレンシア 外観、柱の間（1498年完）

64. セビーリャ大聖堂、1401－1506年

65. ミフラーブのファサード、メスキータ、コルドバ

66. ポルティコ、メディナ・アサーラ（マーディナト・アッ・ザハラー）遺跡

67. ハート形小箱、 制作地：アンダルシア 11世紀前半、高さ3.3cm サン・イシドロ参事会聖堂、レオン

68. コゴーリャの行列用十字架断片、象牙、10世紀末、 マドリード国立考古学博物館

69. サン・ティルソ聖堂、サアグン、 1123年以前

70. サン・ミゲル聖堂 エスカラーダ（レオン） 913年

71. サン・イシドロ参事会聖堂南扉口（「許しの門」） 、レオン、1120年代

72. アプス外壁、サラゴサ大聖堂 1403－13年

73. アルカサル、セビーリャ

74. セゴビア大聖堂、1525－91年

75. 二姉妹の間 アルハンブラ宮殿、グラナダ 14世紀後半