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生態系の概念・要素をメタファとして用いた

オープン化をともなうクリエイションの系の考察
ADADA Japan 学術大会 2015 (2015 / 8) 

⚪ 九州大学 / 山口情報芸術センター[YCAM] 坂井洋右
山口情報芸術センター [YCAM] 伊藤隆之
山口情報芸術センター [YCAM] 菅沼 聖
山口情報芸術センター [YCAM] 西 翼
九州大学  富松潔
3
メディアアートに特化したアートセンター
‣ 研究開発チーム YCAM InterLab
www.ycam.jp
[自己紹介] 山口情報芸術センター [YCAM]
5
成果をどう展開?
どんなクリエイションプロセス?
www.ycam.jp
[自己紹介] 山口情報芸術センター [YCAM]
6
7
背景
8
・Reactor for Awareness in Motion (RAM) (後期) (2014)
・Forest Symphony (2013)
・YCAMサマースクール (2013)
・YCAMサマースクールでの成果公開の同意書 (2013)
・Reactor for Awareness in Motion (RAM) (前期) (2013)
・GRP Contract Form (2013)
・Guest Research Project vol.2 (2012)
・EyeWriter 2.0 のつくりかた (2012)
・Guest Research Project vol.1 (2011)
・Choreography filmed: 5days of movement (2011)
山口情報芸術センター[YCAM]におけるオープン化の事例

http://interlab.ycam.jp/projects/open-publication
(メディア技術,コンテンツ,契約関連ドキュメント,ワークショップ)
9
成果のオープン化を伴うクリエイション(YCAM)
ofxTimeline、Duration
リアルタイム処理を行うシステムを、タイムラインでコントロールするライブラリ、ソフトウェア
http://interlab.ycam.jp/projects/guestresearch/vol2
Guest Research Project vol.2 (2012)
10
Blaus (Playmodes)
Laser beams, light and sound installation ¦ VAD Festival ¦ Girona ¦ 2012
HONORARY MENTION, PRIX ARS ELECTRONICA 2013
http://playmodes.com
キラキラウィンターファーム2012
(Rhizomatiks)
Switch No2 vol31, 2013
Guest Research Project vol.2 (2012)
11
・知財リスク検討(特許)
[背景] ツールの設計・課題の検討
オープン化の仕様の検討
経営方針・プロジェクト目的との整合確認
波及オープン化の実施
・共同研究開発契約書のひながた
GRP Contract Form
・オープン化のガイドライン
コンセンサス(共同研究開発者など)
リスク検討(知財)
メタデザインのオープン化
12
成果のオープン化を伴うクリエイション
13
14
[目的] オープン・クリエイション系のモデル
メタファが便利?
・どのように要素が影響し合うのか知りたい
・アイディアを効果的に伝えたい
成果のオープン化を伴うクリエイション
>
>
の系
15
16
メタファ = 隠喩
[背景] メタファ
17
メタファ = 隠喩
[背景] メタファ
“レンダリング地獄”
“地獄の開発”
18
メタファ = 隠喩
[背景] メタファ
性質を端的に伝える
地獄と開発
ゴミ箱とフォルダ
(直喩でもいいけど?)
「別の世界の概念」 > つなげる)
19
オープン・クリエイション系
(成果のオープン化を伴うクリエイションの系)
と生態系
20
[生態系の概念]A summary of energy flow and matter recycling in ecosystems
John W. Christensen: Global Science Forth Edition,
Kendall/Hunt Publishing Company, pp.20 (1996).
多様な要素
食物連鎖
物質循環
21
→ 共通点が多い → 連想しやすい → さらなる広がり
生態系とオープン・クリエイション系
多様な要素:
生産者、消費者、分解者、無機物、エネルギー
オリジナルのクリエータ、ユーザ、n次クリエータ、成果
サイクルとフロー:
物質循環、食物連鎖、エネルギーのフロー
クリエイションのサイクル、フィードバック
場所が存在する:
ビオトープ
コミュニティ、ギャザリング、マーケット、展示・発表
オープンな系:
物質やエネルギーのフローは系を超えて出入りしうる
成果やステークホルダーなどの要素が系を超えて出入りしうる
22
目的と方法
23
オープン・クリエイション系の概念を表現するのに
生態系の概念を、メタファとして用いてみる
・どのように要素が影響し合うのか知りたい
・アイディアを効果的に伝えたい
生
オ
24
結果
25
[メタファ]生態系の概念・要素をメタファとして用いた例
概念 メタファを用いた表現
食物連鎖 開発者は 生産者 ,ユーザは 消費者 ,派生物の開発者は 分解者 と次の 生産者 である.
物質循環 成果物は開発者からユーザのもとに流出し,利用され,適切な循環環境があればフィードバックが開発者のもとに
戻ってくる( 自然生態系 , 都市生態系 ).
エネルギー供給(太陽光)
連鎖や循環はユーザや開発者の エネルギー が投入されることで持続する.成果のメンテナンスやアップデート,
コミュニティサポートではこうした エネルギー が必要とされる.第三者がボランタリーかつ継続的にこうした活
動にエネルギーを投入してくれることが理想的である.予算を準備し,スタッフを確保するのも エネルギー 供給
の選択肢となる.
遷移
サイクルが進むにつれて,また社会的状況の変化を受け,大きな構成の変化,たとえばビジネスモデルの転換とい
う 遷移 が起き得る.
開放系
こうした生態系は,成果やエネルギーのI/Oが閉じておらず,成果が属する生態系だけではなく,他の生態系とつな
がり得る 開放系 である.
動的平衡 適切な環境があれば,開発者やユーザが入れ替わりつつ循環が維持される 動的平衡 が保たれる.
個体群/群集
開発者やユーザのグループは 個体群 ,それらを合わせ 群集 となる.相互作用が系の維持や発展に大きな意味を持
つ.
多様性/緩衝 成果や構成メンバーに,十分なストック・多様性があれば,環境変化に対応しやすい.
進化 成果が 進化 するためには,(それを助ける要素だけでなく)問題の発見という環境変化が役立ち得る.
ビオトープ
コミュニティーは開発者やユーザが 生息 し,プロジェクトの成長の為の ポジティブフィードバック や適切な開
発の為の ネガティブフィードバック , 動的平衡 が行われる ビオトープ (生息空間) である.
26
[メタファ]例:食物連鎖
開発者(クリエータ)は 生産者
ユーザは 消費者
派生物の開発者(n次クリエータ)は 分解者 であり 生産者
である.
派生物の開発者は、生産者と思いきや、分解者でもある
オリジナルの成果について、個別の要素を分けて理解し
必要な要素を用いて次の成果を生産する
だから分解者でもある
> 分解しやすいように、理解を促すドキュメント、モジュール化などが大切
27
[メタファ]例:開放系
オープン・クリエイション系は,
成果やエネルギーのI/Oが閉じておらず,
成果が属する系だけではなく,
他の系とつながり得る 開放系 であるべき.
開放系であることで、他分野とのつながりを得ることで
プロジェクトをさらに成長するよう工夫すべき
考察
28
29
[考察]メタファーの有効性
(本研究の結果)


クリエイションプロセスの理解を深める

思考を広げる
アイディアの共有、ブラッシュアップ


(一般論として)


他の領域の知識を大切にする、活かすことの実践
T型、Π型
>> クリエイション、教育
事例 / 今後の展開
30
31
[今後の展開] オープン化のガイドライン 2.0
開放系をデザインする
ここでいう開放系のデザインとは、物質やエネル
ギーのInout/Outputが閉じていないということに
加えて、他の系とつながることができるような環
境を設計する、ということを指します。成果が属
する分野だけではなく、他領域(他の系)とつながる
ことで、思いがけない相乗効果、突然変異が生ま
れるかもしれません。
オ
クリエイティビティを向上すること
運営方針とゴールを確認する
同意を取ること
オープン化を伴うクリエイションの系のデザイン
成果のユーザビリティ向上
参加しやすくする
適切なオープン化を
32
・「オープン・クリエイション系のモデル」
[今後の展開] オープン・クリエイション系のモデル、アートプロジェクト
・どのように要素が影響し合うのか
・よりクリエイティビティを高める
系やプロセスのデザイン
・アートプロジェクトのコンセプト
ご清聴ありがとうございました
生態系の概念・要素をメタファとして用いた

オープン化をともなうクリエイションの系の考察
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