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Refsort/Rubyの紹介と
分類学への応用
Introduction to Refsort/Ruby
and its application to taxonomy
2019年2月16日
大田黒俊夫
自己紹介
• 流体力学の研究者(だった😢),特に乱流の研究をしていた
ので,「乱れ」や「揺らぎ」というキーワードには敏感に反応
• 実験屋なので,計測関係のハードウェア,ソフトウェアにはそ
れなりに詳しい
• 大学院生のころ,パターン認識の勉強中に渡辺慧の「みにく
いアヒルの子の定理」で分類学に目覚める
• バードウォッチング,自然観察は学生のころからの趣味
• ブログ 望湖庵日記
http://griffin.cocolog-nifty.com/lakesidediary/
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初めに
Introductory Notes
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 3
Refsort/Rubyとは何か?
• 辞書参照型の汎用ソーティング・フィルタ
• 探鳥会のフィールドノートを自動的に整理するため,DOS用
のプログラムとしてC言語で実装(1991年)
• Windows用にRubyスクリプトとして再実装(v1.00, 2001年)
• 機能拡張とバグ修正を加え,現在v2.96(2018年)
• Excelとのインターフェースを作成(2018年)
• Ruby 2.4系列以降で動作
• マルチエンコーディング…ASCII, CP932, UTF-8, etc.
• マルチプラットフォーム…Windows, Linux, Mac
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 4
Refsort/Rubyは何ができるのか?
• 入力された文字列を辞書と照合し,行単位で並べ替える
• 並べ替えの基準は辞書内の順序,文字コードや数値に依らない
• 長所
• 辞書ファイルをユーザが簡単に作成可能
• 複数フィールドからなる柔軟なレコード処理が可能
• フィールド内に複数の別名を定義可能
• 出力の柔軟な編集が可能
• 辞書に埋め込んだ階層型ラベルを出力可能
• Excelから手軽にGUIで操作可能
• 短所
• Rubyをインストールする必要がある
• 辞書に書かれていないものは並べ替えの対象としないため,想定され
る対象すべてを,一字一句正確に辞書に網羅しておく必要がある
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 5
辞書ファイルの例 日本鳥類目録 v7
#!E -*- coding: Windows-31J -*-
#!R ","
(中略)
#!m > [GALLIFORMES; キジ目]
#!m >> [Phasianidae; キジ科]
#!m >>>> [Tetrastes; エゾライチョウ属] # "Keyserling & Blasius"
Tetrastes bonasia, Hazel Grouse, エゾライチョウ # "(Linnaeus, 1758)"
Tetrastes bonasia vicinitas, , 亜種エゾライチョウ # "Riley, 1915"
(中略)
#!m >> [Emberizidae; ホオジロ科]
#!m >>>> [Emberiza; ホオジロ属] # "Linnaeus"
Emberiza lathami, Crested Bunting, レンジャクノジコ # "Gray, 1831"
Emberiza citrinella, Yellowhammer, キアオジ # "Linnaeus, 1758"
Emberiza citrinella erythrogenys, , 亜種キアオジ # "Brehm, 1855"
Emberiza leucocephalos, Pine Bunting, シラガホオジロ # "Gmelin, 1771"
Emberiza leucocephalos leucocephalos, , 亜種シラガホオジロ # "Gmelin, 1771"
Emberiza cioides, Meadow Bunting, ホオジロ # "Brandt, 1843"
(後略)
フィールド構成 〔学名,英名,和名 # コメント〕
全体で1,675行のテキストファイルに1,145の種と亜種を収録
#以降はコメントとして扱う
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入力ファイル例
# ---- tamagawa.txt -----
ツグミ # 雑木林の落ち葉の上
スズメ # 民家の庭
ジョウビタキ # ♂ 土手の薮
マガモ # 約 50 羽
カルガモ # 100 羽以上
ヒドリガモ # 約 50 羽
オナガガモ # 約 100 羽
ハシビロガモ # ♂♀
セグロセキレイ
トビ # 河原の上空
アオジ # 川の土手の薮の中
アトリ # あまりよく見えなかった
ユリカモメ # 約 20 羽
カイツブリ # 堰堤の上流部
モズ # ♂の高鳴き
#以降はコメントとして扱う
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実行コマンドの例
〔コンソール入力〕
ruby refsort.rb –f jpblist_v70p3w.ref –n -r2 tamagawa.txt
Rubyスクリプトの実行 辞書ファイルの指定 オプション 入力ファイルの指定
〔コンソール出力〕(標準エラー出力)
jpblist_v70p3w.ref: 1145 records
tamagawa.txt: 15 records
tamagawa.txt: 15 identified records
tamagawa.txt: 15 unique records
これに引き続いて並べ替え結果が表示される
・・・辞書ファイルレコード数
・・・入力ファイルレコード数
・・・同定された入力レコード数
・・・非重複入力レコード数
-n 出力に通し番号をつける
-r2 辞書ファイルの第2フィールドをキーにする-
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並べ替え結果の例
〔コンソール出力〕(標準出力)
1 ヒドリガモ # 約 50 羽
2 マガモ # 約 50 羽
3 カルガモ # 100 羽以上
4 ハシビロガモ # ♂♀
5 オナガガモ # 約 100 羽
6 カイツブリ # 堰堤の上流部
7 ユリカモメ # 約 20 羽
8 トビ # 河原の上空
9 モズ # ♂の高鳴き
10 ツグミ # 雑木林の落ち葉の上
11 ジョウビタキ # ♂ 土手の薮
12 スズメ # 民家の庭
13 セグロセキレイ
14 アトリ # あまりよく見えなかった
15 アオジ # 川の土手の薮の中
• デフォルトでは,各入力行を並べ替えてそのまま出力
• ただし行頭には –n オプションに基づく通し番号を付加
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レコードとフィールド
Records and Fields
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レコードとフィールド
• 情報処理の最も基本的な単位がレコード
• テキスト処理の場合には行をレコードとするのが自然
• 行とは改行で区切られた文字列
• ただし改行コードはプラットフォームに依存…CR/LF, LF, CR
• Refsort/Ruby では,レコード番号は0から始まることにする
• レコード内部に下位構造としてフィールドを定義
• フィールドは特定の記号で区切られた文字列
• 空白文字(空白とタブ)やカンマが用いられることが多い
• 同時に複数のフィールド区切り記号を定義することも可能
• 例 カンマとセミコロンがともに区切り記号
• Refsort/Ruby では,フィールド番号は0から始まることにする
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レコードとフィールドの例
Tetrastes bonasia, Hazel Grouse, エゾライチョウ # "(Linnaeus, 1758)"↵
Tetrastes bonasia vicinitas, , 亜種エゾライチョウ # "Riley, 1915"↵
〔日本鳥類目録 v7〕
第0フィールド 第1フィールド 第2フィールド
第0フィールド 第1フィールド 第2フィールド
• レコード区切り記号は改行
• 改行を表す文字コードはプラットフォームに依存
• この例でのフィールドの区切りはカンマ
• フィールド区切り記号に隣接する空白文字は無視される
第 xx レコード
第 yy レコード
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Refsortでのフィールド区切り記号
• デフォルトのフィールド区切り記号は空白とタブ
• ただし,コマンドライン・オプションや,辞書ファイル・入力ファイ
ル内部で何度でも再定義できる
• それぞれ –R オプションと –I オプションで再定義可能
• 辞書ファイルや入力ファイルの途中からフィールド区切り記号
を変更することも可能
• 複数の区切り記号が混在することも許す
• Refsortでは,辞書ファイルのフィールド区切り記号としてカン
マを推奨,すなわち CSV を推奨する
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 13
キーとなるフィールドの指定
• どのようなフィールドの組み合わせを並べ替えのキーにする
のか指定できる
〔コマンドラインの例〕
ruby refsort.rb -f jpblist_v70p3w.ref -n -r2 tamagawa.txt
• この辞書ファイルでは和名は第2フィールドにあるので,それをキーにして並べ替え
るためには -r2 というオプションが必要
• 入力テキストの並べ替えのキーは –i オプションで指定
• 何も指定しなければ,-r0 -i0 と指定したと見なされる
• フィールド指定では -r2,3,0-1 のような順序付きのフィールドの組が可能,重複
した場合は最初のフィールドのみを採用
• 複数フィールドを指定しても,多重キーソートとはならないことに注意
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 14
別名とは
• 辞書の一つのフィールド内部に複数の「別名」を定義可能
• それぞれの別名は互いに対等なものとして扱われるので,並
べ替えの順位も対等となる
• 別名の区切り記号は ‘|’,隣接する空白は無視
• 学名・英名のバリエーションや,分類体系の改変,変遷に柔軟
に対応可能
• 植物は別名が多いので,この機能は必須
〔辞書ファイル中の別名の例〕
Columba livia, Rock Dove, カワラバト | ドバト
Passerculus sandwichensis, Savannah Sparrow, サバンナシトド | クサチヒメドリ
クロビ | クロベ | ゴロウヒバ | ネズコ, Thuja standishii
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埋め込みラベル
Embedded Labels
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階層別分類と埋め込みラベル
• 生物分類の階層
• ドメインー界ー門ー綱ー目ー科ー属ー種
• regio-regnum-phylum-classis-ordo-familia-genus-species (Latin)
• domain-kingdom-phylum-class-order-family-genus-species (Eng)
• 門ごとに分類・命名規約(接尾辞の慣習)が決められている
• 鳥類では 目ー科ー亜科ー属ー種 と階層化するのが代表的
• 植物は,種以下に亜種,変種などの多様性が加わる
• 階層ごとのラベル(…科,...属など)は重要でよく参照される
• ラベルを辞書ファイルにコメントとして埋め込んでおけば,Refsort のオ
プション指定によってそれらを参照し出力できる
• 汎用性を考え,これを埋め込みラベルと呼ぶ
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ラベルを埋め込むルール
• 辞書への埋め込み規則
1. #!m + 空白文字列 + 階層深さを表す1個以上の記号 + 空白文字列 + ラベル文字列
2. #!m + 空白文字列 + 記号と深さを表す数字 + 空白文字列 + ラベル文字列
• 階層の深さを表す記号は何でもよいが統一すること
• 階層が深い場合は2番目の規則が便利
• 途中の空白文字列とは,1個以上のスペースまたはタブ
• 出力するためのオプション指定
• -m または –M を指定すると,ラベルを追加して出力する
• 後者を指定すると,階層の深さに応じて字下げして出力
• オプションを指定しなければ,ただのコメントとして無視される
〔辞書ファイルの例〕
#!m >> [Emberizidae; ホオジロ科]
#!m >>>> [Emberiza; ホオジロ属] # "Linnaeus“
#!m >4 [Zonotrichia; ミヤマシトド属] # "Swainson, 1832"
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埋め込みラベルの出力例
ruby refsort.rb –f jpblist_v70p3w.ref –Mnr2 sample.txt
[GALLIFORMES; キジ目]
[Phasianidae; キジ科]
[Bambusicola; コジュケイ属]
1 コジュケイ
コジュケイ #2
[ANSERIFORMES; カモ目]
[Anatidae; カモ科]
[Cygnus; ハクチョウ属]
2 コブハクチョウ
3 コハクチョウ
4 オオハクチョウ
[Anas; マガモ属]
5 オカヨシガモ
6 ヨシガモ
7 ヒドリガモ
8 カルガモ
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辞書ファイルいろいろ
Different Reference Files
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日本鳥類目録に準拠した辞書
• 日本鳥学会の日本鳥類目録改訂第7版(2012)に準拠
• 日本で観察記録のある合計1,145の種と亜種を収録
• 英名は IOC List v3.2 に準拠して修正
• フィールド構成 {学名,英名,和名 # コメント}
• 目,科,属をラベルとして埋め込み
• エンコーディングは Windows-31J(CP932) と UTF-8
• それぞれ jpblist_v70p3w.ref と jpblist_v70p3u.ref
• Windows-31J とは Shift-JIS の拡張版
• 日本での野鳥観察記録の整理にはこれで(ほぼ)十分
• 10年に一度の改訂頻度の低さが玉にきず
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 21
IOC World Bird List に準拠した辞書
• International Ornithological Congress が制定
• 全世界の鳥の学名と標準英名のリスト
• 最新版はv9.1 (2019-01-20),10,897の種と20,046の亜種を収録
• 近い将来,他の主要チェックリストと統合される見込み
• フィールド構成 {学名,英名 # コメント}
• 上目,目,科,属をラベルとして埋め込み
• エンコーディングは US-ASCII と UTF-8
• それぞれ ioclist_v91a.ref と ioclist_v91u.ref
• 正版は UTF-8 であり,US-ASCII 版は人名などを英文字に簡略化
• 年に2回の高頻度改訂
• 種の分割や属の異動が頻繁に起こる
• 種ごとの改訂の根拠やコメントは充実
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IOC World Bird List 和名追加版辞書
• IOC List のすべての種に和名を追加したリスト
• 亜種のうち日本鳥類目録にも存在する亜種にはその和名を追加
• その結果合計 11,312 の種と亜種の和名を収録
• 最新版はv9.1,学名と英名は IOC List と完全に同一
• 和名はさまざまな文献から収録,未命名のものについては和名を創作
し,推奨和名として提案
• フィールド構成 {学名,英名,和名 # コメント}
• 上目,目,科,属をラベルとして埋め込み
• エンコーディングは Windows-31J(CP932) と UTF-8
• それぞれ ioclist_v91jw.ref と ioclist_v91ju.ref
• 正版は UTF-8,Windows-31J 版は人名などを英文字に簡略化
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IOC World Bird List の履歴
6
7
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
1
2
3
4
5
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
4
1
2
3
1
2
1
0
2
4
6
8
10
12
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020
系列のsub-versionの推移
v1
v2
v3
v4
v5
v6
v7
v8
v9
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IOC World Bird List の特徴
• 基本思想は「統一性」と「唯一性」
• 学名も英名も唯一性を追求し,多様性(別名)を認めない
• 英名の地域による多様性を統一(Loon > Diver)
• スペリングの英米差については,過去の実績にもとづき片方に決定
• grey > gray, sombre > somber, color > colour
• 一方で,大陸系のアルファベット(ウムラウトやアクセントを含む人名)を
使った英名や,現地語の使用もある
• e.g., Alström's Warbler
• ハイフンや語頭の大文字の使い方についても規定
• 多様性との共存が論点
• Refsort は多様性を許容する思想で開発してきた
• 別名との共存や,大文字/小文字,ハイフンと空白の同一視が可能
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日本産種子植物リスト
• 日本産の種子植物を新エングラー体系の順列で記載したもの
• NIFTY-Serve FBIRD フォーラムで初代 Refsort 用辞書ファイルとして
公開された PLANT03.REF by PALITAN (1994) の再録
• 合計 5,381 種
• フィールド構成 {和名, 学名 # コメント}
• 科,属をラベルとして埋め込み
• 文字コードは Windows-31J(CP931) と UTF-8
• jplant056w.ref と jplant056u.ref
• 残念ながら保守管理できていない
• APG に準拠した辞書ファイルを作成したいが,元にすべき
データがわからない
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使用例 (詳細はユーザーズガイドを参照のこと)
Examples
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もっとも簡単な例
入力 出力
# ----- test.txt -----
カモメ # 見誤り?
ツグミ # 鳴き声明瞭
オオタグロカモメ # 見たことある?
セグロセキレイ
ヒヨドリ
マガモ
ヒバリ # 揚げヒバリ
タシギ
ミヤマセキレイ # こんな鳥いたかしら?
ハシブトガラス # 多数
ホオジロ
辞書ファイル: jpblist_v70p3w.ref
Option: -r2
!R 54: -R "," redefined
jpblist_v70p3w.ref: 1145 records
!I 4: "オオタグロカモメ" not found in …
!I 10: "ミヤマセキレイ" not found in …
test.txt: 11 records
test.txt: 9 identified records
test.txt: 9 unique records
マガモ
タシギ
カモメ # 見誤り?
ハシブトガラス # 多数
ヒバリ # 揚げヒバリ
ヒヨドリ
ツグミ # 鳴き声明瞭
セグロセキレイ
ホオジロ
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数値や日付時刻での並べ替え
第1フィールドの数値がキー 第1フィールドの日付時刻がキー
辞書ファイル: なし
Option: -i1 –e
カワアイサ 2 1.20
ハシビロガモ 2 3.33
マガモ 10 4.22
ハシビロガモ 10 4.44
マガモ 20 0.56
キンクロハジロ 20 12.41
マガモ 20 -2.25
アオサギ 20 6.96
カルガモ 30 3.14
カルガモ 50 2.45
スズガモ 50+ 1.45
カルガモ 50+ -0.87
ヒドリガモ 50+ 8.02
ヒドリガモ 100+ 3.21
オナガガモ 100+ 3.21
オナガガモ 150+ -0.09
オナガガモ 150+ 1.93
ヒドリガモ 200+ 10.40
辞書ファイル: なし
Option: -i1 -t
オオヨシキリ 2017-04-28T11:21
ハシブトガラス 2017-04-29T09:38
ムナグロ 2017-04-29T10:13
ホオジロ 2017-04-29T10:25
コサギ 2017-04-30T14:00
ダイサギ 2017-04-30T14:01
アマサギ 2017-04-30T14:20
スズメ 2017-05-03T09:02
シジュウカラ 2017-05-03T09:03
ヒヨドリ 2017-05-06T10:12
ムクドリ 2017-05-06T10:13
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 29
埋め込みラベルの出力例
フラット型 インデント型
辞書ファイル: jpblist_v70p3w.ref
Option: -mn -r2
[ANSERIFORMES; カモ目]
[Anatidae; カモ科]
[Anas; マガモ属]
1 マガモ
[PODICIPEDIFORMES; カイツブリ目]
[Podicipedidae; カイツブリ科]
[Tachybaptus; カイツブリ属]
2 カイツブリ
[Podiceps; カンムリカイツブリ属]
3 ハジロカイツブリ
[GAVIIFORMES; アビ目]
[Gaviidae; アビ科]
[Gavia; アビ属]
4 アビ
[SULIFORMES; カツオドリ目]
[Phalacrocoracidae; ウ科]
[Phalacrocorax; ウ属]
5 カワウ
6 ウミウ
[CHARADRIIFORMES; チドリ目]
[Laridae; カモメ科]
[Larus; カモメ属]
7 オオセグロカモメ
辞書ファイル: jpblist_v70p3w.ref
Option: -Mn -r2
[ANSERIFORMES; カモ目]
[Anatidae; カモ科]
[Anas; マガモ属]
1 マガモ
[PODICIPEDIFORMES; カイツブリ目]
[Podicipedidae; カイツブリ科]
[Tachybaptus; カイツブリ属]
2 カイツブリ
[Podiceps; カンムリカイツブリ属]
3 ハジロカイツブリ
[GAVIIFORMES; アビ目]
[Gaviidae; アビ科]
[Gavia; アビ属]
4 アビ
[SULIFORMES; カツオドリ目]
[Phalacrocoracidae; ウ科]
[Phalacrocorax; ウ属]
5 カワウ
6 ウミウ
[CHARADRIIFORMES; チドリ目]
[Laridae; カモメ科]
[Larus; カモメ属]
7 オオセグロカモメ
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 30
植物観察リストの出力例
辞書ファイル: jplant056w.ref
Option: -n
1 アキノキリンソウ
2 セイタカアキノキリンソウ # i.e., セイタカアワダチソウ
セイタカアワダチソウ
3 アキノノゲシ
4 ノハラアザミ
5 オオオナモミ
6 ヤクシソウ
7 リュウノウギク
8 コウヤボウキ
9 ノコンギク # 1
ノコンギク # 2
10 アメリカセンダングサ
11 コセンダングサ
12 ダンドボロギク
13 セイヨウタンポポ
14 ノゲシ
15 オオアレチノギク
16 ヒメムカシヨモギ
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 31
REFSORT ON EXCEL
Interface connecting Refsort with Excel
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 32
Refsort on Excel
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 33
• RefsortをExcelから利用するためのインター
フェース
• Refsortのほとんどの機能を利用可能
• ワークシート上に常駐するコントロールパネ
ルで直感的に操作
• 辞書の切り替えやオプションの変更が容易
• 並べ替え対象のリストを選択し,Sortボタン
を押すだけ
• 並べ替え結果はクリップボードに格納される
ため,ワークシートのみならず他のアプリ
ケーションへも簡単に貼り付け可能
• スピード重視の実装により,長大なリストで
も実用的な処理速度を実現
長大なリストを高速・柔軟に編集して出力
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 34
• Refsort on Excel v1.70の表示例
• 全部で15レコードの入力(第1フィールドにはコ
メントあり)をラベル付きで出力したもの
• IOC List v8.2に収録された全30,924種をワー
クシートから読み込み,IOC Listに従って並べ
替え,クリップボードに格納するのに要する時
間は5-6秒ほど
分類学について思うこと
Quo vadis, Taxonomy?
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 35
分類とはなにか?
• なぜ分類するとわかったような気になるのか?
• Wisdom begins with putting the right name on a thing. (Confucius)
• 単なる気のせいではないのか?人間の脳機能の特性?
• 分類すると何がうれしいのか?
• 情報量を圧縮できて思考を節約できる(エントロピーを極小化?)
• 世界を体系的に認識できる(ような気がして気分がよい)
• 生きていくうえでなにかと役に立つ
• (分岐)分類学に対する違和感
• 分岐分類学: できるだけ多数の形質を重みづけせずに比較して,進化
における分岐パターンを推測し,それに基づいて分類する
• 「みにくいアヒルの子の定理」の含意を知らないのか?
• 魚類,爬虫類,双子葉植物は側系統なので分類群とは認められない
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 36
種は実在するのか?
• 分類は人間の「認識」という行動に深く関係
• 実在論(Realism)と唯名論(Nominalism)…古代ギリシアから
続いた哲学上の大論争
• 類(普遍者,Class)は実在するのか?
• それとも類とは似たものどうしを集めた器に付けた単なる名前か?
• 類似性が類の凝集力となっているが,「似ている」とはどういうことか?
• みにくいアヒルの子の定理 (Watanabe, 1969)
• 有限個の述語で特徴を記述できるものに対して,共有する述語の数に
よって互いの類似度を測ることにすると,すべてが同じ類似度を持つこ
とを証明できる
• これにより,類を客観的に定義する根拠は崩壊する
• 人間は各述語を重みづけして,つまり主観的に認識しているらしい
• 重みづけとは便宜そのもの,生きていくうえで重要なものを区別すること
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 37
私にとっての分類学
• どちらかというと(穏健な)唯名論者
• 種(という抽象的な類)は実在しない,ましてや科や目などは実在しない
• 種(と呼ばれているもの)の境界は,程度の差はあるがぼんやりとした
曖昧なもので常に揺らいでいる
• 交配し変異しながら子孫を残す凝集性のある個体群こそ実在し,意味
がある集合
• 種は人間が便宜上考え出した類
• 分類とは,人間(生物)が進化の過程で獲得した適応「行動」の一つ
• 種や系統は認識という行為の産物であって,所与の実在ではない
• 人間にとって役立つよう類も系統も認識されている
• 種も系統も便宜であって実在ではない,しかし,だからこそ役に立つ
• そのような分類観と分岐分類学との折り合いはつくか?
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 38
付録
みにくいアヒルの子の定理
Theorem of The Ugly Duckling
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 39
みにくいアヒルの子の定理
「認識とパタン」渡辺慧著,岩波新書(1978)
例題 基本述語 2個 (n=2)
A: 頭部の羽毛は白色
B: 趾(あしゆび)はオレンジ色
この組み合わせは m = 2n = 4通り
A B
a2 a1 a3 a4
Atom 論理式 物件の例
a1 A ⋂ B アヒルの親や子
a2 A ⋂ ¬B ハクチョウの親
a3 ¬A ⋂ B ミヤコドリ
a4 ¬A ⋂ ¬B みにくいアヒルの子
• これらの Atom から作られる述語をすべて列記するには,0個から4個までのすべての
Atom の組合せを羅列する必要がある
• 述語の数は,上図の4つに分けられた領域 a1, … , a4 から r 個 (r = 0, 1, 2, 3, 4) を取る
組合せの総数 Σ mCr = 2m に等しい(r を述語の階数 rank と呼ぶ)
• 任意の2物件は a1, … , a4 の Atom のどれかに属するが,共有する述語の数は各 rank
について m-2Cr-2個,r について合計して 2m-2 個となり,ともに物件の取り方によらない
• A と B ではなく,例えば A と C = A⋓B (排他的論理和)を
基本述語に選ぶと,B = A⋓C と書ける.基本述語の選び
方には自由度があり,基本述語の見かけの単純さに惑わ
されてはならない.
• すべての論理的組合せを尽くして(ブール完備束)述語を
構成し,基本述語の選び方によらない公平な数え方をす
る必要がある.← この定理のキモ,最も引っかかるところ
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 40
記号 ¬ は否定を表す
共通述語:アヒルの親や子⇔ハクチョウの親
述語 階数 #
アヒルの親や子
∈ a1
ハクチョウの親
∈ a2
ミヤコドリ
∈ a3
みにくいアヒルの子
∈ a4
ø 0 0
a1 1 1 ✔
a2 1 2 ✔
a3 1 3 ✔
a4 1 4 ✔
a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔
a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔
a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔
a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔
a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔
a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔
a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 41
共通述語:ハクチョウの親⇔ミヤコドリ
述語 階数 #
アヒルの親や子
∈ a1
ハクチョウの親
∈ a2
ミヤコドリ
∈ a3
みにくいアヒルの子
∈ a4
ø 0 0
a1 1 1 ✔
a2 1 2 ✔
a3 1 3 ✔
a4 1 4 ✔
a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔
a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔
a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔
a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔
a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔
a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔
a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 42
共通述語:ミヤコドリ⇔みにくいアヒルの子
述語 階数 #
アヒルの親や子
∈ a1
ハクチョウの親
∈ a2
ミヤコドリ
∈ a3
みにくいアヒルの子
∈ a4
ø 0 0
a1 1 1 ✔
a2 1 2 ✔
a3 1 3 ✔
a4 1 4 ✔
a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔
a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔
a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔
a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔
a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔
a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔
a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 43
共通述語:アヒルの親や子⇔ミヤコドリ
述語 階数 #
アヒルの親や子
∈ a1
ハクチョウの親
∈ a2
ミヤコドリ
∈ a3
みにくいアヒルの子
∈ a4
ø 0 0
a1 1 1 ✔
a2 1 2 ✔
a3 1 3 ✔
a4 1 4 ✔
a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔
a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔
a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔
a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔
a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔
a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔
a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 44
共通述語:ハクチョウの親⇔みにくいアヒルの子
述語 階数 #
アヒルの親や子
∈ a1
ハクチョウの親
∈ a2
ミヤコドリ
∈ a3
みにくいアヒルの子
∈ a4
ø 0 0
a1 1 1 ✔
a2 1 2 ✔
a3 1 3 ✔
a4 1 4 ✔
a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔
a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔
a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔
a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔
a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔
a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔
a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 45
共通述語:アヒルの親や子⇔みにくいアヒルの子
述語 階数 #
アヒルの親や子
∈ a1
ハクチョウの親
∈ a2
ミヤコドリ
∈ a3
みにくいアヒルの子
∈ a4
ø 0 0
a1 1 1 ✔
a2 1 2 ✔
a3 1 3 ✔
a4 1 4 ✔
a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔
a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔
a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔
a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔
a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔
a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔
a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 46
ブール完備束の格子表現
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 47
ø
a1
A ⋂ B
a2
A ⋂ ¬B
a3
¬A ⋂ B
a4
¬A ⋂ ¬B
a1 ⋃ a2
A
a1 ⋃ a3
B
a1 ⋃ a4
¬(A ⋓ B)
a2 ⋃ a3
A ⋓ B
a2 ⋃ a4
¬B
a3 ⋃ a4
¬A
a1 ⋃ a2 ⋃ a3
A ⋃ B
a1 ⋃ a2 ⋃ a4
A ⋃ ¬B
a1 ⋃ a3 ⋃ a4
¬A ⋃ B
a2 ⋃ a3 ⋃ a4
¬A ⋃ ¬B
a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4
□ Rank 4
Rank 3
Rank 2
Rank 1
Rank 0
180度の回転と否定に対して対称
定理を理解するための補足
• {A, B} や {A, A⋓B} と {A∩B, A∩¬B} とは情報の冗長性のレベルが異なる
ので,それらを平等に数えるのはおかしい.冗長性が同じレベルの述語ど
うしを比較して共通述語を数えるべきだ(小野山, 1995)
⇒ 「みにくいアヒルの子の定理・情報版」 と名付ける
• 冗長性のレベルとは述語の rank のことらしいが,定理はそれぞれの rank 内の述語に対
しても成り立つので,定理を修正する必要がないことを小野山も承知している
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 48
• ブール完備束は互いに否定関係にある述語の対で構成されており,その
冗長性のために共有述語が二重計上されているのではないか?
• 冗長な述語は互いに否定関係にある対となっているため,二重に計上されることはない
(Lattice diagramを見るとわかる)
• なぜ考えうるすべての述語を平等に扱わなければならないのか?例題の
A⋓B や A∪¬B に相当する自然言語の述語や概念はないのに
• 誰もが最も疑問に思う点 ⇒ 次のスライドで説明
渡辺が(たぶん)言いたかったこと
• 真に客観的に(人間がコンピュータに各述語の価値や重みを事前
に教えないで)分類を行おうとすると,考えうるすべての述語を網羅
する(あらゆる切り口で対象を評価する)徹底が必要だろう
• たとえある述語の対応物が人間の自然言語にはないとしても,たとえ人間
がその切り口で物事を認識することはないとしても
• 地球型生命とは異なる生命原理で進化した知的生命が,地球に探査ロボッ
トを送り込むとき,どのような述語体系を持たせればよいだろうか?
• しかし,網羅した述語を平等に扱うと,この定理の罠に捕らえられ,
分類が不可能となる
• 重み付けされた述語体系があって初めて分類は可能となる
• 重み付けは価値(主観)に基づくのであり,だからこそ役に立つ
• 重み付けとは,長い試行錯誤を含む帰納的プロセスであり,生物は進化の
過程でそのプロセス(感覚器官や脳・神経系の発達)を実行してきた
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 49
で,どうすりゃいいのさ?
• 分類学から「客観」という看板を下ろしてはどうか?
• 「客観」を言い過ぎると,みにくいアヒルの子が襲ってくる
• 「客観」を掲げることで神の視点に近づきたいのだろうが,客観とは人工
知能の学習前の初期状態・・・分類も認識も不可能
• 人間の認知機能は本質的に主観的だと認めよう
• 「主観」の有用性を訴えるしかないのでは?
• 例えば,進化系統を最重視すること自体に何ら問題はない
• そのほうが生物界を理解しやすいのであれば
• ただしそれは神の視点ではなく,ある評価尺度に基づく一つの主観
• 「分類とは,世界観の表明にほかならない」 (野口悠紀雄,1993)
• 有用性が客観性よりも劣っているとか低レベルということはない
• 複数の異なる主観に対して,ほぼ一定の塊りを保つカテゴリが得られれ
ば,それは普遍的な価値を持つと言ってよいのではないか?
2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 50

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Introduction to refsort_20190216

  • 1. Refsort/Rubyの紹介と 分類学への応用 Introduction to Refsort/Ruby and its application to taxonomy 2019年2月16日 大田黒俊夫
  • 2. 自己紹介 • 流体力学の研究者(だった😢),特に乱流の研究をしていた ので,「乱れ」や「揺らぎ」というキーワードには敏感に反応 • 実験屋なので,計測関係のハードウェア,ソフトウェアにはそ れなりに詳しい • 大学院生のころ,パターン認識の勉強中に渡辺慧の「みにく いアヒルの子の定理」で分類学に目覚める • バードウォッチング,自然観察は学生のころからの趣味 • ブログ 望湖庵日記 http://griffin.cocolog-nifty.com/lakesidediary/ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 2
  • 3. 初めに Introductory Notes 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 3
  • 4. Refsort/Rubyとは何か? • 辞書参照型の汎用ソーティング・フィルタ • 探鳥会のフィールドノートを自動的に整理するため,DOS用 のプログラムとしてC言語で実装(1991年) • Windows用にRubyスクリプトとして再実装(v1.00, 2001年) • 機能拡張とバグ修正を加え,現在v2.96(2018年) • Excelとのインターフェースを作成(2018年) • Ruby 2.4系列以降で動作 • マルチエンコーディング…ASCII, CP932, UTF-8, etc. • マルチプラットフォーム…Windows, Linux, Mac 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 4
  • 5. Refsort/Rubyは何ができるのか? • 入力された文字列を辞書と照合し,行単位で並べ替える • 並べ替えの基準は辞書内の順序,文字コードや数値に依らない • 長所 • 辞書ファイルをユーザが簡単に作成可能 • 複数フィールドからなる柔軟なレコード処理が可能 • フィールド内に複数の別名を定義可能 • 出力の柔軟な編集が可能 • 辞書に埋め込んだ階層型ラベルを出力可能 • Excelから手軽にGUIで操作可能 • 短所 • Rubyをインストールする必要がある • 辞書に書かれていないものは並べ替えの対象としないため,想定され る対象すべてを,一字一句正確に辞書に網羅しておく必要がある 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 5
  • 6. 辞書ファイルの例 日本鳥類目録 v7 #!E -*- coding: Windows-31J -*- #!R "," (中略) #!m > [GALLIFORMES; キジ目] #!m >> [Phasianidae; キジ科] #!m >>>> [Tetrastes; エゾライチョウ属] # "Keyserling & Blasius" Tetrastes bonasia, Hazel Grouse, エゾライチョウ # "(Linnaeus, 1758)" Tetrastes bonasia vicinitas, , 亜種エゾライチョウ # "Riley, 1915" (中略) #!m >> [Emberizidae; ホオジロ科] #!m >>>> [Emberiza; ホオジロ属] # "Linnaeus" Emberiza lathami, Crested Bunting, レンジャクノジコ # "Gray, 1831" Emberiza citrinella, Yellowhammer, キアオジ # "Linnaeus, 1758" Emberiza citrinella erythrogenys, , 亜種キアオジ # "Brehm, 1855" Emberiza leucocephalos, Pine Bunting, シラガホオジロ # "Gmelin, 1771" Emberiza leucocephalos leucocephalos, , 亜種シラガホオジロ # "Gmelin, 1771" Emberiza cioides, Meadow Bunting, ホオジロ # "Brandt, 1843" (後略) フィールド構成 〔学名,英名,和名 # コメント〕 全体で1,675行のテキストファイルに1,145の種と亜種を収録 #以降はコメントとして扱う 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 6
  • 7. 入力ファイル例 # ---- tamagawa.txt ----- ツグミ # 雑木林の落ち葉の上 スズメ # 民家の庭 ジョウビタキ # ♂ 土手の薮 マガモ # 約 50 羽 カルガモ # 100 羽以上 ヒドリガモ # 約 50 羽 オナガガモ # 約 100 羽 ハシビロガモ # ♂♀ セグロセキレイ トビ # 河原の上空 アオジ # 川の土手の薮の中 アトリ # あまりよく見えなかった ユリカモメ # 約 20 羽 カイツブリ # 堰堤の上流部 モズ # ♂の高鳴き #以降はコメントとして扱う 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 7
  • 8. 実行コマンドの例 〔コンソール入力〕 ruby refsort.rb –f jpblist_v70p3w.ref –n -r2 tamagawa.txt Rubyスクリプトの実行 辞書ファイルの指定 オプション 入力ファイルの指定 〔コンソール出力〕(標準エラー出力) jpblist_v70p3w.ref: 1145 records tamagawa.txt: 15 records tamagawa.txt: 15 identified records tamagawa.txt: 15 unique records これに引き続いて並べ替え結果が表示される ・・・辞書ファイルレコード数 ・・・入力ファイルレコード数 ・・・同定された入力レコード数 ・・・非重複入力レコード数 -n 出力に通し番号をつける -r2 辞書ファイルの第2フィールドをキーにする- 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 8
  • 9. 並べ替え結果の例 〔コンソール出力〕(標準出力) 1 ヒドリガモ # 約 50 羽 2 マガモ # 約 50 羽 3 カルガモ # 100 羽以上 4 ハシビロガモ # ♂♀ 5 オナガガモ # 約 100 羽 6 カイツブリ # 堰堤の上流部 7 ユリカモメ # 約 20 羽 8 トビ # 河原の上空 9 モズ # ♂の高鳴き 10 ツグミ # 雑木林の落ち葉の上 11 ジョウビタキ # ♂ 土手の薮 12 スズメ # 民家の庭 13 セグロセキレイ 14 アトリ # あまりよく見えなかった 15 アオジ # 川の土手の薮の中 • デフォルトでは,各入力行を並べ替えてそのまま出力 • ただし行頭には –n オプションに基づく通し番号を付加 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 9
  • 10. レコードとフィールド Records and Fields 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 10
  • 11. レコードとフィールド • 情報処理の最も基本的な単位がレコード • テキスト処理の場合には行をレコードとするのが自然 • 行とは改行で区切られた文字列 • ただし改行コードはプラットフォームに依存…CR/LF, LF, CR • Refsort/Ruby では,レコード番号は0から始まることにする • レコード内部に下位構造としてフィールドを定義 • フィールドは特定の記号で区切られた文字列 • 空白文字(空白とタブ)やカンマが用いられることが多い • 同時に複数のフィールド区切り記号を定義することも可能 • 例 カンマとセミコロンがともに区切り記号 • Refsort/Ruby では,フィールド番号は0から始まることにする 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 11
  • 12. レコードとフィールドの例 Tetrastes bonasia, Hazel Grouse, エゾライチョウ # "(Linnaeus, 1758)"↵ Tetrastes bonasia vicinitas, , 亜種エゾライチョウ # "Riley, 1915"↵ 〔日本鳥類目録 v7〕 第0フィールド 第1フィールド 第2フィールド 第0フィールド 第1フィールド 第2フィールド • レコード区切り記号は改行 • 改行を表す文字コードはプラットフォームに依存 • この例でのフィールドの区切りはカンマ • フィールド区切り記号に隣接する空白文字は無視される 第 xx レコード 第 yy レコード 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 12
  • 13. Refsortでのフィールド区切り記号 • デフォルトのフィールド区切り記号は空白とタブ • ただし,コマンドライン・オプションや,辞書ファイル・入力ファイ ル内部で何度でも再定義できる • それぞれ –R オプションと –I オプションで再定義可能 • 辞書ファイルや入力ファイルの途中からフィールド区切り記号 を変更することも可能 • 複数の区切り記号が混在することも許す • Refsortでは,辞書ファイルのフィールド区切り記号としてカン マを推奨,すなわち CSV を推奨する 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 13
  • 14. キーとなるフィールドの指定 • どのようなフィールドの組み合わせを並べ替えのキーにする のか指定できる 〔コマンドラインの例〕 ruby refsort.rb -f jpblist_v70p3w.ref -n -r2 tamagawa.txt • この辞書ファイルでは和名は第2フィールドにあるので,それをキーにして並べ替え るためには -r2 というオプションが必要 • 入力テキストの並べ替えのキーは –i オプションで指定 • 何も指定しなければ,-r0 -i0 と指定したと見なされる • フィールド指定では -r2,3,0-1 のような順序付きのフィールドの組が可能,重複 した場合は最初のフィールドのみを採用 • 複数フィールドを指定しても,多重キーソートとはならないことに注意 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 14
  • 15. 別名とは • 辞書の一つのフィールド内部に複数の「別名」を定義可能 • それぞれの別名は互いに対等なものとして扱われるので,並 べ替えの順位も対等となる • 別名の区切り記号は ‘|’,隣接する空白は無視 • 学名・英名のバリエーションや,分類体系の改変,変遷に柔軟 に対応可能 • 植物は別名が多いので,この機能は必須 〔辞書ファイル中の別名の例〕 Columba livia, Rock Dove, カワラバト | ドバト Passerculus sandwichensis, Savannah Sparrow, サバンナシトド | クサチヒメドリ クロビ | クロベ | ゴロウヒバ | ネズコ, Thuja standishii 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 15
  • 16. 埋め込みラベル Embedded Labels 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 16
  • 17. 階層別分類と埋め込みラベル • 生物分類の階層 • ドメインー界ー門ー綱ー目ー科ー属ー種 • regio-regnum-phylum-classis-ordo-familia-genus-species (Latin) • domain-kingdom-phylum-class-order-family-genus-species (Eng) • 門ごとに分類・命名規約(接尾辞の慣習)が決められている • 鳥類では 目ー科ー亜科ー属ー種 と階層化するのが代表的 • 植物は,種以下に亜種,変種などの多様性が加わる • 階層ごとのラベル(…科,...属など)は重要でよく参照される • ラベルを辞書ファイルにコメントとして埋め込んでおけば,Refsort のオ プション指定によってそれらを参照し出力できる • 汎用性を考え,これを埋め込みラベルと呼ぶ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 17
  • 18. ラベルを埋め込むルール • 辞書への埋め込み規則 1. #!m + 空白文字列 + 階層深さを表す1個以上の記号 + 空白文字列 + ラベル文字列 2. #!m + 空白文字列 + 記号と深さを表す数字 + 空白文字列 + ラベル文字列 • 階層の深さを表す記号は何でもよいが統一すること • 階層が深い場合は2番目の規則が便利 • 途中の空白文字列とは,1個以上のスペースまたはタブ • 出力するためのオプション指定 • -m または –M を指定すると,ラベルを追加して出力する • 後者を指定すると,階層の深さに応じて字下げして出力 • オプションを指定しなければ,ただのコメントとして無視される 〔辞書ファイルの例〕 #!m >> [Emberizidae; ホオジロ科] #!m >>>> [Emberiza; ホオジロ属] # "Linnaeus“ #!m >4 [Zonotrichia; ミヤマシトド属] # "Swainson, 1832" 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 18
  • 19. 埋め込みラベルの出力例 ruby refsort.rb –f jpblist_v70p3w.ref –Mnr2 sample.txt [GALLIFORMES; キジ目] [Phasianidae; キジ科] [Bambusicola; コジュケイ属] 1 コジュケイ コジュケイ #2 [ANSERIFORMES; カモ目] [Anatidae; カモ科] [Cygnus; ハクチョウ属] 2 コブハクチョウ 3 コハクチョウ 4 オオハクチョウ [Anas; マガモ属] 5 オカヨシガモ 6 ヨシガモ 7 ヒドリガモ 8 カルガモ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 19
  • 20. 辞書ファイルいろいろ Different Reference Files 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 20
  • 21. 日本鳥類目録に準拠した辞書 • 日本鳥学会の日本鳥類目録改訂第7版(2012)に準拠 • 日本で観察記録のある合計1,145の種と亜種を収録 • 英名は IOC List v3.2 に準拠して修正 • フィールド構成 {学名,英名,和名 # コメント} • 目,科,属をラベルとして埋め込み • エンコーディングは Windows-31J(CP932) と UTF-8 • それぞれ jpblist_v70p3w.ref と jpblist_v70p3u.ref • Windows-31J とは Shift-JIS の拡張版 • 日本での野鳥観察記録の整理にはこれで(ほぼ)十分 • 10年に一度の改訂頻度の低さが玉にきず 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 21
  • 22. IOC World Bird List に準拠した辞書 • International Ornithological Congress が制定 • 全世界の鳥の学名と標準英名のリスト • 最新版はv9.1 (2019-01-20),10,897の種と20,046の亜種を収録 • 近い将来,他の主要チェックリストと統合される見込み • フィールド構成 {学名,英名 # コメント} • 上目,目,科,属をラベルとして埋め込み • エンコーディングは US-ASCII と UTF-8 • それぞれ ioclist_v91a.ref と ioclist_v91u.ref • 正版は UTF-8 であり,US-ASCII 版は人名などを英文字に簡略化 • 年に2回の高頻度改訂 • 種の分割や属の異動が頻繁に起こる • 種ごとの改訂の根拠やコメントは充実 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 22
  • 23. IOC World Bird List 和名追加版辞書 • IOC List のすべての種に和名を追加したリスト • 亜種のうち日本鳥類目録にも存在する亜種にはその和名を追加 • その結果合計 11,312 の種と亜種の和名を収録 • 最新版はv9.1,学名と英名は IOC List と完全に同一 • 和名はさまざまな文献から収録,未命名のものについては和名を創作 し,推奨和名として提案 • フィールド構成 {学名,英名,和名 # コメント} • 上目,目,科,属をラベルとして埋め込み • エンコーディングは Windows-31J(CP932) と UTF-8 • それぞれ ioclist_v91jw.ref と ioclist_v91ju.ref • 正版は UTF-8,Windows-31J 版は人名などを英文字に簡略化 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 23
  • 24. IOC World Bird List の履歴 6 7 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 1 2 3 4 5 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 4 1 2 3 1 2 1 0 2 4 6 8 10 12 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 系列のsub-versionの推移 v1 v2 v3 v4 v5 v6 v7 v8 v9 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 24
  • 25. IOC World Bird List の特徴 • 基本思想は「統一性」と「唯一性」 • 学名も英名も唯一性を追求し,多様性(別名)を認めない • 英名の地域による多様性を統一(Loon > Diver) • スペリングの英米差については,過去の実績にもとづき片方に決定 • grey > gray, sombre > somber, color > colour • 一方で,大陸系のアルファベット(ウムラウトやアクセントを含む人名)を 使った英名や,現地語の使用もある • e.g., Alström's Warbler • ハイフンや語頭の大文字の使い方についても規定 • 多様性との共存が論点 • Refsort は多様性を許容する思想で開発してきた • 別名との共存や,大文字/小文字,ハイフンと空白の同一視が可能 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 25
  • 26. 日本産種子植物リスト • 日本産の種子植物を新エングラー体系の順列で記載したもの • NIFTY-Serve FBIRD フォーラムで初代 Refsort 用辞書ファイルとして 公開された PLANT03.REF by PALITAN (1994) の再録 • 合計 5,381 種 • フィールド構成 {和名, 学名 # コメント} • 科,属をラベルとして埋め込み • 文字コードは Windows-31J(CP931) と UTF-8 • jplant056w.ref と jplant056u.ref • 残念ながら保守管理できていない • APG に準拠した辞書ファイルを作成したいが,元にすべき データがわからない 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 26
  • 28. もっとも簡単な例 入力 出力 # ----- test.txt ----- カモメ # 見誤り? ツグミ # 鳴き声明瞭 オオタグロカモメ # 見たことある? セグロセキレイ ヒヨドリ マガモ ヒバリ # 揚げヒバリ タシギ ミヤマセキレイ # こんな鳥いたかしら? ハシブトガラス # 多数 ホオジロ 辞書ファイル: jpblist_v70p3w.ref Option: -r2 !R 54: -R "," redefined jpblist_v70p3w.ref: 1145 records !I 4: "オオタグロカモメ" not found in … !I 10: "ミヤマセキレイ" not found in … test.txt: 11 records test.txt: 9 identified records test.txt: 9 unique records マガモ タシギ カモメ # 見誤り? ハシブトガラス # 多数 ヒバリ # 揚げヒバリ ヒヨドリ ツグミ # 鳴き声明瞭 セグロセキレイ ホオジロ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 28
  • 29. 数値や日付時刻での並べ替え 第1フィールドの数値がキー 第1フィールドの日付時刻がキー 辞書ファイル: なし Option: -i1 –e カワアイサ 2 1.20 ハシビロガモ 2 3.33 マガモ 10 4.22 ハシビロガモ 10 4.44 マガモ 20 0.56 キンクロハジロ 20 12.41 マガモ 20 -2.25 アオサギ 20 6.96 カルガモ 30 3.14 カルガモ 50 2.45 スズガモ 50+ 1.45 カルガモ 50+ -0.87 ヒドリガモ 50+ 8.02 ヒドリガモ 100+ 3.21 オナガガモ 100+ 3.21 オナガガモ 150+ -0.09 オナガガモ 150+ 1.93 ヒドリガモ 200+ 10.40 辞書ファイル: なし Option: -i1 -t オオヨシキリ 2017-04-28T11:21 ハシブトガラス 2017-04-29T09:38 ムナグロ 2017-04-29T10:13 ホオジロ 2017-04-29T10:25 コサギ 2017-04-30T14:00 ダイサギ 2017-04-30T14:01 アマサギ 2017-04-30T14:20 スズメ 2017-05-03T09:02 シジュウカラ 2017-05-03T09:03 ヒヨドリ 2017-05-06T10:12 ムクドリ 2017-05-06T10:13 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 29
  • 30. 埋め込みラベルの出力例 フラット型 インデント型 辞書ファイル: jpblist_v70p3w.ref Option: -mn -r2 [ANSERIFORMES; カモ目] [Anatidae; カモ科] [Anas; マガモ属] 1 マガモ [PODICIPEDIFORMES; カイツブリ目] [Podicipedidae; カイツブリ科] [Tachybaptus; カイツブリ属] 2 カイツブリ [Podiceps; カンムリカイツブリ属] 3 ハジロカイツブリ [GAVIIFORMES; アビ目] [Gaviidae; アビ科] [Gavia; アビ属] 4 アビ [SULIFORMES; カツオドリ目] [Phalacrocoracidae; ウ科] [Phalacrocorax; ウ属] 5 カワウ 6 ウミウ [CHARADRIIFORMES; チドリ目] [Laridae; カモメ科] [Larus; カモメ属] 7 オオセグロカモメ 辞書ファイル: jpblist_v70p3w.ref Option: -Mn -r2 [ANSERIFORMES; カモ目] [Anatidae; カモ科] [Anas; マガモ属] 1 マガモ [PODICIPEDIFORMES; カイツブリ目] [Podicipedidae; カイツブリ科] [Tachybaptus; カイツブリ属] 2 カイツブリ [Podiceps; カンムリカイツブリ属] 3 ハジロカイツブリ [GAVIIFORMES; アビ目] [Gaviidae; アビ科] [Gavia; アビ属] 4 アビ [SULIFORMES; カツオドリ目] [Phalacrocoracidae; ウ科] [Phalacrocorax; ウ属] 5 カワウ 6 ウミウ [CHARADRIIFORMES; チドリ目] [Laridae; カモメ科] [Larus; カモメ属] 7 オオセグロカモメ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 30
  • 31. 植物観察リストの出力例 辞書ファイル: jplant056w.ref Option: -n 1 アキノキリンソウ 2 セイタカアキノキリンソウ # i.e., セイタカアワダチソウ セイタカアワダチソウ 3 アキノノゲシ 4 ノハラアザミ 5 オオオナモミ 6 ヤクシソウ 7 リュウノウギク 8 コウヤボウキ 9 ノコンギク # 1 ノコンギク # 2 10 アメリカセンダングサ 11 コセンダングサ 12 ダンドボロギク 13 セイヨウタンポポ 14 ノゲシ 15 オオアレチノギク 16 ヒメムカシヨモギ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 31
  • 32. REFSORT ON EXCEL Interface connecting Refsort with Excel 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 32
  • 33. Refsort on Excel 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 33 • RefsortをExcelから利用するためのインター フェース • Refsortのほとんどの機能を利用可能 • ワークシート上に常駐するコントロールパネ ルで直感的に操作 • 辞書の切り替えやオプションの変更が容易 • 並べ替え対象のリストを選択し,Sortボタン を押すだけ • 並べ替え結果はクリップボードに格納される ため,ワークシートのみならず他のアプリ ケーションへも簡単に貼り付け可能 • スピード重視の実装により,長大なリストで も実用的な処理速度を実現
  • 34. 長大なリストを高速・柔軟に編集して出力 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 34 • Refsort on Excel v1.70の表示例 • 全部で15レコードの入力(第1フィールドにはコ メントあり)をラベル付きで出力したもの • IOC List v8.2に収録された全30,924種をワー クシートから読み込み,IOC Listに従って並べ 替え,クリップボードに格納するのに要する時 間は5-6秒ほど
  • 35. 分類学について思うこと Quo vadis, Taxonomy? 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 35
  • 36. 分類とはなにか? • なぜ分類するとわかったような気になるのか? • Wisdom begins with putting the right name on a thing. (Confucius) • 単なる気のせいではないのか?人間の脳機能の特性? • 分類すると何がうれしいのか? • 情報量を圧縮できて思考を節約できる(エントロピーを極小化?) • 世界を体系的に認識できる(ような気がして気分がよい) • 生きていくうえでなにかと役に立つ • (分岐)分類学に対する違和感 • 分岐分類学: できるだけ多数の形質を重みづけせずに比較して,進化 における分岐パターンを推測し,それに基づいて分類する • 「みにくいアヒルの子の定理」の含意を知らないのか? • 魚類,爬虫類,双子葉植物は側系統なので分類群とは認められない 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 36
  • 37. 種は実在するのか? • 分類は人間の「認識」という行動に深く関係 • 実在論(Realism)と唯名論(Nominalism)…古代ギリシアから 続いた哲学上の大論争 • 類(普遍者,Class)は実在するのか? • それとも類とは似たものどうしを集めた器に付けた単なる名前か? • 類似性が類の凝集力となっているが,「似ている」とはどういうことか? • みにくいアヒルの子の定理 (Watanabe, 1969) • 有限個の述語で特徴を記述できるものに対して,共有する述語の数に よって互いの類似度を測ることにすると,すべてが同じ類似度を持つこ とを証明できる • これにより,類を客観的に定義する根拠は崩壊する • 人間は各述語を重みづけして,つまり主観的に認識しているらしい • 重みづけとは便宜そのもの,生きていくうえで重要なものを区別すること 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 37
  • 38. 私にとっての分類学 • どちらかというと(穏健な)唯名論者 • 種(という抽象的な類)は実在しない,ましてや科や目などは実在しない • 種(と呼ばれているもの)の境界は,程度の差はあるがぼんやりとした 曖昧なもので常に揺らいでいる • 交配し変異しながら子孫を残す凝集性のある個体群こそ実在し,意味 がある集合 • 種は人間が便宜上考え出した類 • 分類とは,人間(生物)が進化の過程で獲得した適応「行動」の一つ • 種や系統は認識という行為の産物であって,所与の実在ではない • 人間にとって役立つよう類も系統も認識されている • 種も系統も便宜であって実在ではない,しかし,だからこそ役に立つ • そのような分類観と分岐分類学との折り合いはつくか? 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 38
  • 39. 付録 みにくいアヒルの子の定理 Theorem of The Ugly Duckling 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 39
  • 40. みにくいアヒルの子の定理 「認識とパタン」渡辺慧著,岩波新書(1978) 例題 基本述語 2個 (n=2) A: 頭部の羽毛は白色 B: 趾(あしゆび)はオレンジ色 この組み合わせは m = 2n = 4通り A B a2 a1 a3 a4 Atom 論理式 物件の例 a1 A ⋂ B アヒルの親や子 a2 A ⋂ ¬B ハクチョウの親 a3 ¬A ⋂ B ミヤコドリ a4 ¬A ⋂ ¬B みにくいアヒルの子 • これらの Atom から作られる述語をすべて列記するには,0個から4個までのすべての Atom の組合せを羅列する必要がある • 述語の数は,上図の4つに分けられた領域 a1, … , a4 から r 個 (r = 0, 1, 2, 3, 4) を取る 組合せの総数 Σ mCr = 2m に等しい(r を述語の階数 rank と呼ぶ) • 任意の2物件は a1, … , a4 の Atom のどれかに属するが,共有する述語の数は各 rank について m-2Cr-2個,r について合計して 2m-2 個となり,ともに物件の取り方によらない • A と B ではなく,例えば A と C = A⋓B (排他的論理和)を 基本述語に選ぶと,B = A⋓C と書ける.基本述語の選び 方には自由度があり,基本述語の見かけの単純さに惑わ されてはならない. • すべての論理的組合せを尽くして(ブール完備束)述語を 構成し,基本述語の選び方によらない公平な数え方をす る必要がある.← この定理のキモ,最も引っかかるところ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 40 記号 ¬ は否定を表す
  • 41. 共通述語:アヒルの親や子⇔ハクチョウの親 述語 階数 # アヒルの親や子 ∈ a1 ハクチョウの親 ∈ a2 ミヤコドリ ∈ a3 みにくいアヒルの子 ∈ a4 ø 0 0 a1 1 1 ✔ a2 1 2 ✔ a3 1 3 ✔ a4 1 4 ✔ a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔ a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔ a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔ a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔ a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔ a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 41
  • 42. 共通述語:ハクチョウの親⇔ミヤコドリ 述語 階数 # アヒルの親や子 ∈ a1 ハクチョウの親 ∈ a2 ミヤコドリ ∈ a3 みにくいアヒルの子 ∈ a4 ø 0 0 a1 1 1 ✔ a2 1 2 ✔ a3 1 3 ✔ a4 1 4 ✔ a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔ a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔ a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔ a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔ a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔ a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 42
  • 43. 共通述語:ミヤコドリ⇔みにくいアヒルの子 述語 階数 # アヒルの親や子 ∈ a1 ハクチョウの親 ∈ a2 ミヤコドリ ∈ a3 みにくいアヒルの子 ∈ a4 ø 0 0 a1 1 1 ✔ a2 1 2 ✔ a3 1 3 ✔ a4 1 4 ✔ a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔ a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔ a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔ a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔ a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔ a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 43
  • 44. 共通述語:アヒルの親や子⇔ミヤコドリ 述語 階数 # アヒルの親や子 ∈ a1 ハクチョウの親 ∈ a2 ミヤコドリ ∈ a3 みにくいアヒルの子 ∈ a4 ø 0 0 a1 1 1 ✔ a2 1 2 ✔ a3 1 3 ✔ a4 1 4 ✔ a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔ a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔ a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔ a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔ a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔ a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 44
  • 45. 共通述語:ハクチョウの親⇔みにくいアヒルの子 述語 階数 # アヒルの親や子 ∈ a1 ハクチョウの親 ∈ a2 ミヤコドリ ∈ a3 みにくいアヒルの子 ∈ a4 ø 0 0 a1 1 1 ✔ a2 1 2 ✔ a3 1 3 ✔ a4 1 4 ✔ a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔ a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔ a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔ a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔ a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔ a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 45
  • 46. 共通述語:アヒルの親や子⇔みにくいアヒルの子 述語 階数 # アヒルの親や子 ∈ a1 ハクチョウの親 ∈ a2 ミヤコドリ ∈ a3 みにくいアヒルの子 ∈ a4 ø 0 0 a1 1 1 ✔ a2 1 2 ✔ a3 1 3 ✔ a4 1 4 ✔ a1 ⋃ a2 2 5 ✔ ✔ a1 ⋃ a3 2 6 ✔ ✔ a1 ⋃ a4 2 7 ✔ ✔ a2 ⋃ a3 2 8 ✔ ✔ a2 ⋃ a4 2 9 ✔ ✔ a3 ⋃ a4 2 10 ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 3 11 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a4 3 12 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a3 ⋃ a4 3 13 ✔ ✔ ✔ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 3 14 ✔ ✔ ✔ a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 4 15 ✔ ✔ ✔ ✔ 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 46
  • 47. ブール完備束の格子表現 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 47 ø a1 A ⋂ B a2 A ⋂ ¬B a3 ¬A ⋂ B a4 ¬A ⋂ ¬B a1 ⋃ a2 A a1 ⋃ a3 B a1 ⋃ a4 ¬(A ⋓ B) a2 ⋃ a3 A ⋓ B a2 ⋃ a4 ¬B a3 ⋃ a4 ¬A a1 ⋃ a2 ⋃ a3 A ⋃ B a1 ⋃ a2 ⋃ a4 A ⋃ ¬B a1 ⋃ a3 ⋃ a4 ¬A ⋃ B a2 ⋃ a3 ⋃ a4 ¬A ⋃ ¬B a1 ⋃ a2 ⋃ a3 ⋃ a4 □ Rank 4 Rank 3 Rank 2 Rank 1 Rank 0 180度の回転と否定に対して対称
  • 48. 定理を理解するための補足 • {A, B} や {A, A⋓B} と {A∩B, A∩¬B} とは情報の冗長性のレベルが異なる ので,それらを平等に数えるのはおかしい.冗長性が同じレベルの述語ど うしを比較して共通述語を数えるべきだ(小野山, 1995) ⇒ 「みにくいアヒルの子の定理・情報版」 と名付ける • 冗長性のレベルとは述語の rank のことらしいが,定理はそれぞれの rank 内の述語に対 しても成り立つので,定理を修正する必要がないことを小野山も承知している 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 48 • ブール完備束は互いに否定関係にある述語の対で構成されており,その 冗長性のために共有述語が二重計上されているのではないか? • 冗長な述語は互いに否定関係にある対となっているため,二重に計上されることはない (Lattice diagramを見るとわかる) • なぜ考えうるすべての述語を平等に扱わなければならないのか?例題の A⋓B や A∪¬B に相当する自然言語の述語や概念はないのに • 誰もが最も疑問に思う点 ⇒ 次のスライドで説明
  • 49. 渡辺が(たぶん)言いたかったこと • 真に客観的に(人間がコンピュータに各述語の価値や重みを事前 に教えないで)分類を行おうとすると,考えうるすべての述語を網羅 する(あらゆる切り口で対象を評価する)徹底が必要だろう • たとえある述語の対応物が人間の自然言語にはないとしても,たとえ人間 がその切り口で物事を認識することはないとしても • 地球型生命とは異なる生命原理で進化した知的生命が,地球に探査ロボッ トを送り込むとき,どのような述語体系を持たせればよいだろうか? • しかし,網羅した述語を平等に扱うと,この定理の罠に捕らえられ, 分類が不可能となる • 重み付けされた述語体系があって初めて分類は可能となる • 重み付けは価値(主観)に基づくのであり,だからこそ役に立つ • 重み付けとは,長い試行錯誤を含む帰納的プロセスであり,生物は進化の 過程でそのプロセス(感覚器官や脳・神経系の発達)を実行してきた 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 49
  • 50. で,どうすりゃいいのさ? • 分類学から「客観」という看板を下ろしてはどうか? • 「客観」を言い過ぎると,みにくいアヒルの子が襲ってくる • 「客観」を掲げることで神の視点に近づきたいのだろうが,客観とは人工 知能の学習前の初期状態・・・分類も認識も不可能 • 人間の認知機能は本質的に主観的だと認めよう • 「主観」の有用性を訴えるしかないのでは? • 例えば,進化系統を最重視すること自体に何ら問題はない • そのほうが生物界を理解しやすいのであれば • ただしそれは神の視点ではなく,ある評価尺度に基づく一つの主観 • 「分類とは,世界観の表明にほかならない」 (野口悠紀雄,1993) • 有用性が客観性よりも劣っているとか低レベルということはない • 複数の異なる主観に対して,ほぼ一定の塊りを保つカテゴリが得られれ ば,それは普遍的な価値を持つと言ってよいのではないか? 2019/2/16 (c) Toshio Otaguro, All rights reserved 50