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春秋会 平成24年度継続研修シリーズ(第3回)


日米実務の相違を考慮した外内特許出願
 単一性・シフト補正に焦点をあてて




2012年11月26日   平和国際特許事務所
              平山 晃二
外内特許出願とは




国内                                                                       外国
クライア                                                                     クライアン
ント                                                                       ト
       日本弁理士


       手続代理業務                             外国代理人
                                                                         外内特許出願


                                   外内特許出願代理の特色(ハードル)
                                   ・コミュニケーション(言語の違い、時
                                   差)
                                   ・法制度(特許要件、明細書、手続の違
                                   い)

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本日の目標

 単一性・シフト補正に焦点をあてる
  新しい法制度、審査基準・運用が難解、適用出願の蓄積が少なく経験に
 乏しい


             日本の実務家として理解できていますか?
             外国代理人・クライアントに説明できています
             か?
             適切なアドバイスができていますか?


 外内特許出願の代理を遂行するために
 1.日本の実務を再確認する
 2.各国法制度・実務の違いを認識す
 る
 3.問題点を意識したアドバイスを考
 える
        Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   3
ステップ1.日本の実務を再確認する
ステップ2.各国の法制度の違いを認識する
ステップ3.問題点を意識したアドバイスを考
える




    特許法・施行規則
    審査基準
    審査ハンドブック




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単一性・シフト補正の適用イメージ


 審査時の                                                                  補正後の
 特許請求の範囲                                                               特許請求の範囲

   ①37条
                          拒絶理由通知

 単一性違反               審査対象の請求項                                    審査対象の請求項
                     37条を満たす請求項+α                                37条を満たす請求項+α
 拒絶理由(49条)
 無効理由ではない
                     審査対象外の請求項
                                                                       ②17条の2第4項
                     37条を満たさない請求
                                                                          ≒37条
                     項


                                                                      シフト補正違反
「発明の単一性」が実質的に2回判断される                                                  拒絶理由(49条)
                                                                      補正却下理由(53条)
                                                                      無効理由ではない

           単一性                 平成16(2004)年1月1日以降
           の出願
           シフト補正 平成19(2007)年4月1日以降
           の出願
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シフト補正の規定

      シフト補正=発明の特別な技術的特徴を変更する補
      正

  特許法第17条の2第4項

   前項に規定するもののほか、第1項各号に掲げる場合において特許
  請求の範囲について補正をするときは、
   その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができ
  ないものか否かについての判断が示された発明と、
   その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される
  発明とが、
   第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するもの
  となるようにしなければならない。


  シフト補正の審査は実質的に単一性の審査であ
  る
  17条の2第4項≒37条

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単一性の規定

 特許法第37条
  二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有
 することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当すると
 きは、一の願書で特許出願をすることができる。

    「請求項1に係る発明」との間で判断する(審査基
    準)

 特許法施行規則第25条の8
  特許法第37条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の
 発明が同一又は対応する特別な技術的特徴を有していることによ
 り、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関して
 いる技術的関係をいう。
 2 前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対す
 る貢献を明示する技術的特徴をいう。

    特別な技術的特徴(STF)が鍵となる


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ケーススタディ

     単一性とシフト補正の審査手順を確認しよう

  請求項1:   特徴Aを有する発明。
  請求項2:   さらに特徴Bを有する請求項1記載の発明。
  請求項3:   さらに特徴Cを有する請求項1又は2に記載の発明。
  請求項4:   さらに特徴Dを有する請求項1~3のいずれかに記載の
  発明。
   請求項1           請求項2                      請求項3                      請求項4
    A             A+B                       A+B+C                     A+B+C+D

                                            請求項4
                                            A+B+D

                   請求項3                     請求項4
                   A+C                      A+C+D

                   請求項4
                   A+D

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ケース1.特徴AにSTFあり

  単一性の審査
    同一又は対応する特別な技術的特徴を有しているか(施行規
    則)

    請求項1             請求項2                      請求項3                      請求項4
     A               A+B                       A+B+C                     A+B+C+D

                                               請求項4
                                               A+B+D

                      請求項3                     請求項4
                      A+C                      A+C+D

                      請求項4
                      A+D

   単一性を満た                      単一性の要件以外の要件について審査対象
   す

           Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved         9
ケース1.特徴AにSTFあり

 請求項1      請求項2          請求項3               請求項4
  A        A+B           A+B+C              A+B+C+D

                         請求項4
                         A+B+D

           請求項3          請求項4
           A+C           A+C+D

           請求項4
                                                                     拒絶理由通知
           A+D
                                                                     ・請求項1-4、進歩性
                                                   審査対象
                                                                     なし


  シフト補正の審査

        補正前に受けた拒絶理由通知                        補正後の請求項1
        において特許をすることがで                                                           同一のSTF:
        きないものか否かについての                           A+B                             A
        判断が示された発明(特許                            A+C                             を有する
        法)                                      A+X
          STF:A
                                                X:明細書等に記載された事項



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ケース2.特徴A+BにSTFあり

  単一性の審査
    同一又は対応する特別な技術的特徴を有しているか(施行規
    則)
                請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項に
                係る発明のうち、番号の最も小さい請求項(審査基準)


   請求項1            請求項2                      請求項3                      請求項4
    A              A+B                       A+B+C                     A+B+C+D

  STFの有無を                                    請求項4              請求項2の発明特定事項を
  判断した発明                                                       すべて含む同一カテゴリー
  (審査基準)
                                             A+B+D             の発明(審査基準)

                                                                     例外的に単一性を
                    請求項3                     請求項4                    問わず審査対象
                    A+C                      A+C+D

                    請求項4
                    A+D
                                          審査対象外

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ケース2.特徴A+BにSTFあり
請求項1      請求項2            請求項3                請求項4
 A        A+B             A+B+C               A+B+C+D

                           請求項4                                      拒絶理由通知
                           A+B+D                                     ・単一性を満たさない
                                                                     ・請求項1、新規性なし
          請求項3             請求項4
                                                例外的に単一性を             ・請求項2、進歩性なし
                                                問わず審査対象              ・請求項3、拒絶理由を発見し
          A+C              A+C+D
                                                                     ない
          請求項4
          A+D

                           審査対象外


 シフト補正の審査
                                                                                   同一のSTF:A+
 補正前に受けた拒絶理由通知                            補正後の請求項1                                 Bを有する
 において特許をすることがで
                                           A+B+C
 きないものか否かについての
 判断が示された発明(特許
                                           A+B+X
 法)                                         X:明細書等に記載された事項
       STF:A+B
                                            A+C
                                            A+X                          STF:A+Bなし

                 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved               12
ケース3.特徴A+B+CにSTFあり

  単一性の審査
    同一又は対応する特別な技術的特徴を有しているか(施行規
    則)
                                          直前にSTF有無を判断した請求項の発明特定事項
                                          をすべて含む同一カテゴリーの請求項に係る発明
                                          のうち、番号の最も小さい請求項(審査基準)


   請求項1            請求項2                      請求項3                      請求項4
    A              A+B                       A+B+C                     A+B+C+D

  STFの有無を                                                             請求項3の発明特定事項を
  判断した発明                                     請求項4                     すべて含む同一カテゴリー
  (審査基準)                                                              の発明(審査基準)
                                             A+B+D
                                                                    例外的に単一性を
                    請求項3                     請求項4                   問わず審査対象
                    A+C                      A+C+D

                    請求項4
                    A+D
                                           審査対象外
            Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved          13
ケース3.特徴A+B+CにSTFあり

請求項1     請求項2            請求項3                請求項4                  拒絶理由通知
 A       A+B             A+B+C               A+B+C+D               ・単一性を満たさない
                                           例外的に単一性を
                                                                   ・請求項1、新規性なし
                         請求項4              問わず審査対象                 ・請求項2、新規性なし
                         A+B+D                                     ・請求項3、進歩性なし
                                                                   ・請求項4、拒絶理由を発見し
         請求項3            請求項4                                      ない
         A+C             A+C+D

          請求項4
          A+D

                          審査対象外

 シフト補正の審査
                                                                                  同一のSTF:A+B+
 補正前に受けた拒絶理由通知                           補正後の請求項1                                 Cを有する
 において特許をすることがで
                                          A+B+C+D
 きないものか否かについての
 判断が示された発明(特許
                                          A+B+C+X
 法)                                        X:明細書等に記載された事項
       STF:A+B+
       C                                   A+D
                                           A+B+D
                                                                              STF:A+B+Cな
                                           A+B+X
                                                                              し
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審査基準の留意点(1)


  ・単一性、シフト補正について「必要以上に厳格に適用する
  ことが
   ないようにする」
       審査官による審査のバラつきの問題



  ・STF有無の判断順序

  1.請求項1に係る発明
  2.請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリー
    の請求項に係る発明のうち、番号の最も小さい請求項
  3.直前にSTF有無を判断した請求項の発明特定事項を
    すべて含む同一カテゴリーの請求項に係る発明のうち、
    番号の最も小さい請求項

       審査は「最初の直列的従属系列」に制限さ
       れる


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審査基準の留意点(2)

   ・STF有無の判断を終了する場合



 請求項1   請求項2          請求項3                請求項4
  A     A+B           A+B+C               A+B+C+D

審査対象                                            審査対象外
                      請求項4
                      A+B+D
                                                 次に判断する請求項に係る発明が、
        請求項3          請求項4                        技術的な関連性の低い技術的特徴を追加
        A+C           A+C+D                      し、
                                                    かつ
        請求項4                                      当該技術的特徴から把握される、発明が解
        A+D                                      決しようとする具体的な課題も関連性が低い
                       審査対象外
                                                 →STF有無の判断を終了


        直列的従属系列にあっても審査されない場合があ
        る
        被従属・従属の請求項間で「技術的特徴」と「課
        題」の関連性が問題となる
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審査基準の留意点(3)




  ・審査対象とした発明について審査を行った結果、審査が実
  質的
   に終了している他の発明(例えば、カテゴリー表現上の差
  異が
   ある だけの発明)についても、審査対象に加える

     直列的従属系列になくても審査される場合がある
     審査官による審査のバラつきの問題




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審査ハンドブックの留意点
          特許実用新案 審査ハンドブック
          63.09「第17条の2第4項の要件に関する審査における留意
          点」

 最初の拒絶理由通知時
  シフト補正の要件違反とならないための補正の方向性を
 示した
 「第17条の2第4項の要件に関する留意点」を記載する。
  [記載例]

  <第17条の2第4項の要件に関する留意点>
   請求項4に係る発明のうち請求項1~3すべてを引用する発明に、特別な技術的特徴を
  有することが見いだされた。
   したがって、特許請求の範囲を補正する際には、特許法第17条の2第4項の要件違反とな
  らないように、補正後の特許請求の範囲の発明が、当該請求項4に係る発明のうち請求項
  1~3すべてを引用する発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明となるよ
  うに補正することを検討されたい(「特許・実用新案 審査基準」第III部第II節4.3.1
  を参照)。
 補正後の拒絶理由通知時
  最初の拒絶理由通知において
 留意点を記載しなかった場合や留意点の内容が不適切であった場合
 は
 第17条の2第4項違反の拒絶理由を通知することなく審査を進める。
        審査官による審査のバラつきの問題

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Coffee Break

               STFとは・・・                        Special Technical
               Feature
                                               特別な技術的特徴

               Google、yahooで「STF」を検索して
               みると




   STF (Supremo Tribunal                        STF (Step-over Toehold with
   Federal)                                     Facelock)
   ブラジル連邦最高裁判所                                  プロレスの技

         自分の常識を相手も同様に理解しているとは限りませ
         ん...
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ステップ1.日本の実務を再確認する
ステップ2.各国の法制度の違いを認識する
ステップ3.問題点を意識したアドバイスを考
える




    各国特許法・規則




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制度の国際比較:単一性


     単一性の要件

     「単一の一般的発明概念」の規                          「同一又は対応する特別な技術的特徴」の
     定                                       規定
日本   規則25条の8                                 規則25条の8

PC   規則13.1                                  規則13.2
T
欧州   条約82条                                   規則44

中国   専利法31条                                  細則34条

韓国   特許法45条                                  施行令6条

米国   限定要求の基準は、独立した別個(Independent and Distinct)であって、単一
     の一般的発明概念や同一又は対応する特別な技術的特徴を規定する法令はない。
     限定要求の関連法令:特許法121条 規則1.141、1.142

          米国を除き、単一性の法令が存在
          では、その内容・運用は?


              Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   21
制度の国際比較:補正の制限



               特別な技術的特徴を変更する補正
     日本        特許法第17条の2第4項
     PCT       -
     欧州        規則137(5)
     中国        規定なし、審査基準による運用指針あり
     韓国        規定なし
     米国        規則1.145



     日本、欧州、米国に補正を制限する法令が存在
     では、その内容・運用は?




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PCTの規定:単一性


  PCT規則   第13規則        発明の単一性
  13.1 要件
    国際出願は、一の発明又は単一の一般的発明概念を形成するよう
  に連関している一群の発明についてのみ行う(「発明の単一性の要
  件」)。

  13.2 発明の単一性の要件を満たしていると認められる場合
    一群の発明が同一の国際出願の請求の範囲に記載されている場合に
  は、これらの発明の間に一又は二以上の同一の又は対応する特別な
  技術的特徴を含む技術的な関係があるときに限り、13.1に規定する発
  明の単一性の要件は満たされる。「特別な技術的特徴」とは、請求の
  範囲に記載された各発明が全体として先行技術に対して行う貢献を
  明示する技術的特徴をいう。


              ・日本特許法とほぼ同じ規
              定



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欧州の規定:単一性


 EPC第82条   発明の単一性
  欧州特許出願は、一の発明又は単一の包括的発明概念を形成する
 ように関連している一群の発明についてのみ行う。

 EPC規則44   発明の単一性
 (1)一群の発明が同一の欧州特許出願中においてクレームされている
 場合は、第82条に基づく発明の単一性の要件は、これら発明の間に
 一又は二以上の同一の又は対応する特別な技術的特徴を含む技術的
 な関係があるときに限り、満たされる。「特別な技術的特徴」という
 表現は、クレームされた各発明が全体として先行技術に対して行う
 貢献を明示する技術的特徴を意味する。


    ・日本特許法とほぼ同じ規定
    ・調査部と審査部で判断される
    ・調査部で単一性を満たさないとされた発明は追加
      サーチ料を支払えばサーチ対象となる(EPC規則
    64)
           Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   24
欧州の規定:補正の制限


 EPC規則137   欧州特許出願の補正
 (5) 補正後の請求の範囲は、出願時にクレームされていた発明又は
 単一
      の一般的発明概念を形成している一群の発明と関連していない
 未調
      査の主題に関するものであってはならない。更に、第62a規則
 又は第
      63規則の規定に従い調査しなかった主題に関するものであっ
 てもなら ・サーチされていない発明を含むようなシフト補正はで
      ない。
      きない
     ・日本特許法と異なり、単一性を満たすことは要件では
     ない




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米国の規定:単一性

 米国出願の単一性は「限定要求」の実務として扱われる。
 PCTルートの国内移行出願はPCTの単一性の規定が適用される。

 35 USC 121     分割出願
   一の出願によって二以上の独立した別個の(independent and
 distinct)発明がクレームされた場合は、長官は、当該出願をそのう
 ちの一発明に限定すべき旨を要求することができる。(以下略)

 37 CFR 1.142    限定要求
 (a)独立した別個の二以上の発明が単一の出願においてクレームされ
 ている場合は、審査官は、庁指令によって、出願人に対し、限定要求
 と呼ばれる当該指令に対する応答として、一の発明を選択し、クレー
 ムの対象をその発明に限定するよう要求するものとする。

     ・実体審査に入る前に判断される
     ・審査対象となる発明を選択できる
     ・先行技術と関係なく判断される

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米国の規定:補正の制限


 37 CFR 1.145    異なる発明に関するクレームのその後の提出
  出願に関する庁指令の後、出願人が、先にクレームされている発明
 とは異なる独立した発明に係るクレームを提出する場合において、そ
 の補正が§1.143及び§1.144に定められている再考慮及び再審理に
 従って記録される場合は、出願人は、そのクレームを先にクレーム
 されている発明に限定するよう要求される。



     ・日本特許法と全く異なる規定
     ・非選択発明への補正は制限される




                Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   27
中国の規定:単一性


 専利法第31条
  一件の発明又は実用新案の特許出願は、一つの発明又は実用新案に
 限られる。一つの全体的な発明構想の二つ以上の発明又は実用新案
 は、一件の出願として提出することができる。

 専利法実施細則第34条
  専利法第31条第1項の規定に基づいて、一つの特許出願として提出
 できる、一つの全体的発明構想に属する二つ以上の発明又は実用新案
 は、技術的に相互に関連し、一つの又は複数の同一又は相応する特
 定の技術的特徴を備えなければならない。ここに言う特定の技術的
 特徴とは各発明又は実用新案が全体として既存技術に貢献した技術
 的特徴を指す。


    ・日本特許法とほぼ同じ規定




           Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   28
中国の規定:補正の制限


 専利法実施細則第51条(3)
  出願人は国務院特許行政部門が発行する審査意見通知書を受領した
 後特許出願書類を補正する場合は、通知書に記載された欠陥のみに
 対して、補正を行わなければならない。




    ・日本特許法と全く異なる規定




         Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   29
韓国の規定:単一性


 特許法第45条(一特許出願の範囲)
 ①特許出願は一発明を一特許出願とする。但し、一つの総括的発明
 の
  概念を形成する一群の発明に対して一特許出願とすることができ
 る。
 ②第1項の規定による一特許出願の要件は、大統領令で定める。

 特許法施行令第6条(一群の発明に対する一特許出願の要件)
  法第45条第1項但書の規定による一群の発明に対して一特許出願を
 するためには、次の各号の要件を備えなければならない。
 1.請求された発明間に技術的相互関連性があること。
 2.請求された発明などが同一、また相応する技術的特徴を有して
 いる
   こと。この場合、技術的特徴は発明全体からみて先行技術に比
    ・日本特許法とほぼ同じ規定
 べて
   改善されたものでなければならない。

        Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   30
韓国の規定:補正の制限




    ・「特別な技術的特徴を変更する補正」に関する規
    定なし




       Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   31
STF認定基準の国際比較


       STF認定基準の内容
  日本   次の①~③のいずれかに該当する場合は、当該STFは先行技術に対
       する貢献をもたらすものではない。
       ①「特別な技術的特徴」とされたものが先行技術の中に発見された場
       合
       ②「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する周知技
       術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するも
       のではない場合
       ③「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する単なる
       設計変更であった場合
  欧州   STF認定には進歩性が要求されている
  中国   STF認定には進歩性(創造性)が要求されている
  韓国   STF認定には進歩性が要求されている

         ・日本の運用は諸外国からみて異なる



          Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   32
日本法制度に対する国内ユーザーの声


 単一性の要件
 ・全体の74%が、審査基準に不満があると回答
 ・全体の24%が、他国の審査運用と調和していると回答
 ・全体の48%が、他国の審査運用と比べて厳しいと回答

 シフト補正の要件
 ・全体の75%が、審査基準に不満があると回答
 ・全体の15%が、他国の審査運用と調和していると回答
 ・全体の63%が、他国の審査運用と比べて厳しいと回答




    「平成23年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 発明の特別な技術的特徴を変更す
    る
    補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究」、一般財団法人知的財産研究所、平成24年2
    月       Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   33
ステップ1.日本の実務を再確認する
ステップ2.各国の法制度の違いを認識する
ステップ3.問題点を意識したアドバイスを考
える




       問題点
       アドバイス




 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   34
日本法制度の問題点


 ・すべての請求項が審査されるとは限らず、審査請求料が無駄に
  なる可能性がある

 ・出願人は、審査してもらう請求項を選択できない

 ・審査のバラつきが審査結果に大きく影響する
  単一性/シフト補正の適用、審査対象、留意点記載の有無、等

 ・単一性/シフト補正拒絶は、分割出願により拒絶理由を解消
  でき、また無効理由ではないため、審判や法廷で争う例が
  殆ど無く、不適切な審査を是正するチャンスが無い

 ・シフト補正拒絶を回避するためには補正により不必要な
  特徴を組み込まなければならない

 ・分割出願の手続の労力や費用が必要となる



        Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   35
実務上のアドバイス(1)


  そろそろシフト補正拒絶適用出願が審査される時期
  (2007年4月1日+審査請求期間3年+審査順番待ち期間25.9月(2011年))

  外内特許出願は基本的に外国明細書の翻訳であり日本の法制度は
  考慮されていない



  審査係属中の出願について(事後的対策)

  ・単一性拒絶とシフト補正拒絶を解消するには分割出願を利用する

  ・審査官との相談/面接を活用する




         Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   36
実務上のアドバイス(2)

  これから審査に係属する出願について(予防的対策)

 ・請求項の構成を見直す
   出願時(パリルート)、審査請求時(パリ/PCTルート)
 ・請求項1は広くしすぎない
   新規性を確保することにより単一性拒絶を回避する
   国際調査報告、対応外国出願の審査結果を検討する

 ・請求項2がきわめて重要
   新規性がありかつ重要な特徴を記載する
 ・重要な発明は最初の直列的な従属系列に含め、多段階の請求項を
  記載する
 ・被従属・従属の請求項間で「技術的特徴」と「課題」の関連性を
  もたせる
 ・多数従属項を利用して請求項数を減らす
   審査請求料が無駄になる可能性を減らす


        Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   37
まとめに代えて



    ・経験を共有して知恵を集める

    ・的確な権利保護を可能とする制度への改善を求める




       Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   38
コミュニケーションの観点から

   ・日本クライアントは電話一本で連絡できる

   ・外国クライアント/代理人とのコミュニケーション
     通常、レター、ファックス、電子メールによる一方通行

   ・外国クライアント/代理人と直接話をしてみる
     言語の違い、時差、法制度の違い・・・


     弁理士義務研修(e-ラーニング)
     「特許実務英会話演習-外内中間処理編(1.5単
     位)」

     (講師)ジョセフ P. ファラー 米国弁護士
         森友宏 弁理士・米国弁護士
         平山晃二 弁理士
    ・外内特許出願の代理に必要なオーラルコミュニケーションとは
    ・英語で話す苦手意識を軽減する


       Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved   39
本日は、ご参加頂きありがとうございまし
        た。
参考文献
富澤孝「いわゆる『シフト補正の禁止』の審査基準について」、パテント、Vol. 60、No. 9(2007)

「平成23年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 発明の特別な技術的特徴を変更する
補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究」、一般財団法人知的財産研究所、平成24年2月




       平山晃二
       平和国際特許事務所
       k-hira@heiwa-pat.com



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日米実務の相違を考慮した外内特許出願-単一性・シフト補正に焦点をあてて

  • 2. 外内特許出願とは 国内 外国 クライア クライアン ント ト 日本弁理士 手続代理業務 外国代理人 外内特許出願 外内特許出願代理の特色(ハードル) ・コミュニケーション(言語の違い、時 差) ・法制度(特許要件、明細書、手続の違 い) Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 2
  • 3. 本日の目標 単一性・シフト補正に焦点をあてる 新しい法制度、審査基準・運用が難解、適用出願の蓄積が少なく経験に 乏しい 日本の実務家として理解できていますか? 外国代理人・クライアントに説明できています か? 適切なアドバイスができていますか? 外内特許出願の代理を遂行するために 1.日本の実務を再確認する 2.各国法制度・実務の違いを認識す る 3.問題点を意識したアドバイスを考 える Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 3
  • 4. ステップ1.日本の実務を再確認する ステップ2.各国の法制度の違いを認識する ステップ3.問題点を意識したアドバイスを考 える 特許法・施行規則 審査基準 審査ハンドブック Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 4
  • 5. 単一性・シフト補正の適用イメージ 審査時の 補正後の 特許請求の範囲 特許請求の範囲 ①37条 拒絶理由通知 単一性違反 審査対象の請求項 審査対象の請求項 37条を満たす請求項+α 37条を満たす請求項+α 拒絶理由(49条) 無効理由ではない 審査対象外の請求項 ②17条の2第4項 37条を満たさない請求 ≒37条 項 シフト補正違反 「発明の単一性」が実質的に2回判断される 拒絶理由(49条) 補正却下理由(53条) 無効理由ではない 単一性 平成16(2004)年1月1日以降 の出願 シフト補正 平成19(2007)年4月1日以降 の出願 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 5
  • 6. シフト補正の規定 シフト補正=発明の特別な技術的特徴を変更する補 正 特許法第17条の2第4項 前項に規定するもののほか、第1項各号に掲げる場合において特許 請求の範囲について補正をするときは、 その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができ ないものか否かについての判断が示された発明と、 その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される 発明とが、 第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するもの となるようにしなければならない。 シフト補正の審査は実質的に単一性の審査であ る 17条の2第4項≒37条 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 6
  • 7. 単一性の規定 特許法第37条 二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有 することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当すると きは、一の願書で特許出願をすることができる。 「請求項1に係る発明」との間で判断する(審査基 準) 特許法施行規則第25条の8 特許法第37条の経済産業省令で定める技術的関係とは、二以上の 発明が同一又は対応する特別な技術的特徴を有していることによ り、これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関して いる技術的関係をいう。 2 前項に規定する特別な技術的特徴とは、発明の先行技術に対す る貢献を明示する技術的特徴をいう。 特別な技術的特徴(STF)が鍵となる Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 7
  • 8. ケーススタディ 単一性とシフト補正の審査手順を確認しよう 請求項1: 特徴Aを有する発明。 請求項2: さらに特徴Bを有する請求項1記載の発明。 請求項3: さらに特徴Cを有する請求項1又は2に記載の発明。 請求項4: さらに特徴Dを有する請求項1~3のいずれかに記載の 発明。 請求項1 請求項2 請求項3 請求項4 A A+B A+B+C A+B+C+D 請求項4 A+B+D 請求項3 請求項4 A+C A+C+D 請求項4 A+D Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 8
  • 9. ケース1.特徴AにSTFあり 単一性の審査 同一又は対応する特別な技術的特徴を有しているか(施行規 則) 請求項1 請求項2 請求項3 請求項4 A A+B A+B+C A+B+C+D 請求項4 A+B+D 請求項3 請求項4 A+C A+C+D 請求項4 A+D 単一性を満た 単一性の要件以外の要件について審査対象 す Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 9
  • 10. ケース1.特徴AにSTFあり 請求項1 請求項2 請求項3 請求項4 A A+B A+B+C A+B+C+D 請求項4 A+B+D 請求項3 請求項4 A+C A+C+D 請求項4 拒絶理由通知 A+D ・請求項1-4、進歩性 審査対象 なし シフト補正の審査 補正前に受けた拒絶理由通知 補正後の請求項1 において特許をすることがで 同一のSTF: きないものか否かについての A+B A 判断が示された発明(特許 A+C を有する 法) A+X STF:A X:明細書等に記載された事項 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 10
  • 11. ケース2.特徴A+BにSTFあり 単一性の審査 同一又は対応する特別な技術的特徴を有しているか(施行規 則) 請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの請求項に 係る発明のうち、番号の最も小さい請求項(審査基準) 請求項1 請求項2 請求項3 請求項4 A A+B A+B+C A+B+C+D STFの有無を 請求項4 請求項2の発明特定事項を 判断した発明 すべて含む同一カテゴリー (審査基準) A+B+D の発明(審査基準) 例外的に単一性を 請求項3 請求項4 問わず審査対象 A+C A+C+D 請求項4 A+D 審査対象外 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 11
  • 12. ケース2.特徴A+BにSTFあり 請求項1 請求項2 請求項3 請求項4 A A+B A+B+C A+B+C+D 請求項4 拒絶理由通知 A+B+D ・単一性を満たさない ・請求項1、新規性なし 請求項3 請求項4 例外的に単一性を ・請求項2、進歩性なし 問わず審査対象 ・請求項3、拒絶理由を発見し A+C A+C+D ない 請求項4 A+D 審査対象外 シフト補正の審査 同一のSTF:A+ 補正前に受けた拒絶理由通知 補正後の請求項1 Bを有する において特許をすることがで A+B+C きないものか否かについての 判断が示された発明(特許 A+B+X 法) X:明細書等に記載された事項 STF:A+B A+C A+X STF:A+Bなし Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 12
  • 13. ケース3.特徴A+B+CにSTFあり 単一性の審査 同一又は対応する特別な技術的特徴を有しているか(施行規 則) 直前にSTF有無を判断した請求項の発明特定事項 をすべて含む同一カテゴリーの請求項に係る発明 のうち、番号の最も小さい請求項(審査基準) 請求項1 請求項2 請求項3 請求項4 A A+B A+B+C A+B+C+D STFの有無を 請求項3の発明特定事項を 判断した発明 請求項4 すべて含む同一カテゴリー (審査基準) の発明(審査基準) A+B+D 例外的に単一性を 請求項3 請求項4 問わず審査対象 A+C A+C+D 請求項4 A+D 審査対象外 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 13
  • 14. ケース3.特徴A+B+CにSTFあり 請求項1 請求項2 請求項3 請求項4 拒絶理由通知 A A+B A+B+C A+B+C+D ・単一性を満たさない 例外的に単一性を ・請求項1、新規性なし 請求項4 問わず審査対象 ・請求項2、新規性なし A+B+D ・請求項3、進歩性なし ・請求項4、拒絶理由を発見し 請求項3 請求項4 ない A+C A+C+D 請求項4 A+D 審査対象外 シフト補正の審査 同一のSTF:A+B+ 補正前に受けた拒絶理由通知 補正後の請求項1 Cを有する において特許をすることがで A+B+C+D きないものか否かについての 判断が示された発明(特許 A+B+C+X 法) X:明細書等に記載された事項 STF:A+B+ C A+D A+B+D STF:A+B+Cな A+B+X し Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 14
  • 15. 審査基準の留意点(1) ・単一性、シフト補正について「必要以上に厳格に適用する ことが ないようにする」 審査官による審査のバラつきの問題 ・STF有無の判断順序 1.請求項1に係る発明 2.請求項1の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリー の請求項に係る発明のうち、番号の最も小さい請求項 3.直前にSTF有無を判断した請求項の発明特定事項を すべて含む同一カテゴリーの請求項に係る発明のうち、 番号の最も小さい請求項 審査は「最初の直列的従属系列」に制限さ れる Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 15
  • 16. 審査基準の留意点(2) ・STF有無の判断を終了する場合 請求項1 請求項2 請求項3 請求項4 A A+B A+B+C A+B+C+D 審査対象 審査対象外 請求項4 A+B+D 次に判断する請求項に係る発明が、 請求項3 請求項4 技術的な関連性の低い技術的特徴を追加 A+C A+C+D し、 かつ 請求項4 当該技術的特徴から把握される、発明が解 A+D 決しようとする具体的な課題も関連性が低い 審査対象外 →STF有無の判断を終了 直列的従属系列にあっても審査されない場合があ る 被従属・従属の請求項間で「技術的特徴」と「課 題」の関連性が問題となる Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 16
  • 17. 審査基準の留意点(3) ・審査対象とした発明について審査を行った結果、審査が実 質的 に終了している他の発明(例えば、カテゴリー表現上の差 異が ある だけの発明)についても、審査対象に加える 直列的従属系列になくても審査される場合がある 審査官による審査のバラつきの問題 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 17
  • 18. 審査ハンドブックの留意点 特許実用新案 審査ハンドブック 63.09「第17条の2第4項の要件に関する審査における留意 点」 最初の拒絶理由通知時 シフト補正の要件違反とならないための補正の方向性を 示した 「第17条の2第4項の要件に関する留意点」を記載する。 [記載例] <第17条の2第4項の要件に関する留意点> 請求項4に係る発明のうち請求項1~3すべてを引用する発明に、特別な技術的特徴を 有することが見いだされた。 したがって、特許請求の範囲を補正する際には、特許法第17条の2第4項の要件違反とな らないように、補正後の特許請求の範囲の発明が、当該請求項4に係る発明のうち請求項 1~3すべてを引用する発明の発明特定事項をすべて含む同一カテゴリーの発明となるよ うに補正することを検討されたい(「特許・実用新案 審査基準」第III部第II節4.3.1 を参照)。 補正後の拒絶理由通知時 最初の拒絶理由通知において 留意点を記載しなかった場合や留意点の内容が不適切であった場合 は 第17条の2第4項違反の拒絶理由を通知することなく審査を進める。 審査官による審査のバラつきの問題 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 18
  • 19. Coffee Break STFとは・・・ Special Technical Feature 特別な技術的特徴 Google、yahooで「STF」を検索して みると STF (Supremo Tribunal STF (Step-over Toehold with Federal) Facelock) ブラジル連邦最高裁判所 プロレスの技 自分の常識を相手も同様に理解しているとは限りませ ん... Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 19
  • 21. 制度の国際比較:単一性 単一性の要件 「単一の一般的発明概念」の規 「同一又は対応する特別な技術的特徴」の 定 規定 日本 規則25条の8 規則25条の8 PC 規則13.1 規則13.2 T 欧州 条約82条 規則44 中国 専利法31条 細則34条 韓国 特許法45条 施行令6条 米国 限定要求の基準は、独立した別個(Independent and Distinct)であって、単一 の一般的発明概念や同一又は対応する特別な技術的特徴を規定する法令はない。 限定要求の関連法令:特許法121条 規則1.141、1.142 米国を除き、単一性の法令が存在 では、その内容・運用は? Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 21
  • 22. 制度の国際比較:補正の制限 特別な技術的特徴を変更する補正 日本 特許法第17条の2第4項 PCT - 欧州 規則137(5) 中国 規定なし、審査基準による運用指針あり 韓国 規定なし 米国 規則1.145 日本、欧州、米国に補正を制限する法令が存在 では、その内容・運用は? Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 22
  • 23. PCTの規定:単一性 PCT規則 第13規則 発明の単一性 13.1 要件 国際出願は、一の発明又は単一の一般的発明概念を形成するよう に連関している一群の発明についてのみ行う(「発明の単一性の要 件」)。 13.2 発明の単一性の要件を満たしていると認められる場合 一群の発明が同一の国際出願の請求の範囲に記載されている場合に は、これらの発明の間に一又は二以上の同一の又は対応する特別な 技術的特徴を含む技術的な関係があるときに限り、13.1に規定する発 明の単一性の要件は満たされる。「特別な技術的特徴」とは、請求の 範囲に記載された各発明が全体として先行技術に対して行う貢献を 明示する技術的特徴をいう。 ・日本特許法とほぼ同じ規 定 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 23
  • 24. 欧州の規定:単一性 EPC第82条 発明の単一性 欧州特許出願は、一の発明又は単一の包括的発明概念を形成する ように関連している一群の発明についてのみ行う。 EPC規則44 発明の単一性 (1)一群の発明が同一の欧州特許出願中においてクレームされている 場合は、第82条に基づく発明の単一性の要件は、これら発明の間に 一又は二以上の同一の又は対応する特別な技術的特徴を含む技術的 な関係があるときに限り、満たされる。「特別な技術的特徴」という 表現は、クレームされた各発明が全体として先行技術に対して行う 貢献を明示する技術的特徴を意味する。 ・日本特許法とほぼ同じ規定 ・調査部と審査部で判断される ・調査部で単一性を満たさないとされた発明は追加 サーチ料を支払えばサーチ対象となる(EPC規則 64) Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 24
  • 25. 欧州の規定:補正の制限 EPC規則137 欧州特許出願の補正 (5) 補正後の請求の範囲は、出願時にクレームされていた発明又は 単一 の一般的発明概念を形成している一群の発明と関連していない 未調 査の主題に関するものであってはならない。更に、第62a規則 又は第 63規則の規定に従い調査しなかった主題に関するものであっ てもなら ・サーチされていない発明を含むようなシフト補正はで ない。 きない ・日本特許法と異なり、単一性を満たすことは要件では ない Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 25
  • 26. 米国の規定:単一性 米国出願の単一性は「限定要求」の実務として扱われる。 PCTルートの国内移行出願はPCTの単一性の規定が適用される。 35 USC 121 分割出願 一の出願によって二以上の独立した別個の(independent and distinct)発明がクレームされた場合は、長官は、当該出願をそのう ちの一発明に限定すべき旨を要求することができる。(以下略) 37 CFR 1.142 限定要求 (a)独立した別個の二以上の発明が単一の出願においてクレームされ ている場合は、審査官は、庁指令によって、出願人に対し、限定要求 と呼ばれる当該指令に対する応答として、一の発明を選択し、クレー ムの対象をその発明に限定するよう要求するものとする。 ・実体審査に入る前に判断される ・審査対象となる発明を選択できる ・先行技術と関係なく判断される Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 26
  • 27. 米国の規定:補正の制限 37 CFR 1.145 異なる発明に関するクレームのその後の提出 出願に関する庁指令の後、出願人が、先にクレームされている発明 とは異なる独立した発明に係るクレームを提出する場合において、そ の補正が§1.143及び§1.144に定められている再考慮及び再審理に 従って記録される場合は、出願人は、そのクレームを先にクレーム されている発明に限定するよう要求される。 ・日本特許法と全く異なる規定 ・非選択発明への補正は制限される Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 27
  • 28. 中国の規定:単一性 専利法第31条 一件の発明又は実用新案の特許出願は、一つの発明又は実用新案に 限られる。一つの全体的な発明構想の二つ以上の発明又は実用新案 は、一件の出願として提出することができる。 専利法実施細則第34条 専利法第31条第1項の規定に基づいて、一つの特許出願として提出 できる、一つの全体的発明構想に属する二つ以上の発明又は実用新案 は、技術的に相互に関連し、一つの又は複数の同一又は相応する特 定の技術的特徴を備えなければならない。ここに言う特定の技術的 特徴とは各発明又は実用新案が全体として既存技術に貢献した技術 的特徴を指す。 ・日本特許法とほぼ同じ規定 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 28
  • 29. 中国の規定:補正の制限 専利法実施細則第51条(3) 出願人は国務院特許行政部門が発行する審査意見通知書を受領した 後特許出願書類を補正する場合は、通知書に記載された欠陥のみに 対して、補正を行わなければならない。 ・日本特許法と全く異なる規定 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 29
  • 30. 韓国の規定:単一性 特許法第45条(一特許出願の範囲) ①特許出願は一発明を一特許出願とする。但し、一つの総括的発明 の 概念を形成する一群の発明に対して一特許出願とすることができ る。 ②第1項の規定による一特許出願の要件は、大統領令で定める。 特許法施行令第6条(一群の発明に対する一特許出願の要件) 法第45条第1項但書の規定による一群の発明に対して一特許出願を するためには、次の各号の要件を備えなければならない。 1.請求された発明間に技術的相互関連性があること。 2.請求された発明などが同一、また相応する技術的特徴を有して いる こと。この場合、技術的特徴は発明全体からみて先行技術に比 ・日本特許法とほぼ同じ規定 べて 改善されたものでなければならない。 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 30
  • 31. 韓国の規定:補正の制限 ・「特別な技術的特徴を変更する補正」に関する規 定なし Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 31
  • 32. STF認定基準の国際比較 STF認定基準の内容 日本 次の①~③のいずれかに該当する場合は、当該STFは先行技術に対 する貢献をもたらすものではない。 ①「特別な技術的特徴」とされたものが先行技術の中に発見された場 合 ②「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する周知技 術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するも のではない場合 ③「特別な技術的特徴」とされたものが一の先行技術に対する単なる 設計変更であった場合 欧州 STF認定には進歩性が要求されている 中国 STF認定には進歩性(創造性)が要求されている 韓国 STF認定には進歩性が要求されている ・日本の運用は諸外国からみて異なる Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 32
  • 33. 日本法制度に対する国内ユーザーの声 単一性の要件 ・全体の74%が、審査基準に不満があると回答 ・全体の24%が、他国の審査運用と調和していると回答 ・全体の48%が、他国の審査運用と比べて厳しいと回答 シフト補正の要件 ・全体の75%が、審査基準に不満があると回答 ・全体の15%が、他国の審査運用と調和していると回答 ・全体の63%が、他国の審査運用と比べて厳しいと回答 「平成23年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 発明の特別な技術的特徴を変更す る 補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究」、一般財団法人知的財産研究所、平成24年2 月 Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 33
  • 35. 日本法制度の問題点 ・すべての請求項が審査されるとは限らず、審査請求料が無駄に なる可能性がある ・出願人は、審査してもらう請求項を選択できない ・審査のバラつきが審査結果に大きく影響する 単一性/シフト補正の適用、審査対象、留意点記載の有無、等 ・単一性/シフト補正拒絶は、分割出願により拒絶理由を解消 でき、また無効理由ではないため、審判や法廷で争う例が 殆ど無く、不適切な審査を是正するチャンスが無い ・シフト補正拒絶を回避するためには補正により不必要な 特徴を組み込まなければならない ・分割出願の手続の労力や費用が必要となる Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 35
  • 36. 実務上のアドバイス(1) そろそろシフト補正拒絶適用出願が審査される時期 (2007年4月1日+審査請求期間3年+審査順番待ち期間25.9月(2011年)) 外内特許出願は基本的に外国明細書の翻訳であり日本の法制度は 考慮されていない 審査係属中の出願について(事後的対策) ・単一性拒絶とシフト補正拒絶を解消するには分割出願を利用する ・審査官との相談/面接を活用する Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 36
  • 37. 実務上のアドバイス(2) これから審査に係属する出願について(予防的対策) ・請求項の構成を見直す 出願時(パリルート)、審査請求時(パリ/PCTルート) ・請求項1は広くしすぎない 新規性を確保することにより単一性拒絶を回避する 国際調査報告、対応外国出願の審査結果を検討する ・請求項2がきわめて重要 新規性がありかつ重要な特徴を記載する ・重要な発明は最初の直列的な従属系列に含め、多段階の請求項を 記載する ・被従属・従属の請求項間で「技術的特徴」と「課題」の関連性を もたせる ・多数従属項を利用して請求項数を減らす 審査請求料が無駄になる可能性を減らす Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 37
  • 38. まとめに代えて ・経験を共有して知恵を集める ・的確な権利保護を可能とする制度への改善を求める Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 38
  • 39. コミュニケーションの観点から ・日本クライアントは電話一本で連絡できる ・外国クライアント/代理人とのコミュニケーション 通常、レター、ファックス、電子メールによる一方通行 ・外国クライアント/代理人と直接話をしてみる 言語の違い、時差、法制度の違い・・・ 弁理士義務研修(e-ラーニング) 「特許実務英会話演習-外内中間処理編(1.5単 位)」 (講師)ジョセフ P. ファラー 米国弁護士 森友宏 弁理士・米国弁護士 平山晃二 弁理士 ・外内特許出願の代理に必要なオーラルコミュニケーションとは ・英語で話す苦手意識を軽減する Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 39
  • 40. 本日は、ご参加頂きありがとうございまし た。 参考文献 富澤孝「いわゆる『シフト補正の禁止』の審査基準について」、パテント、Vol. 60、No. 9(2007) 「平成23年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 発明の特別な技術的特徴を変更する 補正及び発明の単一性の要件に関する調査研究」、一般財団法人知的財産研究所、平成24年2月 平山晃二 平和国際特許事務所 k-hira@heiwa-pat.com Copyright © 2012 HEIWA INTERNATIONAL PATENT All Rights Reserved 40