邦題『教育効果を可視化する学習科学』第3部『自身を知ろう』のまとめ

1. Visible Learning and the
Science of How We Learn
Part3 - Know theyself
邦題：『教育効果を可視化する学習科学』

2. 第24章: 自信ー表に出てこない3つの水準
自信には三つの水準がある
自尊感情
全体を包括した感情
有能感
領域単位
自己効力感
具体的な課題単位

3. 第24章: 自信ー表に出てこない3つの水準
● 自尊感情
○ 自分自身の価値をどのように感じているかを表す
○ 自尊感情は、学業成績や社交性などのポジティブな性質と相関している
○ しかし、自尊感情の高まりは、成功した結果によってもたらされる帰結 だと判明している
● 有能感
○ ある分野について「得意である」と感じていることを表す
○ 有能感があるからと言って、実際の成果に結びつくわけではない
○ X 自尊感情がある → 有能感を持つ
○ O 有能感を持つ → 自尊感情を発達させる
● 自己効力感
○ 目の前の課題をこなせる自信の高さ
○ 自尊感情や有能感のように汎用的ではなく、目の前にある課題に対して成功する自信
○ 過去に成功したことのある良く似た課題に関する知識が活性化されると感じる
■ 「知識を素早く取り出せて使えた」という感覚
○ 「励ます」行為は、過去に成功したことのある記憶を呼び起こすと良い

4. 第24章: 自信ー表に出てこない3つの水準
教育的な示唆
● 自尊感情は、学習の成功によってもたらされることができる
○ 学習領域のける有能感 → 全体的な自尊感情の発達
● 教師は自己効力感を高める重要な役割を担う
○ 自己効力感は、「人生で遭遇する課題は対処可能である」という感覚によって得られる
○ 非常に重要な役割：生徒が「学校のカリキュラム」という未知のものに対して対処し、自己効力感を
得ることを補助する

5. 第25章: 自己高揚と「バカなやつともっとバカなやつ」の効果
● 自己高揚
○ 人が自分の個人属性を肯定的に見なす傾向のこと
○ 虚栄を張っているのではなく、本当にそうだと信じている
○ ポジティブな出来事の記憶にアクセスしやすいことが原因
● 自己評価の持つ意味
○ 自己評価は客観的な指標に比べて不正確 （一部例外もあり）
○ 例：他者のIQやテスト結果を予測する方が正確
○ 自分の評価をする際は自己高揚を含めて評価してしまう
● バカなやつともっとバカなやつ効果
○ 能力が低い人は、自分がいかに能力が低いか知ることができない
○ 例：クラス下位に位置する学生は、自分の成績を 20％過大評価した
○ そのメカニズムの例：テストでうまくいかなかった時
■ 「正解したか」は分からないが、「努力した上で頑張って回答した」ことは確信しているので、そ
の感覚が反映される

6. 第25章: 自己高揚と「バカなやつともっとバカなやつ」の効果
自己イメージを正しく持つための教師の役割
● 前提として...
○ 自分の立ち位置を正確に知ることは、生徒全員が取り組む必要のある重要な課題
● 正確なフィードバックが重要
○ 理由1：自己高揚の効果を抑制するため
○ 理由2：自己価値を自分勝手な物にしないために
適切なフィードバックがなければ、生徒の自我は利己主義的に構築されてしまう

7. 第26章: 自己制御の獲得
● 満足遅延耐性と自己制御
○ 目先の報酬を我慢することで将来の報酬を得る能力のこと
○ 例：マシュマロの実験
■ 満足遅延耐性が低いこどもは、年を経るごとに行動上の問題が報告された
○ 自己制御能力が高い人々は、一般的に社会的に成功している
■ 他者を理解するために努力ができる
● 自我消耗
○ 要求された課題に注意を向けていると、他の課題に対する自己制御が著しく低下する
○ 衝動を抑えるのに必要なエネルギーが残っていないため
○ 例：美味しそうな食べ物を食べないように言われると、些細な批判を受けただけでより批判的になる
● 自己制御能力の活用と発達
○ 自己制御ができる人ほど、衝動をコントロールする必要のある状況を避ける
○ 自己制御は社会モデリングを通して子供に教えることができる
○ 家族間の経験を通してモデル化され、伝達されることも多い
○ 誘惑にさらされた際にどのように行動するか事前に考えておくことも効果がある

8. 第27章: 笑顔の神経科学ー教えることの基本ツール
対面授業において、笑顔は最も強力なツールの一つである
● 笑顔は社会的なシグナル
○ 単独ではほとんど笑っていない
○ 社会的な繋がりを確立したり、確認することを意図した表現
● 人は笑顔に敏感
○ 無意識に発生したわずかな笑顔を知覚できる
○ 教師は生徒からの
○ フィードバック情報として笑顔を用いている
■ 生徒の顔は理解レベルについて非常に重要な手がかりを与えてくれる
● 生徒もまた教師の笑顔に敏感
○ 生徒に笑いかけると、教師がその生徒を一人の人間として尊重していることを示すことができる
○ 生徒の悪行について、面白かったとしても 笑顔を抑制することも重要である

9. 第28章: 社会的カメレオンであることの驚くべきメリット
● 姿勢マッチング
○ 動作や姿勢などが多くの集団メンバーで一貫していること
○ 集団がうまくいっている時、メンバーにその行動が伝染していく
○ 無意識の姿勢マッチングが生じた後に、好意や信頼感が生じていることも明らかに
● カメレオン効果
○ カメレオン効果とは、姿勢マッチングの一種
○ 当事者が気づかないうちに模倣が生じること
○ 良い関係を作ろうとしているときほど、熱心に模倣する
○ 暗黙T系に、他者とうまくやっていこうとする
● ミラーニューロン
○ カメレオン効果の原因
○ 人間を観察しているとき、その人を神経学的鏡映している
○ 人間の社会スキルの発達を可能にさせたとされている
○ ジェスチャーは単に情報の流れを助けるだけではなく、情報そのものを伝達している

10. 第29章: 「見えないゴリラ」、非注意性盲目、注目
● 非注意性盲目
○ 知覚失明の概念の一つ
○ 実際に目の前で発生した事柄に対して、一過性の失明の状態に陥ること
○ 一つの中心課題に向けばむくほど、別のことについて注意が散漫になる
● 見えないゴリラ
○ 非注意性盲目を有名にした実験
○ 被験者はバスケットボールのパスの回数を数える
○ その途中でゴリラが乱入するが、半分もそのことに気づかなかった
● 授業に関して
○ 明瞭に話していても、他のことで心がいっぱいになっていると、生徒は何もインプットされていない
○ 生徒に心の負荷がかかっていると、聞いているように見えて何も伝わっていない

11. 第30章: すばやい思考とゆっくりとした思考
● システム1
○ すばやい思考
○ 実際の行動基準を通して、どのような処理が相応しいか瞬時に判断するシステムのこと
● システム2
○ ゆっくりとした思考
○ 言語と明確な意図を持って整理された思考システムこと
● 教育はシステム2を育む
○ 人間は本質的にシステム 1で動こうとする
○ その時に衝動性を抑えたり、システム 2を用いる能力は非常に重要
○ 教育では、授業を通して、個々の生徒に合うレベルでシステム 2を育む営みである

12. 第31章: IKEA効果、努力、価値づけ
● IKEA効果
○ 人は作った物に愛情を抱く
○ 成果物に対して行われる客観的な評価以上に、作り手は価値があると信じてしまう
○ 努力は自動的に価値付与の構成要素となる
● 授かり効果
○ 所有している物に対して、客観的な評価以上に価値づけをする
● 生徒の宿題
○ 生徒が宿題を提出した時は、同じ効果が発生している
○ 生徒の宿題への努力を理解することは、教師にとっても重要
○ 生徒は教師からのフィードバックで自分の努力が認められることを求める
○ 「何」が「どのように」達成されているのかを、じっくり時間をかけて観察し、真摯に評価することが大
事