サイマルキャスト　コストと可能性についての考察

サイマルキャスト
コストと可能性についての考察
第4回ATSC3.0勉強会
鍋島公章
2020年8月7日
Copyright (c) kosho.org 1

◼ 鍋島公章（なべしままさあき）
• 所属
• 某国内配信会社、R&Dをやっています
• 略歴
• 1992年：NTT (研究所)入社、Internetの研究開発を開始
• 1995年：NTT研究所シリコンバレー分室で大規模配信の研究を開始
• 2000年：NTT退社、外資や国内ベンチャーで配信サービスに係る
• 扱ったコンテンツ：歌舞伎町からハリウッドまで
• 最後はソフトバンクモバイルでモバイル系配信の企画
• 2014年～：国内配信会社
• 最近のプレゼンテーション・リスト
• https://www.kosho.org/presentation/
自己紹介

◼ Wi-Fiマルチキャスト
• HotSpotでテレビが見れる！
• Wi-Fiは不安定：エラーリカバリ必須
◼ まともにエラーリカバリできるもの
• SK-Telecom MMT+ARQ：未成熟だが動作は良好(検証済)
• ATSC3.0 (MMT, FLUTE + AL-FEC)：libatsc3.0は検証済(受信側コード)
ATSC 3.0と私：Wi-Fiマルチキャスト
放送局 CATVヘッドエンド
Wi-Fiマルチキャスト

◼ 規制改革推進に関する答案
• (6) 放送を巡る規制改革
• オ放送のユニバーサルサービスの在り方
• a 地上波４Ｋ放送を含めた地上波の高度化方式に関して、今後
の技術的検討のスケジュールを明らかにする。【令和２年度措
置】
• b 今後、ブロードバンドのユニバーサルサービス化の検討も踏
まえ、放送ネットワークをブロードバンドにより代替する場合
のコストベネフィットの比較考量を行うことを含め、検討を行
う。【令和２年度検討開始、早期に結論】
通信と放送の融合

◼ 配信コスト
• 配信単価＊総配信量
◼ 放送の配信への代替費用：2,539億円/年
• 配信単価：１円/GB
• 配信相場(大規模)を切りの良い数字にしたもの(高め)
• 総配信量: 253.9EB (253,865,000,000GB)
• 配信ビットレート：10Mbps(4.6GB/時間)
• フルHD相当を切りの良い数字にしたもの(多め)
• 国内総視聴時間/年：552億時間 (55,188,000,000時間)
• 視聴者のTV平均接触時間2.7時間/日に世帯数5,600万をかけた
もの(少な目) 2.7時間*365日*5,600万世帯
代替コスト ①テレビ放送市場
(約3兆円)の7%
②配信単価は
10年で1/10
ぐらいになる
(過去20年の
経験則）

◼ 受信費用
◼ 配信規模
議論（前ページの費用が現実的でない理由）

◼ 放送と通信：コスト負担の違い
◼ なぜ、通信の場合、送信が安い？
• 通信の場合、本来「送信：受信＝１：１」の費用負担
• Internetの場合、通信インフラのただ乗りが恒常化
受信費用(問題)
送信受信
放送高い
(大規模な運用費用が必要)
ほぼゼロ
(機器の購入費のみ)
通信安い(1円/GB) 高い(200円～1000円/GB)

◼ 通信インフラのただ乗り
• IX: Internet eXchange (東京、大阪にあるトラフィックの交換場所)
• 配信側：IXまで負担
• ユーザ側：IX以降のすべてを負担
• 市場規模
• 国内CDN市場：350~400億円程度
• 国内ネットアクセス市場規模：8兆円程度
受信費用(通信インフラのただ乗り)
配信サーバ IX ISP 足回りユーザ

◼ モバイル網
• 従量制
• 1GBあたり200~1,000円程度
• コンテンツが1Mbpsだとしても、受信1時間あたり90~460円！
• 料金ダウンの可能性
• 5Gによる料金ダウン(5,000円?程度の無制限定額)
• 5Gブロードキャスト
• スポンサードデータによる超大口割引
• 従量制の安いプランは必ず残る(例：通話＋1GBで1,480円)
• 置き換えの場合、これらプランへのケアが必要
• スポンサードデータ
• 配信側による通信料負担(配信のフリーダイヤル)
受信費用(モバイル)

◼ パケット無料サービス
受信費用(スポンサードデータ)
ゼロレーティングスポンサードデータ
概要特定のサービスへの通信が無料になる
無料化の原資通信キャリア負担
・統計的にインパクトの小さいコンテンツ
(MUSIC、SNS)
・販促(他のMNO、MVNOとの差別化)
配信者負担
・超大口割引が適用される
国内の状況サービス化済み
・Biglobeエンタメフリー(動画OK)
・OCN MUSICカウントフリー
・LINEモバイル SNS音楽データフリー
国内ではサービスなし
(海外は若干ある)

◼ 固定網
• 固定料金
• 使用量が少々増えても料金は同じ
• ただし、急激に増えた場合、受信側の設備が破綻
• 現状
• トラフィック：12.6Tbps程度
• 放送の置き換え
• 総視聴率を30%と仮定すると1,680万同時視聴
• ⇒コンテンツが10Mbpsとする、168Tbps必要
•現状の13倍の帯域が必要
受信費用(固定網)

◼ 固定網：13倍の帯域
• 実現するとインターネット(8兆円産業)上の9割以上のトラフィックは
放送(3兆円産業)
• 直感的になんか変！
• 「ネットでテレビは見ないからネット接続料を安くしろ」とい
うユーザが確実に出る
• インターネットにインパクトの低い配信方式が必須
• マルチキャスト
• 必要な帯域はチャンネル分のみ
• 10Mbps 100チャンネルでも1Gbps程度
• コア部分は既存のIPTVやCATV向け番組配信網を利用可能
受信費用(固定網)

◼ 放送の通信による置き換え
• 配信費用(単純計算)：2,539億円/年
• ただし、
• 受信費用が必要：100倍程度
• 必要帯域：現状の13倍
◼ 今後の可能性
• 効率的な配信方式
• 固定網マルチキャスト、5Gブロードキャスト等
• スポンサードデータによる受信費用の補充
• 1時間あたりX0円程度の補充が可能か？
• 広告単価の引き上げ(パーソナライズ、ジオターゲティング等)
まとめ

• 規制改革推進会議答申抜粋(放送部分)
• https://www.kosho.org/blog/net/kisei-kaikaku-2020/
• サイマル配信のコスト
• https://www.kosho.org/blog/net/simulcast-cost/
• 通信のただ乗り問題(なぜNGNのSNIは使えないのか？)
• https://www.kosho.org/blog/net/why-ngn-sni-is-not-good/
• マルチキャストの現状(ユーザ環境編)
• https://www.kosho.org/blog/net/multicast-status-2020/
リンク

サイマルキャスト　コストと可能性についての考察

Recomendados

Recomendados

Más contenido relacionado

Similar a サイマルキャスト　コストと可能性についての考察

Similar a サイマルキャスト　コストと可能性についての考察 (20)

Más de Masaaki Nabeshima

Más de Masaaki Nabeshima (20)

Último

Último (10)