Más contenido relacionado
Similar a 0930tomonkenhyogo (16)
0930tomonkenhyogo
- 1. 本の歴史~形態の移り変わりを概観する~
2013/9/30
神戸大学附属図書館 小村 愛美
◇自己紹介
神戸大学附属図書館勤務。
NPO 法人「書物の歴史と保存修復に関する研究会」受講生(4 年目)。本の構造と製本の基礎知識を学
ぶ。本日のお話は、研究会で学んだ知識をもとに。
◆本日の概要
○本の形態の移り変わり―ヨーロッパ・日本・現代 をベースに。
形態の変化 ⇔ 人々・社会にとっての本の位置づけ
→ 相互の影響を踏まえつつ、本の歴史を概観
◆ヨーロッパの本の歴史
○語源・派生語
ラテン語「本(Liber)」―語源:樹皮
→派生:Library
ギリシャ語「本(Biblion」―語源:パピルス
→派生:Bible, Bibliotheca
○巻物
紀元前 3000 年、エジプトにパピルスが出現→ギリシア、ローマへ。
折り畳みにくい。片面にしか書けない→巻物1
○巻物から冊子へ
1 世紀はじめ、古代ローマに冊子(コデックス2)登場。
羊皮紙の出現:両面に書ける、取り扱い・持ち歩き・保管がしやすい。
2 世紀~4 世紀、キリスト教とともに普及。
巻物も共存。
○本の構造化
冊子の出現―タイトル・章分け・目次 etc.が徐々に成立。
巻物数巻分の収容力。複数作品を 1 冊へ→本の内部の構造化へ。
片手で持つ/書見台→白紙ページ、余白へ注釈を書き込む習慣。
- 2. ○羊皮紙
はっきりした発祥は不明。紀元前 2 世紀の小アジア?
エジプト:その以前から動物の皮を使用したとも言われる。
原料:羊・山羊・子牛などの皮
製造期間:10 日~2 週間
・石灰水に浸す
・毛、脂、不純物を落とす⇔木枠で伸ばしながら乾燥 を繰りかえす。
高価。1 冊の本に平均 15 頭分。
1000 年以上、本の材料の中心。
○修道院と写本
冊子の普及―キリスト教の伝播
本=宗教書(+法律書、ギリシア・ローマの著作、ラテン語文法 etc.)
所蔵・生産=修道院(12 世紀まで)
○需要の拡大
12 世紀ごろから。
ヨーロッパ各地に大学設立(ボローニャ、オックスフォード、パリ etc.)
大学:神・法・医・哲学部→本の需要拡大
→民間の写本工房
市民階級の台頭→新たな読者(法律家、商人など)
→新たなジャンル(騎士道物語、歴史書、演劇、聖人伝など)
言語の変化:ラテン語(聖職者)→各国の日常語
修道院から産業へ。
○写本装飾
流通する本の中心は依然として宗教書。
時祷書(個人用祈祷書)、巡礼用の携帯書3、豪華本4など。
本文ページの装飾5
○紙の登場
グーテンベルクの活版印刷、その前に。
(冊子の出現と羊皮紙のように、活版印刷と紙はセット)
紙:中国で発明(紀元前 2 世紀以降?前漢遺跡から出土あり)、蔡倫が確立(1 世紀ごろ)
ヨーロッパへ伝播(13 世紀)。
○グーテンベルクの活版印刷
1455 年「42 行聖書」6
ドイツ・マインツで発行。50 部現存。
印刷術のヨーロッパへの広がり→インキュナブラ(揺籃期本。42 行聖書以後、1500 年までに刊行)
- 4. ◆日本の本の歴史
中国・朝鮮半島の影響
○文字
漢字の伝播(3~4 世紀):朝鮮半島から。
万葉仮名(8 世紀):漢字の音訓を日本語にあてる。
↓
ひらがな、カタカナが徐々に発展。(例:いろは歌の成立―10 世紀)
○紙
製紙法の伝播(7 世紀はじめ) → 独自の進化(良質の原料、ネリ)
→ 上質な和紙生産の発展。8 世紀後半には中国へ輸出。
○日本の本の発祥
『三経義疏』:7 世紀はじめ、聖徳太子が著す。
写経の起こり:7 世紀後半、天武天皇のころ。官命による写経事業。
写経の隆盛:国家・有力者の事業。平家納経(12 世紀)が一つの頂点―日本版豪華本?
刊本の起こり:百万塔陀羅尼(8 世紀)
○時代ごとの変遷
平安時代:貴族文化。経典・文学 etc. 写本が中心。宋から粘葉装9の輸入。
後期ごろから綴葉装10の登場
鎌倉時代:仏教の広がり、新仏教。木版による経典生産「寺院版」。
南北朝・室町時代:寺院出版の隆盛。
書物の広がり―貴族・僧侶らから一般民衆へ
―中央から地方へ(応仁の乱)
出版事業の広がり―堺・周防(大内氏)・薩摩(島津氏)など。
戦国・安土桃山時代:線装本11の隆盛。
活字版の伝来(豊臣秀吉の朝鮮出兵)→国産銅活字・木活字
→嵯峨本(光悦本)含む古活字版。文化史・学問・美術的価値。
江戸時代:町人文化の発達―庶民文学(背景:幕府による文教奨励)
仮名草子・浮世草子・俳諧・読本・滑稽本・人情本・黄表紙・合巻 etc.
ほぼ全て線装本。
娯楽としての読書。
洋式活版術の伝来(1600 年前後):天正遣欧使節―「きりしたん版」
- 6. ◇参考資料
1. 本の歴史/ブリュノ・ブラセル著, 荒俣宏監修 創元社 1998 年
2. 日本の書物 古代から現代まで(美術選書)/庄司淺水著 美術出版社 1978 年
3. NPO 法人書物の歴史と保存修復に関する研究会
http://www.npobook.join-us.jp/index.html 【accessed 2013.9.25】
4. 製本形態画像(NPO 法人書物の歴史と保存修復に関する研究会)
http://www.npobook.join-us.jp/encyclo/form/form_00.html#yo 【accessed 2013.9.27】
5. <図書の分類と製本の歴史の関連性>(NPO 法人書物の歴史と保存修復に関する研究会)
http://www14.ocn.ne.jp/~npobook/archives/vol_01/archives_01.html
【accessed 2013.9.27】
6. 本の名称
http://www.bbc-web.com/hyakka/5/kaisetu.html 【accessed 2013.9.27】
1 参考資料 4.【巻子本(ロール roll)】
2 参考資料 4.【初期コデックス(冊子 codex)】
3 参考資料 1. p.43 携帯書写真
4 参考資料 1. p.42-43 豪華本写真
5 参考資料 1. p.35 聖グレゴリウス『対話編』の冒頭
6 参考資料 1. p.52 『グーテンベルク聖書(42 行聖書)』
7 参考資料 4.【ダブルコード(double cord)】
8 参考資料 4.【シングルコード(single cord)】
9 参考資料 4.【粘葉装(でっちょうそう)】
10 参考資料 4.【綴葉装(てつようそう)】
11 参考資料 4.【線装(せんそう)四針眼訂】
12 参考資料 6.【5. 本の名称】