次の通り、地方自治法(以下「自治法」と言う。)第244条の4及び行政不服審査法(以下「審査法」と言う。)の定める処により審査請求するので、貴庁に於かれては遺漏の無い様取り扱われたい。 1. 請求人氏名等 頭書のとおり。 2. 審査請求に係る処分の内容 処分庁公園緑地課長が青木島遊園地(長野市青木島町大塚1309-1、以下「本件遊園地」と言う。)を令和5年4月30日廃止するとした令和5年3月29日付け決定処分(以下「本件廃止処分」と言う。) 3. 審査請求に係る処分があったことを知った年月日 令和5年4月5日 (電話口頭での聴き取り調査による) 4. 審査請求の趣旨 審査法第25条第2項の規定により、本件廃止処分に所要の工事等の、処分の効力・執行及び手続の続行についてそれら全てを直ちに停止する措置を求める。 「本件廃止処分を取り消す。」との裁決を求める。 5. 審査請求の理由 本件遊園地は開発許可上の要件となる開発区域内緑地の代替施設であって、都市計画法上存続が必要とされていることから、当該開発区域内に居住する住民は素より、周辺住民には遊園地の存続を期待する法的地位があり、本件廃止処分はこの法的地位を奪う違法な処分である。 また本件遊園地廃止はその近隣居住の一部住民からの「うるさい」との苦情に端を発したものであるが、青木島地区住民を始めとした市民にとって憩い、子育て及び緑地の確保の上で欠くべからざる公の施設であるにも関わらず、処分庁は裁量権を逸脱した軽々な判断により、違憲または違法な廃止処分を決定した。 本件廃止処分に先立ち、本件遊園地敷地上の遊具等工作物及び植栽等を除去する原形復旧工事執行が予定されているが、これらは開発区域内及び本件遊園地近隣住民に不可逆的で回復不能な損失を与えるものであり、緊急に対処する必要がある。 そこで本件廃止処分に係る工事等の事務執行を停止する措置が執られた上で、本件廃止処分を取り消す裁決が必要である。 (1) 本件遊園地廃止の違憲性 ア 日本国憲法(以下「憲法」という。)第13条(公共の福祉) 本件遊園地廃止は、本件遊園地近隣の一部住民の意見を偏重した結果で、公共の福祉に反した決定であり、他の住民が本件遊園地利用によって当然に得られるべき福祉を損ねることは、幸福追求権を保障した憲法第13条に反する。 イ 憲法第14条(法の下の平等)違反 本件廃止処分は、本件遊園地近隣の一部住民の意見を偏重した結果であり、個人の平等を保障した憲法第14条に反する。 仮に違憲性がないとしても、係る本件遊園地廃止は市の裁量権の逸脱または濫用であるから、違法不当である。 処分庁は、青木島地区区長会において「現在は利用者が少なく遊園地の廃止もやむを得ないと判断されたこと」を本件遊園地廃止の理由の一つとしている。各区長・区長会は各区の存立意義の範囲内で各区を代表するとは言うものの、憲法第14条の定める法の下の平等を超える権限・権能が与えられていると解釈すべきではないのは自明であろう。本件廃止処分は相対的には各区住民の意見を軽んじた決定であって、これは法の下の平等原則を定めた憲法第14条に反している。 (2) 本件遊園地廃止の違法性 ア 都市計画法違反 第1条(目的)、第2条(都市計画の基本理念)、第3条(都市計画の基本理念)及び第33条第1項第2号(開発許可の基準)違反 公園、緑地、広場等の空地については、都市計画法第33条第1項第2号に「環境の保全上、災害の防止上、通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置」されることが開発許可上の要件となっており、市行政もこれを開発区域における都市計画上の基準として尊重し、緑地の適当な配置が保持されるように運用するべきであることは自明である。 本件開発区域については、本来であれば法定の緑地が設置されるべきであるところ、本件遊園地という既に相当規模の公園等が隣接して存することから、特に緑地を設置する必要がないものとして開発を許可された事情がある。この事実に鑑みれば、本件遊園地は、環境保全上また災害防止上等の理由により、都市計画法上存続が必要とされているのは明らかであり、本件遊園地を廃止するために行う原形復旧工事等は都市計画法に違反する工事である。 請願者は本件遊園地南に隣接する開発区域(令和元年9月30日長野市指令R元建指第1-A22号、以下「本件開発区域」と言う。)内の住宅に居住する者である。この地に住むに際しては、「健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動」が都市計画法第2条により保障され、本件遊園地の存続を期待する法的地位がある。本件廃止処分はこの法的地位を奪う違法な処分である。 上述のように本件廃止処分は、都市計画法第33条第1項第2号の趣旨に背いており、これは第1条でその目的とする「都市の健全な発展と秩序ある整備」及び「国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進」の実現を妨げ、第3条で長野市に課された「都市の整備、開発その他都市計画の適切な遂行」に係る努力義務違反である。 イ 自治法 第10条第2項(平等原則)違反 本件廃止処分は、本件遊園地近隣の一部住民の意見を偏重した結果で、自治法第10条第2項「住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利」を有すると定めた平等原則に違反する。 本件遊園地は、住民監査請求に対し監査委員が認めたように、自治法第244条の2が規定する公の施設である。公園台帳に登載されおり、市の予算が支出されて管理運営されていることから、法律の定めるところにより、市の役務を提供しているのは明白である。公園緑地課長は本件遊園地では「かなりの音が発生する状況」であったことを本件廃止処分の理由の一つとしているが、それは受忍限度内であると市の顧問弁護士が見解を示しており、本件遊園地利用者の利用状況には市内の他の公園・遊園地の利用状況と比べても特段の責められるべき点がないものと思料される。それにも関わらず市が本件遊園地を廃止するのは、自治法第10条第2項で住民に保障された「法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利」を侵害するものであり、同条同項に違反するものである。 ウ 長野市緑を豊かにする条例(以下「緑化条例」という)第3条(市長の責務)違反 緑化条例第3条は、「市長は、この条例の目的を達成するため、緑を豊かにする計画を策定し、これを実施しなければならない。」と規定する。 長野市緑を豊かにする計画平成31年4月改定版第三編地域別計画で、本件遊園地の存する川中島・更北地域における緑化方針図中に「都市公園を補完する遊園地の機能の維持を図る」との方針が定められている。それにも関わらず、本件廃止処分を実施することは、緑化条例第3条に定められた市長の責務に違反している。 (3) その他 上述のように、本件廃止処分は違憲または違法な決定である。そもそも、遊園地という公共性の高い施設の廃止による影響を処分庁は真剣に考慮を尽くした形跡がみられない(考慮不尽)。