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大規模災害におけるツイッターの信頼性 福島第一原発事故をめぐる情報伝播に関する考察 北海道大学大学院国際広報メデイア・観光学院 トムソン ロバート (Robert Thomson)  須田比奈子 (Hinako Suda) 林芳伃 (Fangyu Lin)  五十地隆造 (RyuzoIsochi) 王梓安 (Zian Wang) 劉亜菲 (Yafei Liu) 早坂涼 (Ryo Hayasaka) 伊藤直哉 (Naoya Ito)  The data for this analysis was obtained from Project HEROIC (Principal Investigators JeannetteSutton and Carter T. Butts), which was supported under NSF awards CMMI-1031853 and CMMI-1031779.
震災直後から3日間において、あなたは次の情報源からの情報をどの程度信頼しましたか 北大震災プロジェクト, 2011 * *北大震災プロジェクトチーム「一般消費者調査」2011 |方法:インターネット調査法|データ処理方法:5件法による設問において、「非常に信頼した」と回答したものを100点、「全く信頼しなかった」と回答したものを0点として換算|対象:20歳以上の男女|実施時期:2011年4月28日~5月2日|回収サンプル数:1,000 2
災害時において、ツイッター情報は本当に信頼できないのか? 3
災害時のツイッター情報エコシステム* 震災時は、引用活動がより活発になる(鳥海ら、2011) 信頼性の高い オリジナル情報 組織(Starbird et al., 2010)、 被災地住民(Sutton, 2010)、 フリージャーナリストなど Tweet Tweet Tweet オリジナル Tweet Tweet 引用系 Tweet Tweet 引用系 Tweet オリジナル オリジナル 引用系 Tweet Tweet オリジナル オリジナル 引用系 オリジナル ツイート: 140 文字以内のメッセージ 引用系 引用系 オリジナル 引用系 オリジナル オリジナル 引用系 オリジナル Tweet Tweet Tweet 引用系 信頼性の低い オリジナル情報 デマ(Acar& Muraki, 2011), 身元不明者からの情報など オリジナル Tweet Tweet 引用系 Tweet Tweet オリジナル Tweet オリジナル 引用系 Tweet Tweet 4 *  ネット上のツイッター環境(生態系)としての「エコシステム」
仮説 福島第一原発事故という地球規模の大災害時において、 H1	ツイッターによる引用活動 (情報転送) は、オリジナルの情報発信よりも多く、全体の過半数を占める。 H2引用活動においては、信頼性が高い組織や被災地の人が発信した情報が最も多く引用され、したがって、災害時の引用系ツイートの信頼性は高いといえる。 引用または再発信されない情報は、重要性や関連性が低いものと理解できるため、本研究の分析対象として扱わないこととした。 (collaborative filtering; see Zaman et al., 2010; van Liere, 2010) 5
研究方法 福島第一原発事故に関連するツイートの内容分析とユーザー分類 分類対象データの抽出 ,[object Object]
分類対象標本4,950件 (母集団の5.6%)分類作業 ,[object Object], (評定者間の分類一致度: α=0.9) 提供者:Hazards, Emergency Response, and Online Informal Communication Project (Project H.E.R.O.I.C.). University of California, Irvine and University of Colorado, Colorado Springs, USA(Butts et al., 2011) ,[object Object]
被害は継続的
注目度が高い
#fukushimaでツイートと絞ることで、ノイズの少ないデータが手に入る6
分類項目(本考察に関する項目) 7
結果 1 H1ツイッターによる引用活動 (情報転送) は、オリジナルの情報発信よりも多く、全体の過半数を占める。 結果 引用系が66%を占めた。 8
結果 2 H2引用活動においては、信頼性が高い組織や被災地の人が発信した情報が最も多く引用されている。 結果 信頼性が高い組織 (伝統メディア、公的機関、企業、非営利組織) が情報源の45%を占めた。 9
追 加 分 析 組織に次いで多く引用された情報源は、34.8%を占める「個人」だった。 「個人」の中に、信頼性が高い人物もいるのでは? 信頼性の評価1(大島ら, 2010; 山岸, 1998) 情報発信者の信憑性 発信者の能力・意図 信頼できる情報 正しい情報を伝えたい 10
追 加 分 析 (続き) 身元不明な個人、被災地から離れた個人、陰謀論 信頼性の評価2(大島ら, 2010) 信頼できる情報 フリージャーナリスト、学者、研究者、有識者、福島県住民 複数の情報発信者による情報の信憑性 他者による引用 注目すべきフリージャーナリスト: 日隅一雄 (ひずみかずお) (@yamebun) 木野龍逸(きのりゅういち) (@kinoryuichi) 個人の発言を引用したツイートの30%以上の情報源となった 11

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大規模災害におけるツイッターの信頼性

Notas del editor

  1. 北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院の修士一年、ロバート・トムソンと申します。本学院震災プロジェクトのソーシャルメディアと震災のグループを代表しまして、本日、「大規模災害における、ツイッターの信頼性―福島第一原発事故をめぐる情報伝播に関する考察」と題して我々の研究成果を発表させていただきます。今回我々は、ユーザー数2億人とも言われる世界最大のマイクロブログサービスであるツイッターについて、福島第一原発事故という地球規模の災害時における、その利用と信頼性について調べました。
  2. 災害時において、ツイッター情報は本当に信頼できないのか?
  3. まずツイッターについて整理しましょう。ツイッターの仕組みについて、我々研究グループがご覧の情報エコシステムモデルを考えました。この情報エコシステムの構成単位である個々のツイートは、140字以内の短いメッセージです。そのツイートは、いくつかの種類に分類できます。【CLICK】 まず、ニュースや有識者の意見など、信頼性の高いオリジナル情報があります。先行研究によれば、小規模の災害でのツイッターの利用に関しては、組織や被災地から発信されたオリジナル情報の多くは信頼性が高いことが証明されています。【CLICK】 ただし、オリジナル情報の中には信頼性の低い情報もあります。ユーザー情報を公開していない身元のわからないユーザーが独自に作成したストーリーや発言、デマなどがこれに当たります。そこで、研究者のAcarとMurakiは、東日本大震災の被災地のツイッター利用者に質問調査を行いました。震災時におけるツイッターの問題点として、情報の信頼性を指摘しました。そもそも、ツイッターでは、ユーザー自身が自発的に情報をカテゴリー化する仕組みがあります。その仕組みは、ハッシュタグと呼ばれるものですけれども、公的な、監視できるようなハッシュタグシステムを確立すれば、ツイッターで流通する情報の信頼性を保つことができるのではないかという声が、調査の中で上がっていました。この情報エコシステムには、オリジナル情報以外に、発信者が何らかの方法で入手した情報を引用して、発信したツイートも存在します。我々はこれを「引用系」ツイートと呼びます。【CLICK】 引用系には、ツイッター外部の情報源を引用したツイーがありますし、だれかがオリジナルとして発信したツイートを転送または再発信したツイートなどがあります。当然、信頼性の低い情報源が引用される可能性もあります。この引用系について、大震災前後の3億のツイートを分析した研究者によると、【CLICK】 災害時には、ツイッターを情報源として引用することが急増すると指摘しています。こういう事実からは、災害時のツイッターの信頼性を研究することが非常に重要であることがわかります。
  4. 以上の知見から、ご覧の仮説を立てました。福島第一原発事故という地球規模の大災害において、H1 ツイッターによる引用活動は、オリジナルの情報発信よりも多く、全体の過半数を占めると、予測しました。H2引用活動においては、信頼性が高い組織や、被災地の人が発信した情報が最も多く引用され、したがって、災害時の引用系ツイートの信頼性は高いといえると、予測しました。なお、引用または再発信されない情報は、重要性や関連性が低いものと理解できますので、本研究の分析対象として扱わないことにしました。
  5. 次に研究方法について説明します。本研究では、福島第一原発事故に関連するツイートの、内容分析と、ユーザー分類を行いました。このようなツイートを分析対象にする理由としては、本事故は地球規模の災害であり、被害は継続的で、世界中から注目されていることが挙げられます。また、ハッシュタグ「fukushima」でツイートを絞ることで、比較的にノイズの少ないデータが手に入るのではないかと考えました。「genpatsu」などの日本語のハッシュタグは、日本人以外には使われない可能性があります。日本の地名である、ハッシュタグ「fukushima」は、震災の前は、地域情報などの発信で、一日に数件程度しか使われていませんでしたけれども、震災の後には、急激に使われるようになりました。【CLICK】分類対象データは、カリフォルニア大学とコロラド大学の共同研究グループである、プロジェクトヘロイックの協力を得て、今年3月12日から4月13日の間のハッシュタグ「fukushima」を含む情報を、5 回以上発信したユーザーのツイート総数の 10%のサンプルを入手しました。最終的に、母集団の5.6% に該当する4,950件のツイートを分類することになりました。
  6. さて、分類したのはツイート内容とユーザーです。ユーザーは8つの基本カテゴリーに分け、発信地も分けました。ツイートをオリジナル系と引用系に分け、引用系のツイートの情報源もユーザーカテゴリーで分けました。
  7. それでは、早速結果に移りたいと思います。まず、1つ目の仮説は、「ツイッターによる引用活動 は、オリジナルの情報発信よりも多く、全体の過半数を占める」と、いうことでしたけれども、それに対しては、引用系が 66% を占めるという結果が得られました。
  8. 2つ目の仮説は引用系の情報源に関するものでした。信頼性が高いと思われる組織、つまり、伝統メディア、公的機関、企業、非営利組織が、情報源の45%を占めました。
  9. それで、信頼性が高い組織が情報源の45%を占めたものの、34.8%の情報源が個人であることに着目し、【CLICK】 個人の中に信頼性が高い人物も入っているのではないかという疑問を持ちました。ここでとりわけ重要になってくるのは、どのように情報の信頼性を評価するかということです。私たちがここで採用したのは、先行研究に基づいた信頼性の評価モデルです。その中では、2つの種類の評価基準があります。【CLICK】 1つ目の評価基準は「情報発信者の信憑性」で、発信者の「能力」と「意図」を尺度として信頼性を評価することにしました。能力とは「情報の確かさを証明できる能力」、意図とは「正しい情報を伝えたいこと」と言い換えることができますが、我々が考える「信頼性が高い個人」をまとめるとこのようになります。【CLICK】 たとえば、フリージャーナリスト、学者、研究者、有識者、そして福島県住民、つまり、被災地の方ですね、【CLICK】これらのユーザーが発信する情報は信頼性が高いと考えられます。そこで追加分析として、「個人」を情報源とする 1189件のツイートを分類することにしました。
  10. その結果、個人が情報源となったツイートの65%近くが信頼性の高い個人であることがわかりました。【CLICK】特に注目したいのは、2人のフリージャーナリストの発言が情報源の30%以上を占めていたということです。元新聞記者のひずみかずおや、フリーランスライターのきのりゅういちによる情報がそれに当たります。二人とも、東電記者会見に直接参加し、今でも積極的に情報発信をしています。この2人は先ほど紹介した「発信者の能力と意図」という信頼性の評価基準を満たしているんですけれども、それと同時に、【CLICK】「複数の情報発信者による情報の信憑性」という、2つ目の信頼評価基準も適用できることがこの結果からわかります。【CLICK】PAUSE 5secただし、信頼性が低い情報源の中には、フリージャーナリストのリチャード・コシミズが発信した陰謀論なども含まれますので、注意が必要です。
  11. この結果から、引用系の情報源全体の信頼性の比率を再確認すると次のようになります。引用系ツイートの67.5%が信頼性の高い情報源に基づいて発信され、わずか7.8%が信頼性の低い情報源を引用していることがわかります。【CLICK】信頼性が高い情報源の内訳はご覧の通りです。
  12. これらの結果から、我々は、ハッシュタグFUKUSHIMAに関しては、ご覧のような結論をあげることができると考えています。引用系ツイートの信頼性は高いといえます。内容分析においてデマがほとんど見当たらなかったことから、非常に信頼性の高いハッシュタグであると評価できます。このことから、ハッシュタグは重要であると言えます。というのは、我々の結論は、ハッシュタグ「fukushima」で整理されていたツイート情報に基づいた結果です。ツイッター全体の情報を調査した先行研究では、デマが問題であったと指摘されていましたが、少なくともハッシュタグfukushimaに関しては、デマが見当たらなかったことを強調しておきたいと思います。また、分析結果から、再発信された情報の70%近くが信頼性の高い情報源を引用したことがわかりました。つまり、一般ユーザーの情報に対する判断力が高いと考えられます。そこで、我々は伝統メディアや公的機関に対して次のように提言します。災害時には、積極的にツイッター向けの情報発信を行って、活発な引用行動や、ユーザーが持つ判断力を活用できるような体制づくりに取り組む必要があると考えています。さて、本研究のまとめとして、これまで追求してきたツイッターの信頼性を高めるために、我々には、何ができるのかを提案したいと思います。
  13. まずは、皆さんも一緒に考えてみてください。身元がわからない人物が発信した情報と、個人のプロフィールを開示しているユーザーのと、どちらの情報を信頼するのでしょうか。おそらく、皆さんは、身元が明らかな人物の発言を信頼すると思います。【CLICK】 実は、我々のデータからも、ツイッターのプロフィールに居住地などの発信地がわかる情報を開示している人のほうが、開示していないユーザーよりも、信頼性の低い情報を発信していないことがわかりました。つまり、自ら発信するツイートの内容に責任を持っているのは、身元を開示しているユーザーであると解釈できます。それでは【CLICK】どうして身元が明らかでないユーザーの方が信頼性の低い情報を発信しやすいのかについて、推論してみれば、プロフィールに個人情報を載せていないからといって、無責任な情報を発信する傾向があるのか。どうせ身元がばれないからといって、深く考えずに情報を発信しているのか。インターネット上の匿名性に関する、いろいろな要素が考えられますけれども、一ついえるのは、無責任なユーザーによる情報発信が、災害時における風評被害やネット上の情報氾濫を引き起こす可能性があるということです。そこで、我々がツイッターユーザーに提案したいことは、ごく当たり前のことですけれども、【CLICK】 災害時においては、特に自分の発言に責任を持とうということです。具体的には、【CLICK】情報発信者としての信頼性を高めるために、自分のプロフィールをできるだけ開示すること。発信する情報については、自分が信頼できると判断したものだけを発信するように心がけ、何を信頼してよいのかわからないときは、不確かな情報を発信しないようにすることも重要であると考えられます。デマの防止や情報源の信頼性を高めるために、先行研究では、公式ハッシュタグの設定や利用を促進する必要があると提唱していますが、我々は、そのような、ビッグブラザーが上から監視するような手の加え方はけして成功しないはずだと考えています。なぜならば、ソーシャルメディアの情報環境というのは、組織的な管理から成り立ったものではないからです。ユーザーが自由に発信や再発信し、自発的にハッシュタグの利用によってコミュニティーを作ることこそが、情報「エコ」システムなのです。平時においては、ツイッターの緩いつながりが個人的な情報収集や情報発信に役立つこともありますが、個人のレベルを超えて必要とされている情報を発信しようとするときは、つまり、災害時という肝心なときには、自らが発信する情報に責任を持ち、自分が信頼できる人物であることを示す必要があると考えられます。以上で発表が終わりますが、何かディスカッションされたいところがありましたら、どうぞ質疑の時間に声をおかけください。
  14. ご清聴ありがとうございます。