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価値再発見のためのオペレーションマネジメント
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Agenda
はじめに
1.保守作業の現状と今後のあり⽅についての事例研究 ……書籍:P.88~98
2.運用業務における現状と今後の課題 ……書籍:P.97~101
3.オペレーション・マネジメントのパラダイム転換 ……書籍:P.102~105
まとめ
Discussion
Purpose Only1
河田 哲(かわたてつ)
経歴:神⼾大学 経営学部卒(1997)
→NTT→フューチャーアーキテクト→現在
職業:ITマネジメント領域&システム基盤技術分野
を専門とするITコンサルタント
プロフィールプロフィール
- 3. Copyright (c) Brains Technology, Inc. Japan
61.4%
44.1%
38.6%
55.9%
開発費 保守費
はじめに
保守・運用段階には…
多額のIT投資がなされている
極論をすれば、新規開発=戦略的な投資で「正義」、
保守運用=コスト削減対象であり「悪」という偏った議論が多いのでは?
開発時にIT投資の評価をしている会社は数多く・・・
その中に、保守・運用段階のIT投資にきちんと向き合っている会社は?
しかし、これまでのIT投資では・・・
パッケージ開発システム
自社開発システム
(出所:JUAS 2012)
【新規開発費と保守費の5年TCO累計】
新規システム開発時の5年間TCOの内、
約5割を保守費が占める
新規開発費と保守費の⽐率は
4:6~3:7 (出所:JUAS 2012,経産省 2007 )
Discussion
Purpose Only2
- 9. Copyright (c) Brains Technology, Inc. Japan
1.保守作業の現状と
今後のあり⽅についての事例研究
保守作業は「必要悪」なのか?
業務改⾰と保守の関係
保守活動の価値
Discussion
Purpose Only8
- 10. Copyright (c) Brains Technology, Inc. Japan
1-1.保守作業は「必要悪」なのか?
情報システムの稼働から廃棄に至るまでの期間は10年以上の⻑期にわたることもあるが、
保守はしばしば必要悪と⾒なされてきた(Burch& Grupe, 1993)
単調である
後ろ向きである
費用のかかる
経営層の関心も決して高いとは言えず、
既存研究の多くは情報システムの開発や導入段階が対象
事後的に、かつ積極的に検証されることが少なく、
結果として「場当たり的」、「ツギハギ的」に実施
Discussion
Purpose Only9
【保守作業への認識】 【保守作業の実態】
【課題認識】
保守の「役割」とは?
保守の「価値」とは?
保守の活動は…
一律に費用なのか?
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1-2.業務改⾰と保守の関係
業務改⾰(BPR:業務プロセスの再設計)と情報システムの保守の間には・・・
「①環境変化への適応手段(受動的保守)」と、
「②業務の改⾰・改善を支援・促進する手段(能動的保守)」があり、相互に影響を及ぼし合う。
情報システムの
保守
業務(改⾰)
①環境変化への業務の適応手段
(受動的保守)
(能動的保守)
②業務の改⾰・改善を支援・促進する手段
再帰的関係
(recursive relationship)
【図表5-1 情報システムとBPRとの再帰的関係に基づく保守の役割(P.89)】より
業務改⾰との関連性の中で生じる情報システムの保守は、
「稼働後にシステムに更なる付加価値を⽣み出す重要な役割」を担っている。
Discussion
Purpose Only10
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1-3.保守活動の価値
11
Discussion
Purpose Only11
事例調査(※)の結果より…
作業工数に着目すると、新たな機能の追加や拡張を担う「拡張保守」作業が全体の8割を占
め、
拡張保守には、新サービス導入、新業務対応等のための「能動的保守」も含まれている。
更に、法制度対応、緊急事態対応が、業務への即応ニーズであることを考えると…
作業内容 分類内容 ⽐率
拡張保守 新たな機能の『追加』や
『拡張』
80.8%
適応保守 既存システムおよび既存機
能への『調整』や『改良』
8.2%
ユーザ対応 ユーザからの単発的な問合
せや要求への対応
11.0%
性質 作業例
受動的保守
(66.2%)
業務効率化、法制度変更対応、緊急
事態対応、等
能動的保守
(14.6%)
新サービス導入、新業務対応、等
保守活動では、「経営の業務改革や環境変化に対応するための作業」が大きな
割合を占めており、保守作業を必要悪と軽視することは、結果として
「企業の効率性,⽣産性,競争⼒に重大な影響を及ぼす可能性」がある。
(※)調査の対象、実施⽅法、調査結果等の詳細については、書籍P.88~97をご参照願います。
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2.運用業務における現状と今後の課題
システム運用環境の変化
運用業務の可視化の必要性
ソフトウェア資産管理の役割
Discussion
Purpose Only12
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2-1.システム運用環境の変化
同種共通のシステム環境
クローズドなネットワーク
知識不要
ルーチンワーク(定形業務)
リアクティブ(トラブル後対応)
稼働時品質の維持
運用費
開発後に引継ぎ
受動的な追従対応
異機種混在のシステム環境
オープンなネットワーク
高度な技術知識
ケースワーク(非定形業務)
プロアクティブ(トラブル未然予防)
継続的な品質向上
サービスコスト
設計時から参画
能動的な変化対応
従来 今後
近年の情報システムのオープン化の流れの中で、運用環境は大きく変化
運用環境の変化に伴い、システム運用の目的も
従来の「設備の安定稼働」から、「ITサービスのマネジメント」へシフトしている。
仮想リソース
の制御
仮想リソース
の制御
DevOps
広範囲の
標準化
広範囲の
標準化
障害影響の
可視化
障害影響の
可視化
Discussion
Purpose Only13
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2-2.運用業務の可視化の必要性
Discussion
Purpose Only14
JUASの調査レポート(※)より…
年間IT予算の約4割が情報システムの運用コストながら、
運用業務に対して「妥当に評価されている」ケースは3割に満たず、
約7割の企業で運用プロセスが不明確、組織的な仕組みが不⼗分と認識
更に、重要システムのサービス停止の約4割は、運用の管理徹底で未然防止が可能
(出所:JUASソフトウェアメトリックス調査2010,2011)
運用コスト
39.9%
安易な運用コストの削減は企業価値を損なうリスクがあるが、実情は
経営層に対して必ずしも⼗分な情報が届いておらず、「運用業務の可視化」は急務。
30%
70%
⼗分
組織的な
仕組みが不⼗分
年間IT予算に占める
運用コスト
27%
30%
33%
10%
妥当に評価
評価
されていない
評価が
分からない
役割と責任に⾒合った
運用業務への評価
運用業務への
組織的な取組み
(※)調査の対象、実施⽅法、調査結果等の詳細については、出所文献をご参照願います。
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2-3.ソフトウェア資産管理の役割
Discussion
Purpose Only15
【ソフトウェア資産管理とライセンス管理の違い】 (出所: JIPDEC SAMユーザーガイド)
情報システムは、稼働後に初めて業務に役⽴つ(価値を生み出す)ことを考えれば、
ソフトウェアの資産(IT資産)を価値ある経営資産として評価・管理すべきでは?
近年、法規制の変化からソフトウェア資産管理が注目を集めている。
概念上は「IT全般に対する重要なマネジメントの一つ」と定義されているが、
現実には、多くの企業で「ソフトウェア資産管理≒ライセンス管理」
(単に著作権法、及び使用許諾条件の順守を目的とするもの)と考えていることが多い。
また、財務会計の視点でもソフトウェア資産は「取得原価の資産計上、償却処理の扱い」に留まり、
「経営的な観点からの価値の議論」はなされていない。
ITサービスマネジメント全体の有効な支援
ビジネスリスク管理の促進
ITサービス及びIT資産に関するコスト管理の促進
ITを有効に活用することによる競争上の優位を得ること
ソフトウエア資産管理の目的
(ISO/IEC19770-1)
ソフトウェア資産管理(SAM) ライセンス管理(LAM)
目的 ・ライセンスコンプライアンス
・情報セキュリティの維持、向上
・IT投資の最適化
・主にライセンスコンプライアンス
対象資産 ハードウェア・利用ソフトウェア・保有ライセンス
(有償・無償・開発/PKGの区別なし)
保有ライセンス及び(ハードウェアを根拠としない有償の)
利用ソフトウェア
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3.オペレーション・マネジメントの
パラダイム転換
オペレーション・マネジメントの役割の変化
オペレーション・マネジメントのPDCA
IT投資とオペレーション・マネジメント
Discussion
Purpose Only16
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3-1.オペレーションマネジメントの役割の変化
環境変化に伴い、オペレーション・マネジメントの役割は大きく変化
知識不要で、定型的・反復的なマ
ニュアル作業
受動的な追従対応
リアクティブな対応(トラブル事後処理)
稼働時品質の維持
広範な技術知識に基づく、非定型で
高度なオペレーション作業
能動的な変化対応
プロアクティブな対応(未然予防)
継続的な品質管理
保
守
運
用
資
産
管
理
是正保守、適応保守
現⾏情報システムの不具合を修正す
る後ろ向きな作業
コスト削減の対象(未実施が望ましい)
拡張保守、適応保守、ユーザー対応
経営の業務改⾰や環境変化へ対応す
る積極的な作業
効率化・生産性向上の対象
「受動的保守」と「積極的保守」
の再帰的関係へ着目
取得原価に基づく減価償却の管理
財務会計的な費用の視点
継続利用前提のバージョンアップ
知財としての適正な評価・活用
管理会計的な投資の視点
継続/廃却の採算性評価(継続の経済性)
「初期投資回収型」から
「変動費型IT投資モデル」へ
「設備の安定稼働」から
「サービスのマネジメント」へ
「情報システムの維持・運⾏」から「IT資産価値の維持・増大」へ
【従来】 【今後】
Discussion
Purpose Only17
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3-2.オペレーション・マネジメントのPDCA
稼働中の情報システムは、企業の資産
保守・運用は(将来の収益を含め)企業が業務を遂⾏する上で,継続的な貢献と品質の向上が期待
Discussion
Purpose Only18
【図表5-8 保守プロセスおよび運用プロセスとPDCAサイクル(P.103)】より
保守および運用に関する評価基準を確⽴計画フェーズ
実⾏フェーズ
評価フェーズ
改善フェーズ 更なる目的の達成に向け業務プロセスの改⾰を支援・促進する能動的保守の実施
適切な評価基準に沿った実施結果のモニタリング
環境変化への適応を中心に受動的保守を実施
運用・保守プロセスを横断してPDCAサイクルを効果的に回すオペレーション・マネジメントに
より、情報システムに高い付加価値を創造していくべきでは?
IT のIT資産としての
「価値」向上
- 20. Copyright (c) Brains Technology, Inc. Japan
保守・運用への活動を一律に費用(コスト)と位置付け、新規開発のみを戦略的なIT投資と捉え
るような従来の考え⽅は、⾒直されるべき。
情報システムの価値は設計段階だけで決まるものではなく、保守・運用を軽視することは不適
切。
従来
今後
新規開発≒戦略的なIT投資
保守・運用のIT投資を減らし、新規開発を増やすべき
新規開発も保守・運用も平等
新たな企業価値(資産)を生み出すモノ:新規開発
稼働資産の価値を向上させるモノ:保守・運用
新規開発固有のリスクを考えれば、現⾏資産の価値増大を考える⽅が
(費用対)効果が大きいケースもあるはず
19
3-3.IT投資とオペレーション・マネジメント
稼働から廃棄に至るシステムライフサイクルの中で変化に対して適切に改良・機能拡張し、
かつITサービスとして適切に運用管理することで、
IT投資効果の最大化(継続的なIT資産価値の向上)を目指すべきでは?
Discussion
Purpose Only
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保守活動では、「経営の業務改革や環境変化に対応するための作業」が大きな
割合を占めており、保守作業を必要悪と軽視することは、結果として
「企業の効率性,⽣産性,競争⼒に重大な影響を及ぼす可能性」がある。
システム運用の目的が「ITサービスのマネジメント」へ変化している中、
安易なコスト削減は企業価値を毀損するリスクがあるが、実情は経営層には⼗分には届いて
おらず、「運用業務の可視化」は急務。
保守・運用の役割は、従来の「情報システムの維持・運⾏」から、
「IT資産価値の維持・増大」へシフトしており、
価値再発⾒のためにオペレーション・マネジメントに取り組む意義は大きい。
まとめ
Discussion
Purpose Only20