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褥瘡の評価と実践 Assessment & Practice of Pressure Ulcer
- 10. 施設区分ごとの保有率、発生率
日本褥瘡学会 療養場所別褥瘡有病率, 褥瘡の部位・重症度(深さ) 2015
施設区分 保有率 発生率(推定)
一般病院 1.99% 1.60%
一般病院* 2.20% 1.52%
大学病院 1.39% 1.16%
精神病院 0.46% 0.36%
小児病院 1.47% 1.89%
介護老人福祉施設 0.89% 0.62%
介護老人保健施設 1.27% 0.81%
訪問看護ST 2.61% 2.08%
*療養型病床を有する一般病院
- 11. 院内発生褥瘡の保有部位
日本褥瘡学会 療養場所別褥瘡有病率, 褥瘡の部位・重症度(深さ) 2015 を改変(『その他』の扱い)
一般病院
①仙骨部 ■ 36.3%
②その他 ■ 21.4%
③尾骨部 ■ 14.2%
④踵骨部 ■ 10.4%
⑤大転子部 ■ 8.8%
⑥坐骨部 ■ 4.9%
⑦腸骨稜 ■ 4.0%
①仙骨部
②その他
③尾骨部
④踵骨部
⑤大転子部
⑥坐骨部
⑦腸骨稜
一般病院 :188施設
褥瘡保有者:1,386人
- 16. 褥瘡の重症度 深達度
NPUAP-stage 1
DESIGN d1
【Category/stage I:消退しない紅斑】
通常、骨突出部に限局した領域の、消退しない発赤で無傷の皮膚。
暗い色素の肌では明らかな消退はないが、周囲の領域と色が違うことがある。
この領域は、周囲の組織と比較して疼痛、堅い/柔らかい、温かい/冷たいことがある。
カテゴリー1では、暗い色調の皮膚では検出が困難なことがある。
白くなれば → 『反応性充血』正常
赤いままなら →『I 度褥瘡』
発赤部分を3秒押す
①指押し法
②ガラス板圧診法
離す
褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)
推奨度C1 [行うことを考慮してもいいが十分な根拠がない]
- 17. 褥瘡の重症度 深達度
NPUAP-suspected Deep Tissue Injury
深部組織損傷疑い – 深度不明
限局的な紫や栗色への変色や血疱は、圧や剪断による下層軟部組織の損傷による。
隣接組織と比較して、疼痛、硬結、脆弱、浸潤性で、熱感もしくは冷感が先行することがある。
深部組織損傷は、暗い肌の色調では検出が困難なことがある。
進行すると、暗い潰瘍部に薄い水疱ができることがある。潰瘍がさらに進行すると、薄いエスカーで覆
われる。進行は早く、適切な治療をしても組織の層はさらに露出することもある
- 18. 褥瘡の重症度 深達度
NPUAP-stage 2
DESIGN d2
【Category/stage II:部分欠損】
黄色壊死組織(スラフ)でない創底が、赤ピンクの浅い開放潰瘍のある、真皮の部分欠損。
無傷、または開放/破裂した血清もしくは漿液で満たされた水疱を呈することもある。
スラフまたは、皮下出血*を伴わず、光沢や、乾燥した浅い潰瘍を呈する。
このカテゴリを、スキンテア、テープによる皮膚炎、失禁性皮膚炎、浸軟、表皮剥離の表現に
用いるべきではない。 *皮下出血は深部損傷褥瘡疑いを示す。
- 19. 褥瘡の重症度 深達度
NPUAP-stage 3
DESIGN D3
【Category/stage III:全層皮膚欠損】
全層組織欠損。皮下脂肪が確認できる場合があるが、骨、腱、筋は露出していない。
組織欠損の深度が分からなくなることはないが、スラフ(黄色壊死組織)を呈す。瘻孔とポケットが存在す
ることがある。Category/Stage III褥瘡の深度は解剖学的な位置によってさまざまである。鼻梁、耳、
後頭、踝部は皮下組織(脂肪)を有さず、Category/Stage III褥瘡は浅い可能性がある。対照的に、著し
く脂肪のある領域では、Category/Stage III褥瘡は非常に深い可能性がある。骨や腱が視認、もしくは
直接に触知することはない。
- 20. 褥瘡の重症度 深達度
NPUAP-stage 4
DESIGN D4-5
【Category/stage IV:全層組織欠損】
骨、腱や筋が露出した全層組織欠損。スラフ(黄色壊死組織)やエスカー(黒色壊死組織)を呈する場合が
ある。しばしば瘻孔やポケットを呈する。Category/stage IV褥瘡の深度は解剖学的な位置によりさまざ
まである。鼻梁、耳、後頭、踝部といった皮下組織(脂肪)を有さない部位の褥瘡は浅いことがある。
Category/stage IV褥瘡は、筋や支持組織(筋膜、腱、関節包)まで及ぶことがあり、骨髄炎や骨炎を引き
起こす。骨や筋は視認でき、直接触知できる。
- 25. Risk assessment tool
・Braden scale
一般的に用いる評価として推奨 推奨度B (褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)
6-23点で採点。点数が低いほど
施設、在宅で17点以下、一般病院で14点以下がリスク
・OHスケール (大浦・堀田スケール)
寝たきり高齢者に使用しても良い 推奨度C1(褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)
1998年から3年間の厚労省長寿科学総合研究班による調査を基に
作成。0-10点で採点。
・K式スケール (金沢大学式褥瘡発生予測スケール)
寝たきり入院高齢者に使用しても良い 推奨度C1(褥瘡予防・管理ガイドライン 第4版)
braden scaleほどの経験や熟練を必要としない。
前段階要因、引き金要因で評価するため発生時期を予測できる
- 26. Braden scale
知覚の認知 1.全く知覚なし 2.重度の障害あり 3.軽度の障害あり 4.障害なし
圧迫による不快
感に対して適切
に対応できる能
力
痛みに対する反応(うめく、避ける、つかむ等)なし。
この反応は、意識レベルの低下や鎮静による、あるい
は体のおおよそ全体にわたり、錯覚の障害がある
痛みにのみ反する。不快感を伝える時には、う
めくことや身の置き場なく動くことしか出来な
い。あるいは、知覚障害があり、体の1/2以上
にわたり痛みや不快感の感じ方が完全ではない
呼びかけに反応する。しかし不快感や体
位変換のニードを伝えることが、いつも
できるとは限らない。あるいは、いくぶ
ん知覚障害があり、四肢の1,2本において
痛みや不快感の感じ方が完全ではない部
位がある
呼びかけに反応する。知
覚欠損はなく、痛みや不
快感を訴えることができ
る
湿潤 1.常に湿潤 2.たいてい湿潤 3.時々湿潤 4.めったに湿っていない
皮膚が湿潤にさ
らされる程度
皮膚は汗や尿などのために、ほとんどいつも湿ってい
る。患者を移動したり、体位変換するごとに湿気認め
られる。
皮膚は、いつもではないがしばしば湿っている。
各勤務時間中に少なくとも1回は寝衣寝具を交
換しなければならない
皮膚は時々湿っている。定期的な交換以
外に、1日1回程度、寝衣寝具を追加して
交換する必要がある
皮膚は通常乾燥している。
定期的に寝衣寝具を交換
すればよい
活動性 1.臥床 2.坐位可能 3.時々歩行可能 4.歩行可能
行動の範囲 寝たきりの状態である ほとんど、または全く歩けない。自力で体重を
支えられなかったり、椅子や車椅子に座る時は、
介助が必要であったりする
介助の有無にかかわらず、日中時々歩く
が、非常に短い距離に限られる。各勤務
時間中にほとんどの時間を床上で過ごす
起きている間は少なくと
も1日2回は部屋の外を
歩く。そして少なくとも
2時間に1回は室内を歩
く
可動性 1.体動なし 2.非常に限られる 3.やや限られる 4.自由に体動する
体位を変えたり
整えたりできる
能力
介助なしでは、体幹または四肢を少しも動かさない 時々体幹または四肢を少し動かす。しかし、し
ばしば自力で動かしたり、または有効な(圧迫
を除去するような)体動はしない
少しの動きではあるが、しばしば自力で
体幹または四肢を動かす
介助なしで頻回にかつ適
切な(体位を変えるよう
な)体動をする
栄養状態 1.不良 2.やや不良 3.良好 4.非常に良好
普段の食事摂取
状況
決して全量摂取しない。めったに出された食事の1/3以
上食べない。蛋白質・乳製品は1日2皿(カップ)分以
下の摂取である。水分摂取が不足している。消化態栄
養剤(半消化態、経腸栄養剤)の補充はない。あるい
は、絶食であったり、透明な流動食(お茶、ジュース
等)なら摂取したりする。または、末梢点滴を5日間以
上続けている
めったに全量摂取しない。普段は出された食事
の約1/2しか食べない。蛋白質・乳製品は1日3
皿(カップ)分の摂取である。時々消化態栄養
剤(半消化態、経腸栄養剤)を摂取することも
ある。あるいは、流動食や経管栄養を受けてい
るが、その量は1日必要摂取量以下である
たいていは1日3回以上食事をし、1食につ
き半分以上は食べる。蛋白質・乳製品を1
日4皿(カップ)分摂取する。時々食事を
拒否することもあるが、勧めれば通常補
食する。あるいは、栄養的におおよそ
整った経管栄養や高カロリー輸液を受け
ている
毎日おおよそ食べる。通
常は、蛋白質・乳製品を
1日4皿(カップ)分以
上摂取する。時々間食
(おやつ)を食べる。補
食する必要はない
摩擦とずれ 1.問題あり 2.潜在的に問題あり 3.問題なし
体動のためには、中等度から最大限の介助を要する。
シーツでこすれずに体を移動することは不可能である。
しばしば床上や椅子の上でずり落ち、全面介助で何度
も元の位置に戻すことが必要となる。痙攣、拘縮、振
戦は持続的に摩擦を引き起こす
弱々しく動く、または最小限の介助が必要であ
る。移動時、皮膚はある程度シーツや椅子、抑
制帯、補助具などにこすれている可能性がある。
たいがいの時間は椅子や床上で比較的よい体位
を保つことができる
自力で椅子や床上を動き、移動中十分を
支える筋力を備えている。いつでも、椅
子や床上で要体位を保つことができる
- 27. Braden scale
知覚の認知 1 脱失 2 重度の障害あり 3 軽度の障害あり 4 障害なし
湿潤 1
常に湿っ
ている
2
たいてい湿って
いる
3
時々湿っている
4
めったに湿っていない
活動性 1 臥床 2 座位可能 3 時々歩行可能 4 歩行可能
可動性 1
全く体動
なし
2
非常に限られる
3
やや限られる
4
自由に体動する
栄養状態 1 不良 2 やや不良 3 良好 4 非常に良好
摩擦とずれ 1
問題あり
2
潜在的に問題あ
り
3
問題なし
・点数は6~23点の範囲となり、点数が低いほど褥瘡発生のリスクが高くなる
・採点は活動性ないし可動性が2点、すなわち寝たきり状態になった時に始める
・急性期で48時間ごと、慢性期で1週間ごと、高齢者では入院後1カ月は1週間
ごと、状態に変化なければ3カ月に1回が適当とされる。
・カットオフ値は14~20点で幅がある。
一般に施設、在宅では17点以下、病院では14点以下が用いられる。
- 31. 厚生労働省「褥瘡対策に関する診療計画書」
危
険
因
子
の
評
価
日常生活自立度 J(1・2) A(1・2) B(1・2) C(1・2) 対処
基本的動作能力
ベッド上:自力体位変換
椅子上:座位姿勢の保持、除圧
□できる
□できる
□できない
□できない
「あり」「できない」
が1つでもある場合、
看護計画を立案し、実
施する。
病的骨突出 □できる □できない
関節拘縮 □なし □あり
栄養状態低下 □なし □あり
皮膚湿潤(多汗・尿失禁・便失禁) □なし □あり
皮膚の脆弱性(浮腫) □なし □あり
皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往) □なし □あり
・日常生活自立度がBまたはCの対象者に、危険因子評価票を用いた評価を実施。
・1つでも「あり」あるいは「できない」項目があれば看護計画を立案。
・危険因子のうち「浮腫(局所以外)」は、平成30年度診療報酬改定により、
「皮膚の脆弱性(浮腫)」「皮膚の脆弱性(スキン-テアの保有、既往)」へ
変更された。褥瘡の危険因子に「スキン-テア」が組み込まれた。
- 41. 物理療法 (専門である場合)
Clinical Question 推奨度 推奨文
発症前ケア 筋萎縮に対して C1 電気刺激療法を行ってもよい
保存療法
感染を有する褥瘡に対して C1 水治療法ならびにパルス洗浄・吸引
壊死組織を有する褥瘡に対して C1
水治療法ならびにパルス洗浄・吸引
ベッドに加振装置を用いてもよい
創の縮小をはかる場合 B 電気刺激療法
C1 近赤外線療法,超音波療法,電磁波刺激療法を
行ってもよい。
ベッドに加振装置を用いてもよい