膀胱がん患者のBody image scale

1. 日本語版 Body Image Scaleの
膀胱癌術後患者における信頼性・妥当性の検証
樋口まどか1、佐藤三穂2、大澤崇宏1、山田修平1、宮田遥1、菊地央1、松本隆児1、
三浪圭太3、田中博3、佐々木芳浩4、森田研5、高田徳容6、原林透6、古御堂純7、
柏木明7、村井祥代1、安部崇重1、小笠原克彦8、篠原信雄1
1. 北海道大学病院 泌尿器科
2. 北海道大学大学院保健科学研究院 基盤看護学分野
3. 市立札幌病院 泌尿器科 4. 釧路労災病院 泌尿器科
5. 市立釧路総合病院 泌尿器科 6. 北海道がんセンター 泌尿器科
7. 手稲渓仁会病院 泌尿器科
8. 北海道大学大学院保健科学研究院 健康科学分野

2. 第415回日本泌尿器科学会北海道地方会 ＣOＩ 開示
筆頭発表者： 樋口 まどか
この演題発表に関連する開示すべき
COI 関係はありません。

3. 緒言
• 癌とその治療は患者に身体的ダメージ、機能障害や見た目の変化等
を及ぼす。
• ボディイメージは患者のQOLに関わる重要な項目の一つであり、心理
的側面に影響する。 Kolodziejczyk A, et al. Adv Clin Exp Med. 2019; 28(8): 836-44
健康関連QOL (HRQOL：health-related quality of life)尺度
健康に起因し、医療介入により改善可能な領域に測定範囲を限定
したQOL評価
Body Image Scale(BIS)
欧州で開発された、患者自身によるボディイメージを評価する
HRQOL尺度である。

4. Body Image Scale（BIS）
Qual Life Res (2015) 24:1629–1633
points 0 1 2 3
• 10項目の質問に0～3点
• 合計 0～30点
• 点数が高い方が、ボディイメージに関する不満が大きい

5. 目的
【目的】
今回日本語版BIS(J-BIS)を作成し、膀胱癌患者において信頼性・
妥当性を検討した。
BISはあらゆる癌種や術式に対応し諸外国で使用されてきたが、
日本語版の報告はない。

6. 日本語版Body Image Scale（J-BIS）
 外見についての自意識
 身体的魅力の減少
 外見の不満
 女性らしさ/男性らしさの減少
 裸を見るのがつらい
 性的な魅力の減少
 外見が気になり人と会えない
 自分の体が完全なものでない
 身体についての不満
 術後の傷の不満

7. 対象
【対象】
対象：日本国内7施設の膀胱癌術後患者
条件…20歳以上
ECOG-PS 0または1
治療別に3群に分けた。
①TUR群 …経尿道的手術
②新膀胱群…膀胱全摘術および新膀胱造設術
③ストマ群 …膀胱全摘術および
回腸導管造設または尿管皮膚瘻造設

8. 方法
【方法】
下記HRQOL尺度を調査した。
①J-BIS
②Bladder Cancer Index（BCI）
③SF-12
• 各治療群でのHRQOL尺度を比較した。
統計学的解析にはBonferroni adjusted Mann-Whitney testを用いた。
• J-BISと他のHRQOLスコアで散布図を作成し、相関関係を検討した。

9. BCI SF-12
【Bladder Cancer Index（BCI）】
・3つのドメイン（各6～7の質問）により構成される。
①排尿ドメイン
②排便ドメイン
③性ドメイン
【SF-12】
・12の質問に回答。
・3つのサマリースコアを算出する。
①身体的サマリースコア
②精神的サマリースコア
③役割サマリースコア
J-BISと各ドメインおよびサマリースコアとの比較を行った

10. 患者背景
対象：397名

11. 結果：J-BISの内的整合性
J-BISの一因子構造と内的一貫性
内的整合性には信頼性がある
(Original 57.55%)

12. 結果：J-BISの群間比較
TUR群 新膀胱群 ストマ群
(*** p < 0.001)

13. 結果：J-BISの項目毎の比較
●TUR群
●新膀胱群
●ストマ群
1. 外見についての自意識
2. 身体的魅力の減少
3. 外見の不満
4. 女性らしさ/男性らしさの減少
5. 裸を見るのがつらい
6. 性的な魅力の減少
7. 外見が気になり人と会えない
8. 自分の体が完全なものでない
9. 身体についての不満
10. 術後の傷の不満

14. 結果：J-BISの項目毎の比較
●TUR群
●新膀胱群
●ストマ群
1. 外見についての自意識
2. 身体的魅力の減少
3. 外見の不満
4. 女性らしさ/男性らしさの減少
5. 裸を見るのがつらい
6. 性的な魅力の減少
7. 外見が気になり人と会えない
8. 自分の体が完全なものでない
9. 身体についての不満
10. 術後の傷の不満
新膀胱群、ストマ群で高い

15. 結果：J-BISの項目毎の比較
●TUR群
●新膀胱群
●ストマ群
1. 外見についての自意識
2. 身体的魅力の減少
3. 外見の不満
4. 女性らしさ/男性らしさの減少
5. 裸を見るのがつらい
6. 性的な魅力の減少
7. 外見が気になり人と会えない
8. 自分の体が完全なものでない
9. 身体についての不満
10. 術後の傷の不満
ストマ群で高い

16. 結果：BCIの群間比較
TUR群 新膀胱群 ストマ群 TUR群 新膀胱群 ストマ群 TUR群 新膀胱群 ストマ群
排尿ドメイン 排便ドメイン 性ドメイン
（*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001）

17. 結果：SF-12の群間比較
TUR群 新膀胱群 ストマ群 TUR群 新膀胱群 ストマ群 TUR群 新膀胱群 ストマ群
(*** p < 0.001)
身体的スコア 精神的スコア 役割スコア

18. 結果：J-BISとBCIの相関
CC= -0.536
●TUR群
●新膀胱群
●ストマ群
CC：correlation coefficient
CC= -0.361
CC= -0.323
排尿ドメイン 排便ドメイン 性ドメイン
BCI

19. 結果：J-BISとSF-12の相関
●TUR群
●新膀胱群
●ストマ群
CC= -0.109 CC= -0.088 CC= -0.406
身体的スコア 精神的スコア 役割スコア
SF-
12

20. 結果：J-BISとSF-12の相関
●TUR群
●新膀胱群
●ストマ群
CC= -0.109 CC= -0.088 CC= -0.406
SF-12が同程度でも、BISに差がある
身体的スコア 精神的スコア 役割スコア
SF-
12

21. 考察
• Body Image Scaleは癌領域における身体イメージの不安を評価する
ために開発された。
Hopwood P, et al. Eur J Cancer 1993; 29(2): 276-81
⇒日本語版の信頼性、妥当性を示した。
• BISにより、他のHRQOL尺度では有意差のない違いをとらえた。
• ボディイメージは外見だけでなく内的なイメージの影響を受ける。
• ボディイメージは機能的障害によっても変化する。
Hopwood P, et al. Eur J Cancer 1993; 29(2): 276-81
Rhoten BA, et al. Oral Oncol 2013; 49(8): 753-60
⇒BISは外見のみでなく、機能的側面も考慮されたボディイメージの
評価スケールである。
機能的および外見の変化が大きい膀胱癌手術において、患者QOLを評価
する方法として有用な可能性がある。

22. 結論
• J-BISは膀胱癌術後患者のQOL評価として、信頼性と
妥当性があると考えられた。
• J-BISは膀胱癌患者の治療後のボディイメージの評価に
有用な可能性がある。

23. 結語
• 日本語版Body Image Scaleを作成し、膀胱癌患者に
おいてその有用性を検討した。