看護小規模多機能型居宅介護における、 看取り支援の在り方について ～事例を通して、サービスの特徴を活かした取り組みから考察する～ 医療法人社団プラタナス　ナースケア・リビング世田谷中町 大場　哲也

1. 看護小規模多機能型居宅介護における、
看取り支援の在り方について
～事例を通して、サービスの特徴を活かした
取り組みから考察する～
医療法人社団プラタナス ナースケア・リビング世田谷中町
大場 哲也

2. 人生の最終段階の過ごし方について
医療機関
9%
緩和ケア病棟
18%
自宅（必要に
なれば医療
機関）
23%
自宅（必要に
なれば緩和ケ
ア病棟）
29%
自宅
11%
専門的医療
機関
3%
その他
7%
＜終末期の療養場所に関する希望＞ ＜自宅で最期まで療養することが困難な理由＞
①介護してくれる家族に負担がかかる。
②病状が急変した時の対応に不安がある。
③症状急変時すぐに入院できるか不安である。
④経済的に負担が大きい。
⑤往診してくれる医師がいない
⑥訪問看護体制が整っていない自宅を希望した割合は1割であったが、
自宅で療養して、必要になれば医療機関
等を利用したい割合を合わせると、約6割
は自宅での療養を希望している。
参考）終末期医療に関する調査

3. 在宅生活を支える為の、新しい形の介護サービス。
看護と介護が一体となり取り組むサービスである。
まさに命と暮らしを支えていくための仕組みである。
看護小規模多機能型居宅介護サービスとは
＜サービスイメージ （ナースケア・リビング世田谷中町より）＞

4. ＜在宅で暮らし続ける為のサポート体制＞
ナースケア・リビング世田谷中町での連携
松原アーバンクリニック
（有床診療所）
ご本人
地域の事業所
（調剤薬局、福祉用具、配食など）
桜新町アーバンクリニック
（訪問診療）
家族や友人
ナースケア・リビング世田谷中町
・介護職員 ・栄養士
・看護職員 ・作業療法士
・ケアマネジャー ・セラピー犬

5. ・平成29年5月 ～ 平成30年3月現在
ナースケア・リビング世田谷中町での看取り
Ｎｏ． 利用者 要介護度 疾患 医療対応
本人又は
家族の希望
看取りの場所
１ Ａさん ４ 左腎細胞癌 自宅or事業所 事業所
２ Ｂさん ４ 上行結腸癌末期
人工肛門・小腸スト
マ・尿道カテーテル
自宅or事業所 自宅
３ Ｃさん ４ パーキンソン病 吸引 施設入居 自宅
４ Ｄさん ４ 慢性心不全 在宅酸素 事業所 自宅
５ Ｅさん ５ 自宅 自宅
６ Ｆさん ５ 左側頭葉神経膠
芽腫
吸引 病院or事業所 自宅
７ Ｇさん ５ 中咽頭癌末期
胃瘻・吸引
仙骨部褥瘡
病院 事業所

6. 事例を通して ～Ｆさんのケース～
ナースケア・リビング世田谷中町
●定期的な通い対応と家族の状
況に応じた泊まり利用。
●訪問看護師による、身体状況
の説明。状態変化の共有。
●家族との関係構築により、気
軽にこれからの事を話す事が出
来るようになった。
●事業所に対する安心感と介護
に対して自信が持てるようになっ
た。
本人
自己表現が
困難になっ
ており、
聞き取るこ
とが出来な
かった。
家族
このまま看る
事に自信も
なく、不安が
ある。いずれ
は病院にお
願いしたい。
支援
結
果
共に介護に参加してくれるようになった事で、不安が解消し、負担だった
介護に楽しみを持つことが出来た。その後、本人の状態は徐々に低下し
ていったが、周囲の支えもあって自宅で最期を迎える事が出来た。
呉服屋を営んでいた頃のお気に入りを身に付け、家族とのお別れをした。
＜要介護5 左側頭葉神経膠芽腫 ＫＰ娘＞

7. 事例を通して ～Ｇさんのケース～
ナースケア・リビング世田谷中町
●泊まりを中心に、家族の介護
負担の軽減を図る。急な依頼に
も対応する。
●医師・看護師と連携し、本人
希望のお汁粉が提供できた。
●本人の状態変化にあわせて
妻の気持ちも揺れ動いていたが、
お互いの気持に寄り添う働きか
けを行った。
●本人が、また行きたい場所、
と思ってくれるようになった。
本人
家が一番良
いよ。最期
は家だね。
なんとなか
なるよ。
家族
私も具合が
悪いから大
変なの。介護
できるか不安
だわ。
支援
結
果
本人の思いを実現する為には、妻の心身の負担が大きい現状があった。
介護負担軽減の為泊まりを繰り返していたが、次第に本人が“お風呂に入れる”“お汁粉が
食べられる”と事業所を気に入ってくれるようになった。
本人の状態と妻の介護が限界となった時、選択肢は病院ではなく事業所であった。
本人・家族共に、自発的に私達の事業所を人生の最終段階の場所として選択してくれた。
＜要介護5 中咽頭癌末期（胃瘻） ＫＰ妻＞

8. 有用性
事例を通して、有用性と課題
●本人・家族・支援者が同じ立場と
なり、最期の瞬間をどこで・どのよう
に迎えるかを考える事が出来る。
●それは、最期の瞬間まで地域の
一員として生きてきた証である。
●最期の場所を考えるにあたり、多
様な選択肢を作る事ができる。
●従来の介護サービスの様に縛ら
れる事なく支援を行う事が出来る。
課題
●利用定員
通いや宿泊ニーズが多く出た場合、
事業所の規模によっては応えること
が難しい。
●人員配置
訪問体制が手厚いとは言えない為、
頻回な訪問ニーズの対応が難しい。
●設備
普段から、療養環境整備や負担なく
移送を行う為の準備が必要。
看護小規模多機能型居宅介護では、広い視野で支援を行う事が出来る
が、万能に行えるという意味ではない事を自覚しなければいけない。
＜看護小規模多機能型居宅介護を利用する事による＞

9. ★看護と介護の連携がある事で、本人・家族は
多大な安心感を持つことが出来た。
★在宅生活継続の為にも、暮らしを共にしている
家族の気持ちも支えていく事が重要。
★多職種での一体的なアセスメントが行える事
で、変化する状態を適切に把握出来た。
★方針変更に伴う臨機応変なサービス変更が行
えることは、最大の強みであった。
★看取りの場所を限定しないことで、結果的に自
宅で最期を迎えるゆとりを持つことが出来た。
考察