https://www.watney.co.jp/course?wix-vod-video-id=c3d34d68d9bf49c0a2bbab990c956145&wix-vod-comp-id=comp-jfnqv23o# 経営戦略論/基礎科目 大阪大学 経済学研究科・経済学部　中川 功一准教授

1. 第9回
垂直統合方針の決定(1/2)
経営戦略論
大阪大学大学院経済学研究科
中川功一
Allegro_assai@hotmail.com

3. 売上の大きさの順番を考えてください。
アップル
サムスン
鴻海
ソニー
18兆円
37兆円
17兆円
8兆円
世界の電機メーカー売上高（2014年）

4. HonHai （鴻海）

5. 鴻海のビジネスモデル“EMS”：生産に絞り込む
鴻海：生産（＋調達、一部開発）
アップル
企画・開発
アップル
販売
企業B
企画・開発
企業B
販売
企業C
企画・開発
企業C
販売
鴻海のビジネスモデル
一般的な製造業企業
のビジネスモデル
企業A
企画・開発
↓
生産
調達
↓
販売

6. 出所：石原昇（2010）

7. 鴻海をはじめとした台湾企業は、
なぜ強いのか？
すべてを一社でやりきろうとするビジネスよりも、
鴻海やアップルのように特定領域に絞り込むほう
が有利に立てるのは、なぜなのだろうか？

8. 現代は「世界のエクセレンスを繋ぎ合わせる」時代
ホンハイのような垂直絞込み型企業が増える背景：グローバル競争の過熱
競争の激化とスピードアップ
様々なビジネスモデルの登場
企業固有の強みが世界的に分散
近年の産業競争事情を踏まえれば、企業は活動を「絞り込む」ことが大切になる
垂直統合
「自社で全部やる」
垂直絞り込み
「強みを繋ぎ合わせる」
事業展開のスピード 遅い 速い
事業展開のコスト≒リスク 大きい 小さい
競争力の源泉 自社のみ パートナー企業各社
連携体制 強い 弱い
利害対立表面化しやすい
利益の帰属 自社のみ パートナーと配分
学習 全領域で学習できる 学習機会は限定される

9. まとめ(1/3)
• かつて、企業は開発・生産・販売等すべて
の活動を自社で行っていたが、現代はそれ
らを企業間で分業する時代に。
• 一芸に秀でた企業同士が、お互いの強み
を繋ぎ合わせるほうが、競争力を得られる
時代となってきた。
• こうした「企業の活動範囲」を考えるフレー
ムワークが、垂直統合方針の決定である。

11. 垂直統合度の基本概念

12. 垂直統合とは、自社が担当するバリューチェーンの幅に関する概念である。同
じ業界でビジネスをするにしても、様々な垂直統合の形がある。
開発 生産 販売
垂直統合
自社で作って売る：シャープ
生産に絞る：鴻海（ホンハイ）
垂直絞込み
開発
生産
販売 開発・販売に絞る：アップル
基本概念の整理①
垂直統合と、垂直絞込み

13. 基本概念②川下統合、川上統合
開発 生産
生産 販売
川上統合：源流に近い（顧客から遠い）ほうに事
業の幅を広げる。部品や材料の内製化や、製品
開発への業務拡大など。
川下統合：顧客に近いほうに統合する。顧客と
の接点を作り、ニーズ情報を集めたり、ブランド
構築したりできる。

14. 垂直統合の基本概念③
事業範囲の変更方法
垂直統合（Vertical integration）：事業活動を縦に広げる方法として
は、既存の企業を買収する方法と、新規に自社で開始する方法が
ある。
垂直絞込み（Vertical disintegration, outsourcing）：事業活動を縦
方向に狭める。部門売却や、部門閉鎖による。
買収 自社開発
参入コスト 既に資源が揃ってい
るので安い
0から作らなければなら
ないので、高い
資源・環境 既存の資源や、取
引先が使える。
すべて0から作る。不要
資源やしがらみがない
統合リスク 悪い組織文化が
あったり、組織融合
が困難となる可能性
既存組織との連携・調
整を採りやすい

15. まとめ(2/3)
• バリューチェーンにおける企業の活動内容を
広げることを垂直統合といい、狭めることを垂
直絞り込みという。
• バリューチェーンの上流に拡張（縮小）するこ
とを川上統合（絞り込み）、下流に拡張（縮小
）することを川下統合（絞り込み）という。
• 活動範囲の拡張は、0から作るか、買収によ
る。一般に買収が活用される時代。絞り込む
場合は、売却か閉鎖。

17. 垂直絞り込みのメリット、
垂直統合のメリット

18. 垂直絞り込みか、垂直統合か
＝市場メカニズムか、組織のメカニズムか
市場メカニズム
取引企業を競争させ、ベストな価
格・性能を提案した企業と取引する。
メリット
●競争圧力による取引先単独での
コスト・品質改善
●取引先の選択肢が増える
組織メカニズム
経営理念・目標・戦略・文化などを
共有し、部門間で協力する。
メリット
●協力によるコスト・品質改善
●目的を共有するため衝突が起こり
にくい
企業
A
企業
B
企業
C
自社
競争
企業
B
自社
協力

19. 演習
1)アップルとサムスンは、スマートフォン生産を統合
しているかアウトソースしているかを調べて下さい。
2)それぞれ、なぜそのような垂直統合方針を採用し
ているのか、調べた情報をもとに議論して下さい。

20. アップル
生産をアウトソース
サムスン
自社生産
→設計、技術開発、マーケティ
ングに資源を集中するため。
→自社技術を囲い込み、内部
で部品部門や技術部門と連携
しながら生産するため
スマートフォン業界の2大プレーヤーでも、
垂直統合方針は真逆
→正解はひとつではない！

21. まとめに代えて（3/3）
一方、日本企業はどうか？
• ソニー・エリクソンやシャープなど、スマート
フォン事業を手掛ける国内企業も、それぞ
れの事情に合わせた垂直統合方針をとる。
• 苦戦の原因のひとつは、この垂直統合方針
にもあるのではないか…！？
次回に続く！