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150610 教育学特殊XIV(学級規模)第8講
- 1. 慶應義塾大学教育学特殊 XIV(第 8 講)
学級規模を研究する
5. 問題の設定とデータ分析
文部科学省
国立教育政策研究所
文部科学省
国立教育政策研究所
総括研究官
やま
山
もり
森
こう
光
よう
陽
(教育心理学)
koyo@nier.go.jp
2015 年 6 月 10 日
この内容は個人的見解であり
国立教育政策研究所の公式見解ではありません
- 6. 文献レビューの結果から
先行研究をまとめて言えること(2)
学級規模が小さくなるほどに学力は上がるが、ただしその差はわずかなものでしかないという結果
がある (Bosworth2014)。また、学級規模が小さくなるほど教師による指導は丁寧になる (戸田・島
田 2007,2008)。Galton&Pell(2012) によれば、大規模学級の指導形態は一斉指導が多く、グループ
学習が少ない。また、学習形態は一人学習が多くなるという。一方、小規模学級では協同学習が多
くなった。ここからいえるのは、学級規模が大きいほど、生徒は個々で学習しているということで
あり、また学級規模が小さいほど、生徒は教師の丁寧な指導のもとで学び、グループで学習をする
機会も多く与えられるということだ。
つまり、大規模学級では個々にわかれてしまうので、勉強をする子はする、しない子はしない、と
はっきりわかれるので、学力にばらつきが生まれるのではないか。もともと勉強が好きな子、得意
な子などは大規模学級にしたところでそのまま伸びるので、小規模学級と大規模学級の比較では学
力に大きな差が現れなかったと考えられる。学級規模効果のメタアナリシスの研究における学級規
模の改善効果は初等教育でのみみられるという橋野 (2011) の指摘もこれを裏づけているのではな
いかと考えられる。
低年齢の子どもほど教師の個別の学習が難しく教師の丁寧な対応によって成績があがりやすい。ま
た年齢があがるほどに個人的に学習を進めることのできる力がつくので、学級規模を小さくし教師
の対応を良いものにしても、学力があがらなくなるのだろう。また、橋野 (2011) の指摘のように、
学級規模の研究は国や地域、実験のサンプルに大きなばらつきがある。今後は国籍、学力、被験者
の身体的経済的状況などの要素のばらつきを加味した研究が生まれることに期待したい。
慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 8 講 2015 年 6 月 10 日 6 / 30
- 17. データの分析
TIMSS2011の内容
データの種類
学校質問紙 調査対象校の状況 (児童数など) や背景 (地域や家庭
の特徴) など。
算数理科調査 児童個別の学力調査の割り当て冊子や正答状況得点
など。
児童質問紙 児童個別の学習状況や関心意欲など。
教師質問紙 調査対象学級の状況や指導の実施状況など。
調査項目の詳細は以下に掲載。
国立教育政策研究所編 (2013). TIMSS2011 理科教育の国際比
較:国際数学・理科教育動向調査の 2011 年調査報告書 明石書
店 (数学編もあり)
データは自由に使えるので卒論などにはおすすめ。
慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 8 講 2015 年 6 月 10 日 17 / 30
- 28. 今後取り組む課題
当面の課題
課題
配付された 2 種類の演習用データのいずれかを用いて,(1) 学
級規模等と児童の学力との関係,あるいは (2) 学級規模等と教
師による学習指導との関係を検討して下さい。
進め方
2 種類のデータそれぞれについて,どのようなことを明らか
にしたいのか,そのためにどのような変数を組み合わせて分
析すればよいかを検討する。
TIMSS データについては,どのような層化をすればよいか検
討する。
次時にグループと扱うデータをアサインする。そのグループ
で分析の方針を立て,実際に分析を行う。
慶應義塾大学教育学特殊 XIV 第 8 講 2015 年 6 月 10 日 28 / 30