ミルクシェークの物語

ミルクシェークの物語
〜顧客のジョブに焦点を当てたイノベーション〜
ビジネスイノベーションハブ

Business Innovation Hub

あるファストフードチェーン企業は、
ミルクシェークの販売を拡大したいと考え、
プロジェクトチームを作った..

最初に、より多くのフレーバーやトッピングを
加えることによってバラエティを増やした..

結果として、コストが増加しただけで収益には
ほとんど貢献しなかった..

次に、顧客の生の声を聞くことにし、
「どのようなミルクシェークがお好きですか︖」
と直接的に尋ねてみた..

結果として、「安いこと」、「美味しいこと」
というような回答しか得られずに終わった..

次に、マーケティングの常套手段である人口
動態特性などによって顧客をセグメント化し、
セグメント毎に異なるプロモーションを⾏っ
てみた..

結果として、膨大なマーケティング費用の
わりには収益にほとんど結び付かない散々
な結果に終わった..

プロジェクトチームは⾏き詰ってしまった..
考え抜いたあげく、顧客がミルクシェーク
を買う背景や動機を探ってみることにした..

まずは、⽐較的売れ⾏きの良い朝の時間帯に
おける顧客をじっくり観察することにした..

ほとんどの顧客は1人で、スーツや作業服を着
ており、朝の8時前後にミルクシェークだけを
買って足早に去っていった..

次に、ミルクシェークそのものではなく、
それを買う際の背景について顧客にインタ
ビューをしてみることにした..

「その時、何をしていたのか︖」、「どの
ような状況だったのか︖」、「どのような
気分だったのか︖」「頭をよぎったものは
何か︖」などと尋ねてみた..

なんと、多くの顧客は退屈な通勤時間を
紛らわす手段として、ミルクシェークを
選択していたのである︕︕

さらに尋ねると、多くの顧客はミルク
シェークの味や種類にはさほど関心を
持っていなかった..

顧客は、片手で持つことができ、手や衣服
に汚れが付くことがなく、退屈な時間を⻑
く紛らわすことができる手軽な「何か」を
求めていたのである︕︕

バナナ、ドーナッツ、ベーグルは手が汚れるし、
スーツや作業着にゴミが付くため、顧客は敬遠
した..

プロジェクトチームは、通勤者向けに種類より
もシンプルかつ⻑持ちするミルクシェークを開
発し、キオスクでセルフサービスによる販売を
開始した..

結果として、商品の絞り込みとセルフサービス
によるコスト削減、キヨスクでの販売による顧
客の利便性と販売回転率の向上により、利益が
大幅にアップした︕︕

価値提案キャンバス
通勤中の
暇つぶしを
すること
ミルク
シェーク
暇をつぶす
時間の⻑さ
⻑持ちする
ドロっとした
成分
手や衣服が
汚れる可能性
使い捨ての
カップと
ストロー
顧客の
ジョブ
プロダクト
とサービス
ゲイン
ペイン鎮痛剤
滋養剤
(http://www.businessmodelgeneration.com)

ビジネスモデルキャンバス
価値提案顧客との関係
チャネル
顧客セグメント
収益の流れコスト構造
パートナー主要活動
リソース
(http://www.businessmodelgeneration.com)
退屈な時間を
紛らわす手段
通勤者
キオスク
セルフ
サービス
販売回転率
の向上
セルフサービス
による人的
コストの削減
アクセスの
良さ
手軽な
栄養補給

教訓

教訓
企業が売っていると考えているものを
顧客が買っていることは稀である“
”（ピーター・ドラッカー）

教訓
もし顧客に何を望むのかを聞いたら、
「もっと速い馬が欲しい」
と答えていただろう
“
”（ヘンリー・フォード）

教訓
ドリルを買いに来た人が欲しいのは、
ドリルではなく穴である“
”（セオドア・レビット）

教訓
顧客は何らかのジョブを片付けるために、
プロダクトやサービスを雇う..
プロダクトやサービスを開発するマーケッター
にとって、顧客そのものではなくジョブこそが
分析の基本的な単位となる
“
”（クレイトン・クリステンセン）

それではジョブとはいったい何か︖

ジョブとは、いつの時代においても私たちが
生きていく上で、しなければならないこと、
したいことの全てである..
それは、⾝体的な活動（例．買い物をする）、
精神的な活動（例．リラックスする）を含む..
ジョブは、特定のプロダクトやサービスとは
無関係である..

♣ 人間としての基本的な欲求（例．⾷事をすること）
♣ 解決したい問題や課題（例．病気を治すこと）
♣ しなければならない用事や仕事（例．洗濯をすること）

設問➀
♣ 誰かと連絡を取ること
♣ ⾝なりを整えること
♣ 家族サービスをすること
以下のジョブに対して、「雇う」ことができる
プロダクトやサービスを1つ以上考えてみましょう︕

ジョブのタイプ

ジョブのタイプ
中核的な
ジョブ
機能的な
ジョブ
感情的な
ジョブ
個人的な
ジョブ
社会的な
ジョブ
付随的な
ジョブ
“⻭を磨く” “手と顔を洗う”
“⾍⻭を予防する”
“スッキリとした
気分になりたい”
“周りから清潔な
人間と思われたい”

背景や制約を明確にする

背景や制約を明確にする
♣ いつ︖ 平日の朝
♣ どこ︖ 路上、電⾞の中、⾞の中
♣ 誰と⼀緒︖ ひとり
♣ 気分は︖ とても退屈
♣ 制約は︖ 片手にカバンやハンドル

望ましい成果

望ましい成果
暇をつぶす時間の⻑さを最大化する
成果
測定単位
方向性

望ましい成果
ジョブを履⾏する過程もしくは結果として..
増やしたいこと／最大化したいことゲイン
減らしたいこと／最小化したいことペイン

望ましい成果
♣ 洗濯に関わるコストを最小限にする
♣ シミや汚れの除去の可能性を増やす
♣ 衣服へのダメージを最小にする
♣ 衣服のさわやかな匂いが持続する時間を増やす
♣ 衣服にしわができる可能性を減らす
♣ 洗濯に関するリソース（⽔、電⼒、洗剤）の使用を減らす

設問②
♣ 誰かと連絡を取ること
♣ ⾝なりを整えること
♣ 家族サービスをすること
設問➀における以下のジョブに対して、望ましい成
果（ゲインまたはペイン）を挙げてみましょう︕

同⼀のジョブと
異なるプロダクトやサービス

同⼀のジョブと
異なるプロダクトやサービス
誰かと連絡を
取ること
携帯電話
eメール

異なるジョブと
同⼀のプロダクトやサービス

異なるジョブと
同⼀のプロダクトやサービス
家族サービスを
すること
映画館
１人で
くつろぐこと

顧客のジョブを理解するためのテクニック

顧客のジョブを理解するためのテクニック
Q1: なぜドライヤーを使うのですか︖
A1: 髪の毛を乾かすためです..
Q2: なぜ髪の毛を乾かすのですか︖
A2: 髪の毛が濡れているからです..
Q3: なぜ髪の毛が濡れているのですか︖
A3: 髪の毛を洗ったからです..
Q4: なぜ髪の毛を洗ったのですか︖
A4: 清潔に⾒せたいからです..
Q5: なぜ清潔に⾒せたいのですか︖
A5: 心地よく感じて、魅⼒的に⾒せたいからです..

ジョブは普遍的なプロセスをもつ

ジョブは普遍的なプロセスをもつ
計画する収集する準備する確認する
履⾏する監視する修正する完遂する

音楽を聴くこと..

音楽を聴くこと..
計画する
収集する
準備する
確認する
履⾏する
監視する
修正する
完遂する
聴きたいジャンルを決めるまでの時間を最小化する..
聴きたい曲を集めるまでの時間を最小化する..
聴く曲の順番を決めるまでの時間を最小化する..
聴く準備ができているか検証するまでの時間を最小化する..
ワクワク感を最大化する..
自分の選曲に間違いがない可能性を最大化する..
気に入らない曲を削除するまでの時間を最小化する..
余韻に浸っていられる時間を最大化する..

設問③
♣ 料理を作ること
♣ 海外へ旅⾏すること
♣ 結婚式を挙げること
以下のジョブに関する各々のプロセスに関して、
そのジョブを上手く履⾏できるようにするために、
どのように手を貸してあげられるでしょうか︖

設問④
♣ Apple
♣ Amazon
♣ Uber
以下の企業のプロダクトやサービスが幅広く
利用されている理由を顧客のジョブ、成果、
ジョブプロセスの視点から考えてみましょう︖

まとめ

まとめ
私たちは、世の中に溢れかえっているプロダクト
やサービスの各々に対して具体的なニーズを持っ
ているわけではないし、持っていたとしても明確
に表現できることは少ない..

まとめ
私たちが常に気にかけているのは、生きていく
上で、しなければならないこと、したいことで
あり、それにスッと手を貸してくれる何かを求
めているのである..

まとめ
顧客のジョブと成果に焦点を当て、それらを理解
することにより、新しいプロダクトやサービスが
失敗する確率はグッと減ることになる..

顧客のジョブに焦点を当てた
イノベーション機会

顧客のジョブに焦点を当てた
イノベーション機会
機能的なジョブの
プロセス
感情的なジョブ
付随的なジョブ
現在の
カバー
領域
イノベーション
機会

ジョブレベルにおける機会
♣ ターゲット顧客の最も重要かつ満たされていないジョブに焦点を
当てる..
♣ 機能的なジョブだけでなく、感情的なジョブ（個人的／社会的）、
付随的なジョブを発⾒する..
♣ 実現されていないゲインを最大化し、解決されていないペインを
最小化してあげる..
♣ 資⼒、スキル、アクセス、時間、現在の習慣などの制約を取り除
いてあげる..

プロセスレベルにおける機会
♣ 複数のステップを１つにまとめてあげる..
♣ 特定のステップを省略または代⾏してあげる..
♣ プロセス全体をIT化／高速化してあげる..
♣ 異なるプロダクトやサービスで履⾏しているジョブをワンストップ
で可能にしてあげる..
♣ 各々のステップの開始時期や履⾏すべきジョブを事前に知らせてあ
げる..
♣ 各々のステップの成果についての迅速なフィードバックを提供して
あげる..
♣ プロセス開始のきっかけを独占する..

機会スコア

機会スコア
機会 = 重要度 + max (重要度 - 満足度, 0)

機会スコア
洗濯に関わるコストを最小限にする
シミや汚れの除去の可能性を増やす
衣服へのダメージを最小にする
衣服のさわやかな匂いが持続する時間を増やす
衣服にしわができる可能性を減らす
洗濯に関するリソース（⽔、電⼒、洗剤）の使用
を減らす
8.0 6.2 9.8
9.1 4.2 14.0
6.8 7.5 6.8
9.6 3.0 16.2
5.8 3.2 8.4
6.6 7.8 6.6
望ましい成果（ゲインとペイン）重要度満足度機会

機会スコア
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
（重要度）
（満
足
度
）
】不満足
過剰満足
適切
より簡単に、
より安価に
ジョブが履⾏できる
ようにしてあげる
より良く、
より多くの
ジョブが履⾏できる
ようにしてあげる

ビジネスイノベーションハブについて..

ビジネスイノベーションハブについて..
ビジネスイノベーションハブは、顧客のジョブ
に焦点を当てたプロダクトおよびサービス開発、
それを支えるビジネスモデルの最適化について
の包括的なサービスを提供しています..

参考書籍／文献
イノベーションへの解
クレイトン・クリステンセン／マイケル・レイナー（翔泳社）
ビジネスモデル・ジェネレーション
アレックス・オスターワルダー／イヴ・ピニュール（翔泳社）
バリュー・プロポジション・デザイン
アレックス・オスターワルダー／イヴ・ピニュール（翔泳社）
What Customer Want
Anthony W. Ulwick（McGraw-Hill）
Jobs-To-Be-Done (A goal-driven solution framework)
Clément Génin

（お問合せはこちら）
info@businessinnovationhub.co.jp
http://www.businessinnovationhub.co.jp（ホームページ）
http://www.facebook.com/bizarchlab（ビジネスアーキテクチャー研究ラボ）
https://septembers.jp（協働型ビジネスモデル構築アプリケーション）

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