2023年(令和5年)8月28日 審理員 桑原 武彦 様 審査請求人 審査請求代理人 小泉 一真 反論書 令和5年7月21日付け5公園第291号「弁明書」で処分庁(手続庁)から「青木島遊園地廃止手続きに係る審査請求」に対して行われた弁明について、行政不服審査法第30条第1項の規定により、下記により反論する。 記 1.前提 処分性について: 処分庁は弁明書(前提)において「本件遊園地は、条例により定められた施設ではなく、遊園地として議会手続き等による指定をしていないので、廃止にあたっての指定解除の手続きも不存在である。よって、本件遊園地廃止手続は行政処分にあたらず、行政不服審査請求の対象となり得ない」という。 しかし本件遊園地は、地方自治法の定める「公の施設」であることは、長野市監査委員が認めている(令和5年3月28日長野市監査委員告示第8号)。「住民監査請求の監査結果」の第7の2(1)イで、「本件遊園地は市の都市計画に基づいて設置された都市公園とは法的位置付 けが異なるが、公園緑地課は本件遊園地を公園台帳に記載し、公園として市 民の利用に供している実態があることから、公の施設に該当するものと判断される。」としている。監査委員は同ウでは「 公の施設のうち、無料で施設を開放し、利用時間など管理に関する事項を 定める必要がないような場合、例えば公衆トイレなどは必ずしも条例を制定 しなければならないものではなく、条例制定に関し市長に裁量の余地がある ものと判断される。」としているが、そのような判例・学説は存在しないので、これは誤りである。従って公の施設である本件遊園地を廃止する場合は、地方自治法第 244 条の 2「 普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるも のを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。」のである。処分庁は「廃止にあたっての指定解除の手続きも不存在である。」等と、議会にかけずに本件遊園地廃止したことをことさらに矮小化するが、地方自治法上の公の施設である以上は、廃止手続きが不要でよいわけがない。従ってこれを理由に行政不服審査請求の対象とならないとする態度は誤りである。 土地賃貸借契約の満期解除でないことから、「貸借契約が合意解除により終了すると同時に、以後存続し得なくなるのであって、本件遊園地の廃止は行政処分によるものではない」とする主張も同様に事実に反しているが、これは後ほど詳述する。 ア.(開発許可) 平成元年に、青木島遊園地(以下「遊園地」という)に隣接する区域の開発許可が申請されている。この開発は、都市計画法33条で公園設置が必要とされたが、長野市開発許可審査基準第21で、近くに都市公園に準じる公園がある場合に、その公園管理者の同意によって開発区域内の公園設置を不要とする規定があり、市公園緑地課が、遊園地が都市公園に準拠する公園であるとの同意により、公園設置不要とする開発許可が出された。 【「同意」の意味について】 公共施設管理者の同意を必要とする理由について、平成7年最高裁判決(民集第49巻3号1006頁)052554_hanrei.pdf (courts.go.jp)は、「開発行為が、開発区域内に存する道路、下水道等の公共施設に影響を与えることはもとより、開発区域の周辺の公共施設についても、変更、廃止などが必要となるような影響を与えることが少なくないことにかんがみ、事前に、開発行為による影響を受けるこれらの公共施設の管理者の同意を得ることを開発許可申請の要件とすることによって、開発行為の円滑な施行と公共施設の適正な管理の実現を図ったもの」と述べている。公園管理者は、開発行為による影響が、管理上支障がないと判断した場合に同意できることになる。 【遊園地への影響-存続の担保】 都市計画法施行令第25条第6号ただし書について、国交省より「田畑は、一般的には公共空地としての役割を果たし得ず、民有地であることから開発行為完了後も周辺に存続し続けることが担保されていないことから、開発区域の周辺に単に田畑が存することをもって、ただし書を適用し公園等の設置を不要とすることは適当ではないこと」という見解が示されていることから、開発区域内の公園設置を不要とするには、遊園地が開発行為完了後も周辺に存続し続けることが担保されていなければならない。 開発区域内に設置される公園は、都市計画法40条2項により市の帰属となることで存続し続けることが担保される。ただし書が適用される周辺の公園は、開発区域内の公園の代わりとなるものなのだから、開発区域内に設置される公園同様に存続が担保されなければならない。 都市公園は、都市公園法16条で廃止が厳しく制限され、存続が担保されている。処分庁公園緑地課は遊園地を都市公園に準拠する公園として公園設置不要に同意し開発許可が出されたことから、遊園地廃止は、都市公園法に準拠して存続が担保されなければならない。 市が遊園地に隣接する開発に対し公園設置を不要とする開発許可を出すことにより、遊園地には、その存続が担保されなければならないという管理上の影響が生じることから、遊園地管理者の同意が必要となり、これに同意した管理者である市は、遊園地の存続を担保する義務を負うことになる。 遊園地の土地賃貸借契約では、地権者からは契約の解除ができないことになっており、地権者が契約の更新をしないことで契約が終了する場合を例外として、市が契約の解除をしない限り遊園地を存続させることができる。市が遊園地の借地契約を解除したことは、遊園地の存続を担保する義務に反し、裁量権の逸脱となる。 遊園地廃止により、その存続が担保されていないにも関わらず開発許可を出したことになり、市による公園設置不要とする開発許可は都市計画法違反となる。開発の完了によって開発許可の効力が失われていることから開発許可の取り消しはできないが、前の処分が違法となるか、前の処分と矛盾するような遊園地の廃止は、信頼保護の原則に反し不当・違法である。 遊園地は、都市計画法により開発区域内に設置される公園の替わりとして住民に供用されることから、近隣住民は、遊園地の存続が担保され長期に遊園地が利用できることの期待権を有している。この権利と近隣住民に非がないことへの配慮のないままに遊園地の廃止を決定したことは、配慮義務に違反し裁量権の濫用として、不当である 都市公園の廃止は、都市公園法十六条でみだりに廃止してはならないとされていることで存続が担保されている。開発許可の同意書では、遊園地を都市公園に準拠する公園としているが、遊園地と都市公園は、都市計画法により開発区域内に設置される公園の替わりであることにつき、その存続の必要性には差がないので、遊園地の廃止は都市公園に準拠し、廃止は都市公園法16条が準用され、遊園地の廃止は都市公園法16条に反し違法である。 市が、遊園地が開発許可の条件であったことを全く検討せずに、遊園地の廃止を決裁したことは、検討すべきことを検討しない不作為であることから裁量権の濫用として違法である 遊
2023年(令和5年)8月28日 審理員 桑原 武彦 様 審査請求人 審査請求代理人 小泉 一真 反論書 令和5年7月21日付け5公園第291号「弁明書」で処分庁(手続庁)から「青木島遊園地廃止手続きに係る審査請求」に対して行われた弁明について、行政不服審査法第30条第1項の規定により、下記により反論する。 記 1.前提 処分性について: 処分庁は弁明書(前提)において「本件遊園地は、条例により定められた施設ではなく、遊園地として議会手続き等による指定をしていないので、廃止にあたっての指定解除の手続きも不存在である。よって、本件遊園地廃止手続は行政処分にあたらず、行政不服審査請求の対象となり得ない」という。 しかし本件遊園地は、地方自治法の定める「公の施設」であることは、長野市監査委員が認めている(令和5年3月28日長野市監査委員告示第8号)。「住民監査請求の監査結果」の第7の2(1)イで、「本件遊園地は市の都市計画に基づいて設置された都市公園とは法的位置付 けが異なるが、公園緑地課は本件遊園地を公園台帳に記載し、公園として市 民の利用に供している実態があることから、公の施設に該当するものと判断される。」としている。監査委員は同ウでは「 公の施設のうち、無料で施設を開放し、利用時間など管理に関する事項を 定める必要がないような場合、例えば公衆トイレなどは必ずしも条例を制定 しなければならないものではなく、条例制定に関し市長に裁量の余地がある ものと判断される。」としているが、そのような判例・学説は存在しないので、これは誤りである。従って公の施設である本件遊園地を廃止する場合は、地方自治法第 244 条の 2「 普通地方公共団体は、法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるも のを除くほか、公の施設の設置及びその管理に関する事項は、条例でこれを定めなければならない。」のである。処分庁は「廃止にあたっての指定解除の手続きも不存在である。」等と、議会にかけずに本件遊園地廃止したことをことさらに矮小化するが、地方自治法上の公の施設である以上は、廃止手続きが不要でよいわけがない。従ってこれを理由に行政不服審査請求の対象とならないとする態度は誤りである。 土地賃貸借契約の満期解除でないことから、「貸借契約が合意解除により終了すると同時に、以後存続し得なくなるのであって、本件遊園地の廃止は行政処分によるものではない」とする主張も同様に事実に反しているが、これは後ほど詳述する。 ア.(開発許可) 平成元年に、青木島遊園地(以下「遊園地」という)に隣接する区域の開発許可が申請されている。この開発は、都市計画法33条で公園設置が必要とされたが、長野市開発許可審査基準第21で、近くに都市公園に準じる公園がある場合に、その公園管理者の同意によって開発区域内の公園設置を不要とする規定があり、市公園緑地課が、遊園地が都市公園に準拠する公園であるとの同意により、公園設置不要とする開発許可が出された。 【「同意」の意味について】 公共施設管理者の同意を必要とする理由について、平成7年最高裁判決(民集第49巻3号1006頁)052554_hanrei.pdf (courts.go.jp)は、「開発行為が、開発区域内に存する道路、下水道等の公共施設に影響を与えることはもとより、開発区域の周辺の公共施設についても、変更、廃止などが必要となるような影響を与えることが少なくないことにかんがみ、事前に、開発行為による影響を受けるこれらの公共施設の管理者の同意を得ることを開発許可申請の要件とすることによって、開発行為の円滑な施行と公共施設の適正な管理の実現を図ったもの」と述べている。公園管理者は、開発行為による影響が、管理上支障がないと判断した場合に同意できることになる。 【遊園地への影響-存続の担保】 都市計画法施行令第25条第6号ただし書について、国交省より「田畑は、一般的には公共空地としての役割を果たし得ず、民有地であることから開発行為完了後も周辺に存続し続けることが担保されていないことから、開発区域の周辺に単に田畑が存することをもって、ただし書を適用し公園等の設置を不要とすることは適当ではないこと」という見解が示されていることから、開発区域内の公園設置を不要とするには、遊園地が開発行為完了後も周辺に存続し続けることが担保されていなければならない。 開発区域内に設置される公園は、都市計画法40条2項により市の帰属となることで存続し続けることが担保される。ただし書が適用される周辺の公園は、開発区域内の公園の代わりとなるものなのだから、開発区域内に設置される公園同様に存続が担保されなければならない。 都市公園は、都市公園法16条で廃止が厳しく制限され、存続が担保されている。処分庁公園緑地課は遊園地を都市公園に準拠する公園として公園設置不要に同意し開発許可が出されたことから、遊園地廃止は、都市公園法に準拠して存続が担保されなければならない。 市が遊園地に隣接する開発に対し公園設置を不要とする開発許可を出すことにより、遊園地には、その存続が担保されなければならないという管理上の影響が生じることから、遊園地管理者の同意が必要となり、これに同意した管理者である市は、遊園地の存続を担保する義務を負うことになる。 遊園地の土地賃貸借契約では、地権者からは契約の解除ができないことになっており、地権者が契約の更新をしないことで契約が終了する場合を例外として、市が契約の解除をしない限り遊園地を存続させることができる。市が遊園地の借地契約を解除したことは、遊園地の存続を担保する義務に反し、裁量権の逸脱となる。 遊園地廃止により、その存続が担保されていないにも関わらず開発許可を出したことになり、市による公園設置不要とする開発許可は都市計画法違反となる。開発の完了によって開発許可の効力が失われていることから開発許可の取り消しはできないが、前の処分が違法となるか、前の処分と矛盾するような遊園地の廃止は、信頼保護の原則に反し不当・違法である。 遊園地は、都市計画法により開発区域内に設置される公園の替わりとして住民に供用されることから、近隣住民は、遊園地の存続が担保され長期に遊園地が利用できることの期待権を有している。この権利と近隣住民に非がないことへの配慮のないままに遊園地の廃止を決定したことは、配慮義務に違反し裁量権の濫用として、不当である 都市公園の廃止は、都市公園法十六条でみだりに廃止してはならないとされていることで存続が担保されている。開発許可の同意書では、遊園地を都市公園に準拠する公園としているが、遊園地と都市公園は、都市計画法により開発区域内に設置される公園の替わりであることにつき、その存続の必要性には差がないので、遊園地の廃止は都市公園に準拠し、廃止は都市公園法16条が準用され、遊園地の廃止は都市公園法16条に反し違法である。 市が、遊園地が開発許可の条件であったことを全く検討せずに、遊園地の廃止を決裁したことは、検討すべきことを検討しない不作為であることから裁量権の濫用として違法である 遊