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[庵谷(2018)] 庵谷治男(2018)『事例研究 アメーバ経営と管理会計』株式会社中央経済社.
[篠原(2012)] 篠原匡(2012)「マネジメントの研究 ディスコ(半導体関連装置) 超絶!“アメーバ経営”」『日経ビジネス』2012年6月18日号,pp.52-
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Notas del editor メッセージ:昔の管理会計と違って,今の管理会計は心理を扱う
今日は、皆さんが見たり聞いたりしたことがある会計とは違う会計の話をしようと思います。
タイトルにあるように、会計といえば「帳簿」がすぐに思い浮かぶ人はたくさんいます。
一方で、会計から「心理」を思い浮かべる人はいないでしょう。
会計と心理は,どういうつながりがあるとみなさんは思いますか。
この発表が終わった後に、少しでもその点が分かってもらえると嬉しいです。 まず初めに、変な会計の話をする人について紹介したいと思います。
パッと見、やばい人ですよね。
満面の笑みで会計が大好きという看板を掲げています。
ちなみに、ネタではなく本心です。
もっとヤバいですね。
冗談はこれくらいにして真面目に自己紹介をします。
私は,早稲田大学大学院修士の学生ですが,同時に会計士でもあります。
そのおかげで,日々理論と実務の狭間にいるのですが,理論と実務のギャップはとても大きく,特に実務では不思議な現象が度々起こります。
思ったように理論は現実になってくれないんですよね。
そのような実理のギャップを博士以降で上手く研究に落とし込んでいきたいなと思っています。 つかみ:一見ヤバそうな企業ほど好業績
では,発表に移りたいと思います。
みなさん,この会社は大丈夫だと思いますか?
「めちゃめちゃ忙しい」,「責任が大きい割には権限が小さい」,「自分の行動が数字になって表れる」,「経営者が哲学を語っている」。
ちょっとヤバそうな雰囲気を感じます。
ちなみにこの会社は,知っている人がいるかもしれませんが,京セラという有名な会社です。
一見すると,零細企業?ブラック?ってなりますが,この会社は好業績を上げている会社です。
管理会計研究では,上手くいっている(業績が上がっている)会社が研究対象である。
研究内容は,上手くいっている原因をあれこれと考えることである。
さて,前のスライドのような会社は,なぜ好業績を上げているのでしょうか。
我々,管理会計学者は,一見しただけでは、なぜ好業績を上げているか分からない会社が,どのようにして業績を上げているかの原因を探ることを目的に研究をしています。 管理会計研究では,上手くいった(業績が上がった)方法が様々な視点でまとめられている。
管理会計研究は,業績が上がっている会社に対して,様々な視点からその原因を考えます。
1920年にアメリカのハーバード大学で管理会計が誕生してから,多くの研究者が会社の業績に対して独自の理論を展開してきました。
例えば,経営管理論,経営戦略論,経営計画論,経営組織論,組織行動論,経営統制論などです。
しかし,研究者がいくら理論を唱えようが,会社は国や社会情勢等環境の影響を大きく受けるため,もちろん,画一的な答えは出てきません。
ですが,多くの会社は,過去の管理会計研究を元に日々の戦略を練っているので,我々の管理会計は,そんな会社の未来を作る手助けになっています。 管理会計研究の目的と考え方が分かったところで,そろそろ本題に入っていきたいと思います。
「帳簿から人間へ」というタイトルはちょっと言い過ぎなので,少し補足したいと思います。
管理会計研究は従来,経営者がどのようにして好業績を上げたかについて,その「仕組み」からその理由を考えるものでした。
ここでいう「仕組み」というのは,会社の組織構造だったり,報酬の与え方のこと等会社の制度を指します。
一方で,ここ最近出てきた管理会計研究は,「仕組み」だけではなく,その「仕組み」がどのように従業員に影響を及ぼしているかにも着目するようになりました。
つまり,「仕組み」の下で働く「人間」に着目するようになったということです。 もう少し,今と昔の管理会計研究の話をします。
ご覧の通り,心理に着目した研究というのは,ここ最近増えてきたということが分かります。
では,なぜ管理会計学者たちは,心理に興味を持ち始めたのでしょうか。 「仕組み」だけを見つめても、どうして上手くいっているか分からない。
もっと根本的な原因があるのではないか。
これが管理会計で心理研究が始まったきっかけです。
もう少し詳しくいうと,昔の管理会計では,良い「仕組み」さえ分かっていれば,好業績を上げられるというちょっと強引な仮定が置かれていました。
なぜそんな仮定が,と思う方もいるかもしれませんが,昔の従業員は,「お金さえもらえれば働く」という単純な人が多かったからなんですよね。
そこで,今の管理会計では,その仮定を見直そうという動きが出始めました。 ここからは私の研究について話したいと思います。
先ほど説明したように、今の管理会計研究は「仕組み」が「従業員」に与える影響に着目していると言いました。
私はその観点から、従業員への成績の見せ方が従業員に大きな影響を与えているのではないかと考えました。 ここから、従業員への成績の見せ方を3つ紹介します。
私の研究は去年スタートしたばかりで,今年このテーマで修士論文を書こうと思っているため,まだまだその結果は綺麗に出てきていません。
また,先行研究における心理について,ここでは述べようと思っています。
統計学を用いた実証研究は博士以降で,会社の実地調査を通じて行うつもりです。
まず,最初の方に出てきた京セラという会社ですが,ここでは,時間当たり採算という成績の見せ方を用いています。
簡単にいうと,時間当たり採算では,6-7人のチームごとに,チーム業績を見れるようにしました。
この仕組みが与える従業員への心理的影響は,京セラコンサルティングという京セラの子会社の秘匿情報ですが,この仕組みを作った稲盛和夫によると,このような成績の見せ方をすることにより,各チームが自分の食い扶持,つまり,利益を自分で稼ぐようになり,フリーライダーを排除した自立したチームになると言っています。 トヨタ株式会社では,今まで経理のみが知っていた原価情報を,現場従業員にも見れるようにしました。
先ほど従業員への成績の見せ方といったので,これのどこが成績の見せ方なの,と思うかもしれませんが,工場で働く従業員からすると原価情報は成績のようなものなんですね。
現場従業員は,部品のコストを1円未満まで削減しようと常に努力しています。
今までの仕組みでは,自分たちの努力がどれだけコストを削減しているかを知ることはできませんでした。
そこで,その数値を知ることで,自分の努力が会社全体の役に立っているという感覚を得られ,モチベーションが上がるというわけです。 最後にディスコ株式会社という半導体の会社の例を紹介します。
この会社の仕組みはとても面白く,従業員一人一人が自分の収支を管理できる仕組みを整備しました。
例えば,同僚に自分の仕事を頼みたいときに,社内通貨を使って,「1時間5,000ゴールドでお願い」といったように,同僚の時間と労働力を買います。
同僚の立場からすると,「その仕事なら,40分6,000ゴールドかな」といった具合に,相手からのお願いを何時間いくらで請け負うかを提示します。
これらの交渉によって委託・受託された仕事はそれぞれの収支計算書,まあ,家計簿みたいなものですね,に支出と収益として記録されます。
このように,普段の仕事の価値を自分で図り,それを売買できるという仕組みを整えることで,常に自分の成績が分かり,ゲーム感覚で社内通貨を獲得するために仕事をするようになります。
結果,従業員は自然と競争や協力をするようになり,それがモチベーションアップにつながっているというわけです。 共同研究者募集中
長々とお話ししてきましたが,最後にまとめです。
とりあえず,この3つだけ抑えてもらえれば,私はハッピーです。
会計は数字だけを見る学問ではない!
会計は数字(業績)の背景を探る学問である!
最近の会計は知能(心理)を扱うこともある!
以上で発表を終わりたいと思います。
ご静聴ありがとうございました。