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柴山自然公園(台湾:高雄市)の学校教育活動への活用
- 2. ここの自然環境の特徴は,
・ 熱帯の植生
・ 珊瑚礁の隆起した土地
熱帯地方でもあるので危険な昆虫から
・ 蝶・鳥・猿のありのままの姿
の身を守る注意も喚起され,安全な健
・ その他
康づくりを支えている。
これらが、凝縮した形で存在している。
い
て
い
る
様
子
も
観
察
で
き
る
。
熱
帯
地
方
の
花
が
色
鮮
や
か
に
咲
自然を荒らさぬよう木道を整備し,老若男女
木道を尐しはずれると,このように,珊
を問わず健康づくりに励むことができるよ
瑚が隆起した地肌が露出している。ここ
うになっている。
が元々は海底だったことがわかる。
野生の猿は保護されているが,えさを
与えると罰金が科せられる。生態系を
壊さないための厳しい制限である。
2
- 4. ある梅の花の 5 枚の花弁には「行政・立法・司法・考試・監察」の 5 つの意味があり,3 つの
おしべには「民族・民権・民生」の三民主義の意味が込められていることを学ばせた。これら
は,単なる自然比較だけでなく,異文化理解・文化比較を深めることにもつながった。
以下の表は,生徒への事前アンケートによる意識調査結果である。
1 日本の花と言えば
3 日本の昆虫と言えば
(日本語)
(中国語)
(日本語)
(中国語)
1位
桜
櫻花
1位
かぶとむし
甲蟲
2位
梅
梅花
2位
せみ
蟬
3位
つばき
杜鵑花
3位
くわがた
鋤形甲蟲
2 日本の樹木と言えば
4 日本の自然と言えば
(日本語)
(中国語)
(日本語)
(中国語)
1位
桜
櫻樹
1位
山:富士山
富士山
2位
松
松樹
2位
海:沖縄の海
沖繩海邊
3位
杉
杉樹
3位
山:白神山地
白神山地
(4) 現地の小学校・中学校・高等学校への「柴山」活用の聞き取り調査
① 柴山の自然の授業活用(小学校&中学校)
科学的思考を深めるには,小・中学校の頃から直接経験をさせ,実際に五感を働かせて学習
する機会がとても大切である。高雄市民の憩いの場所であり身近な公園でもある「柴山」が,
どのように学校教育に生かされているか,アンケート調査した。
小学校の授業で扱われる教材
柴山の植物
柴山の昆虫
無患子
學名:Sapindus mukorossi,
和名:ムクロジ
咬人狗
學名: Laportea pterostigma Wedd.
和名:ムカゴイラクサ
銀合歡 銀合歡
學名:Leucaena leucocephala
和名:ギンゴウカン
相思樹 常綠中喬木
學名: Acacia confusa Merr.
和名:ソウシジュ
榕樹
學名:Ficus microcarpa L.f.
和名:ガジュマル
など
黄裳鳳蝶
學名: Troides aeacus kaguya
(Nakahara & Esaki)
和名: キシタアゲハ
小紫斑蝶
4
中学校の授業で扱われる教材
月橘
學名:Murraya paniculata Jack.
和名:ゲッキツ
黄連木
學名: Pistacia chinensis Bunge
和名:カイノキ
稜果榕
學名:Ficus septica Burm.
和名:オオバイヌビワ
山棕
學名:Arenga engleri Beccari
和名:クロツグ
黄荊
學名:Vitex negundo L.
和名:タイワンニンジンボク
台灣山柑仔
學名:Capparis micracantha
和名:トゲフウチョウボク
など
二星龜金花蟲
學名: Thlaspida cribrosa
和名:イチモンジカメノコハムシ
小灰蝶
學名:Jamides alecto dromicus
- 5. 學名:Euploea tulliolus koxinga
和名:ルリマダラ
桑天牛
學名: Apriona germari Hope
和名:カミキリムシ
台灣角金龜
學名:Dicranocephalus bourgoini
Pouillaude
和名:タイワンカメムシ
など
和名:シロウラナミシジミ
波紋小灰蝶
學名:Lampides boeticus
和名:ウラナミシジミ
黄帶枯葉蝶
學名:Yoma sabina podium Tsukada
和名:キオビコノハ
など
臺灣獼猴
學名:Macaca cyclopis Macaca
和名:タイワンザル
臺灣獼猴
學名:Macaca cyclopis Macaca
和名:タイワンザル
赤腹松鼠
學名:Callosciurus erythraeus
和名:クリハラリス
山羌
學名: Muntiacus reevesii micrurus
和名:タイワンクサガメキョン
白鼻心
學名:Paguma larvata taivana (Swinhoe)
和名:ハクビシン
など
など
柴山の動物
柴山の地形
石灰岩地形
珊瑚礁,石灰岩,
經蓬莱期造山活動(2400 万年~2200 万
年前)及海蝕作用形成
柴山の地質
石灰岩質
鍾乳石,石筍,石桂
造山活動
柴山の岩石
石灰岩
砂岩,石灰岩,泥岩
その他
なし
なし
このように,柴山は,小中学校の授業に,
「柴山」に生息する多くの植物・昆虫・動物が活
用されていることがわかった。植物の種類を見ると,全て熱帯の植物である。日本の植物との
比較も興味深い。また,昆虫に於いては,
『蝶の宝庫』と呼ばれる台湾だけに蝶の学習に力を
入れていることがわかる。また,柴山に生息する猿(臺灣獼猴)は小学校・中学校を通じて学
習しており,猿の生態だけでなくその保護に関わる学習も行われている。
柴山そのものは,珊瑚礁が隆起してできている。その浸食の度合いもかなりであり,奇形・
奇岩の様子を見せている箇所も尐なくない。台湾第 2 の大都市でありながら,地形や地質など
の学習教材が身近にあることは,大変恵まれていると言ってよい。
② 小学校・中学校の教育課程への「理科」の位置づけ
生物・地学学習の材料が豊富にあるため,自然科学の探究に適した環境にあり,それを教育
課程に位置づけている高雄市の教育は素晴らしいと感じた。
以下に提示した,台湾高雄市立小学校の 6 年生の時間割(サンプル)を見ると,日本の「理
科」にあたる授業「自然與生活科技 Science」は週 4 時間配当されている。これは,日本国内
5
- 6. の「理科」週 3 時間配当と比較すると,量的にも豊富に学習が進められていると言える。
また,その指導者は学級担任ではなく,理科の専科教員である。専門性を生かし,充実した
指導を推進していることが理解できる。専科教員は理科だけなく,英語・社会・音楽・図工・
体育・郷土語言(台湾語・客家語・原住民語),資訊教育(IT 学習)も,専科教員による授業
となっている。
星期一
(月)
時刻
星期二
(火)
7:30~7:50
星期三
(水)
上
晨
7:50-8:10
7:40~8:10
生活指導
間
教師晨會
8:10-8:30
學
星期四
(木)
中高升旗
時
生活指導
間
打
星期五
(金)
掃
教師晨會
全校升旗
8:30-8;50
導
生活指導
師
時
間
8:50~9:30
1
彈性學習節
數
數學
語文 - 國語
語文 - 國語
社會
9:40~10:20
2
語文 - 國語
語文
– 鄉土語言
數學
語文 –英語
社會
10:30~11:10
3
語文 - 國語
健康與體育
(體)
彈性學習節
數
自然與生活
科技 Science
藝術與人文
(音)
11:20:12:00
4
語文 –英語
語文 - 國語
資訊教育
自然與生活
科技 Science
語文 - 國語
藝術與人文
(美)
健康與體育
(健)
藝術與人文
(美)
數學
綜合活動
健康與體育
(體)
12:00~12:40
12:40~13:20
13:20-13:40
午
午
13:40~14:20
5
社會
自然與生活
科技 Science
14:30~15:10
6
數學
自然與生活
科技 Science
15:20~16:00
7
綜合活動
餐
時
午間靜息
間
打
綜合活動
教
師
進
修
間
掃
③ 高雄高中(現地の高等学校)への視察
台湾の中でも最も優秀な学生が集まる高等学校のひとつ「高雄高中」へ視察に行った。そこ
では,化学実験の授業を参観できた。内容は,小グループに分かれて,タンパク質を分解する
実験を行っていた。理論科学面だけでなく実験科学の分野にも力を入れ,科学的リテラシーを
向上させる取り組みが充実している様
子がうかがえた。台湾高雄の教育予算の
充実ぶりやそれを確保しながらさらに
優秀な人材を育てている姿に感心した。
柴山等の自然の教育的活用について
は,クラブ活動の一環として環境調査を
進めているとの報告があった。高等学校
まで進めば,身近な自然を学習する段階
から,さらに大きな環境問題についての
追究へと高度な内容に発展する様子を
感じた。
④ 高雄日本人学校小学部遠足,小学部野外活動
6
高雄高中での化学実験風景
- 7. 高雄日本人学校においては,小学部の歓迎遠足(学校行事)でこの寿山・柴山を目的地にし,教
育への有効活用を試みることもある。
また,平成 20 年度の小学部宿泊学習では,柴山登山をスケジュールに組み込んだ。台風の影響
で 2 月に延期となったが,高雄市内の自然観察や野外活動には非常に身近な存在のひとつである
といえる。
以下に児童の感想を紹介する。
「坂や階段がたくさんあるから大変でした。
山頂に着いたら高雄の町や台湾海峡が見えて,
景色が
とても綺麗でした。「最初は楽に登れると思ったけど,サルがいるしたくさんの階段があって,自
」
然の厳しさを山の中で知りました。「最初想像していた山
」
宿
泊
学
習
で
の
柴
山
登
山
とは違っていました。でこぼこもたくさんあるし,ほらあ
なのような所もありました。先生に,サンゴでできている
山だと聞いて,もとは海だったんだとわかって,びっくり
しました。「私でも登るのはつらかったのに,私達より年
」
上の人が当たり前のことをしているかのようにすいすい登
っていったのでスゴイと思いました。「ところどころ,家
」
族や友達とお茶を飲んでいる人たちがいて,のんびりして
過ごしているんだなあと思いました。
」
このように,高雄日本人学校では,台湾文化に触れ学ぶ
機会をとらえて,計画的に教育課程を編成している。
(5) 成果
① 3 年間で約 60 回の柴山現地調査,台湾各地 7 回の現地調査の結果,教育活動に活用できるも
のを見いだした。また,現地の小学校・中学校・高等学校など,学校教育においても教育課
程にきちんと位置づけられ,大都市でありながら地元の自然を活用して,自然科学の学習の
積み上げがなされていることが理解できた。
② 日本での飼育栽培学習に関して,実際に児童生徒と共に行うことで季節のズレを実感するこ
とができた。また,夏至の時期には南中高度が 90 度を超え北中することも児童生徒ととも
に確認し,天体の動きの神秘に迫ることができた。このように,台湾の言語や習慣などの異
文化理解だけでなく,自然科学の面からも異文化理解を深めることができた。
③ 柴山は,自然観察・探求活動等の科学的学習への活用だけでなく,台湾高雄市民の健康づく
り・コミュニティーづくりとしての役割を果たしているという社会科学習への活用も大切で
あることが理解できた。
(6) 課題
① 在外教育施設に於いて,自然観察や地元市民の暮らしを間近に感じることのできる場所を確
保することは,とても困難である。しかし,この台湾高雄市に於いては「柴山」という自然
公園があり親しみを持って保護されている。この環境を活用し,自然科学・社会科学両面か
らアプローチできるカリキュラムを開発することにより,より一層,異文化理解が深められ
学習の充実がなされることが大切である。
② 台湾地元の各学校に於いては,幼稚園・小学校・中学校・高校の連続性を視野に入れ,地域
教材をカリキュラムに位置づけるような運営や組織づくりが行われており,今後の交流活動
の広がりが楽しみである。
③ 日本国内に目を向けると,都市部の学校では,自然観察や直接体験を豊富に行うことが困難
7
- 8. な地域がある。地域ぐるみで,憩いの公園やビオトープなどを整備し,高雄市のように世代
を越えて老若男女が集うことのできる場をつくりあげていく努力が必要だと感じた。
※資料 1・・・現地調査の記録
H19.04.15 柴山・・・・・第 1 回現地調査
05.19
柴山・・・・・第 2 回現地調査
05.13
柴山・・・・・第 3 回現地調査
05.26
柴山・・・・・第 4 回現地調査
07.08
柴山・・・・・第 5 回現地調査
07.21
柴山・・・・・第 6 回現地調査
07.22
天通山・・・・・現地調査
07.26~27 阿里山・・・・・現地調査
08.06
柴山・・・・・第 7 回現地調査
08.17
半塀山・・・・・現地調査
09.02
柴山・・・・・第 8 回現地調査
09.09
牯嶺山・・・・・現地調査
09.27
柴山・・・・・第 9 回現地調査
10.20
柴山・・・・・第 10 回現地調査
11.11
柴山・・・・・第 11 回現地調査
12.08
柴山・・・・・第 12 回現地調査
12.21
鹽埕國中との交流授業(理科)
12.22
柴山・・・・・第 13 回現地調査
H20.01.05 柴山・・・・・第 14 回現地調査
02.10
柴山・・・・・第 15 回現地調査
03.24
柴山・・・・・第 16 回現地調査
03.25
柴山・・・・・第 17 回現地調査
03.28~30 雪山・・・・・現地調査
04.06
柴山・・・・・第 18 回現地調査
04.19
柴山・・・・・第 19 回現地調査
05.04
柴山・・・・・第 20 回現地調査
05.18
柴山・・・・・第 21 回現地調査
05.25
柴山・・・・・第 22 回現地調査
06.09
柴山・・・・・第 23 回現地調査
06.21
柴山・・・・・第 24 回現地調査
07.06
柴山・・・・・第 25 回現地調査
07.20
柴山・・・・・第 26 回現地調査
08.03
柴山・・・・・第 27 回現地調査
08.07
08.08
08.10
08.12~14
09.21
10.18
11.15
12.21
12.28
H21.01.18
01.24
02.14
02.21
03.01
03.14
03.21
03.28
04.11
04.25
05.10
05.23
06.06
06.20
07.04
07.18
08.29
09.19
10.03
10.17
11.07
11.28
12.12
H22.01.09
柴山・・・・・第 28 回現地調査
柴山・・・・・第 29 回現地調査
柴山・・・・・第 30 回現地調査
玉山・・・・・現地調査
柴山・・・・・第 31 回現地調査
柴山・・・・・第 32 回現地調査
柴山・・・・・第 33 回現地調査
柴山・・・・・第 34 回現地調査
高雄高中(高等学校)への視察
柴山・・・・・第 35 回現地調査
陽明山・・・・・現地調査
柴山・・・・・第 36 回現地調査
柴山・・・・・第 37 回現地調査
柴山・・・・・第 38 回現地調査
柴山・・・・・第 39 回現地調査
柴山・・・・・第 40 回現地調査
柴山・・・・・第 41 回現地調査
柴山・・・・・第 42 回現地調査
柴山・・・・・第 43 回現地調査
柴山・・・・・第 44 回現地調査
柴山・・・・・第 45 回現地調査
柴山・・・・・第 46 回現地調査
柴山・・・・・第 47 回現地調査
柴山・・・・・第 48 回現地調査
柴山・・・・・第 49 回現地調査
柴山・・・・・第 50 回現地調査
柴山・・・・・第 51 回現地調査
柴山・・・・・第 52 回現地調査
柴山・・・・・第 53 回現地調査
柴山・・・・・第 54 回現地調査
柴山・・・・・第 55 回現地調査
柴山・・・・・第 56 回現地調査
柴山・・・・・第 57 回現地調査
銘茶で有名な台湾高雄では,柴山自然公園に「泡茶(台湾式お茶)」
を持参して,家族・友人・同僚たちと楽しく時間を過ごすことが多い。
そのため,ヤカンやガスボンベを担いで訪れる市民も多い。
※資料2・・・柴山自然公園に集う人たち
の
で
あ
る
。
い
は
,
す
べ
て
ボ
ラ
ン
テ
ィ
ア
に
よ
る
も
柴
山
自
然
公
園
内
の
お
茶
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ふ
る
ま
8