当事者研究は本人の苦労が研究テーマであり、科学論文と同じ体裁(大高・いとう・小平,2010)をとる。研究テーマは「悩みや行き詰まり」(向谷地生良,2009)で、重要なのが自己病名である。自己病名は「自分たちで一番実感できる自己流の病名」(伊藤知之,2007)である。自己病名と研究テーマの表現の特徴を明らかにすれば、当事者視点からのリカバリーに何らかの示唆が得られると考える。当事者向けのNPO法人コンボ出版の雑誌『こころの元気+』を対象に、2007年より連載中の120回分の「べてるの家の当事者研究」の記事から、自己病名と研究テーマを抽出しテキストマニング分析した。その結果より、自己病名や研究テーマにより当事者視点での苦労が可視化され、成長と発見がなされることで、生きづらさを仲間と共有でき、「人としてのリカバリー」(Slade, 2013/ 2017)のプロセスに役立つ意義があると考察された。