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付章
巻末資料
図解入門
How-nual
マーケティング・リサーチを学ぶ際には、過去の企画書や
報告書に目を通すことが一番の勉強になります。そこで、参
考資料として、ある製品テストの「調査企画書」と「調査票」
「集計表」「調査報告書」の例を紹介します。これは、ある食
品メーカーが、新製品を発売する際、3つの新製品アイディ
アの中からどれを発売すればもっとも売上がよいかについて
意思決定するために企画された調査を想定したものです。
また、有効なリサーチを行うためにはマーケティング活動
そのものへの理解も重要ですので、マーケティング活動の大
きな流れの説明や、マーケティング活動を理解するための参
考文献の紹介も行います。
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ183
付
章
巻
末
資
料
B.調査デザイン
・テスト方法: CLT/シークエンシャル・モナディック評価法
・対象者: 一般主婦 20∼59才(39才以下と40才以上の2区分)
最近6カ月パスタソースの調理・食用者
N=200 (20∼30代、40∼50代 各N=100)
ストリート・インターセプト法による対象者のリクルート
・テスト製品: テスト・コンセプト P: ×××
Q: ×××
R: ×××
・アクション・スタンダード: 購入意向率(TOP2BOX)指標でノルム値と
同等の評価を得た製品コンセプトを開発の次
のステップに進める。
・調査項目:
<コンセプト提示>
*提示順序はローテーション
各コンセプト評価:
・全体的好意度(5点評価尺度)
・その理由(OA:好きな点、嫌いな点)
・購入意向(5点評価尺度)
・購入頻度
・購入個数
・新規性
・価格価値
・魅力的なコンセプト要素(コンセプト要素の選択肢提示)
A-1 調査企画書例
185184
A-1
調査企画書例調査企画書例
食品会社が、新製品(パスタソース)を発売する際、3つの新製品アイディアP、
Q、Rの中からどれを発売すればよいか調査した時の調査企画書です
パスタソースの魅力的コンセプト発見のためのコンセプト・テスト
企画書
A.調査の背景と目的
食品メーカーX社のバスターソースのブランドAは老舗ブランドである。し
かし、最近は競合やPBブランドの激しい攻勢もあり、売上、シェアとも低
下傾向である。そこで、ブランド・マネジャーは、ブランドAのライン拡張
として、新しいタイプの新製品の発売を計画した。定性調査の結果から、素
材にこだわったナチュラルなソースの製品コンセプトPと、高品質のチーズ
をベースにした製品コンセプトQ、レストランの味が簡単に家庭で味わえる
製品コンセプトRの3案に絞った。さらに今回、消費者調査によって、製品
化する1案を選びたい。併せて、最適な価格やコア・ターゲット層の特定、
新規ユーザーの競合からの獲得ソース、製品コンセプトの既存のパスタソー
ス市場におけるポジショニング、パスタソースの購買決定要因、心理的購買
バリアの特定、初年度の販売量の予測、最適化のためのコンセプト改善点の
発見を行いたい。
調査の目的は、消費者受容性の高い製品コンセプトを特定することである。
同時に、①受容性を上げるための改善点の抽出や、②最適価格の特定、③
ターゲットの特定、④ボリューム・ソースの発見、⑤ポジショニング上のベ
ネフィットの特定、⑥販売量の推定、⑦購買決定要因(キー・ドライバー)
の探索と心理的購買バリアの発見も行う。
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ184
付
章
巻
末
資
料
・パスタソースの購入・食用実態
−過去1カ月購入ブランド
−最頻ブランド
−調理頻度
−味のタイプ
・対象者属性
−年齢
−職業
−家族人数
−子供の人数と年齢
・テストエリア:首都圏35km圏/テスト会場TBA
C.分析デザイン*
・購入意向率の有意差検定及びノルム値との比較
・コンセプトの改善点の抽出分析
1.製品評価におけるキー・ドライバー分析とコンセプト評価の知覚
マップの作成
2.コンセプトの改善点の特定
D.投資: ×××万円 (消費税を除く)
お見積もり詳細
E.スケジュール:  企画 ××月××日
実査 ××月××日∼××月××日
集計納品 ××月××日
報告書納品 ××月××日
A-1 調査企画書例
187
*分析デザイン 応用課題の分析デザインは省略。
186
製品属性の評価(5点評価尺度):コンセプトから期待される製品の味覚特徴評価(案)
−おいしそう
−コクがある
−味わい深い
−香りがよい
−適度な辛さ
−適度な甘さ
−クリーミーな味
−まろやかな味
−適度な酸味
製品イメージ評価(5点評価尺度):コンセプトから期待される製品イメージ評価(案)
−高級感がある
−品質がよさそう
−大人向き
−子供向き
−若者向き
−女性向き
−男性向き
−夕食によい
−昼食によい
−体によい
−自然な
−元気が出そう
−リラックスできそう
・パスタ食用実態
−食用頻度
−外食でのパスタ食用頻度
−最近1年間に外食で食べたパスタの種類
A-1 調査企画書例
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ186
付
章
巻
末
資
料
A-2 調査票例
189188
A-2
調査票例調査票例
A-1で紹介した調査企画書に基づき、リサーチを行うために作成した調査票(一
部抜粋)です。調査企画書で示した各テスト項目と付き合わせてみてください。
食べ物についてのアンケート
20XX年X月実施
調査開始時間 時 分
調査終了時間 時 分
スクリーニング (スクリーニングシート呈示)
SC1. あなたご自身を含めて、お宅のご家族で、以下の様なお仕事をしている方はいらっしゃいますか。(MA)
1.ない 2.ある 調査中止 
SC3. 年齢をお知らせください。
SC2. あなたは、最近3ヶ月くらいの間に食べ物についてのアンケートにお答えになったことがございますか?
SC4. あなたのお仕事は次のうち、どれにあてはまりますか。
   複数ある場合は、最も比重の高いものをお知らせください。(SA)
1. テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスコミ関係
2. 広告代理店、マーケティング会社、市場調査会社
3. 清涼飲料関係の製造会社、卸/問屋、販売店
4. アルコール飲料関係の製造会社、卸/問屋、販売店
5. 食品関係の製造会社、卸/問屋、販売店
6. 医薬品関係の製造会社、卸/問屋、販売店
7. レストラン、カフェ、居酒屋などの飲食業関係
8. デパート、スーパー、コンビニなどの流通関係
9. ひとつもあてはまらない
1. 学生
2. 会社員・公務員・団体職員
3. 自営・自由業
4. 専業主婦
5. パート・アルバイト
6. 無職
7. その他(                    ) 
会場 調査日 1月 日
面接員氏名
Ro 1 
本日はお忙しいところ、私どもの調査にご協力いただき、まことにありがとうございます。
歳
実年齢 年齢
0∼29歳 30∼39歳 40∼49歳 50∼59歳
1 2 3 4
調査中止
ID
<製品説明文Pを呈示>
PQ1.この製品の好き嫌いの程度についてお伺いします。あなたの最もお気持ちに近いものを1つお選び下さい。
(○印は1つ)
PQ2. あなたが、この製品について感じた好きな点と嫌いな点を、
どのようなことでもけっこうですからお教え下さい。(自由回答)
PQ3. あなたは、この製品が日ごろ購入されている価格で、普段行くスーパーで売られているとしたら、
どの程度買いたいと思いますか。最もお気持ちに近いものを1つお選び下さい。
(○印は1つ)
PQ4. では、あなたが初めてこの製品をお買いになるとき、何個くらいお買いになると思いますか。(○印は1つ)
1.1個
2.2個
3.3個
4.4個以上
5.買わない
P
5 4 3 2 1
好きな点
PQ5 では、この製品が普段行くスーパーで売られているとしたら、あなたはどの位の頻度でこの製品を
お買いになると思いますか。(○印は1つ)
1.週に1回以上 5.4∼6ヶ月に1回位
2.月に2∼3回位 6.年に1∼2回位
3.月に1回位 7.それ以下
4.2∼3ヶ月に1回位 8.買わない
これはパスタソース製品【P】の説明文です。
この説明文をよくお読みになって、以下の内容についてお答え下さい。
あまり
好きではない
全く
好きではない
非常に
好き
やや
好き
どちらとも
いえない
5 4 3 2 1
あまり
買いたくない
全く
買いたくない
非常に
買いたい
やや
買いたい
どちらとも
いえない
嫌いな点
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ188
190
A-2 調査票例
付
章
巻
末
資
料
A-2 調査票例
191
<製品説明文Pを呈示>
PQ6-2. では、その中で、あなたが最も魅力を感じた部分を1つだけお選び下さい。(番号で記入)
PQ6 あなたは、こちらの説明文のどの部分に魅力を感じられましたか。あてはまるものをいくつでも
お選び下さい。(○印はいくつでも)
P
1. 5.
2. 6.
3. 7.
4.
PQ7 こちらの説明文について、あなたが分かりにくいと感じた部分がありましたか。
あてはまるものをいくつでもお選びください。(○印はいくつでも)
1. 5.
2. 6.
3. 7.
4.
PQ7-2. では、その中で、あなたが最も分かりにくいと感じた部分を1つだけお選び下さい。(番号で記入)
PQ8 あなたは、商品説明からこの製品についてどのような味覚特徴を持った製品だと思いましたか。
次にあげた点について、それぞれ最もお気持ちに近いものを1つずつお選び下さい。
(それぞれ○印は1つ)
1) おいしそう
2) コクがある
3) さわやかな
4) 色がよい
5) あきのこない
6) じっくり煮込まれた
7) パスタソースらしい
8) マイルドな
9) クリーミーな
10) 甘そうな
11) 酸味がきいている
12) 辛そうな
13) 香りがよい感じ
14) さっぱりしている
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
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5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
非常に
そう思う
やや
そう思う
どちらとも
いえない
あまり
そう思わない
全く
そう思わない
P
PQ9. では、あなたは、商品説明からこの製品についてどのようなイメージを持たれましたか。
次にあげた点について、それぞれ最もお気持ちに近いものを1つずつお選び下さい。
(それぞれ○印は1つ)
F1 あなたは普段、ご自宅や外食などでどの位の頻度でパスタをお召し上がりになりますか。
(○印は1つ)
1) 個性的な
2) 他のパスタソースとは違った
3) 本格的な
4) 新鮮な
5) こだわりのある
6) しゃれた
7) 品質がよさそうな
8) メーカーが信頼できる
9) 高級な
10) 専門店風な
11) ヘルシーな
12) 大人向き
13) 子供向き
14) 家族みんなに向いている
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
5 4 3 2 1
非常に
そう思う
やや
そう思う
どちらとも
いえない
あまり
そう思わない
全く
そう思わない
続いて、普段のパスタの食用実態について、お伺い致します。
1.週に1回以上 5.4∼6ヶ月に1回位
2.月に2∼3回位 6.年に1∼2回位
3.月に1回位 7.それ以下
4.2∼3ヶ月に1回位
F2. では、あなたは普段、外食でどの位の頻度でパスタをお召し上がりになりますか。(○印は1つ)
1.週に1回以上 5.4∼6ヶ月に1回位
2.月に2∼3回位 6.年に1∼2回位
3.月に1回位 7.それ以下
4.2∼3ヶ月に1回位 8.全く食べない
F3. あなたは最近1年間に外食でお召し上がりになられたパスタの種類を
次の中からいくつでもお選び下さい。
1. 5.
2. 6.
3. 7.
4. 8.
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ190
付
章
巻
末
資
料
193
A-3
集計表例集計表例
A-3で紹介した調査票を用いて収集したデータをまとめた集計表(一部抜粋)で
す。これを基に分析を行い、調査の結論を考えます。
192
A-2 調査票例
F4. 次の製品の中から、あなたが今までにご自分で購入された銘柄を、いくつでもお選び下さい。
(○印はタテにいくつでも)
F5. ではその中から、最近3 ヶ月間にご自分で購入された銘柄を、いくつでもお選び下さい。
(○印はタテにいくつでも)
F6. では、その中で、あなたが最も多く購入される銘柄を1つだけお選び下さい。
(○印はタテに1つ)
続いて、パスタ製品の購入実態について、お伺い致します。
F7. ところで、あなたは普段、どの位の頻度でパスタを購入されますか。(○印は1つ)
1.週に1回以上 5.4∼6ヶ月に1回位
2.月に2∼3回位 6.年に1∼2回位
3.月に1回位 7.それ以下
4.2∼3ヶ月に1回位
<写真カード呈示>
( F4で○がついた銘柄に関して)
***長い間、ご協力いただきましてありがとうございました。***
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
14.
15.
16.
17.
18.
19.
20.
1
2
3
4
5
6
7
8
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10
11
12
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15
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19
20
⇒
⇒
⇒
⇒
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⇒
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⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
F4.
購入経験
銘柄
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
F5.
最も多い
購入銘柄
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
F6.
最近3ヶ月
購入銘柄
この中にはひとつもない
年代別
TOTAL 20-39歳 40-59歳
(A)    (B)   
PQ1 コンセプト製品の全体好意度(SA)
[ Total Sample ] 200 100 100
5 非常に好き(5) 20 9 11
4 やや好き(4) 85 39 46
3 どちらともいえない(3) 57 34 b 23
2 あまり好きではない(2) 32 15 17
1 全く好きではない(1) 6 3 3
<Top2 Boxes> 105 48 57
<Bottom2 Boxes> 38 18 20
<平均値> 3.40 3.36 3.45
<標準偏差> 0.97 0.95 1.00
年代別
TOTAL 20-39歳 40-59歳
(A)    (B)   
PQ3 コンセプト製品の購入意向(SA)
[ Total Sample ] 200 100 100
5 非常に買いたい(5) 23 12 11
4 やや買いたい(4) 86 34 52 A
3 どちらともいえない(3) 46 32 B 14
2 あまり買いたくない(2) 35 17 18
1 全く買いたくない(1) 10 5 5
<Top2 Boxes> 109 46 63 A
<Bottom2 Boxes> 45 22 23
<平均値> 3.38 3.31 3.46
<標準偏差> 1.06 1.05 1.07
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ192
194
A-3 集計表例
付
章
巻
末
資
料
195
A-4
調査報告書例調査報告書例
A-1で紹介した調査企画書に基づき、A-3のデータを分析した結果をまとめた調
査報告書です。応用課題の分析結果は省略しています。
パスタソースの魅力的コンセプト発見のためのコンセプト・テスト
報告書
◆目次
Ⅰ  エグゼクティブ・サマリー …… XXX
Ⅱ  調査デザイン …………………… XXX
Ⅲ  主要テスト結果 ………………… XXX
基本指標分析結果 …………… XXX
×××分析結果 ……………… XXX
その他の分析結果 …………… XXX
年代別分析結果 ……………… XXX
付録 分析手法の解説
◆Ⅰ エグゼクティブ・サマリー
<調査デザイン>
・パスタソースのコンセプト3案の消費者受容性のチェック及びスクリーニング
を行う目的で、20∼59才の一般主婦で最近6カ月以内にパスタソースを購入・調
理・食用した200人を対象として、×月××日∼××日に、CLT(ストリート・
インターセプト)調査を実施。
<基本指標分析結果>
・全体好意度評価や購入意向評価において、3つのコンセプト間で、統計的な有
年代別
TOTAL 20-39歳 40-59歳
(A)    (B)   
PQ8コンセプト製品味覚特徴イメージ評価
PQ8-1 おいしそう(SA)
[ Total Sample ] 200 100 100
5 非常にそう思う(5) 35 17 18
4 ややそう思う(4) 89 46 43
3 どちらともいえない(3) 51 26 25
2 あまりそう思わない(2) 21 10 11
1 全くそう思わない(1) 4 1 3
<Top2 Boxes> 124 63 61
<Bottom2 Boxes> 25 11 14
<平均値> 3.65 3.68 3.62
<標準偏差> 0.96 0.91 1.00
年代別
TOTAL 20-39歳 40-59歳
(A)    (B)   
PQ8-2 コクがある(SA)
[ Total Sample ] 200 100 100
5 非常にそう思う(5) 41 20 21
4 ややそう思う(4) 98 52 46
3 どちらともいえない(3) 45 24 21
2 あまりそう思わない(2) 13 3 10 A
1 全くそう思わない(1) 3 1 2
<Top2 Boxes> 139 72 67
<Bottom2 Boxes> 16 4 12 A
<平均値> 3.81 3.87 3.74
<標準偏差> 0.89 0.80 0.97
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ194
付
章
巻
末
資
料
◆Ⅱ 調査デザイン 
省略(企画書参照)
◆Ⅲ 主要テスト結果
基本指標  (1):総合指標
・全体好感度、購入意向率ともノルム値を統計的に下回った。
・3コンセプト間には有意な差は見られなかった。
A-4 調査報告書例
197196
意な差は見られなかった。
・いずれのコンセプトも、評価平均値がノルム値を統計的に有意に下回った。
・味覚イメージ属性評価において、
―Q は「コクがある」「クリーミーな」において他2製品を有意に上回る他、
「スパイシーな」「辛そうな」「香りがよい感じ」ではRを有意に上回った。
―Pは「さわやかな」「さっぱりしている」でQを、さらに「スパーシーな」
「辛そうな」「香りがよい感じ」でRを有意に上回った。
―R は「さわやかな」「さっぱりしている」でQを有意に上回った。
・製品イメージ属性評価において、
―Q は「個性的な」で他2製品を有意に上回った。
―P、Rは共に「ヘルシーな」でQを有意に上回った。
<改善点抽出分析結果>
・Qが優位な位置にあり、キードライバーの評価の点からも優位。
・コンセプトQの今後の改善・留意する方向は、
―味覚:「パスタソースらしい」の強化
―コミュニケーション(パッケージ):「本格感(本格的な)」の強化
<年代別分析>
・「20∼39才」層では、Qが、全体好意度(Top Box)において、他2製品を有意
に上回った。
・一方、「40∼59才」層では、全体好意度や購入意向のいずれにおいても、3製
品間に有意差は見られないものの、Rが僅かながら高い評価。
・今後の方向性として、ターゲットを20∼39才とするのであれば、Qをベースと
した製品開発(パッケージ/テイスト)を推奨。
<結論と提言>
・いずれのコンセプトもノルム値を下回り、消費者受容性は低いと結論できる。
それゆえ、製品コンセプトの再検討を推奨。
A-4 調査報告書例
全体好意度( Q1 )
TOP 2 BOXES (%) 52.1 55.1 55.1
TOP BOX (%) 10.2 15.2 9.2
平均点 (点) 3.43 3.43 3.43
TOTAL NEGATIVE (%) 19.4 20.4 19.4
購入意向( Q3 )
TOP 2 BOXES (%) 54.1 61.1 57.1
TOP BOX (%) 11.2 16.2 11.2
平均点 (点) 3.33 3.43 3.43
TOTAL NEGATIVE (%) 22.4 22.4 21.4
n
P
コンセプトP
Q
コンセプトQ
R
コンセプトR
200 200 200
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ196
付
章
巻
末
資
料
199
*最適製品 ニーズを満たすベネフィットを生みだす属性を持った製品を作ることが重要。ニーズは、ターゲットやオ
ケージョンによって規定されます。
A-5
マーケティング活動の流れマーケティング活動の流れ
マーケティング活動は大きく「開発マーケティング」と「販売マーケティング」
に分けられます。各プロセスでリサーチがどう活用されるかを知っておきましょう。
大きくは「開発マーケティング」と「販売マーケティング」に分かれる
マーケティングを一言で表すと、「顧客のニーズにあった製品を開発し、それを効
果的、効率的に販売する経済活動」となります。前者を「開発マーケティング」、後
者を「販売マーケティング」と呼ぶことにします。
開発マーケティングは、製品開発に関連する活動です。製品開発をいかに進める
かといった「製品戦略」は企業戦略の中で重要なものです。その成否は、企業の成
長と存続を左右するからです。
一方、販売マーケティングは、開発マーケティングで作られた製品を、いかによ
り売るかという活動です。その販売促進の方法が、広告であったり、WEBの利用
や、いろいろな販売促進施策であったりします。また、店頭での購買を促進させる
いろいろな施策や売り場作りも含まれます。さらに、ブランドを育成することや、
顧客の満足度を高めることによっても販売促進は可能です。
こうしたマーケティング活動の様々なステップで、マーケティング・リサーチは
活用されています。そこで、各ステップで具体的にどのようなマーケティング活動
が行われ、そこでどのようなマーケティング・リサーチが行われるのかを、見てい
きましょう。
開発マーケティングとマーケティング・リサーチ
開発マーケティングにおけるもっとも大きなリサーチ課題は、有望な消費者ニー
ズを創出し、それを「最適製品*
」として具現化することです。製品を「最適化
(Optimization)」するということは、「消費者受容性(Acceptance)」、つまり
「消費者ニーズとの合致度」を高めることを意味しています。消費者受容性が高いと
いうことは、製品に対する全体評価や好意度、購入意向が高いことを表します。
198
基本指標 (2):味覚イメージ属性評価
・Qは「コクがある」や「クリーミーな」において他2製品を有意に上回る他、
「スパイシーな」や「辛そうな」「香りがよい感じ」ではRを有意に上回った。
・Pは「さわやかな」と「さっぱりしている」でQを、さらに「スパーシーな」
や「辛そうな」「香りがよい感じ」でRを有意に上回った。
・Rは「さわやかな」と「さっぱりしている」でQを有意に上回った。
A-4 調査報告書例
2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5
P Q R
おいしそう 3.61 3.61 3.61
コクがある 3.82 4.12PR 3.92
さわやかな 3.33Q 3.03 3.33Q
スパイシーな 3.44R 3.54R 2.94
あきのこない 3.05 3.05 2.95
じっくり煮込まれた 4.06 3.96 4.06
パスタソースらしい 2.87 2.77 2.77
マイルドな 3.88 3.78 3.88
クリーミーな 3.79 4.09PR 3.79
甘そうな 3.31 3.31 3.41
酸味がきいている 3.42 3.42 3.32
辛そうな 2.43R 2.43R 2.23
香りがよい感じ 3.64R 3.64R 3.44
さっぱりしている 3.25Q 2.95 3.15Q
R
Concept 3
(200n)
Q
Concept 2
(200n)
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Concept 1
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マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ198
付
章
巻
末
資
料
行われることになります。発売後は、新製品のトラッキングや、その後の製品のラ
イフサイクル・マネジメントが行われます。
以上のように、開発マーケティグのそれぞれのステップにおいて、製品が失敗す
るリスクを下げ、製品のポテンシャル(価値)を最大化するためのリサーチが行わ
れているのです。
A-5 マーケティング活動の流れ
201200
開発マーケティングのプロセスは、「市場機会の発見」から始まります。
「市場機会の発見」とは、成功の可能性の高い有望な市場を見極めることです。
いくらよい製品をデザインしたしても、その市場自体が有望でなかったり、衰退傾
向であれば、利益を生むことができません。そのため、リサーチを行い、市場の規
模や、成長性、市場の成熟度、競合状況、収益性などを考慮して、有望な市場を特
定します。
さらに、その市場で受け入れられる「有望な製品アイディア」を生み出す必要が
あります。そのためには、消費者ニーズの特定や市場環境の把握が必要です。
次に、その製品アイディアに基づき、製品デザインを行います。この作業の中に
は、
¡製品が提供する重要なベネフィット(CBP:コア・ベネフィット・プロポジ
ション)の発見
¡競合製品に対抗しうる製品の知覚上のポジショニングの決定
¡消費者のターゲット・グループの特定
¡製品コンセプトの開発(ポジショニングに対応した製品属性の開発)
¡製品のポジションを支援するマーケティング・ミックスの編成
が含まれます。
こうした作業での意志決定にも、リサーチは活躍します。例えば、製品コンセプ
トの消費者受容性をチェックし、有望なコンセプトの選定と改善点(強み・弱み)を
抽出する「コンセプト・テスト」などが行われます。
そして、製品デザインが完了すれば、製品開発です。これは企業のR&D部門が行
います。企業の基礎研究力や製品化技術力が問われる局面です。同時にパッケージ
の開発も行われます。その際には、コンセプトに合致する「最適プロダクト」を特
定するためのプロダクト・テストや、「最適パッケージ/ネーミング」を決定するた
めのパッケージ・テスト、ネーミング・テスト、売上を最大化させる「最適価格」
の決定を課題とする価格テストなどが必要により実施されます。また、販売量の予
測も行われる場合があります。
この後、消費者テストやテスト・マーケティングのプロセスを経て、市場導入が
A-5 マーケティング活動の流れ
開発マーケティングとリサーチ
市場機会の発見
製品アイディア
製品デザイン
製品開発
市場導入
アイデア提案の定性調査
STP(セグメンテーション、ターゲディ
ング、ポジショニング)、マーケティング
・ミックス
販売予測(テスト・マーケティング、
STM) など
市場導入後
トラッキング調査、
製品ライフサイクルの管理
市場分析(市場の規模、成長性、収益性、
競合状況)、ベンチマーク調査 など
プロダクト・テスト、ネーミング・テスト、
パッケージ・テスト、価格テスト など
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ200
付
章
巻
末
資
料
以上のような販売マーケティングには、重要な施策の意思決定のための情報を提
供するためのいろいろなリサーチが含まれます。例えば、ブランド調査や、広告調
査、顧客満足度調査、店頭調査などです。
A-5 マーケティング活動の流れ
203202
販売マーケティングとマーケティング・リサーチ
一方、販売マーケティングは、製品をいかに売るかに関連する活動です。ブラン
ドや、広告、狭義の販売促進などのコミュニケーション活動、店頭活動、顧客満足
度などを含みます。
ブランドは、究極の製品差別化です。それによって、販売促進を可能にします。
ブランド・マネジメントでは、ブランド・ポジショニングの確立や、ブランド・パ
フォーマンスの測定により、ブランド価値の増大と維持が行われます。
また、コミュニケーション活動は、販売プロセスにおける最初のもっとも重要な
関門である製品認知を達成します。消費者は、知らない製品を買うことができませ
ん。特に新製品の場合、認知率は、販売量の多少にもっとも大きく影響を与える要
因です。そのため、コミュニケーションによって、消費者に製品内容を伝え、内容
を理解させ、買う気にさせるのです。従来からの手段として、テレビやラジオ、新
聞、雑誌などの広告があります。最近では、WEB2.0以降、インターネットが有力
なコミュニケーション手段になってきています。
さらに、販売促進における店頭の重要性も言われています。インターネットや通
販での販売量が増えてきていますが、依然多くの製品は、スーパーやコンビニなど
の「店頭」で売られています。そして、食品や飲料などでは、お店に入ってから買
う製品を決める人が7∼8割もいるとも言われています。店頭ではじめてその製品の
存在を知ることもあるのです。したがって、売り場の多くのスペースを取り、少し
でも目立った方が買われる可能性が高くなります。買物客の店内での商品選択や購
入決定に、何が影響を与えているかを知ることができれば、売上アップにつながる
有効な販売促進を行うことができます。
このようなブランドや、様々な広告、店頭、インターネット、口コミ、店頭での
販売員や陳列、実際の購入や消費などを通して、消費者は、常に製品との様々な経
験を行っています。いわゆる「顧客経験」と呼ばれているものです。
これらの顧客経験の全部あるいは一部が、総合されて「顧客満足」を醸成し、「顧
客ロイヤルティ」というものを製品やブランド、企業に対して作り上げていきます。
顧客経験→顧客満足→顧客ロイヤルティを作り上げれば、そのブランドや製品への
顧客の維持がなされ、企業の持続的成長が保たれます。
A-5 マーケティング活動の流れ
販売マーケティングとリサーチ
広告・コミュニケーション 広告・コミュニケーション調査
販促 販売促進調査
顧客ロイヤルティ
営業
セールス調査、エリア調査、競合・
トレードモニター調査、流通調査
店頭
店頭調査
ショッパー・インサイト調査
顧客満足度調査
顧客ロイヤルティ調査
ブランド ブランド調査
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ202
204
A-6
参考文献参考文献
今後さらに深くマーケティング・リサーチを学ぶために役立つ本を紹介します。
数多くあるマーケティングやリサーチの本の中で、個人的に特にお薦めのものです。
●アル・ライズ、ジャック・トラウト「売れるもマーケ 当たるもマーケ マーケ
ティング22の法則」1994年、東急エージェンシー
原因と結果を読み解いた先にある「マーケティング法則」を解明した良書。特
に、「マーケティングとは商品の戦いではなく、知覚の戦いである」という知覚の
法則は重要。
●ハンス・ザイゼル「数字で語る:社会統計学入門」2005年、新曜社
調査データの読みかたについての古典的名著です。
●山中正彦監修ドゥ・ハウス編「10年商品を作るBMR」2007年、ドゥ・ハウス
●朝野煕彦、山中正彦「新製品開発」2000年、朝倉書店
●G.L.アーバン、J.R.ハウザー、N.ドラキア(山中正彦他訳)「プロダク
ト・マネジメント」1989年、プレジデント社
元味の素食品開発部長の山中正彦先生(現法政大学教授、株式会社KSP-SP代
表取締役社長)の3部作。製品開発関連のリサーチを学ぶ上で非常に役立ちます。
●加藤司「心理学の販売法 改訂版 実験法・測定法・統計法」2007年、北樹出版
消費者の心理を探るコンシューマー・プランナーは「心理測定法」もぜひ読んで
ください。
【マーケティング・リサーチ関係の以下のサイトも参照】
・社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)
・JMRA加盟の調査会社のホームページ
・マーケティング・リサーチの寺子屋
・(海外)Market Research Society
・(海外)ESOMAR
・(海外)America Marketing Association
マケリサーチ付録章_v4 09.11.17 11:17 ページ204

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