https://www.watney.co.jp/course?wix-vod-video-id=f7f7166ad78042ecafced2a2a617db99&wix-vod-comp-id=comp-jfnqv23o# イノベーションマネジメント/基礎科目 大阪大学 経済学研究科・経済学部　中川 功一准教授

1. イノベーション マネジメント
第4回
デザイン思考に基づく新製品・サービス開発
アイデアの発散と収束
中川功一
大阪大学大学院経済学研究科
Koichi NAKAGAWA
Graduate School of Economics, Osaka University

3. 本日のテーマ
発散と収束
よい製品・サービス、あるいはビジネスモデルのアイデアを鍛えるため
には、十分な発散と収束が必要不可欠。
多くの場合、アイデアをまとめることはさほど難しくないので、いかに
幅広い見地からアイデアを拾い集め、ベストを探索したか：発散の精神
と技術を持つことにポイントがある。
Divergence Convergence

4. 製品・サービスデザイン
基本フローの拡張と、発散・収束

5. 製品・サービスデザインの基本フロー：
3つのステップ（ふたたび再掲）
社会ニーズ
（社会的課題）
の理解
解決案の探索 「かたち」への実装
課題理解、解の探索、かたちへの実装というフローは
常に意識する

6. 実際のフロー
ニーズ→かたち化は「何度も繰り返され、鍛えられていく」
“Observation-Consideration-Prototypingのサイクル”
Observation：情報の収集。数量データ、文字データ、ビジュアルデータのすべてが大切。
オリジナルデータも、ノンオリジナルデータもどちらも使ってよい。
Consideration：情報の分析。情報収集とは意識的に別フェーズであると考えて取り組むとよい。
Prototyping：「仮説構築」。具体的なモノ・システム・サービスを作ってみるだけでなく、
「○○機能が求められるはずだ」「○○円なら需要があるはずだ」という文章もまたプロトタイプ
Observation
情報収集
Consideration
分析考察
Prototyping
仮説構築

7. 各サイクルの中で“発散と収束”を
繰り返す
Points.
・プロジェクトでは最初から収束を狙いすぎない。こころがけてアイデア
を広く探し、多面的に検討する。
・ただし、いつまでも発散の可能性を残しすぎない。各フェーズに対して、
デッドラインを設けておく。
・そして、チーム内で、いまは「発散しているとき」なのか「収束してい
るとき」なのかを共有しておく。
Divergence Convergence

8. 発散の技法(1)
リードユーザー法

9. 現代の価値観＝常識では理解できない、
先端的なユーザー（リードユーザー）から、
未来のヒントをもらう
現代の価値観でしかものを見ないから、アイデアが硬直する。
自分（常識）では理解できないものこそが、可能性を広げてくれる
新奇なアイデアの源泉である。

10. 現代の常識は、未来の非常識
フォーマルな場でネクタイは必須
服は手で取って、試着して買う
茶髪で精悍な顔立ちがイケメン
育児は女性の仕事
運動中の水分補給は体に悪い
海外拠点でトラブルがあったので
海外出張
数年前までの常識
ノータイ・開襟でOK
服はインターネット通販で買う
黒髪・優しく整った顔がイケメン
育児は夫婦の仕事
運動中の水分補給は必須
海外拠点でトラブルがあったので
スカイプ会議
現代の常識
この「常識」の変化によって、多数のビジネスが衰退し、一方
で多数の新興ビジネスが生まれた：現代の常識に沿って事業案
を考えることは、かくも危険

11. 非常識＝未来の常識を探せ！

12. イッちゃってる人たちが、確かに未来を拓いてきたのだ

13. リードユーザー分析 実践方法
１．「自分には価値（良さ）がわからないもの」あるいは「人には理解して
もらえない、自分だけの価値観や趣味など」を探す。それはつまり、現
代人の価値観では測れない、未来の可能性だ。
２．そこに潜んでいる「未来の常識」は何なのかを考える。もし今から5
年後-10年後にはそれが常識になっているとしたら、どういう形で世の
中に出回っているのだろうか。

19. 演習 リードユーザー分析
「自分には価値がわからないもの」「人には
理解してもらえない、自分の価値観・趣味」
を議論する中から、未来の商品・サービスを
発見してください。

20. Study
イノベーターに必要なことは、新規なものへの
「受容性（理解しようとする精神）」である

21. 発散の技法(2)
強制連想法

22. 強制連想法
• 飛躍のあるお題を脳に与えることで、文字通り、無理やりにで
も新しい発想をひねり出してやろうという方法。
• 脳とは単なる「ハードディスクドライブ」「情報のタンス」で
あり、ひらめきとは、引き出された情報のユニークなつながり
であるという脳科学の研究成果に基づく。要するに、無理やり
2種類の異質な情報を組み合わせれば、ランダムな思考をする
よりも高い確率で突飛なアイデアを得られるわけ。
• 簡単でいて成果を得やすい、思考柔軟化の便利ツール。
※さまざまな方法があるなかで、本日は「掛け算思考」「逆転の発想」を紹介します。

23. 脳は引き出しである
しっかりと基本知識を「引き出し」に蓄積し、それを状況
に合わせて引き出し、新しい結合を生みだす訓練が大切
モザイク脳モデル
かつて脳科学分野では、創造的な右脳／分析的な左脳という
考え方が支配的であった。
2000年にノーベル生理学・医学賞に輝いたカンデルは、右脳
左脳モデルを覆し、脳には知的記憶や処理能力がモザイク状
に散らばっていることを明らかにした。
そして、知的記憶や処理能力が新しい結びつきをしたときに、
ひらめき（応用）が生まれるとした。
→応用のためには基本知識の蓄積こそがカギ

24. 掛け算思考
アイドル × メタル ＝ BABYMETAL
地域振興 × 恋愛 ＝ 街コン
戦車 × 女子高生 ＝ ガルパン
フライドポテト× 日本式そば ＝ ポテそば

25. 関連手法「逆転の発想」
既存のものの常識を問う
• 「方法」ではなく「結果」を提供するサービス
→RIZAP
• 「フォーマル」ではなく「リラックス」した高級料理
→俺のフレンチ
• 「オフィス」ではなく「屋外」で使うPC
→Let’s note
• 速さ・燃費を「追求しない」バイク
→ハーレー
• 「中高年男性」ではなく「若い女性」に
→カープ女子、ゴルフ合コン、プロレス女子

26. 演習 掛け算思考、逆転の発想
「○○ × ●● = ？」ないしは「逆転の発想」で、新し
い交通手段サービスを提案してください。
掛け算思考のやりかた
1) 前のボックスに入れるものとして、乗り物や交通手段を5-6個ほど。これは簡単。
2) 後ろのボックスには、交通手段と掛け算をして面白そうなテーマを1つ決めるとこ
ろから（けっこう、ここが勝負）。そのテーマに沿ってワードをいくつか準備する。
3) さあ、掛け算してみよう！

27. まとめ
「わざ」は、
たくさん持っていたほうがよい。
と同時に、
「わざ」の背後にある理論を理解しておこう。