Más contenido relacionado
ブラウジング時に人はどのように書架を見ているのか ~視線追尾装置を用いた書架閲覧実験~
- 4. ブラウジングの効用
4
• 「思わぬ発見」
– 目的の資料以外のものも目に入る
– 予期せぬ資料同士が近くにある
• 「セレンディピティ」
• “偶然の産物”
- 6. 図書館の書架
6
• 基本は「めあてのものを、効率的に」
• 「思わぬ発見」を起こさないための棚
– 予期したところに予期した本を置くための棚
• 「思わぬ発見」は排架上の偶然による
- 9. ブラウジング(2)
9
• 身体運動としては・・・「目の動き」
• 「ざっと見る」「目を走らせる」「眺め読
む」「スキャン」etc…
• 「目や体の移動を伴ってある範囲をざっと
調べていく」2)
- 11. 先行研究
11
• 情報探索時の目の動きに関するもの:多数
– 情報検索行動/PC画面上の動きが対象
• 読書時の目の動きに関するもの:多数
– 「図書」を単位とする
• 図書館・書店のブラウジング行動研究2) 3)
– 「書架の移動」を単位とする
• 書架内での視線移動4)
– 「めあての資料」がある場合の動き
- 23. 視線追尾装置
23
• 10フレーム/秒の精度で注視点を取得
• 精度は限界あり
• 先行研究と同じ
装置を使用
- 24. 実験方法
24
• 同志社大学内に実験環境を構築
– 古書、公共図書館・大学図書館の廃棄本計
1,000冊以上を用意
– スチール本棚6連を実験用に用意
- 25. 実験概要
25
• 本棚1連・4段分に約200冊を排架
• 図書をタイトル順に並べる
• 欲しい本1冊を選ばせる
– その本は進呈すると伝える
• 制限時間は5分
– 時間内でも1冊決めれば終了
- 26. データ分析
26
• 4段を左右10分割(4 * 10 = 40エリア)
• 注視点の座標を記録
• 座標の遷移
• 注視頻度・注視時間を解析
- 28. 事後インタビュー
28
• なぜその本を選んだのか?
• 事前に探そうと思っていたものは?
• 普段の読書傾向
• 書店/図書館の利用頻度等
- 30. 実験実施状況
30
• 6日間実施、14名分のデータ
– ‘14 9/1 被験者5名(うち1名失敗)
– ‘14 9/3 被験者3名
– ‘14 10/1 被験者1名
– ‘14 10/8 被験者3名(うち1名失敗)
– ‘14 10/15被験者3名
– ‘14 10/17被験者1名
- 31. 被験者基礎データ
31
• 学年:1年2、2年5、3年3、4年4
• 学部:文9、経2、社1、商1,政1
• 性別:男5、女9
• 司書課程受講生9、それ以外5
• 月1冊以上読書する者11
• 公共図書館はあまり利用しない
- 32. 実験結果
32
• 14名全員が1冊の選択に成功
• 実験時間:最長4:30 最短0:42
• 選ばれた図書のジャンルは多様
• 選ばれた本の位置:
– 4段目6、2段目4、1段目3、3段目1
- 34. 注視時間分布注視頻度分布
34
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
1 2.3% 2.8% 3.3% 2.6% 2.9% 2.0% 2.6% 4.4% 2.9% 3.0% 28.8%
2 1.1% 2.3% 2.1% 2.0% 2.7% 2.5% 3.1% 3.6% 3.7% 2.6% 25.6%
3 1.6% 2.7% 2.6% 2.4% 2.4% 2.5% 2.8% 3.1% 3.2% 2.5% 25.7%
4 1.8% 2.3% 1.6% 1.7% 2.6% 1.8% 1.8% 2.1% 2.0% 2.0% 19.8%
計6.8% 10.0% 9.6% 8.7% 10.6% 8.9% 10.3% 13.2% 11.8% 10.1% 100.0%
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
1 1.8% 3.2% 3.5% 2.8% 2.2% 2.3% 2.7% 3.9% 3.6% 2.0% 27.9%
2 1.3% 2.1% 2.2% 1.9% 2.6% 2.5% 3.4% 3.5% 3.6% 1.7% 24.8%
3 1.7% 3.4% 2.7% 2.9% 3.0% 3.3% 3.0% 2.9% 3.1% 2.6% 28.6%
4 1.4% 2.0% 1.8% 1.8% 2.0% 1.8% 1.8% 2.0% 2.1% 1.8% 18.6%
計6.2% 10.7% 10.2% 9.4% 9.9% 9.9% 10.8% 12.4% 12.5% 8.1% 100.0%
- 37. 注視時間分布注視頻度分布
37
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
1 2.7% 2.3% 2.4% 2.1% 3.9% 1.7% 2.5% 2.9% 1.8% 2.4% 24.6%
2 1.7% 2.2% 1.8% 2.7% 2.6% 1.8% 2.8% 3.4% 2.3% 2.3% 23.5%
3 2.3% 2.2% 2.4% 1.8% 2.5% 2.0% 3.1% 3.3% 3.1% 2.2% 24.9%
4 2.2% 3.7% 2.6% 2.3% 2.9% 2.6% 2.4% 2.8% 2.7% 2.9% 27.0%
計8.8% 10.3% 9.1% 8.9% 11.9% 8.1% 10.8% 12.3% 9.9% 9.9% 100.0%
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 計
1 1.8% 2.9% 3.4% 2.3% 2.5% 2.2% 2.9% 2.9% 2.5% 1.5% 25.0%
2 1.7% 2.3% 2.5% 2.1% 2.7% 2.4% 3.2% 3.0% 2.5% 1.7% 24.1%
3 1.8% 2.9% 2.5% 2.3% 2.5% 2.3% 3.0% 2.8% 3.1% 2.5% 25.7%
4 1.9% 2.8% 2.2% 2.6% 2.6% 2.6% 2.4% 2.9% 3.0% 2.4% 25.2%
計7.2% 10.9% 10.5% 9.3% 10.3% 9.5% 11.5% 11.8% 11.1% 8.0% 100.0%
- 44. 被験者Aの場合
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1 3 2 1
5 4
7 6
9 8
12 11 10
18 17 16 15 14 13
2 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
29 30
3 31
35 34 33 32
37 36
45 44 43 42 41 40 39 38
46
4 47 48
49 50 51 52 53 54 55
- 47. 今後の実験計画
47
• 1.排架順を変える
– 主題・著者順等の規則性のある排架と比較
• 2.実験条件を変える
– 実験時間を短縮する/伸ばす
– 複数冊を選択可能にする
• 3.「目当ての一冊」がある場合と比較する
- 48. 参照文献
1) 松田千春. 「ブラウジング」とは何か:辞書, 新聞, Webページ, 論文中
48
での用例調査. Library and Information Science. 2003, no.47, p.1-26.
2) 松田千春.情報探索におけるブラウジング行動: 図書館と書店における
行動観察を基にして. Library and Information Science. 2003, no.49, p.1-
31.
3)青木美佑紀, 山田あすか. 書店における客の滞在書架と探索行動特性に
関する研究: 店舗ごとの建物・配架形態と客の属性による比較. 日本建
築学会計画系論文集. 2009, vol.74, no.637, p.541-548.
4) 安蒜孝政. 図書館における大学生の情報探索行動. 筑波大学, 修士論文,
2012, 112p.
- 52. ヒートマップ1
52
• 文学1年、女性
• 注視点数:230
• 実験時間:4:09
• 選んだ位置:4, 3
• 選んだ本:『上弦の月を喰た
べる獅子』
– 「面白いSFと評判」
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 総計
1 4 8 4 6 5 3 7 10 11 4 62
2 3 7 6 6 6 6 3 3 7 6 53
3 2 5 5 6 7 6 6 10 5 3 55
4 2 2 3 7 8 5 6 8 11 8 60
総計11 22 18 25 26 20 22 31 34 21 230
- 53. ヒートマップ2
53
• 社会3年、女性
• 注視点数:240
• 実験時間:2:11
• 選んだ位置:2, 8
• 選んだ本:『教育心理学』
– 「教育心理学に興味」
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 総計
1 4 6 3 7 4 8 5 2 4 1 44
2 4 6 9 7 12 7 11 7 5 4 72
3 1 7 9 5 9 8 8 9 6 6 68
4 2 5 6 7 10 2 6 7 8 3 56
総計11 24 27 26 35 25 30 25 23 14 240
- 54. ヒートマップ3
54
• 文学4年、男性
• 注視点数:94
• 実験時間:1:31
• 選んだ位置:2, 8
• 選んだ本:『京洛四季』
– 「好きな作家」
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 総計
1 2 4 6 3 1 2 4 2 1 1 26
2 1 1 2 4 3 1 5 8 5 1 31
3 5 6 1 1 1 2 2 1 2 3 24
4 1 1 1 1 1 1 2 2 2 1 13
総計9 12 10 9 6 6 13 13 10 6 94
- 55. ヒートマップ4
55
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 総計
1 1 2 2 1 2 2 2 1 1 1 15
2 2 3 1 0 3 1 3 1 1 1 16
3 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 9
4 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 13
総計5 8 6 3 7 5 7 4 4 4 53
• 経済2年、男性
• 注視点数:53
• 実験時間:0:40
• 選んだ位置:4, 3
• 選んだ本:『宗教学』
– 「宗教学/社会学系を探し
ていた」
Notas del editor
- ・それでは・・・スライドを見て話す
- ・はじめに本研究の背景についてですが
- ・スライドのとおり
- ・なにか目当ての本があって、あるいは特に目的もなく、書架を見て歩く行為、いわゆるブラウジングには・・・「思わぬ発見」「セレンディピティ」につながるという効用がある、とよく言われる
・存在すら知らなかったような本を偶然、書架で見かけて、そこから新たな発見へ、なんて経験がまことしやかに語られる
・そういうことができる、というのは物理的な図書館を維持する一つの意義と言えよう
・しかしこれは、現状、あくまで偶然の産物である
- ・これは実際にある図書館の書架を撮影してきたものだが・・・当然ながら、図書館の書架は請求記号順に排架している
・基本にあるのは主題に基づく分類である。より近い主題の図書同士がなるべく近くに置かれる
・利用者は自身の探したい図書の請求記号がわかれば、あとはそれだけ見ていれば探せる
- ・これは言い換えれば、「めあての一冊、あるいはある主題に関する複数冊を、効率的に」探すことに特化した排架
・RFID等がない時代において、優れた検索性能を発揮してきた仕組み
・同時に・・・人が予期したところに予期した本を置くシステムでもあり、「思わぬ発見」を「起こさないための」排架である
・そこで思わぬ発見があるのは、歩いている途中でたまたま関係ない棚を見たなど、偶然の産物
- ・この偶然をコントロールしたい。偶然の出会いを、誘発する本棚の並べ方がありえるのではないか、というのが本研究の動機である
・RFID等の技術の進歩・・・必ずしも請求記号システムどおりに排架せずとも、目当ての一冊を見つけることは可能になりつつある
・であれば、あえて図書館で「思わぬ発見」が起こるような形に、本を並べ変えてもいいのではないか?
・ただし、それが個性派書店のような、個人のセンスによってなされるものであっては図書館では受け入れられない
・センスそのままでは真似ができない+図書館員はひとつの棚につきっきりにはなれない
・現代デザインが単なるセンスだけではなく種々の人間工学や行動経済学等の科学に基づくように、新たな発見を生み出すような本棚も、センスではなく科学の領域に落としこむ。それが本研究の最終目標
- ・ではそのような排架法を構築しようと考える時、まず明らかにすべき基礎的事項とはなにか?
・ここではまずブラウジングとはなにか、から考えていく・・・先行研究によればそれは<読む>
- ・これを身体運動として捉えると・・・ブラウジングとは、端的に言って目の動きである
・スライドを軽く読む
- ・つまり、書架におけるブラウジング、それに適した配架方法を考える上で、最も基礎となるのは、視覚だ
・人間は本棚を前にするとどんな風に目を動かし、どうその書架を見るのか?
・それが明らかになれば、「予期せぬ発見」が起こりそうな位置に狙った本を置いておく、みたいなことを考える、その最も基礎たるデータが得られると本研究では考えた
- ・このテーマに関連する先行研究としては様々なものがありうるが・・・・意外にも、「人が本棚をどう見ているのか」を扱った研究はごくごく少ない
・その中で直接の先行研究となるのは安蒜らによる実験
- ・安蒜らは・・・被験者にレポート課題を課し、そのための資料を探す際の学生と図書館員の目の動きを分析した
・その結果、
- ・学部生の場合は書架上で視線がこのように縦に動く・・・
- ・これは請求記号を見れば資料を探せるとわからず、タイトルを読んで探すためである
- ・一方、図書館員の場合は、
- ・このように横一直線に動き、
- 端につくと次の段におり、
- ・再び横一直線、を繰り返す。請求記号システムを理解すると目の動きが変わることを示している
・ただし・・・これは「目的がある場合」の行動であり・・・棚をブラブラ見るブラウジング、その際の人の見方の研究は、皆無である
- ・そこで冒頭の本研究の目的に戻るわけである
・なお、ブラウジングと言っても複数の状況がありうるが、本研究ではその中でも「なにか欲しい本を探したい」というような、曖昧な情報要求しか持たない場合をまずは対象とする
- ・続いて、調査方法について
- ・本研究では視線追尾装置を使用した被験者実験を行う
- ・これは瞳の位置と視界情報を動画で撮影、両者を結びつけて被験者が視界内のどこを見ていたか、を特定する装置で、これを頭部に装着した状態で被験者に書架を眺めてもらう
・安蒜らの先行研究に用いられていたのと同じ製品である
- ・スライドの読み上げ
- ・それらの図書を今回は書架一連、4段分に排架
・並べ方はタイトル順
・なるべく「ジャンル」を固定しない、ようでいてあるようでもある、ようははしからはしまで見ないといけないような棚にしたかった
・その中から被験者には好きな本を1冊選ばせる。その本は実際に与える
・制限時間は5分、欲しい本が決まればそこで実験終了、5分が過ぎたら本はなし
- ・データの分析方法・・・専用のツールを使って行う
・実験する書架の側に座標を振ってしまう
・動画を見つつ、その座標のどこにいたか、タグで打ち込んでいく
・現在の装置では一冊単位での移動を取るのは不可。なのでこのようなある種の大雑把さを持った方法にした
- ・実際に座標を振った棚の様子・・・こんな感じ
・だいたい1エリアに5冊だが、厚みによっても変わってくる
・以下、この座標のそれぞれのマス目を「セル」と呼ぶ
- ・実験後にはなぜその本を選んだかや事前の探索戦略、普段の読書傾向、書店・図書館利用頻度に関するインタビューも実施
- ・では、調査結果を見て行きましょう
- ・予稿集執筆時点から打ち込み完了・分析の終ったデータ件数が増えている・・・数字の違いについてご了承願いたい
・14名に対し実験を実施、データを得た
- ・被験者の基礎データはこのとおり
・人文社会系の学生が多い
・司書課程受講者が多いので読書量は全体に多めだが、図書館利用者は実は少ない
- ・14名全員が欲しい本1冊の選択に成功している
・選ばれた図書のジャンルは多様
・選ばれる市にはやや偏りがあり、4・2段目が多い
- ・ここで実験中、被験者が各セルをどの程度見ていたか、その時間と頻度を見てみると、
- ・結果はこのようになった。全員の値を平均化した上で、注視の多いセルは色を濃く示している
・選択図書は2段目右側と4段目左側に偏っていたが、注視頻度・時間には必ずしも同様の偏りは見られない。注視頻度、注視時間ともに1~3段目が高い傾向があり、4段目が最も少ない
・ただし、この結果の解釈には注意が必要
- ・あとで詳しくお話するが・・・被験者は1人を除き、まず排架図書の全体を見渡そうとし、その後で被験者によって特定の図書の間でどれを選択するか迷っていた
・注視が多い段はそこで悩み続けた被験者がいた段
・このような、欲しい本が複数あってそれらを見比べることによる注視の偏りは、本研究が目的とするブラウジング時の視線の動きを知る上ではノイズとなる
- ・そこで、被験者が書架全体を一覧する行動中に限って、各セルの注視頻度・注視時間の傾向を分析してみた。
・なお、被験者のうち1名は特に「まず全体を見渡す」という行為をしていなかったので、その分を除いた13名分の結果である
- ・この結果を見ると、特定の段への偏りが消えている
・時間について、2段目左がやや薄いが、これはここにシリーズものがあった影響のよう
・位置というよりは図書の影響。これは今後、排架図書を変えて検討してみたい
- ・注視頻度や時間にはこのように、はっきりした傾向はないが、一方で視線の動きについては全体に共通の傾向がある
・14名中13名が、まずは書架全体を端から見渡そうとし、その後であらためて図書の選択に移っている
・この全体を見渡そうとする際の動きにもっとも顕著な特徴がある
・先ほど来、この「全体を見渡す」動きについて、スライドのような図を示している
- ・しかし実際には、被験者の視線はこうは動かない
- ・被験者の大半、11名は実験開始後、まず最上段左上か右上を見る。左7名、右4名。特に利き目との関係は見られない
・その後、左上開始の場合は右へ、右上開始の場合は左へ視線が動く
・2名のみ、最上段の4・5の位置から開始。その後、どちらかへ移動
・1名は3段目から開始した。その被験者のみ、まず全体を見ることをしなかった。若干イレギュラーで、そういう人物もいる
・問題は、視線が端に到達したあとである
- ・当然といえば当然であるが、視線が一方の端に到達したあと、被験者の視線は一段下に下りる。それも一段、真下に下りる
・そこから今度は一段目と逆方向に視線が動き始める
- ・以下、同じようにジグザグになりつつも、
- ・4段目までこのように視線は動いていく
・全体を一覧する際の目の動きとして、この傾向は非常に顕著
・一覧行動を行った13名の被験者が、段を変える機会は39回ある。うち、2段続けて同じ方向に視線が移動したのは1名・1回のみ。その場合、被験者が最初の段を端まで見たあと、いったんその段の真中を見返していて、その勢いが次の段への視線移動を誘導していた
- ・もちろん、実際は皆がここまで直線的に動くわけではない
・中には本当に先の図のとおり、直線的に移動する人間もいたが、多くは一つの段の中でいったり来たりを繰り返す
・ある被験者の場合の視線移動を図にしたものがこちら・・・行く、戻る、行く、戻る、時々まっすぐ進む、の繰り返し
・ただし、全体としてはある段でどっちに進むかは決まっていて、大幅に、例えば端からいったん反対側に戻る、みたいなことはまずない
・唯一、その例外的な動きをしていたのは、全体を一覧せず3段目から書架を見始めた被験者。この被験者については詳細な要因を検討してみてもいいかも知れない
- ・以上の結果から最後に考察を述べたい
- ・本研究の結果のうち、最も特筆に値するのはこの一覧行動時の視線の動きである
・実験開始後、被験者全員がまず書架を一覧しようとし、その際には右上もしくは左上から、一段ずつを、基本的に一方向に視線を動かしながら閲覧する。ただし、段が変わると視線を動かす方向も変える
・これは視線移動の距離を最短にしようとした場合、当然とるべき視線の動きである。しかしこの視線の動きは、図書館、書店、あるいは多くの場合個人宅の書架における排架方法とは合致しないものである。
・一般に図書の排架順になんらかの順序がある場合、書架にはその順序に従って一方向排架され、段によって排架の方向を変えることはない。特定の図書を探す場合には視線を段に関わらず一方向に動かすことが想定されていると言えるが、本研究で行った実験のようなブラウジングの場合には、この想定とは異なる視線の動線を描くことがわかった。
・例えば請求記号順排架の場合、ある段の右端の図書に最も主題の近い図書が置かれるのは、その左側と一段下の左端であるが、このうち後者については、本実験のようなブラウジング時には、被験者にとって必ず一段分視線を動かした後に見る位置になるのである。
- ・ただし、本研究で行った実験はあくまで限定的な設定の下に行ったものであり、この結果は「排架順がわからない状態で、背表紙のみから、比較的時間をかけて、1冊の欲しい本を選ぶ場合」の利用者行動にのみあてはまるものである
・具体例としては、新幹線ホームのキオスクで、短時間でこれから読む本を選ばなければいけない、みたいなケースに該当する、かなり特殊な事態
・今後は・・・排架順を変える、例えば主題・著者順等の規則性がある排架との比較や、実験条件をさらに短くする、例えば10秒でぱっと見てくれといった場合どうなるか、あるいは何冊でも選んで良いと言ったらどうなるか、等を見ていくことを考えている
・また・・・ぶらぶら見て歩くのではなく、目当ての図書が決まっている場合どうなるのか、も気になる
・ちゃんと視線は一方向に動くのか否か?
・本研究で今後に続く、これらの実験の比較対象、ベースとなる結果を示したところにも大きな意義がある
- ・以上で発表を終わります、参照文献はこちらのとおりです
- ・なお、本研究は2つの科学研究費補助金の支援を受け、実施されたものです
- ・それでは、質疑のほど、よろしくお願いします