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日本医療企画ヘルスケア・レストラン201506
- 1. 47 ヘルスケア・レストラン 2015.6 2015.6 ヘルスケア・レストラン 46
日本経済新聞の調べによると、全国の
約7割の自治体で、65歳以上が2015〜
17年度に支払う介護保険料が月額5,000
円を超えたことがわかった。全国平均で
は5,000円台半ばになる見通しで、高齢
化の進行で2000年度の制度導入時の2
倍近くになる。
介護保険にかかる費用は、半分は税金
から、残りの半分は保険料を財源として
成り立っている。保険料部分(50%)の
うち、21%は65歳以上(第一号被保険者)
が負担し、残りの29%は40歳〜64歳(第
二号被保険者)が負担している。今回は
この65歳以上が納めている保険料につ
いてみていく。
当該保険料は市町村ごとに決まって
おり、その市町村で1年間にかかる介護
保険費用(過去3年間の平均)の21%が
基準額となる。その基準額をもとに、
所得に応じて段階的(基本は6段階)に決
めることとなっている。つまり、全国
一律で保険料が決まっているわけでは
なく、居住する市町村でどのくらい介
護費用がかかっているか、によって保
険料が変わる。無駄な介護費用が発生
していない市町村や、積極的な予防策
などに取り組んでいる市町村では保険
料が下がる可能性がある。
このように設定される保険料が全国平
均で月額5,000円を超え、高齢化の進行
に伴い年々保険料が増えている。ここで
注目したいのが、地域間格差である。平
均値を大幅に上回る月額8,000円以上の
市町村がある一方で、2,000円台もあっ
たという。県別の平均値でみても、千葉県
(4,958円)、埼玉県(4,835円)のような
低い県もあるが、大阪府(6,025円)、沖
縄県(6,267円)のように高い府県もある。
後期高齢者(75歳以上)が多いと介護
費用も増えるが、その割合が高い市町村
の場合は補正されて調整交付金が支給さ
れることとなっている。つまり、100%
とはいかないが、高齢者の割合が多いこ
とによる介護費用の増加分は、補正され
て費用が計算されている。それでも、こ
れだけ介護費用に地域差が生じている現
実がある。
鹿児島県三島村は介護保険料を据え置
いており、月額2,800円とかなり低い地
域である。黒島など3島から成る人口約
400人の村で、「地元で暮らし続けるた
めに健康維持に努める高齢者が多い」そ
うだ。また、転倒予防体操の機会を毎週
設けている自治体もある。
こうした住民の意識向上策や積極的な
予防策により、介護費用を抑えている地
域と、野放しにしている地域による差は
今後もますます広がっていくであろう。
人によっては居住する場所を選ぶ基準の
1つになるかもしれないし、選挙時の投
票の判断基準となるかもしれない。各自
治体は知恵を出し合って、予防策に取り
組むべきではないか。
こうした、地域による取り組みの結果、
負担額に差を設ける、という制度を医療
費においても導入する検討が進められて
いる。介護と同じように、医療について
も、その地域の文化や歴史などによって
供給体制が大きく異なる。全国一律で対
応することが、必ずしも適していない場
合も多い。こうした制度の導入により、
地域に合った医療や介護の提供体制が整
えられていくことが望ましい。
厚生労働省は4月7日の規制改革会議
の健康・医療ワーキング・グループで、
遠隔診療に関する現行の局長通知での解
釈を明確にする姿勢を示した。対面での
診療に近い情報が得られるケースでは、
遠隔医療を認めることをはっきりさせる
ことにした。
読者のなかにもスカイプ(Skype)や
フェースタイム(FaceTime)といった
インターネットを活用したテレビ電話を
使ったことがある人は多いだろう。筆者
も仕事柄出張が多いので、出張先から家
族にテレビ電話をしたり、海外や遠方に
いるスタッフとネット会議をしている。
体験したことがある人は非常にスムーズ
に会話ができ、相手の表情も見えて、コ
ミュニケーションに問題がないことを実
感しているだろう。近くにいながらもほ
とんど話をしたことがない人よりも、こ
うしたツールを使って頻回にコミュニケ
ーションを取っている人のほうが、心理
的な距離が近くに感じることを経験した
方もいるはずである。
このような技術の進歩に、常に後れを
取ってしまうのが、法律などの“規制”で
ある。遠隔医療についても、医師法(第
20条)で医師と患者が直接対面し診療を
行なうもの、と規定されている。そのた
め、離島やへき地の患者などを除いて、
遠隔医療を原則禁止しているとの理解が
一般的であった。
このことについて、政府が主導してい
る規制改革会議の健康・医療ワーキン
グ・グループで、規制の緩和を求められ
ていた。4月7日の会議で、厚労省医政
局の北澤潤医事課長(当時)は、遠隔診療
が対面診療を補完するものという解釈は
変えないものの、「医師法との関係で遠
隔診療ができないわけではないことをは
っきりさせたい」と述べたという。すな
わち、対面診療に代替し得る程度の有用
な情報が得られる場合には、遠隔診療が
「直ちに医師法第20条等に抵触するもの
ではない」という理解を明確に示すこと
となった。
まだ実際の通知が出たわけではないの
でぬか喜びはできないが、同規制が緩和
されればさまざまな可能性が広がる。自
宅で治療を続けている患者が脈拍や心拍
数、呼吸の数などの情報をインターネッ
トを通じて医師に送り、テレビ電話を通
じて診察を受けるといったケースが認め
られる可能性がある。また、へき地の医
療機関に定期的に応援に行っている医師
が、現地に赴けないときにテレビ電話で
診察する、ということも可能になるかも
しれない。
現時点でも、診療報酬でCTやMRI
などの画像診断や、病理診断を遠隔で行
なうことは評価されている。実証実験レ
ベルではICUなどの専門知識が必要な
領域において、電子カルテや生体情報モ
ニタの情報を遠隔で共有し、専門医がい
る施設から遠隔指導をしている事例もあ
る。超音波などの機器の映像や、手術の
術野映像を遠隔で共有し、経験豊富な医
師から指導を仰いだり、カンファレンス
をしたりする事例も出てきている。今後
はスマホに連動したツールから収集でき
る健康データの活用も活発になるといわ
れている。
既成概念にとらわれることなく、次々
に出てくる新しい技術を使いながら、質
の高い医療の提供を実現していきたい。
〈第57回〉
ふじい・まさし◎早稲田大学政
治経済学部を2006年に卒業。
病院向け経営コンサルティング
会社である㈱アイテック、㈱
MMオフィスを経て、12年度か
ら沖縄県立中部病院・経営ア
ドバイザー(NPO法人病院経
営支援機構所属)として病院経
営支援を行なう。診療報酬を駆
使した収益増、医療機器等の
費用削減、運営の効率化に携
わる。15年度から特定医療法
人谷田会・谷田病院(熊本県
甲佐町)の事務部長として着任
する
Explanation
対面診療以外の
新たな診療スタイルの可能性
Explanation
地域の予防への取り組みで
介護費用の地域差が発生?
News One
介護保険料が2倍に
News Two
遠隔診療の枠組みが緩和?
積極的に介護予防に取り組む地域で介護保険料が抑制されているが、これは医療
費への応用も期待できる。また、遠隔地でのインターネットを介した診察の可能性も
広がっており、医療の進む道からは目が離せない。
藤
井
将
志
特
定
医
療
法
人
谷
田
会
谷
田
病
院
事
務
部
長
積
極
的
な
予
防
策
の
導
入
や
最
新
技
術
の
活
用
で
質
の
高
い
医
療
に
つ
な
げ
る
(C) 2015 日本医療企画.