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リハビリテーション栄養の基礎
潤和会記念病院 PT
中村 圭太
どう思いますか?
どう思いますか?
思い当たりはありませんか?
 ダイエット病棟
http://d.hatena.ne.jp/kuromori999/20130121
思い当たりはありませんか?
 何だか、なかなか良くならない。
じゃあどうすればいいの?
http://setagayahp.jp/team.html
目次 前編 低栄養とサルコペニアの基礎
Ⅰ.栄養の基礎
Ⅱ.筋肉の萎縮と肥大
Ⅲ.侵襲と飢餓
Ⅳ.安静と禁食の弊害
目次 後編 リハ栄養の基礎
Ⅴ.主観・客観的評価
Ⅵ.機能評価
Ⅶ.栄養投与量の決定
Ⅷ.注意点
Ⅸ.疾患別・症例検討
Ⅹ.さいごに
前編 低栄養とサルコペニアの基礎
Ⅰ.栄養の基礎
http://ja.wikipedia.org/wiki
栄養の基礎 ~同化と異化~
 同化
 生体内でエネルギーを用いて、糖質・脂質・タンパク質・
核酸などを合成する過程で、細胞の成長やすべての組
織、臓器の維持に必要。
 同化がなければ筋肉などあらゆる生体構成成分を合成
できず、生命として成立しない。
栄養の基礎 ~同化と異化~
 異化
 糖質・脂質・タンパク質などを分解して、エネルギーを得
る過程といえる。
 食事からエネルギーを得る過程、生体構成成分を壊して
エネルギーを得る過程も異化である。
栄養の基礎 ~同化と異化~
同化 異化
グルコース → グリコーゲン グリコーゲン → グルコース →解糖 → ク
エン酸回路
アミノ酸 → タンパク質 タンパク質 → アミノ酸 → クエン酸回路
脂肪酸 → 中性脂肪 中性脂肪 → 脂肪酸 → クエン酸回路
栄養の基礎 ~同化と異化~
 同化が多ければ体重は増加し、異化が多ければ体重は
減少する。
http://mental-suppli.net/info/?p=874
栄養の基礎 ~同化と異化~
 異化の行く末…
餓死(窒素死)(除脂肪体重の30%喪失)
免疫能低下(リンパ球など)、創傷治癒遅延、臓器障害
内臓蛋白の減少(アルブミンなど)
筋肉のタンパク質分解による筋肉量の減少
脂肪の分解・遊離脂肪酸からケトン体産生
肝臓・筋肉内のグリコーゲン枯渇(1日)
栄養の基礎 ~同化と異化~
 運動をしないで生体内に貯蔵できるのは脂肪とグリコー
ゲンだけ。
 タンパク質を含めて栄養を過剰に摂取しても、運動をし
なければ筋肉量は増えない。
 過剰な栄養の多くは脂肪として体内に蓄積される。
若林秀隆 PTOTSTのためのリハビリテーション栄養 より
栄養の基礎 ~同化と異化~
 抵抗運動の目的は、筋肉量の増加、蛋白の同化。
 同化には筋肉の原材料であるアミノ酸やエネルギーを必
要とする。
 飢餓のときに抵抗運動を行っても、アミノ酸やエネル
ギーを得るために筋肉の体内タンパク質などを分解する
 つまり、筋肉量はかえって減少する。
若林秀隆 PTOTSTのためのリハビリテーション栄養 より
栄養の基礎 ~同化と異化~
univers.sakura.ne.jp
Ⅱ.筋肉の萎縮と肥大
http://www.wind.ne.jp/khari/kenkyuu/05-09-18youtuu.html
筋肉の萎縮と肥大 ~萎縮~
 筋萎縮の原因は色々ある。
原因 状態
廃用性 疾患などのために活動性や運動量の低下した状態が続くこ
とで生じる、二次的障害である。
原疾患性 神経筋疾患、運動器疾患、内分泌疾患など原疾患による筋
萎縮である。
飢餓性 不適切な栄養管理などでエネルギー消費量と比較してエネ
ルギー摂取量が不足している。
サルコペニア 加齢等により生じる筋肉量の減少であり、老年症候群のひ
とつといえる。機能低下を伴う。
悪液質性 慢性疾患やガンなどの、慢性消耗性疾患をベースとして直
接的、二次的に生じる筋萎縮である。
筋肉の萎縮と肥大 ~廃用性筋萎縮~
 主にタイプⅠ繊維有意の萎縮であり、抗重力筋に多
い。
 長期安静、活動性低下、ギプス固定や抗重力活動
の低下等の際に起こりうる。
筋肉の萎縮と肥大 ~原疾患性筋萎縮~
 中枢神経性(脳、脊髄)の場合はタイプⅠ繊維、末梢
神経性の場合はタイプⅡ繊維に有意に起こる。
(最近では中枢神経性も、タイプⅡ繊維ともに起こるとされる)
Normal OPLL
中村ら 慢性脊髄圧迫モデルマウスにおける後肢骨格筋の特徴について 2008
筋肉の萎縮と肥大 ~飢餓性筋萎縮~
 自食作用(オートファジーシステム)
 細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、タ
ンパク質の過剰合成時、栄養環境が悪化したときに、
タンパク質の自食を行いリサイクルを行う。
筋肉の萎縮と肥大 ~飢餓性筋萎縮~
 絶食によるオートファゴソームの発現
http://www.cellcycle.m.u-tokyo.ac.jp/senmon.html
筋肉の萎縮と肥大 ~サルコペニア~
 骨格筋減少症
 加齢により同化より異化が亢進している状態。
 混合した因子(テロメア消失によるDNA自体の寿命、酸
化、フリーラジカル・活性酸素による細胞破壊、アポトー
シスだけでなく、ユビキチンプロテアソーム系、オートファ
ジー、ミオスタチン-Smad3系等)が混在している状態。
Nutritional recommendations for the management of sarcopenia.J Am Med Dir Assoc. 2010 ;11:391-6.
筋肉の萎縮と肥大 ~悪液質性筋萎縮~
 慢性消耗性疾患に関連する複雑な代謝症候群で、筋肉
の喪失が特徴である。脂肪は喪失することもしないこと
もある。
http://www.phar.nagoya-cu.ac.jp/hp/neuro/research.html
筋肉の萎縮と肥大 ~悪液質性筋萎縮~
サイトカイン(TNF-α)
分解系酵素活性
局所因子(LMF・PIF)
脂肪・筋組織の崩壊
筋組織の分解
乾ら Cachexiaの診断,病態と治療 栄養-評価と治療 vol30
成長因子の抑制
筋肉の萎縮と肥大 ~悪液質性筋萎縮~
 食欲抑制系ホルモン(レプチン)
 サイトカインによるレプチン様の誤シグナル
 視床下部における食欲・体重調節機構の破たん
 食欲促進系ホルモン(グレリン)の抑制
 食欲不振・体重減少
乾ら Cachexiaの診断,病態と治療 栄養-評価と治療 vol30
筋肉の萎縮と肥大
 単純な運動不足や寝かせきりという問題だけではなく、
筋萎縮の原因も実は色々あるということ。
 実際は、これらの様々な要因が混在している状態。
http://www.kaisha-119.com/medical.html
筋肉の萎縮と肥大 ~筋肥大~
http://www.frontier.kyoto-u.ac.jp/rc03/research/hajimeni.html
筋肉の萎縮と肥大 ~筋肥大成長因子~
 成長因子は組織の局所で分泌、作用する。
 これらは成長する細胞自身から分泌され、自身や周囲
の細胞に作用するため、傍分泌または自己分泌機構
(オートクライン)とよばれている。
インシュリン様成長因子(IGF-1)
トランスフォーム成長因子(TGF-B)
繊維芽細胞成長因子(FGF)
プロスタグランジン など
筋肉の萎縮と肥大 ~筋肥大~
筋肉の萎縮と肥大 ~筋肥大~
 筋肉の合成には、アミノ酸とエネルギーが必要である。
 そして筋肉だけではなく生命活動自体に、5大栄養素(た
んぱく質、脂質、糖質、ミネラル、ビタミン)が必要である。
www.otsuka.co.jp393
Ⅲ.侵襲と飢餓
http://hobab.fc2web.com/sub2-arakidonnsannkasuke-do.htm
侵襲
 「侵襲」とは、手術や外傷、骨折、感染症、熱傷などの生
体内部恒常性を乱す可能性がある刺激である。
 侵襲下の代謝変化は、傷害期、異化期、同化期に分け
られる。
傷害期 異化期 同化期
エ
ネ
ル
ギ
消
費
量
侵襲と飢餓 侵襲時の代謝
 糖新生
http://www.breath-design.com/?eid=1620997
侵襲と飢餓 侵襲時の代謝
 侵襲時、ほとんどのアミノ酸は筋肉から供給される。
 高度の侵襲では1日250g以上のアミノ酸が供給される。
 そのすべてが筋肉から供給される場合、1日1kg以上の
筋肉量が減少してしまう。
 高度の侵襲時にエネルギーやたんぱく質を大量に投与
しても、異化は一部しか防げない。
PT・OT・STのためのリハビリテーション栄養 若林秀隆 著
侵襲と飢餓 飢餓時の代謝
侵襲と飢餓 飢餓時の代謝
http://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch2-3/
侵襲と飢餓 飢餓時の代謝
 脳や臓器、筋肉の障害が生じる。
 特に消化管は飢餓の影響を受けやすい。
 消化管粘膜と平滑筋の両方が失われ、吸収障害、下痢、
鼓腸、消化管潰瘍などが発生する。
侵襲と飢餓 飢餓時の代謝
http://2009hungry30.mmmtravel.com.tw/#
運動がんばれ!
リハビリがんばれ!
侵襲と飢餓 飢餓時の運動
エネルギーが枯渇しているときに、エネルギーを必要とすれば
身を削ってエネルギーを作り出します。
その先は…
侵襲と飢餓 飢餓型
 マラスムス型
栄養の摂取自体が低下した状態。エネルギー不足で体
内たんぱく質や皮下脂肪不足となりしわしわで乾燥した
ように痩せる。アルブミンは下がりにくく、いらいらしたり、
嘔吐するなどの症状がある。
 クワシオルコル型
病気や手術など、主にたんぱく質の消費亢進状態。痩せ
るというよりは一見ふっくらし、低たんぱく血症でむくんだ
状態となる(顔面浮腫や腹水など)。アルブミン値は下が
り、無気力や下痢などの症状がある。
侵襲と飢餓 飢餓型
ameblo.jp
侵襲と飢餓 飢餓型
 マラスムス型が低アルブミン血症を引き起こさない理由
たんぱく・エネルギー摂取不足
コルチゾール分泌増加 / インスリン分泌抑制
筋たんぱく質分解亢進により、糖
新生が促される
(筋肉の減少)
アミノ酸の放出
(肝臓で糖新生とアルブミン合成促
進)
侵襲と飢餓 飢餓型
 クワシオルコル型はなぜ浮腫を起こすのか
薄める力が必要なく弱くなるので、
バランスが崩れる
Ⅳ.安静と禁食の弊害
http://shirayukihime-project.net/hase-toshiaki.html
安静と禁食の弊害 腸管障害
 絶食は消化管粘膜障害のリスクファクター
 10日間の絶食により消化管粘膜は脱落し、腸内細菌や
その毒素が血中・リンパ管内へ移行し、敗血症症状を引
き起こす。(バクテリアル・トランスロケーション)
http://www20.atpages.jp/hospynst/?page_id=39
安静と禁食の弊害 腸管障害
急性期スーパーナース養成 松田塾 感染管理と栄養管理のコツを徹底マスター!
安静と禁食の弊害 廃用症候群
 外科手術や肺炎等の治療時の安静があり、治療開始時
にFIM115点以下、BI85点以下の状態。
 ICU無力症
 廃用症候群の91%に低栄養を認める。
若林秀隆 「特集 高齢者の栄養について考える」 JSPEN機関紙
2013
安静と禁食の弊害 サルコペニア
 原発性サルコペニア
 二次性サルコペニア
Kennethら Myopenia -a new universal term for muscle wasting. 2011
安静と禁食の弊害 サルコペニアの悪循環
 サルコペニアの悪循環
http://ameblo.jp/suyaman-dent/entry-11510620256.html
安静と禁食の弊害 サルコペニアの予防
若林秀隆 サルコペニアを知ろう 週刊医学界新聞 第2920号(2011)
その他多数出てます。
後編の内容
 より具体的に、もう一歩踏み込んで紹介していきます。
 具体的な栄養状態の評価方法
 栄養面へのアプローチと運動負荷量の設定
 疾患別・症例に沿ったリハ栄養の紹介
後編 リハビリテーション栄養の基礎
Ⅴ.主観・客観的評価
主観的評価
 まずは主観的包括的なスクリーニング。
ameblo.jp
MNA-SF EAT-10
主観的評価
 実は、問診と年齢・身長・体重といった簡単な基礎データ
だけでほとんどの情報が手に入る。
 問診
食物摂取状況の評価
 年齢・身長・体重
BMI、標準体重比、体重変化率、基礎エネルギー消費量
安静時エネルギー消費量、エネルギーバランス
エネルギー必要投与量、アミノ酸必要量 など
客観的評価 BMI
 判定
低体重 :18.5未満
普通体重 :18.5以上25.0未満 (22が理想とされる)
肥満(1度) :25.0以上30.0未満
肥満(2度) :30.0以上35.0未満
肥満(3度) :35.0以上40.0未満
肥満(4度) :40.0以上
客観的評価 体重減少率
 体重がどの程度減少したかによって判定。
 (健常時体重-現体重) ÷ 健常時体重 × 100
 1週間で2%、1ヶ月で5%、3ヶ月で7.5%、6ヶ月で10%
以上減少すれば、中等度以上の栄養障害の疑い。
客観的評価 標準体重比
 標準的な体重と比較した割合
 現体重 ÷ 標準体重 × 100
 85~95%で軽度、75~85%で中等度、74%以下で重度
栄養障害の疑い。
※ 標準体重は、身長(m)2 × 22
客観的評価 血液生化学データ
 アルブミン3.0g/dl以下
 ヘモグロビン10.0g/dl以下
 リンパ球数1200/mm3以下
 総コレステロール100mg/dl以下
客観的評価 総たんぱく
 総たんぱく(Total Protein:TP)
 アルブミン + グロブリン からなる。
 グロブリンは様々な病態により変動が大きい。
 よって栄養の指標としては用いる必要性が低い。
客観的評価 アルブミン
 アルブミン
 膠質浸透圧の維持や物質輸送、アミノ酸の供給源。
 炎症、肝機能や心機能障害、亜鉛欠乏や血液の希釈で
も低下する。
 栄養動態の静的な評価指標である。
客観的評価 アルブミン
 炎症や外傷や術後などの急性侵襲下でも、アルブミンは
低下する。
侵襲
肝臓での炎症性メディエーター合成増加
肝臓でのアルブミン合成低下
アルブミンの血管外への移動
細胞外液が増えて希釈される
客観的評価 アルブミン
 炎症期では減少するため、栄養障害との判別が必要。
 半減期が約20日間と長いため、リアルタイム評価ではな
い。
 動的評価指標としては、プレアルブミン(トランスサイレチ
ン)などの急性相たんぱくの方が有用。
 脱水などでは逆に値が大きく出てしまう事もある。
客観的評価 ヘモグロビン
 ヘム(鉄・ポルフィリン)+グロビン(ポリペプチド)
 たんぱく質として血清アルブミンと同様、低値を示す傾向
にある。
 出血や各種貧血などの造血能の影響により低値を示す
場合もあるので、注意が必要。
http://medical-checkup.info/article/46032627.html
客観的評価 リンパ球数
 白血球の無顆粒球に分類される細胞で、免疫機能に関
わる。B・T・NK細胞
 低栄養になると相関して細胞性免疫が低下するというこ
とから、指標に用いられている。
 感染症や造血能などの影響で変動が大きいため、栄養
状態の評価指標として使用する事には注意が必要。
http://www.stnv.net/med/lymphocyte.htm
客観的評価 総コレステロール
 ステロイドの前駆体および細胞膜やリポタンパク外層の
構成成分となる、動物代謝産物。
 低栄養による合成低下、消化器系疾患や吸収障害等で
低下し、低栄養時の浸透圧維持のために逆に増加する
こともある。(ストレスなども)
http://hobab.fc2web.com/sub6-Statin.htm
客観的評価 窒素バランス
 窒素はたんぱく質の水溶性最終代謝産物
 尿素窒素は、尿中の窒素排泄物の約80%を占める。
 尿・便・汗などの体液からも排泄されるが、主要排泄器
官は腎臓
 尿中尿素窒素量×1日の尿量(ℓ)=窒素排泄量。
 窒素投与量と窒素排泄量との差が窒素バランス。
 正なら同化状態、負なら異化状態
客観的評価 エネルギーバランス
客観的評価 エネルギーバランス
 基礎エネルギー消費量(BEE)
http://blogs.yahoo.co.jp/onyor_onyorita/27483515.html
客観的評価 エネルギーバランス
 安静時基礎代謝量(REE)
http://kurumenst.exblog.jp/18472021
間接熱量計
客観的評価 エネルギーバランス
 食事誘導性熱産生(DIT)
 REEは、BEE+DITとする概念もある。
 BEEの10%程度か、摂取エネルギーの6~10%
客観的評価 エネルギーバランス
 総エネルギー消費量(TEE)
客観的評価 エネルギーバランス
 摂取エネルギー量
 食事エネルギー量/日 × 摂取割合(%)/100
 体重増加を目指す場合、TEEに蓄積量(200~500kcal)
を付けるという概念もある。
客観的評価 エネルギーバランス
 総エネルギー摂取量 - 総エネルギー消費量
 正なら体重増加、負なら体重減少となる事が多い。
Ⅵ.機能評価
機能評価 形態測定
 上腕周囲長
 上腕三頭筋皮下脂肪厚
 下腿下腿周囲長
 計算して出せるもの
上腕筋面積 など
http://www.long-life.net/np142.htm
機能評価 筋力
原田ら サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサス 2012
Ⅶ.栄養投与量の決定
栄養投与量の決定 エネルギー投与量
 総エネルギー消費量(BEE×活動係数×ストレス係数)
 運動時エネルギー消費量
(1.05×体重×メッツ×運動時間)
総エネルギー消費量+運時時エネルギー消費量+(蓄積量)
or
運動分・蓄積量を考慮した活動係数の設定を行ったTEE
栄養投与量の決定 運動時エネルギー消費
身体活動のメッツ
1.0:安静座位
1.2:静かに立つ
1.3:座位で本や新聞を読む
1.5:座位での会話、食事、入浴、手芸など (ST)
1.8:立位での会話
2.0:更衣、整容、シャワー、歩行(54m/min未満)、料理、洗濯 (OT)
2.3:立ち仕事
2.5:歩行(54m/min)、ストレッチ体操、掃除
3.0:歩行(64m/min)、階段下り、軽~中等度抵抗運動 (PT)
3.3:歩行(81m/min)
4.0:歩行(95-100m/min)、通勤
5.0:歩行(107m/min)
6.0:強度の抵抗運動
7.0:ジョギング
8.0:階段上り
栄養投与量の決定 運動時エネルギー消費
 運動時エネルギー消費量
(1.05×体重×メッツ×運動時間)
 PTを1時間実施した場合(推定)
 1.05×体重×3メッツ×1時間
 私なら…(31歳独身、69kg)
 1.05×69kg×3メッツ×1時間で217.35kcalとなる。
栄養投与量の決定 タンパク質投与量
 WHOにより、健常成人の不可避的たんぱく喪失量は、
体重1kgあたり0.34g/dayとされている。
 安全域の考慮と生体内利用率を考え、実際は体重1kg
あたり0.57g/dayが最低必要量とされている。
 投与方法により形態を変化(アミノ酸・ペプチド・たんぱく
質)
http://igs-kankan.com/article/2012/01/000544/
栄養投与量の決定 タンパク質投与量
 これまでの研究検証結果では、窒素1gに対して150kcal
のエネルギーがあれば効率よく利用される。
 投与窒素量(g/day)=投与エネルギー量(kcal/day)
/150
 窒素はアミノ酸の平均16%を占めているので
100/16≒6.25(窒素換算係数)
 投与アミノ酸量(g/day)=投与窒素量(g/day)×6.25
JSPEN 静脈経腸栄養ハンドブックより
栄養投与量の決定 熱量/窒素比
 アミノ酸を投与しようとも、適正なエネルギー供給がなけ
れば利用率が不良で、合成には利用されず排泄される。
 窒素1gに対して150kcalが効率良い
 非たんぱく熱量/窒素比(NPC/N比)を考慮して決定
 たんぱく質エネルギー量は摂取量(g/day)×4(kcal)
JSPEN 静脈経腸栄養ハンドブックより
総エネルギー量(kcal)-たんぱく質エネルギー量(kcal)
たんぱく質量(g)×0.16
栄養投与量の決定 熱量/窒素比
 一般的にはNPC/Nは100~200の許容範囲、侵襲がな
い状態では150~200になるよう設定。
 侵襲が大きくなるにつれてたんぱく質必要量が増加し、
比率が低下する。
JSPEN 静脈経腸栄養ハンドブックより
栄養投与量の決定 たんぱく質投与量
 ビーフリード(1000ml)の総熱量は420kcal。
 ブドウ糖は75g、アミノ酸は30g、総窒素量は4.7g/mlで
ある。
 カロリー換算すると、ブドウ糖は75g×4kcalで300kcal
 窒素量は30g×0.16で4.8g
 300/4.8でNPC/Nは62.5となる。
http://www.e-pharma.jp/allHtml/3259/3259529G1030.htm
栄養投与量の決定 たんぱく質投与量
 NPC/N比を200に設定した時のたんぱく質投与量
 たんぱく質を含まないエネルギーを1500kcalとした時
 200=1500kcal/N となり、 N=7.5g となる。
 必要なたんぱく質は7.5g×6.25で46.9gとなる。
 窒素4.7g/1000ml含有の輸液なら、7.5g必要となるので、
1.6倍換算でml必要な計算となる。
栄養投与量の決定 脂質投与量
 エネルギー効率が良い(9kcal)。
 総エネルギーの15~40%、1g/kg/dayが推奨されるが、
一定の基準もない。
 脂質はエネルギー基質になるだけでなく、細胞膜の構成
成分やステロイドホルモン前駆体、脂溶性ビタミン担体
や脂質メディエーターの生成に必要となるため大切。
 必須脂肪酸は生体内で合成されないため、食物からの
摂取が必要。
栄養投与量の決定 炭水化物投与量
 非たんぱく質エネルギーの60~70%は炭水化物。
 ケトーシス発生予防のため、1日100gの摂取が望ましい。
 糖の安全投与限界は7g/kg/day(5mg/kg/min)
 過度な糖負荷は、脂肪蓄積や高血糖、および高浸透圧
性ケトン性昏睡、糖尿病性ケトアシドーシスの原因となる。
 侵襲下ではインスリン抵抗性があるため、4mg/kg/minを
超えないよう配慮する。
栄養投与量の決定 水分投与量
 尿量+不感蒸泄量+便の水分量=水分投与量+代謝水
 体重あたり30~35ml/day
 1ml×TEE
 1500ml×体表面積(m2)
 経腸栄養剤では1kcal/mlに調整された栄養剤でも、容
量の85%程度の水分を含むのみ。
 残りの15%は水分として補う必要がある。
 インアウトバランスのチェックは欠かさず実施
脱水の見分け方
 脱水量を計算する。(正常は1)
 脱水量(L)=健常時体重×0.6×(1-140/Na)
 浸透圧を計算する。(正常は280-295)
 血漿浸透圧=2×Na + Glu/18 +BUN/2.8
1
2
Ⅷ.注意点
注意点 栄養素の吸収部位
 投与部位によって吸収される栄養素がちがう
http://www.nanbyou.or.jp/entry/81
糖
アミノ酸
脂肪酸
ビタミン類
葉酸など
水分
電解質
鉄
カルシウム
ビタミンB12
胆汁酸
12指腸
回腸
空腸
大腸
注意点 リフィーディング症候群
http://www.pharm.or.jp/hotnews/archives/2009/07/refeeding.html
注意点 リフィーディング症候群
 リスク因子
 予測値の70~80%の熱量投与から開始。
 電解質やミネラル等、適宜モニターしながら徐々にアップ。
★慢性的な栄養障害
★3~6ヶ月内の体重減少率が重度
★極度の痩せ型(BMI)
★血清リン・カリウム・マグネシウム低値
Ⅸ.疾患・症例別
http://ja.best-wallpaper.net/Delicious-fruit-oranges-and-kiwi-fruit_wallpapers.html
疾患別 褥瘡
 侵襲および浸出液からのたんぱく質喪失など、異化亢進
状態。
 高エネルギー・高たんぱく食が基本。
 たんぱく質合成に関わる微量元素(亜鉛や鉄)、コラーゲ
ン生成に必要なビタミンCの摂取が重要。
 褥瘡ケアがかなり大事。
http://www.maruho.co.jp/kanja/jokusoujiten_ff/jokuso/page3.html
疾患別 慢性心不全
 摂食・嚥下障害の要因
①薬剤の影響
②塩分・水分制限
③サルコペニアの影響
④耐久性の低下
⑤心不全に伴う関連臓器の障害
⑥心拡大による影響
 栄養・運動プラン
若林ら サルコペニアの摂食・嚥下障害より
http://www.pha.u-toyama.ac.jp/toms/column06/index.html
疾患別 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
 全身性の炎症や呼吸数の増加などにより、REEは健常
人と比較し有意に増大している。
 アルブミンの低下は認めず、急性相たんぱくの低下を示
すマラスムス型の栄養障害を呈しやすい。
 肺過膨張による腹部内臓の圧迫や呼吸困難感、炎症に
より食欲の低下を示す。
 やや多めのエネルギー設定や、呼吸商の小さい食物の
選択、分食を推奨。
JSPEN 静脈経腸栄養ハンドブックより
疾患別 慢性腎不全(CKD)
 酸化ストレスや慢性炎症による異化亢進状態。
 体内への過度な貯留を防ぐため、NPC/N比にもとづい
たたんぱく質の制限、水分や塩分、カリウム制限が行わ
れる。
 低栄養によるたんぱく量の減少を防ぐため、27~
29kcal/dayの十分なエネルギー量を確保する。
JSPEN 静脈経腸栄養ハンドブックよりhttp://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/kid/calc_egfr.html
疾患別 肝硬変
 肝グリコーゲン枯渇によるエネルギー不足と、たんぱく
代謝能異常による異化亢進状態。
 代償期は肝負荷に考慮しながら高エネルギー・たんぱく
食が推奨される。
 非代償期は、たんぱく不耐状態に対してたんぱく質制限、
血管内圧上昇による漏出予防のための塩分制限が行
われる。
 就寝時夜食(LES)も推奨される。
http://pixta.jp/illustration/4320989
疾患別 糖尿病(DM)
 血糖および体重コントロールが必要。
 標準体重1kgあたり25~30kcalを目標
(活動度に応じて)。
 グリセミックインデックスの低い食品を推奨。
 食物繊維には胃や小腸での吸収遅延があるため、食後
の糖やコレステロールの低下作用がある。
 高浸透圧性高血糖や低血糖に留意。
JSPEN 静脈経腸栄養ハンドブックより
疾患別 精神疾患
 拒食症…意図的な体重減少。
 過食症…持続的な摂食への没頭と食物への渇望。
 うつ …意欲・興味・精神活動の低下。
 向精神薬の影響
・抗うつ薬 ・・・吐き気・便秘・下痢
・抗精神病薬・・・便秘・錐体外路症状・嚥下障害・口渇
・抗パーキンソン病薬・・・便秘・口渇
・抗認知症薬・・・吐き気・下痢
症例検討
症例検討 基本情報
 患者名:栄養 太郎さん
 診断名:脳出血、仙骨部褥瘡
 障害名:右片麻痺
 年齢:75歳
 性別:男性
 身長:164cm
 現体重:47kg (搬送時体重:52kg)
 発症後一ヶ月経過し、状態も安定してきたため回復期リハビ
リ病棟へ転科となる。嚥下障害があり、経鼻胃管により流動
食400kcal×3回/日投与していた。仙骨部には10cmの黒
色壊死あり、デブリ実施。排膿あり、ガーゼ交換は2回/日で
ある。意識障害も改善してきており、VF評価後、ミキサー固
形食での経口摂取開始されている。
症例検討 血液生化学データ
検査項目 測定値 検査項目 測定値
白血球 13200mm3 赤血球 405×104/mm3
総ビリルビン 1.4mg/dL ヘマトクリット 35.4%
直接ビリルビン 0.8mg/dL ヘモグロビン 12.4g/dL
ALP 455IU/L 総たんぱく 6.2g/dL
GOT(AST) 57IU/L アルブミン 3.4g/dL
GPT(ALT) 80IU/L LDH 87IU/L
γ-GTP 306IU/L HDLコレステロール 25mg/dL
クレアチニン 1.1mg/dL Na 129mEq/L
血糖 112mg/dL Cl 96mEq/L
CRP 1.5 Fe 47μg/dL
Zn 62μg/dL
症例検討
 病棟内ADL状況
寝返り・起き上がり~座位中介助レベル。
ADL車いす全介助レベル。
日中はベッド上で臥床傾向。
 食事内容
ミキサー固形食:1800kcal+栄養プリン200kcal
自己摂取可
摂取割合:9割(食べこぼしと、時折のムセあり)
症例検討 客観的評価
 BMI =17.5(痩せ形)
 標準体重比
標準体重は、身長(m)2 × 22 = 59.17kg
現体重÷標準体重×100=79.4(%)
…中等度の栄養障害疑い。
 体重の変化率
(搬送時体重-現体重)÷搬送時体重×100=9.6(%)
…中等度以上の栄養障害疑い。
症例検討
 エネルギー必要量の算出
 BEE
=66.47+(13.75×47kg)+(5.0×164cm)-6.76×75
歳
=1025.72kcal
 TEE(BEE×活動係数×ストレス係数)
=1025.72×1.2(ベッド上安静)×1.3(褥瘡)
=1600.12…kcal
症例検討
 たんぱく質…褥瘡のため多めに設定する。
47kg×1.2g=56.4g/日
56.4g×4kcal=225.6kcal/日 エネルギー比率14%
 脂質…高エネルギー食とするため、総エネルギー量の30%
とする。
1800kcal×0.3=540kcal
540kcal÷9kcal=60g/日
 炭水化物
1800-(225.6+540)=1034.4.4kcal
1034.4kcal÷4kcal=258.6g/日 エネルギー比率57.5%
症例検討
 高たんぱく・高エネルギーに加え、微量元素(亜鉛)・ビタ
ミン含有の食品も追加される。
http://www.vcresc.com/
症例検討
 食事摂取量
1800kcal/日+200kcal(栄養プリン)=2000kcal
1800kcal×0.9(食事摂取割合)+200kcal=1820kcal
 エネルギーバランス
1820kcal(摂取エネルギ)ー1600kcal(TEE)=220kcal
A: + 220kcal
症例検討
 運動負荷量の目安
 運動時カロリーの計算式から、逆算して算出。
(1.05×体重×メッツ×運動時間)
 1時間の場合…
220kcal÷47kg÷1時間÷1.05=4,46メッツ
 2時間の場合…
220kcal÷47kg÷2時間÷1.05=2.22メッツ
症例検討
 TEE + 運時時エネルギー消費量 + (蓄積量)
or
 運動・蓄積分を考慮した活動係数の設定を行ったTEE
足りているか?
症例検討
 たんぱくは摂取しても、運動・活動しなければ保存されない。
(不足していれば、それ以前の問題)
 そして、たんぱくを合成するにもエネルギーが必要。
 全量摂取できない原因は何でしょうか?
 食べこぼしの原因は何でしょうか?
 ムセ込んでいる原因は何でしょうか?
 褥瘡に対する栄養療法への意識、そして最も大切となるのは
日常のケア。
今回は、褥瘡については詳しく触れませんが…
症例検討 食事場面
 摂取量が確保されない原因は?
症例検討 食事場面
症例検討
NST入力画面
まとめ
 侵襲や病態により、異化亢進状態にある患者は多い。
 異化が亢進すると、筋量や生命維持活動が低下する。
 筋肉の合成には、タンパク質とエネルギーが必要である。
 年齢・身長、そして体重のチェックは簡単で大切。
 セラピストも機能評価と症状発信、活動量の考慮が必要。
 エネルギーバランスのチェックは大切。
Ⅹ.さいごに
フェリス・ビューラーの名言
食事が始まれば、歯車が動き出す。
 食事が始まると、尿・便意が出現し、尿・便意が生まれれ
ば、トイレ動作が出現する。
 トイレ動作が出現すると、座位や移乗動作、更衣動作が
出現する。
 起きる目的ができる事で、起居・移乗・移動動作が出現
する。
 食事に行く楽しみが生まれると、加速する。
wikipedia
リハビリテーション栄養 食事
 食事摂取量は確保できているのか。
 確保できていない原因は何か。
 投与方法の問題は?
 摂食機能の問題は?
 嚥下機能の問題は?
展望
 バイタルチェックのひとつとして当たり前に
 活動量にあわせた摂取量の発信
 セラピスト視点で見た症状の発信
 栄養状態にあわせたリハの設定
 リハビリテーション計画にあわせた栄養計画の設定
One for All, All for One!
https://fisher.osu.edu/blogs/gradlife/2012/03/28/be-a-team-member/
ご清聴ありがとうございました
若林先生と日本リハ栄養研究会会員とともに

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リハ栄養の基礎 潤和発表用

Notas del editor

  1. まずこの写真を見て、どう思いますか?これは1992年のアフリカ(ソマリア・スーダン)内戦時の写真です。武装集団により家畜や田畑を燃やされた、飢餓に苦しむ農村の人の写真です。ひどく痩せており、ああ、このままじゃあ死んでしまうなと感じますよね。病態や機序は違えど、同じような状態が、体の中で起こっているのが患者さんです。調査によると急性期や回復期、老健施設に入院入所中の5割以上の方に低栄養を認めたとの報告もあるようです。このような患者さんを目の前にして、筋力訓練をする人や、動作訓練を積極的に行おうとは、直感的に思わないと思います。そして、どのようにリハビリを進めていけばよいのか、一度は迷い考えた事があるだろうと思います。
  2. 一日3本のポカリだけで、数日、数か月間生活してみたことはありますか?想像してみてください。維持液と言われる3号液は、生理食塩水を薄めたものにブドウ糖や電解質等を加えたものですが、大体ポカリみたいなものです。ポカリ一日3本で生活している状態で、「さて、頑張って立って歩きましょう!リハビリしましょう!」と言われたら、どう感じるでしょうか。
  3. ではどうすれば良いのか。体が弱ってるから、寝かせとくのかというと、違いますよね。僕らはそれでもリハビリを行っていかなければなりません。ではどのように進めていくのか…ですが。機能的訓練やADL動作訓練の負荷量でいえば、血圧や脈、酸素飽和濃度といったバイタルサインのチェックをしながら、呼吸・循環部門のマニュアル的な負荷量に沿いながら、経験もあわせて進めていっていると思います。また、そこからの細かい調整は経験的なものであったり、感覚的なもので進めている部分もあるのではないかと思います。ただし、それでもどの程度どれくらいの負荷でやってけばいいのか迷う場面も多く、リハビリに関しても足りないのか、やり過ぎなのかのラインの見極めがうまくいかず、そしてそれらは経験的な要素で実施している部分もあると思います。今回はそのラインを少しでも性格に見極めるために、そしてより良く患者さんたちを導いていくためのひとつとして、栄養面からフォーカスを当て、関わるスタッフひとりひとりが少しでも基本状態の異常にきづく視点を持ち、チームで状態を適切に評価し、適切な基礎状態の治療を行いながら、適切なリハビリテーションを進行していく方法を考えていきたいと思います。
  4. 細かいところまでになると、どうしても僕らセラピストには隣の畑状態ですから、最低限把握しておけば良い部分をおおざっぱに簡単にまとめてみたつもりです。
  5. 増えればどんどん肉が付きますし、減れば最後は骨と皮です。
  6. じゃあ異化が進むとどうなるかというと、死です。
  7. これは皆が学生時代に習う有名なTCA回路(クエン酸・クレブス回路)ですが、炭水化物がブドウ糖に分解され、グルコースに分解されさらにピルビン酸になり、AT値で御存知の好気的解糖下ではミトコンドリア内に入ってクエン酸回路、そして電子伝達系を経て、38molのATPが作られますが、嫌気的解糖下では乳酸ピルビン酸が乳酸となり、2molのATPしか作られないという有名なものです。そして何らかの原因でエネルギーが必要になると、肝臓に貯蓄していたグルコースを使いますが、それも1日程度しか持ちません。じゃあどうするかというと、脂質やたんぱく質を分解してそこから糖を作り出して、エネルギーを得ようという働きが生じます。例えば病気や怪我、手術の際にも糖を作り出そうという働きが活発になります。侵襲時は脂肪もたんぱく質も分解されるのですが、どちらかというとたんぱく質を消費しやすく、飢餓時は脂肪を消費しやすい特徴もあります。ちなみにビタミンB1はピルビン酸をミトコンドリア内に運んでアセチルCoAに変換する役割を持っているので、ビタミンB1不足になると乳酸回路しか働かず、脚気やウェルニッケ脳症になります。
  8. 単純に運動量が足りないからとか、寝かせてたからという原因だけではなく、病的な筋萎縮もあるということです。
  9. 真核生物に見られる機構で、細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、タンパク質の過剰合成時、栄養環境が悪化したときに、タンパク質の自食を行いリサイクルを行う。エネルギー枯渇時、肝臓の糖が枯渇し、脂肪代謝へと変わっていく。そして、筋肉や内臓のタンパク質も分解されていく。
  10. 加齢により生じる筋肉量の減少では、20~30歳頃にピークを迎え、30代から徐々に筋肉量が減少する。50代以降では筋肉の減少が速くなり、80歳ではピーク時の約半分まで減少するといわれている。決定的な診断基準はなく、正確な判断は難しいとされる。65歳以上でサルコペニアの可能性あり、80歳以上でサルコペニア疑いとして考える医師もいる。 ちなみにごく最近、サルコペニアにはユビキチンプロテアソーム系は関連しないという報告が有名雑誌に出たばかりのようですが。
  11. 原因疾患には、感染症(結核、AIDSなど)、がん、関節リウマチ、慢性心不全、慢性腎不全、慢性閉塞性肺疾患などがある。
  12. 分解系とは、ユビキチンプロテアソーム系です。
  13. また、抗うつ剤や抗がん剤の副作用による悪心嘔吐感や、非ステロイド薬による消化管粘膜障害などから来る食欲不振など、薬剤性の影響も入ってくると思われます。
  14. 機械的刺激や筋傷害により、基底膜の間にある筋衛星細胞(サテライト細胞)が活性化する。サテライト細胞の活性化が起こると予定筋芽細胞が筋芽細胞へと成長し、筋芽細胞の集合と結合が起こり、筋管細胞ができ、筋繊維が形成されていく。伸張性運動のほうが大きなメカニカルストレスによりサテライト細胞を活性化し、短縮性運動よりも筋肥大や筋力増強に効果的との報告もある。
  15. 成長因子は組織局所で分泌、作用する。 これらは成長する細胞自身から分泌され、自身や周囲の細胞に作用するため、傍分泌または自己分泌機構(オートクライン)とよばれている。 これまではインシュリン、成長ホルモン、テストテロンといったホルモン物質が肥大をもたらすと考えられていたが、最近の研究により、それらがなくとも筋肥大が起こることが明らかになっている。 成長因子とホルモンの増加は一致しないので、肥大のメカニズムは別のものであると考えられている。
  16. これはわかりやすい図があったので転用させてもらっています。炎症が起こった際の一連の反応で、反応の上流から下流まで描かれたカスケード反応です。関係ない話ですが、このカスケード反応のどこに作用するかで、NSAIDsとステロイドは異なりますよね。また、副作用で胃潰瘍等や血液サラサラ等あるように、それぞれの酵素は胃酸分泌や凝固作用等の別の作用も担っているので、一部の作用を阻害すれば、言葉の通り他の作用まで阻害され、副作用が出現します。
  17. 傷害期…短いが、エネルギー消費が低下する。異化期…筋肉のタンパク質や脂肪の異化で、治癒反応への内因性エネルギーが供給される。適切な栄養療法で一部異化の抑制が可能。同化期…適切な栄養投与と運動療法にて筋タンパク質が増加する。筋力や体力の改善が目標。若林先生によると、CRPが5以上の時を異化期、3以下の時を同化期と判断すると言われていました。
  18. エネルギー源と新たな糖新生のために糖質代謝が進むが、肝臓に蓄えられたグリコーゲンは24時間内で枯渇する。そこで、肝臓での乳酸とアミノ酸から糖の新生が促進される。たんぱくの崩壊が進む。高血糖状態となる。異化ホルモン(グルカゴン・アドレナリンやコルチコイド)、インスリン抵抗性、サイトカイン、エイコサノイド、活性酸素などを含む炎症性液性メディエーターによって、筋や脂肪、皮膚組織の異化によって治癒反応へのエネルギー気質を供給し、またアミノ酸は急性相たんぱくを介して治癒を促進させる。脂質代謝も亢進し、アドレナリンにより脂肪分解が促進され、脂肪(脂肪酸とグリセロールのエステル化したもの)が糖新生に必要なグリセロールや脂肪酸(どちらかというと糖新生のエネルギー源として)の濃度が上昇、呼吸商(その物質の燃やす酸素と、出てくる二酸化炭素の比)も低下する。ちなみに、侵襲下では必須アミノ酸の中のBCAA(分岐鎖アミノ酸が骨格筋でさかんに利用され、損傷した組織たんぱくの合成の基質として利用される。肝障害時にはBCAA産生が低下しAAAが増加するため、フィッシャー比が低下する。
  19. 飢餓時には血糖を下げる必要なくなりますのでインスリン分泌低下と、逆に糖を合成しないといけないのでグルカゴンやアドレナリンなどのカテコラミンの分泌増加が起こります。脳や赤血球のエネルギー源でもあるグリコースは、グリコーゲン分解でまかなわれますが、その肝臓の貯蓄された糖は枯渇し、脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解した糖の合成が進みます。長時間になってくるとインスリン分泌はさらに低下し、筋の分解や脂肪分解(グリセロール)、嫌気的解糖により得られた乳酸を利用した糖新生によってグルコースは供給されます。よって、たんぱく分解によるアミノ酸中の窒素も尿中に多く排泄されて見られるようになります。代謝率は抑制され、また脂肪酸のβ酸化亢進とグルコース酸化抑制により、肝臓でのケトン体産生が亢進し、ケトン体により脳などの神経系や筋のエネルギーとして利用されます。ケトン体利用により筋の分解作用も2/3に抑制され、たんぱく喪失も抑制されます。代謝率は低下し、体重減少によりエネルギー必要量も低下し、活動量も低下するため、総エネルギー必要量は通常よりも減少します。行く末は、最初にお話しした通りの結末を進みます。脂肪酸化は呼吸商下がりますが、実は運動選手や長距離選手の代謝も、脂肪代謝有意になってるらしいです。呼気ガス計で吸う酸素と吐き出す二酸化炭素の量を測って計測できるようです。(REE測定にも利用)
  20. ただし、急性相たんぱくは低下するようです。
  21. まあ浸透圧の話ですね。逆に濃ければ反対の動きになって、血管内の水分が増えて駆出のために血圧が上がったり、尿が増えたり下痢になったりという話です。静脈に濃ゆい液を入れると静脈縁になったりもしますよね。ちなみに物質の移動は中膜のない毛細血管レベルで行われます(どうでもいいですね)。
  22. 写真は、岡山県の清音(きよね)クリニックの長谷先生という方が、白雪姫プロジェクトという団体内で語られていたホームページの画像です。いいなと思って転用してます。
  23. 2日間絶食状態が続くと、腸に生体侵襲が起こってくる。さらに絶食3日後には腸に虚血や出血が起こり得る。また腸の壁である血管内皮細胞に障害が起きてくる。
  24. 可能な限り、なるべく早期の経腸栄養や経口摂取開始が望まれます。
  25. 廃用症候群とは、疾患のために活動性や運動量の低下した安静状態が続く事で、全身の臓器に生じる二次的障害の総称です。診療報酬上は、外科手術や肺炎等の治療時の安静があり、治療開始時にFIM115点以下、BI85点以下の状態を廃用症候群としています。また、重症状態の治療後、たとえば多臓器不全や急性増悪、鎮静剤投与などの治療後に、ICU無力症(Insentive集中的 care unit acquireケアユニットにより獲得される後天性の、無力症)というものがあり、実際には安静臥床のみで廃用症候群が生じることは少ないとされ、安静臥床に加えて低栄養やサルコペニアを合併することが多いとされます。よって、高齢者の廃用症候群に対して栄養を考慮せずに機能訓練だけをガンガン行うことは、かえって低栄養やサルコペニアを増悪させる可能性もあります。横浜市立大学の若林先生の調査報告によると、入院中に廃用症候群と診断された者の9割に低栄養状態を認め、そうでない者に対してBMIの低下、総たんぱく、アルブミン、ヘモグロビンが有意に低く、廃用症候群の程度が重い者ほど総たんぱくやアルブミンの低下が見られたという報告があります。 そして廃用症候群の4割にエネルギーバランスの崩れた飢餓状態を認め、8割に侵襲があり、3割に悪液質を認めるとの事です。
  26. サルコペニアとは、狭い意味では加齢の影響のみで生じる原発性サルコぺニア、広い意味ではすべての原因によって生じる二次性の筋肉量減少、筋力低下、身体機能低下を意味しています。 加齢のみが原因の場合を原発性サルコペニア(=狭義のサルコペニア)といいます。広い意味での筋肉消耗(ミオぺニア)とも捉えられるでしょう。高齢者においては,筋蛋白質同化刺激による筋蛋白質の合成促進反応と分解抑制反応が減弱しているために,サルコペニアが起こると考えられています。活動,③栄養,④疾患が原因の場合,二次性サルコペニアといいます。入院患者では,複数の原因による二次性サルコペニアが多く認められます。二次性サルコペニアのうち,活動に関連したサルコペニアは,安静,臥床,無重力などによって生じます。廃用症候群,廃用性筋萎縮はここに含まれます。また,禁食すると,嚥下筋のサルコペニアが認められるとの報告もされています。ちなみに、頸部骨折などの外科手術後などの侵襲後に舌や嚥下筋のサルコペニアがみられたという報告もありました。
  27. 患者の身体において,サルコペニアはどのように進行するのでしょうか。3つの悪循環が,サルコペニアを進行させると考えられています。 ・筋肉量が減少し,体動が減少,制限されるため摂食能力の低下,低栄養の進行,蛋白合成の障害を来し,サルコペニアはさらに進行します。そして次に、サルコペニアにより運動能力が減少すれば、転倒や転落の機会が増加します。そしてその結果骨折を来すと,体動が減少,制限されサルコペニアがいっそう進行します。さらに,アミノ酸プールの減少により,病気や外傷などで蛋白必要量が増加した場合の対応能が低下します。そのため病的状態からの回復が遅延しサルコペニアはますます進行するのです。 廃用症候群は,入院リハビリテーションの主要な対象障害の一つです。廃用症候群というと単なる安静や臥床による廃用性筋萎縮と考えられがちですが,実際には多くの高齢者が原発性サルコペニアを合併している可能性があります。また,栄養面では,廃用症候群の91%の患者で低栄養を認めたという報告があります。さらに,廃用症候群の原因疾患とし大半の患者に「侵襲」が,一部の患者に「悪液質」が認められます。つまり,廃用症候群の患者には,サルコペニアの4つの原因すべてを認めることが少なくありません。同様に,誤嚥性肺炎の患者でも4つの原因をすべて認めることがあります。これらの原因が重複して悪循環を引き起こした結果,四肢体幹の筋肉や嚥下筋のサルコペニアが著明となります。この悪循環を断ち切ることが,サルコペニアの治療では重要なのです。
  28. 本は日本離床研究会の鉄板的な本で早期離床マニュアルという本ですが、これは私も参考にさせて頂いたこと多数ありです。状態を見ながらですが、なるべく早期の離床や栄養ケアを行っていくことが大切です。活動に関連したサルコペニアでは,不要な安静や禁食を避け,少しでも早く離床や経口摂取を行うことが大切です。入院患者では「とりあえず安静,禁食」と指示されることがありますが,医学的にみて本当に安静や禁食が必要かどうか検証することが必要です。不要な安静や禁食の結果,寝たきりや嚥下障害(誤嚥性)になることは避けなければいけません。栄養に関連したサルコペニアの治療に必要なのは,適切な栄養管理です。筋肉量が少ないからといって栄養を考慮せず筋力トレーニングを行っても,この場合,筋肉量は減少する可能性が高いです。
  29. 私はPTなので、セラピスト目線に偏った内容になってしまう点はご容赦ください。
  30. ちなみにMNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)は、簡易な項目なのですが、項目内に「自力で歩けますか?」「過去3カ月で精神的ストレスや急性疾患を経験しましたか?というものがあったり、さらに「神経・精神的問題の有無」という項目があるため、脳卒中後のリハ患者は、それだけで低栄養の恐れありに該当してしまう可能性があることに注意しなければなりません。
  31. これが基本です。年齢・身長は最初に測れば済むので、体重は経時的に必ずつけていく必要がある。
  32. 体重1kgあたり25~30kcalとする簡易式もある。
  33. 朝食時が熱産生が大きく、夜間が一番少ないので、夜間は太りやすい。タンパク質が熱産生大きく、脂質が一番小さいので、脂質は太りやすい。
  34. 周径については、簡易な指標として、毎月取れるレベルと思われる。体脂肪量の目安となる皮下脂肪厚は、キャリパーがあれば簡単にとれるはず。上腕周囲長の数値と三頭筋皮下脂肪厚から、推測上腕筋面積も計算できる。上腕筋面積の方が、脂肪厚よりは重要である。上腕周囲長では、5歳以下では誤差が出やすく妥当性が低いという報告があることや、下腿周径では浮腫の影響を受けやすいなどある。
  35. 現実的には、院内レベルであれば簡易な握力や歩行速度、TUGテストなどを指標として利用しても良いと思われる。握力も簡易に測れる指標で、全身筋力の指標として利用される部分もあり、相関も報告されていた記憶があります。また、握力と咽頭筋力には相関があったようで、握力が低い人は梨状窩への食物の残留が多くみられたという報告もあります。
  36. 日本の健常成人の不可避的たんぱく喪失量は、体重1kgあたり0.34g/dayとされています。平均よりは安全域を確保して0.44g/day、また食物中のたんぱく質利用率は最大でも70%であることより、0.44の130%の値の0.57g/dayを基準としています。図は、各栄養素1gあたりの熱量の図ですね。たんぱく質は1gあたり4kcalの熱量があります。
  37. タンパク質が多すぎると、主に腎臓での窒素排泄能力を超えてしまい、血中に溜まってしまって高BUN血症や高アンモニア血症を引き起こす可能性がある。逆にたんぱく質やそのエネルギーが少なすぎると、喪失したたんぱく質の補充自体が行えなかったり、利用に必要なエネルギーが不足し、それまかなうためにタンパク質を分解したりし、筋肉や内の臓機能や構造の低下を招きます。腎不全患者では300~500が目標となる。
  38. 実際には他の添加物の数値も入ってくるとは思います。大塚製薬が発表しているNPC/N比では64となっています。
  39. 長鎖脂肪酸の中の、二重結合が2個以上ある多価不飽和脂肪酸のうち、二重結合の位置がメチル基から数えて6番目にあるω6系多価不飽和脂肪酸と3番目にあるω3系脂肪酸は、リン脂質として細胞膜などの構成成分となり、脂質メディエーターの生成に関与する必須脂肪酸であり、生体内では合成されないため、欠乏症を防ぐために投与は基本であるらしいです。ω6系のリノール酸やアラキドン酸は大豆油、ω3系のエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸は魚油などに含まれているようです。
  40. 脱水量が1リットルに満たない場合や、浸透圧が290より高くなっている場合などは脱水を疑い、水分投与量を体重1kgあたり35mlに設定するなどします。
  41. ほとんどの栄養素は空腸で吸収されるが、12指腸~空腸上部では鉄やカルシウム、回腸ではビタミンB12や胆汁酸、大腸では水分や電解質の大部分が吸収される特徴がある。よって、それぞれの部位が障害されたり、PEG-Jなど、投与部位によって吸収障害が起こり、様々な欠乏症状が出現する事にも注意する。胆汁酸の欠乏で胆汁酸プールが低下し、脂肪の吸収障害が起こることもある。吸収されない脂肪や脂肪酸がカルシウムと結合し、シュウ酸がシュウ酸化カルシウムになれずにそのまま大腸から吸収され、尿路結石の原因となることもある。また、他部位で修飾されることにより吸収される栄養素もあるので、注意する。たとえば、胃が切除されると胃の内因子と塩酸の存在下で回腸で吸収されるビタミンB12や、空腸上部で吸収される葉酸の吸収障害が起こり、合併症であるダンピング症候群や貧血等の合併症をきたす。また、膵臓切除により膵リパーゼが低下することで脂肪の吸収障害が起こるなどあります。
  42. 栄養療法の重篤な注意点のひとつに、リフィーディング症候群というものがあります。 飢餓状態では、グルコースが減少し、インスリン分泌も低下した状態で、脂肪組織がエネルギー(ケトン体)として使用される。 急激な栄養補給により、急激なグルコースの細胞内取り込みと共に、リン・カリウム・マグネシウムなどの電解質・ミネラルも取り込まれる。 電解質・ミネラル低下による各種症状、血中のリンが欠乏によるATP合成阻害で臓器障害が引き起こされ、最悪は心停止を含む致死的合併症を引き起こす。
  43. β遮断系薬やジギタリス製剤による倦怠感・食欲低下、利尿剤による低Na,K血症による疲労・食欲低下、抗コリン剤による口渇による摂食機能低下など。②塩分制限による味の損ないによる食欲低下、水分制限による口渇による摂食機能低下③炎症性サイトカインの急増による病態や、治療のための安静から来る嚥下関連筋の萎縮、仮性球麻痺様の症状④運動耐久性の低下に伴い易疲労性となり、食事動作自体が困難になる。⑤心不全により末梢循環不全となる。肝血流不全や肝うっ血による肝障害により、たんぱく異化亢進が起きやすい。消化管では蠕動運動低下や消化管浮腫による吸収障害を起こしたりする。⑥左室拡大により二次的に僧帽弁閉鎖不全を起こし、僧帽弁逆流をきたすことがある。逆流により左心房の拡大を招き、近接する食堂が圧迫を受け、症k同期の通過障害をきたすことも指摘されている。 栄養・運動プランとしては、慢性心不全における適切な栄養管理については、まだ具体的に示されていはいないようです。3日で2kg以上の体重増加は心不全の急性増悪を疑いますが、るい痩を起こしやすい分、適切な体格を維持するという視点は大切になります。急性増悪期と安定期でわけて考えられる部分もあり、急性増悪期では25~30kcal/kg/日もしくはリフィーディング症候群の可能性があればそれ以下より経静脈や経鼻胃管で開始され、オーバーフィーディングによる糖毒性による多臓器不全の予防や、消化管浮腫による下痢や嘔吐に注意しながら進められるようです。安定期ではるい痩予防に塩分や水分調整を行いながら、やや割高なエネルギーを負荷する考えもあるようです。運動については寺島らの報告にあるCRP3以下になれば開始するなど、急性増悪期を脱した時期からベッドサイドでリハを開始し、BNP(400以上は低負荷)等の血行動態を見ながらVorg11~13で調整しながら、シャキアや舌訓練など関接的嚥下訓練や、下肢筋力訓練などを実施する。
  44. 平成6年の調査によると、COPD患者の約7割で体重減少がみられ、さらに約40%に中等度の体重減少率を認めたと報告されている。BMIや気流制限、呼吸困難、運動能を数値化したBODEインデックスというものがCOPDの予後予測に使われており、除脂肪体重が予後予測の判断因子となるなどしており、大切な指標である。COPDは換気効率が低下し呼吸数が増える事により、呼吸筋の仕事量や酸素消費量が増加することで、エネルギー必要量は健常人よりも亢進していると報告されており、予測REEの1.4倍、通常呼吸に必要なエネルギー消費は36~72kcalであるのに対して、430~720kcal/日必要であるとの報告もあります(サルコペニアの摂食嚥下障害より)。栄養障害は骨格筋や呼吸筋量の減少や、免疫能の低下に繋がり、コラーゲンなどの細胞外基質や肺胞表面を覆うサーファクタント(生体界面活性剤)の産生低下による肺の構築部破壊にも関連します。 大きなエネルギーが必要となるが、REEの1.3倍以上は二酸化炭素蓄積の可能性があるという報告もあるため(ASPEN)、やや脂肪にシフトした栄養補給にするなど工夫する。1日4~6回の分食を進め、炭酸飲料などの消化管でガスを発生する食事は避ける。BCAAの多い食事をして、筋たんぱく量の維持に努める。食事の用意も労作による呼吸困難感が出現しやすいので、食事前に休息をとったり、半調理食品などで調理は簡単に済ませるなどの工夫も必要となる。栄養治療だけで運動能やQOLが改善するという報告はないが、運動を行い栄養がおろそかになると、運動の効果は減少するという報告はあるので、栄養と運動の適度な組み合わせが大切だと思います。
  45. 腎臓といえば尿の生成と排泄を通じて体液の量と組成の恒常性を保つことが大きな働きになりますが、これが障害されています。透析患者は潜在的心不全状態で貧血もある。心血管病の発症や、腎機能の低下を予防することが必要である。腎不全は酸化ストレスや慢性炎症に起因する異化亢進状態で、さらに透析療法自体が炎症を惹起する。炎症と栄養障害は関連しており、低栄養や炎症複合症状をきたす。不適切なエネルギー・たんぱく質摂取、尿毒症性物質蓄積によるニューロ・ミオパチーと食欲低下、代謝性アシドーシスによるアルブミン合成障害、たんぱく異化亢進などさまざまな因子が複雑に関連している。 急性腎不全と慢性腎不全でで分けて考える必要がある。一般的にはBUNやクレアチニン値、糸球体ろか量を表すクレアチニンクリアランス値によって評価される。急性腎不全の場合は進行が急速であり、BUNやクレアチニンの上昇は遅れてみられることが多いため、十分な輸液にも関わらず尿量が一日1000ml以下の際は急性腎不全として持続腎補助療法を含めた治療を展開する必要がある。 腎不全においてはたんぱく・アミノ酸代謝異常が存在し異化亢進状態である。また酸塩基平衡や水・電解質代謝異常、糖代謝異常などの異常がみあれ、体液恒常性の維持が困難である。 慢性腎不全においては、たんぱく尿やの減少や糸球体過剰ろかの抑制、腎の硬化を促進するサイトカインの発現抑制などの腎機能低下抑制効果や、同時に、腎毒性物質の産生や高P・K血症、代謝性アシドーシスの抑制を目的にたんぱく制限(0.6~0.8g/kg/day)が行われ、低たんぱく食が推奨されている。NPC/N比は大きめの300~500で調整される。また、進行度に応じて、排泄障害により体内への水分貯留を防ぐための水分制限を、脱水や腎血流量の減少に注意しながら実施、一日6g以下の塩分制限、カリウムの制限も行われる。ただし、低栄養による体たんぱく量の減少を防ぐため、27~39kcal/kg/day程度の十分なエネルギー量を確保する。これが透析患者になると、たんぱくの喪失が激しいため、や1~1.2g/kg/dayとやや多めのたんぱく質の摂取が推奨される。 急性腎不全ではHB式で算出したBEEに10%程度エネルギーを上乗せして投与するが、生体侵襲に伴うインスリン抵抗性増大があり、高血糖をきたしやすいので、エネルギーは必要だが血糖値をコントロール(150~180mg/dLが推奨)しながら進める。また、たんぱく異化亢進により筋たんぱくから利用されやすいBCAAがエネルギー産生のために動員されるため、NPC/N比にもとづきながらアミノ酸(BCAA)の投与が行われる。ただし、NPC/N比についても2009年にASPENでは通常通りとされるなど、急性期におけるたんぱく質の投与量については現時点でははっきりとした結論が出ていないとの事。投与水分量の制限や代謝産物の蓄積により、意図したエネルギー量の投与が困難となることがある。持続的ろか透析をはじめとした血液浄化法の併用で過剰な水分や代謝産物の除去を行うことで制限を受けにくく栄養管理ができる。経静脈栄養よりはなるべく早期に経腸ルートを使用し、腸管じゅう毛上皮の萎縮予防や腸内細菌叢を維持してバクテリアトランスロケーションを予防するという認識も高まっている。 運動により最大酸素摂取量の増加や左室収縮機能の増加、心臓副交感神経の活性化と交感神経過緊張の改善、炎症の改善やたんぱく異化抑制による低栄養改善、貧血の改善、不安・うつの改善等が得られるため、併用が大切とされる。追加で、透析中に運動をすることで透析効果が増加するという報告も出てきている。
  46. 昔はしじみ食って寝とけの時代だったのですが、現在は栄養管理と運動が大切と言われています。ただし、急性の肝疾患で、腹水や黄疸、肝性脳症がある際は運動よりは安静が選択される。
  47. 主に小児期に膵β細胞が破壊される1型糖尿病と、生活習慣病・メタボのように過食と運動不足によって起こる2型糖尿病があります。肥満や運動不足により内臓脂肪が蓄積されると、脂肪細胞から炎症性サイトカインやFFA(遊離脂肪酸)、レジスチンというインスリン抵抗性を増す働きがあるというホルモンが分泌され、インスリン抵抗性が増してインスリンが効きにくくなります。そうすると高血糖になり、血糖を下げるために多量のインスリンが分泌されて高インスリン血症となり、インスリンには余分なブドウ糖を脂肪として蓄積する働きがあるので、過食が続けば更なる肥満増悪とインスリン抵抗性増大という悪循環に至ります。高血糖状態が続くと、ご存知のとおり動脈硬化や網膜症、腎症などの合併症を引き起こし、脳卒中や心疾患、腎疾患などのリスクが高まります。この悪循環を断ち切るためには、血糖コントロールと原料を行うことが重要となり、食事療法と運動療法が行われます。グリセミックインデックスとは、ジェンキンスらによって提唱された概念で、ブドウ糖摂取後の血糖上昇をGインデックス100としたときの食物摂取後の血糖上昇を評価した指標。脂質はカロリーが高いので、糖質55~60%に対し脂質は20~25%で抑えた食事を勧めます。(たんぱく質は15~20%)。エネルギー摂取が制限されている場合、エネルギーバランスを考慮した運動負荷も考えなければならないと思いますし、合併症があればそこも考慮しなければなりません。
  48. 拒食症とは、意図的な体重減少です。太る食物を避ける、自ら誘発する嘔吐、下薬や利尿薬の使用、過度の運動、肥満への恐怖、ボディイメージのゆがみなどがあります。過食症は、持続的な摂食への没頭と食べ物への渇望で、短時間に大量の食物を食べつくします。そして太らないよう、交代して絶食期が出現しやすいとされ、拒食食と過食症はセットになっていることも多いと言われます。また、向精神薬の影響も外せません。抗うつ薬には抗コリン作用があり、副交感神経機能が働きにくくなり消化器症状も元弱します。抗精神病薬にはドパミン遮断作用もあります。また、アリセプトなどの抗認知症薬にはアセチルコリンを分解する酵素を阻害してコリンをたくさん出す作用がある(コリンエステラーゼ阻害)ので、副交感神経症状亢進し、唾液がたくさん出たりします。 摂食障害に特効的な治療は存在しないとの事です。結局治すのは自分なので、動機づけが大切だそうです。認知行動療法などもあるが、それくらいしかないと。強迫的とは、同じ事をずっと考えたり、やり続けることです。ボディイメージが悪く、痩せていても太っていると思っています。
  49. 体重増加を目的とした場合、余剰分内での運動負荷が望ましいと考えます。また、足りていない場合は、活動係数の見直しもですが、逆に運動時カロリーを大まかに計算して付け足してもらうのも手です。
  50. 先行期・認知期の問題から、口腔準備期、咽頭咽喉期、食道期にかけての問題もたくさんあり、それらすべての問題は色んな職種が関わるべき問題があると思います。他にも投与経路の問題でカロリーや栄養素が摂取できなかったり、食事動作自体が疲労を感じたり、食べ物の好き嫌いや、美味しくない、楽しくないなどもありますよね。食事は生きるためのものであり、そして楽しむためのものであってほしいものです。
  51. 私の好きな言葉のひとつです。
  52. 栄養面の摂取も行え身体も元気になりますし、口腔・咀嚼機能も使うことで意識もはっきりし、構音機能も促され、会話も生まれますね。唾液が出ることで口腔内が保湿され、口腔準備期も改善し、そして感染等も防げます。コミュニケーションが生まれればより能動的な活動も増えてきますよね。どこからフォーカスを当ててるかの問題化もしれませんが、私は食事は大切だと思っています。
  53. 摂取量はちゃんと足りていますか?足りていないとすれば問題ですが、それはどうしてですか?投与ルートの問題ですか?静脈栄養ですか?経腸ですか?胃ろうですか?経鼻ですか?経口ですか?投与ルートに問題はありませんか?安全に食べれてますか? 投与食形態は常食ですか?ソフト食?ペースト食?ミキサー食? 先行期・口腔期~咽頭期前半までの摂食機能はどうですか?咽頭期から食道期までの嚥下機能の問題ですか?問題があればどこに誰がどうやって介入しますか?食事動作はどうですか?食べこぼしはしていないですか?うまく自分ですくってこぼさずに食べれていますか?自助具はあってますか?食事姿勢はどうですか?体力はどうですか? それらができていないのなら、じゃあどうすれば良いんですか?他にもたくさんあると思いますが、見れる視点もやる事も、気付けば実はいっぱいあるはずです。 経口摂取が始まると、患者さんの状態が上がっていく事を経験することも少なくはありません。誠愛リハのリハDrの方は、経口摂取がリハのスタートだと言われていました。食事をする事で尿意や便意が生まれ、尿意や便意が生まれると着替えや移乗といった動作が生まれると。栄養摂取量を確保するためにはどうすれば良いのか、そして今後より元気になっていくためにはどうすれば良いのか、栄養面から見たリハビリというだけでも、他職種皆で一緒にやってかないといけない事はたくさんある事に気づきます。
  54. どしどし主治医や病棟Nsへ相談し、NSTへ挙げてください。
  55. 三銃士の言葉でone for all,all for oneという言葉がありますが、リハ栄養という切り口から見たリハビリテーションだけでも、医師、歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士、セラピスト、歯科衛生士、ケアワーカーなど、それぞれが専門的に関わらないといけない部分が多々存在します。そして、それぞれが自分の専門領域だけしか見ません、そして個々に動きますという視点ではなかなかリハ栄養を取っても進まず、それは結果的に患者さんへ不利益が来てしまうなと常々感じます。リハビリテーションが資格の文言に明記された資格なんてリハ医師くらいのものであって、じゃあリハビリテーションは誰がするのとなっちゃうわけですが、実は「リハビリテーション」とは皆でやらないといけない事なのだと思います。各職種が互いの事へ興味を持ち、理解しようとし、そして一緒に他職種協働で関わる視点が、このリハ栄養という視点ひとつにしても大事だなと感じています。そしてそれらは患者さまのために。
  56. 今年の3月、宮崎リハ研究会の特別講演で若林先生が来られた際、日本リハ栄養学会会員と囲んだ写真です。