Railsエコシステムの研究

Railsエコシステムの研究
松田明

@RubyKaigi2009

2009年7月18日土曜日

はじめに

•今日話すこと
•今日話さないこと


今日話すこと


今日話すこと

Ruby on Railsに関する何か


Outline
1. 発表タイトルについて
2. Railsについて
3. Railsの進化の歴史
4. Railsエコシステム
5. Contributing to Rails
6. 私たちにできること

今日話さないこと


今日話さないこと

RailsでのWebアプリケーション
の作り方


そういうのが聞きたい方は

隣の部屋でやってます


自己紹介


% whoami


% whoami

:name => 松田明,
:twitter => @a_matsuda,
:github => amatsuda


Job

freelance Railer


フェロー(笑)


来月から社名が変わります


Asakusa.rb

http://asakusa.rubyist.net/


秋に本が出ます


Head First Rails

•オライリー社
•超初学者向け
•Rails 2.3 Ready!
•秋発売予定

乞うご期待！


Outline







Railsエコシ
ステムの研究

去年の前田さんの基調講演

「Rails症候群の研究」


今日話すこと

「Rails」と「エコシステム」


「Rails」とは？

ご存知 Ruby on Rails



Rubyで作られているオープン
ソースのWebアプリケーション
フレームワーク



詳しくはまたあとで


「エコシステム」とは？



「生態系」のこと。


こんなやつ


生態系ピラミッド



転じて、


「オープンソースの分野では、(中略)
オープンソースソフトウェアをどのように開発、
改良、利用すれば、オープンソースの世界の健全
かつ安定的な発展を促進できるかという問題を解
決しようとする理念のことを意味する。」
http://ossipedia.ipa.go.jp より


「オープンソース」とは？

昨今話題ですが、
今日は深入りはしません


生態系ピラミッド

オープンソースのエコシステムを
表現してみる


最も単純なOSSのエコシステムの構造

コミッタ

ユーザー


作る人
コミッタ

使う人ユーザー


作る人
コミッタ

越えられない壁

使う人ユーザー


日本のRubyエコシステムの構造
作る人
コミッタ


使う人
ユーザー


日本のRubyエコシステムの構造
作る人
コミッタ


ML参加者

使う人
ユーザー


日本のRubyエコシステムの構造(詳細版)
作る人

コミッタ

使う人

ユーザー


作る人


使う人

ユーザー


作る人

ruby-core

使う人

ユーザー


作る人唯一神

ruby-core

使う人

ユーザー


作る人唯一神

ruby-core
各種ライブラリ作者

使う人

ユーザー


作る人唯一神

ruby-core

ruby-dev

使う人

ユーザー


作る人唯一神

ruby-core

ruby-dev

使う人 ruby-list

ユーザー



•唯一神「Matz大神」の存在
•MLの棲み分け
•「使うだけの人」から上にのぼる道が険しい


上にのぼる道が険しい

Rubyはそれでいい


作る人唯一神

ruby-core

ruby-dev
もうひとつの壁
使う人 ruby-list

ユーザー


Railsエコシステム

では、Railsは？


Railsエコシステムの構造


唯一神


唯一神

Rails Core


唯一神

Rails Core

コントリビューター


唯一神

Rails Core


報告者


唯一神

Rails Core


報告者

Activists


唯一神

Rails Core


報告者

Activists

ユーザー


作る人唯一神

Rails Core


報告者

Activists
使う人
ユーザー


作る人唯一神

Rails Core

ごく薄い境界
報告者

Activists
使う人
ユーザー


Railsエコシステムの特徴
•レイヤー間の垣根が低い。フルスタック
•作る人多め
•下のあたりもとっても柔軟な構造
•コミュニティをうまくドライブして活用するため
の意図的な工夫

•Railsの駆動力を支えるための重要な装置

人口分布
唯一神

Rails Core


報告者

Activists

ユーザー


人口分布
唯一神 1
Rails Core


報告者

Activists

ユーザー


人口分布
唯一神 1
Rails Core 6


報告者

Activists

ユーザー


人口分布
唯一神 1
Rails Core 6

コントリビューター 1372

報告者

Activists

ユーザー


人口分布
唯一神 1
Rails Core 6


報告者多数

Activists

ユーザー


人口分布
唯一神 1
Rails Core 6


報告者多数

Activists もっと多数

ユーザー


人口分布
唯一神 1
Rails Core 6


報告者多数


ユーザー星の数ほど


日本における人口分布
唯一神 0/1
Rails Core 0/6

コントリビューター数名 / 1372

報告者数名 / 多数

Activists ？ / もっと多数

ユーザーやたら多数


いきなり結論

みんなもっと
参加しようよ！

でもどうやって？何のために？

本日のテーマ


まとめでした

以上、まとめおわり。


Outline






Railsについて

Railsについてちょっとおさらい


「Rails」とは？(reprise)


「Rails」とは？(reprise)

開発が始まってからまだ5年


開発が始まってまだ5年

驚異的な進化のスピード


驚異的な進化のスピード

AWDwR(日本語版)の表紙
を見ればわかる


AWDwR(日本語版)の表紙

2006年 2007年


I18n.t( Rails ) == 線路

「電車」のメタファー


「電車」のメタファーの持つ意味

CoC


「電車」のメタファーの持つ意味

•Rapidity
•走り続けるフレームワーク


Rapidity

in another word, Agility


Agile

アジャイルであれ、という気持ち
が名前に込められている
e.g. AWDwR


Agility

Agile
=> Embrace Change


Ch-ch-ch-ch-Changes

変わり続けるということ
=>

走り続けるということ


走り続けるということ

線路は続くよ
どこまでも

「電車」のメタファー(reprise)

•Rapidity
•走り続けるフレームワーク


Railsの本質

変化

変化

RubyKaigi2009のテーマは、
「変わる／変える」です。
http://rubykaigi.org/2009/ja より


変化し続けるということ

絶え間ない「カイゼン」


最新のRailsが最高のRails

Railsは永遠に未完成
であるという宿命


Rails格言

"edge is more stable than stable,

so use edge"

http://groups.google.com/group/rails-i18n/browse_thread/thread/24143dbaﬀ2841bf

より


「枯れたバージョンのRails」?

Railsの本質と矛盾


Railsの本質

Railsは走り続ける電車
=>

永久に枯れない。枯れたら死ぬ。


「エンタープライズRails」

とっても難しい分野


近年のRailsの進化の歴史

数々の新しい試み



2.1 Named Scope
2.2 Rails I18n
2.3 Engines / Templates / nested
attributes



2.1 Named Scope
2.2 Rails I18n
2.3 Engines / Templates / nested
attributes

3.0 Merb


近年のRailsの大きな変化

いずれもコアチームが作った
ものではない


ここ
唯一神

Rails Core


報告者

Activists

ユーザー


近年のRailsの大きな変化

コミュニティの産物


Contributors

Railsの変化力 / 駆動力の源


Contributors

Railsの成功の
秘訣

人口分布
唯一神 1
Rails Core 6


報告者/要望者多数


ユーザー星の数ほど



コントリビューターの人数が
すごいことに


Railsの早さの秘密

今のRailsは
1400人が同時多発的に開発
を行っているという恐るべき状況


これを実現している仕組み

あとで詳しく


コントリビューターの人数がすごい件

なにも最初からこうだった
わけではない


Outline






Political Change

専制君主制(DHH一人プロダクト時代)
=>
代表民主制(svn, Trac時代)
=>
直接民主制(GitHub, Activists)


独裁時代

Nobody had keys to the repository
but me for the ﬁrst year or so.
- DHH (http://www.loudthinking.com/posts/36-work-on-
what-you-use-and-share-the-rest)


その後しばらく

ふつうのオープンソース


今では、

DHH != Rails
- DHH (http://www.loudthinking.com/posts/36-work-on-
what-you-use-and-share-the-rest)


何がこの状況をもたらしたのか？


何がこの状況をもたらしたのか？

GitHub


GitHubがもたらしたもの

直接民主制の始まり


直接民主制？

ユーザー == コミッタ
(使う人) (作る人)
という理想


誰もがコミット権を持つ社会

全てのユーザーが自分の持つ
オレオレforkに好きなだけ
コミットする自由


オレオレRails

コミットの価値が認められれば
本家に取り込まれる


社会の変革

GitHubの登場はコミッタを
特権階級から追い落とす革命だった
http://blog.s21g.com/articles/1341


Railsらしいところ

Railsの社会に革命をもたらした
GHもまたRailsで作られている、
というメタ革命


The 3rd Impact

•Dave ThomasによるRubyの発見
•DHHによるRubyの発見
•RubyistによるGitの発見


viva GitHub!

Thank you Scott!


Outline






Railsエコシステム

話は戻って、


あらためてエコシステムを上から
唯一神

Rails Core


報告者

Activists

ユーザー


唯一神

What does he actually
do?


唯一神

DHHがどこかで言ってた
「みんなのパッチを判断してコミットするだけの
簡単なお仕事」
ソース not found


コアチーム

メンバー紹介
http://rubyonrails.org/core


メンバー

日本人は居ません


会社の存在

•37signals
•Engine Yard


会社の存在

日本ではMatzぐらいなのに



Railsはコアチームのみにて
作られるにあらず



ここからは僕らでもなれる


ランキング

Rails Contributors
http://contributors.rubyonrails.org/


集計方法

•GitのcommitのAuthorを
gritで抜き出して集計

•Git便利
•微妙に集計誤差もあるから参考程度に


Contributors

•1372 people!
•実際は 1400+ とも言われている


Contributors

ちなみにオレオレ


Japanese

でも日本人超少ない＞＜


条件

Railsのバグﬁxや
enhancementのパッチを
なんかコミットすること


必要スキル / 必要なもの
•Ruby(公用語)
•英語(公用語)
•Railsのソースを読み書きできること
(特にテストが大変)

•LHのアカウント
•Git

実際にやること

あとで


報告者

LHでバグ報告


LightHouse

RubyでいうところのRedmine
http://rails.lighthouseapp.com

(LH使いづらい・・・よね？)


必要なもの

•LHのアカウント


Activists

ちょっといったん置いといて、


おまけ

ちょっと毛色は違うけど、


プラギン/gemライブラリ作者

•独自路線
•我が道を行ってください
•運が良ければコアに取り込まれるという
出世コースも


必要なもの

•Githubのアカウント
•Ruby
•Git


プラギンとかgemとか

きょうびGithub以外で
開発とかないよね？


Activists

上記以外のなにかしらの形で
Rails社会に参加/貢献したい人


例えば、

Ruby on Rails Wiki
プロジェクト
http://groups.google.com/group/rubyonrails-wiki


Rails Wiki プロジェクト

•コンテンツの充実
•各国語に翻訳
•既に成果が反映され始めている
http://wiki.rubyonrails.org/

•... no Japanese?


Rails Feedback Forum

Rails 3に今後実装してほしいもの
などについて要望を出す


Rails Feedback Forum

uservoice.com
http://rails.uservoice.com


... and much more!


ML

the Rails Activism
mailing list
http://groups.google.com/group/rails-activism


必要なもの

•情熱


ユーザー

いわゆる「お客さん」


ユーザー

このトークが終わったあとで
ここの人口が変わらなかったら失敗・・・？


日本人にとっての最大の障壁

英語


英語

Rubyに次ぐ公用語


英語

何をするにも必要


Railsはもともと英語のフレームワーク

Designed for
English use only


Rails I18n以降

最近は状況が変化


Rails I18nがもたらしたもの

Railsが世界のフレームワークに


Rails I18nがもたらしたもの

Railsコミュニティが
世界規模に拡大


非英語圏のみなさんの英語

かなりひどい


英語

かなりひどい英語でも大丈夫。
みんな優しい。


日本人でもOK

今がチャンス？


Outline






モチベーション

もちろん「義務」とかではない


モチベーション

•自分の好みに合わせてRailsを改変する権利
•純粋に楽しい
•成り行き上


成り行き？

偶然ではなく、
巧妙に仕組まれた罠


Railsに仕組まれた罠

1. Railsは永遠に未完成なフレームワーク
2. 続々と新機能
3. 新機能に関してはそれなりに実装できたら出す


開発者が罠にはまるパターン

1. 続々と新機能

2. ワクワクするから使いたくなる

3. ドキュメントないし、ソース読まないと危なくて使えない

4. 使ってみたら壊れてるし、ソース読んでるうちに直したくなる

5. GitHubという誰でも開発に参加できる仕組み

6. 自然にパッチができている


Railsの本質

「完成していないこと」


The Rails Way

コントリビューターへの信頼を
前提としているからこその
攻めのプロダクト


非常にうまく機能している

とてつもない進化のスピード
を実現


これを踏まえて、

Railsの正しい使い方


Railsの正しい使い方

完成してないところは
自分が完成させながら
使えばいいじゃん。


「Rails開発」の2つの意味

Railsで作りながら
Railsを作る


手元のRailsが直ったとして、

何故パッチをコミットするのか？
モンキーパッチで充分なのでは?


Railsのモットー

Don t Repeat Yourself


Railsのモットー

Don t
Repeat
Yourself

Don t Repeat Yourself

•あなたが踏んだバグを他の誰かにも
踏ませてはならない
•あなたが書いたモンキーパッチを
他の誰かも書く必要はない


究極のDRY感覚

世界中のRailerたちの間で
DRYを共有


世界をDRYに

あなたが手元のパッチを
コミットするべき理由


Outline






Practices

•Railsのバグを発見するコツ
•LHの使い方
•GHの使い方


Railsのバグを発見するコツ

•常に先っちょのRailsを使う
•新機能を積極的に使う
•フレームワークを疑う
•フレームワークのコードをとにかく読む


Edge

常に先っちょが最良で最高の
Railsなんだから、
ここまでは必然


Railsのバグをうまく踏むコツ

「新機能」を積極的に使う


新機能

RESTとかBDDとか、
新しいトレンドの実装は
Ruby/Rails界からどんどん
産まれてきている

昔はJavaだった

"今のRubyは10年前のJavaだ。
-- EngineYardのひと


新しい技術

せっかくRuby/Railsを使ってて
これを使わないなんて勿体ない！


Practices

フレームワークを疑う


フレームワークを疑う

•フレームワークのデザインを疑う
•フレームワークの実装を疑う


フレームワークのデザインを疑う

•Rubyはキメると気持ちいい
•Railsもキメると気持ちいい
•Ruby/Railsは開発者が自然に気持ちよく
書けるようにデザインされているはず


自然に気持ちよく書けなかったら

デザインが間違っているはず


フレームワークの実装を疑う

Railsは、ユーザーに叩いてもらう
ことを見越して、そこそこの完成度
で早めに出してくる


特に新機能は

大抵どっか壊れてる


特に日本人は

欧米の開発者が想定してなかった
ようなレアケースを踏んでしまう
ことが多いような気がする


フレームワークのコードを読む

•同じRubyで書かれているから抵抗なく読める
•頭から読む必要はない。
自分が引っかかったところから

•毎日の差分をGitで読む(後述)


LHの使い方

•チケットは検索しにくい
•投稿時にプレビューがなくて
はまる


僕の場合

とりあえずチケットには全て目を通す。
気になったチケットはwatchしまくって、
あとはメールで追う。


GHの使い方

コミットは全部目を通す


僕の場合

% git log


git log

% git log -p --stat --reverse
で数日に一回差分を読むぐらいで。


Contributing through your job

ケーススタディ


実際のお仕事の開発案件

•永和システムマネジメントさん
•リクルートMTLさん


2009年2月開発スタート

nested attributesとか
どうしても使いたくて
Rails 2.3.0(beta1)系Edgeを採用


新機能

かなり早い段階から
Rails 2.3の新機能が使えた


会社にとってはリスク

「責任はオレが取る」
- @kakutani


Edge時代

FWの挙動が怪しいと
ソースを読む日々


成果

問題の報告をしたり、
パッチがいくつか採用されたり


というわけで、

永和システムマネジメントと
メディアテクノロジーラボは
Railsの開発に貢献しています！


こんな会社がもっと増えるといいな

これもまた、会社として
オープンソースを支援する
一つの手段ではないでしょうか？


そろそろ結論


みんなもっとRailsの
開発に参加しよう


でもどうやって？
何のために？


どうやって？

•Edge Railsで暮らす
•そしてcontributeする


何のために？

よりよい(Railsの)世界を
作るために


日本に居てRailsを使うということ

日本のRailsは遅れているが、
日本のRubyは進んでいる


ガイジンどもにはできないこと

Rubyの母国という強みを
生かした貢献
e.g. Ruby 1.9
M17n

M17n

なるせさんをお招きしてRailsのM17N関連に
ダメ出しする会 @ Asakusa.rb
http://qwik.jp/asakusarb/56.html


Asakusa.rb #11

3本のパッチをコミット


宣伝

Asakusa.rbではこんな活動を行っております。

続きはAsakusa.rbで！


end


Thank You!

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