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日本のメイカー活動とNT金沢
- 2. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
自己紹介
本業:金沢大の教員
専門:集積回路、イメージセンサ、インタラクション
好きなプロセスはCMOS 0.35um
本業2:Maker(メイカー)、ハンダテラピスト
好きな半田はPb:Sn=37:63
- 4. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
“Maker Movement”の起源
FabLab
ロングテール
Maker(メイカー)の誕生
- 5. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
FabLabの源泉
「(ほぼ)なんでも作る方法」
(MITでの演習)
上流から下流まで一通りを
すべて体験する
「作りたいもの」を
「具現化する」プロセス
http://fab.cba.mit.edu/classes/MIT/863.08/
- 6. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
FabLabと、その派生コミュニティ
加工機をコアにしたものづくりコミュニティ
レーザーカッター、3Dプリンタ等
DIYからDo It With Others (DIWO)へ
日本では鎌倉とつくば他
「製造技術の民主化」
→市民が「製品は買うものではなく作るもの」へ
カフェ併設、会員制施設などの派生型も
- 7. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Makeの要請:ロングテール
(昔)少数のヒット商品
→(今)多数のニッチ商品
ニッチも多数なので
総和は大きい
例:音楽販売では、
25,000位以下で売上の40%
「一部のヒット商品」がなくなる
音楽業界:△25%(’01〜’07)
ヒットアルバム:△60%(’01〜’07)
(C.アンダーソン「ロングテール」,早川書房 (2009))
- 8. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Maker(メイカー)の誕生
「21世紀の産業革命」とも呼ばれる
産業全体:130兆ドル
IT産業(bit産業):20兆ドル(15%)
残り(85%):atom産業(モノが関わる)
「IT産業革命」は限定的→本命はatom産業
ものづくりの「ロングテール」を支える技術革新
3Dプリンタ等によるプロトタイピング
クラウド・ファンディング(市場調査・資金調達)
サプライチェーン活用による
量産手段の民主化
「モノへの愛着」の重要性
(熱心なファン)
C.アンダーソン
「MAKERS」
(NHK出版,2012)
- 9. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
メイカー企業
小規模製造業
数万個ロット
高い技術力
熱心なユーザ・ファン
価格勝負でないユニークな製品
「製造業におけるロングテールの具現化」
ただし「大量生産産業」を置換するものではなく、共
存するもの=「製造業・産業の多様化」
IoT時代になり、「少量多品種」の製品・サービスは
増加の一途
※製造業企業の「メーカー」と区別するために、日本
語では「メイカー」と呼ぶ(個人も含めて)
- 10. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Make:の発刊とMaker Faire
オライリーから雑誌「Make:」が刊行(2005)
雑誌から「オフ会」=展示会へ
=Maker Faire(2005)
MakerMedia社として独立
日本では
”Make Tokyo Meeting”(2008)から
- 11. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Maker Faireの現状
世界中で開催(数え切れない・・・)
理工離れ?ものづくり離れ?どこの世界の話?
学会で寄ったオランダの田舎町でもやっていた
Maker Faire, Mini Maker Faireと規模もさまざま
NT金沢のような類似イベントも
※一時期、バブルの様相だったのは事実
(Fab施設の乱立(行政主導も)、Maker美容院、・・・)
https://fabcross.jp/topics/tks/20190117_made_in_china.html
MakerFaireTokyo2015 NT金沢
- 13. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Maker Faireの現状
内容は多様化の傾向
STEAM教育寄り(香港、シンガポール等)
ビジネス・起業寄り(深圳、ベイルート等)
工芸寄り(台北、東京?等)
“MakerFaire的なイベント”の派生
バブルの様相の時期もあった(ハイプサイクル)
それが一段落し、一定範囲で着実に定着している
教育、産業、ホビー・・・
- 14. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Maker活動:派生系
MakerFaire
東京、京都、大垣、山口、つくば、仙台、・・・
NT○○
京都、名古屋、金沢、加賀、広島、熊本、鯖江、
札幌、・・・
つくると!
つくろか!、つくるけえ!、・・・
伊勢ギークフェア、メイカーズバザール、・・・
「MakerFaireTokyoは行きたいが遠くて・・・」
という声をよく聞く
- 15. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
NT金沢:始まり
MiniMakerFaireをやりたいと画策(2013年)
NT京都をみて、NT金沢を始めていた人がいた
合流して、拡張してみた
「作ってみたは正義」(byメーヴェの八谷さん)
会場:金沢市芸術村(~2013年)
→金沢駅前地下広場(2014年~)
- 16. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
NT金沢:現状
「すごいもの」も「しょぼいもの」から
「すごい」かは、やってみないと判断できない(by高須さん)
「見にいってみた」<<「出展してみた」
約120ブース(抽選・セレクションなし、まだキャパはなんとか大丈夫)
NT=「なんかつくってみた」と再定義して裾野拡大へ
- 17. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
NT金沢:運営の実際
中の人=ほぼ二人
ルーチンワークが多い(会場予約、参加募集、当日)
「主催者」ではない(自称)
みんなが主役、それに場所を提供しているだけ
「主催者」がいると、みんながそれに頼ってしまう(ゴ
ミ捨てなど)
ブースの机運搬、片付けも、みんな(当事者)で
譲れないポリシー
「やりたいものは何か」を忘れない
NT金沢では「遊び場」
「やること」が目的にならないように
そのために必要なことが何かを考え、無理をしない
Webページ、チラシ:作りたい人がいたら頼む
幸い、安くてよい会場が予約できている(1万円/日:抽選)
- 20. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の進歩と独裁化
科学技術の進歩=社会水準の向上
科学技術の進歩=技術の高度化・複雑化
「製造者」と「利用者」の分離
製造者の「特権」:
原材料の入手(原油、電子部品、・・・)
工場・製造装置
販売チャンネル
利用者の「意識」
「ものは買う物」
大量生産・大量消費の時代が長く続いた
- 21. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の民主化へ
技術を、市民の手に「取り戻す」流れ
大量生産→ロングテールへ
「技術の民主化」を可能にする技術革新
実はルネッサンス時代への回帰でもある
- 22. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の「民主化」がもたらすもの
(以前)プロのみ
音楽、映画、・・・
我々は「消費者」
(現在)アマチュアでもコンテンツを
作ることができる
DTM, Vocaloid, …
YouTube, …
我々は「制作者」にもなれる
(可能性・裾野が広がった) 宮下芳明「コンテンツは民主化をめざす
―表現のためのメディア技術」
(明治大学出版会, 2015)
- 23. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の「民主化」がもたらすもの
プログラミング
(以前)PCもプログラミングツールも高価
「遊び」から始められない
(現在)PCもプログラミングツールも安価orタダ
「遊び」などから始められる
=敷居の低下=裾野の広がり
- 24. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の「民主化」がもたらすもの
裾野が広がる=イノベータの多様化
「アツい思い」を具現化する
道具がある
多様性=イノベーションの土壌
小川進「ユーザーイノベーション:
消費者から始まるものづくりの未来」
(東洋経済新報社, 2013)
(L.Fleming, Harvard Business Review,
8(9), pp.22-24 (2004))
- 25. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術が「道具」になるとは
技術が「道具」になるステップ
開発/発明される
お店で買えるようになる
使い方が知られるようになる
みんなが使うようになる
それが「道具」となって、次のステップへ
プロのみ マニア(ハイレベルアマチュア)向け だれでも
プロ(詳しい人)しか使えない
アマ(詳しくない人)でも使える
- 26. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の民主化の結果:深圳の華強北
26
山寨(ShanZhai)の例(“iPhone nano”)
※FakeCopyではなく、プロダクトの
進化系。これが2週間で量産される
無限に続くパーツ屋
“Used Mobile Phone Shop”の実体
パーツに分解
(BGAも)
路上で解体
店頭でリペア
新製品の試作に流用
ShenZhen HuaQiangBei
基板製造
+
部品(サプライチェーン)
+
起業(ハードウエアスタートアップ)
+
資本(VC/アクセラレータ)
深圳の生態系
謎の起業・新製品が続々(ときどきアタる)
世界中から頭脳と資金が集まり、
イノベーションを生み出している
「ハードウエアのシリコンバレー」とも
- 27. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術が生まれて「道具」になるまで
エリンギの例
1993年に日本へ
2003年ごろから一般化
↑10年かかって「道具」に
料理番組、調理例・・・
農林水産省「平成20年度 農林水産物貿易円滑化推進事業
台湾・香港・シンガポール・タイにおける品目別市場実態調査
(生鮮きのこ)報告書」(林野庁経営課特用林産対策室 )より
- 28. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
技術の民主化:半導体での例
ref: http://www.intel.com/jp/intel/museum/processor/index.htm
傾き:×約1.5/年
年を追って、複雑・高機能な集積回路がつくられるようになった
※G.Moore (インテルの創業者の一人)
G.Mooreが1965年に論文[1]で述べる→C.Meadが「法則」と命名→「予測」→「指針(目標)」へ
G.E.Moore, "Cramming more components onto integrated circuits," IEEE Solid-State Circuit Newsletter, Vol.11, No.5, pp.33-35, 1965.
- 29. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Mooreの法則のカラクリ:スケーリング
集積回路の部品(MOSトランジスタ)を、同じ形状で、
より小さく作ると・・・?
寸法: 1/α
不純物濃度: α
電源電圧: 1/α
効果:いいことばかり
速度↑
消費電力↓
集積度(機能)↑
技術が進むべき方向性が極めて明確なまれなケース
p-Si
S DG
n-Sin-Si
p-Si
S DG
n-Sin-Si
L
R.H.Dennard et al., "Design of ion-implanted MOSFET's with very small physical dimensions," IEEE J.of SSC, Vol.9, No.5, pp.256-268, 1974.
MOSトランジスタの断面構造
- 30. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
MOSトランジスタの微細化の歴史
微細化するほど
メリットがある
=がんばって微細化
そろそろ「原子」が
見えてきている
「お金がからむと
技術は進む」
ref: 日経BP Tech-On! 2009/03/30の記事
L=20nm(いま)
L=5nm(2020年ごろ予定)
- 31. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータの歴史の2つの側面
DEC VAX(1976)
1MIPS
Cray-1 (1978)
100MIPS
MIPS:Million Instruction Per Second (1秒間に実行できる命令数)
(世界最初のスーパーコンピュータ)
「世界トップの高速化」+「身近なものにも高速化の恩恵」の2つの側面がある
20000MIPS
10MIPS
100MIPS
20MIPS
20000MIPS
109MFLOPS
- 32. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータの「使い方」の変化
国に1台/会社に1台 個人で1台(PC) 一人で何台も
仕事・勉強の道具国・会社のプロジェクト
コミュニケーション
・遊びの道具
>1億円 10〜100万円 数万円
身の回りに無数
存在に
気づかない
〜100円
大昔のコンピュータ 一昔前のコンピュータ 今どきのコンピュータ
コンピュータの利用場面(アプリケーション)が広がった
- 33. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
コンピュータが「頭脳」から「部品」に
出典:ARM
機器の頭脳
関節ごとに小さい脳(神経節)
コンピュータが、システムの「主役」から「構成要素(部品)」になった
※基本的には「コンピュータ」だが、小型で安価
CPU=Central Processing Unit
(中央演算装置)
- 34. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
マイコン使用
部品点数=1
コスト:100円
発振回路(555)
部品点数=4
コスト:150円
「Lチカ」のパラダイムシフト
コスト面:マイコン○(「もったいなくない」)
機能面:マイコン○(多機能・仕様変更も容易)
while(1){
a = 1;
sleep(1);
a = 0;
sleep(1);
}
※さすがにPCではちょっと・・・
Mooreの法則の結果、コンピュータが「部品」になった例
昔のLチカ
今どきのLチカ
※マイコン=Micro Controller(小さなコンピュータ)
※Lチカ=LEDチカチカ(LEDを点滅させる。英語ではBlink)
- 35. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
価格が起こしたパラダイムシフト
シリアル制御フルカラーLED “NeoPixel”
中国・深圳の会社の製品
電源+1本のシリアル制御線で複数制御
超安価 (~3円/pcs)
普通のLEDより安い
LEDディスプレイなど大量に使われるようになった
制御チップは1umルール程度(かなり安い)
Ref: https://news.nicovideo.jp/watch/nw4240213
- 36. 2020/1/6 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
まとめ
Maker(メイカー)活動の誕生
MakerFaireと派生イベント
実は「作りたい」人はたくさんいる
地方分散は良い傾向?
Makerの背景:技術の民主化
技術の高度化が生んだ、技術の市民回帰