以下は卒論の要旨です。
1、目的
本研究は、LGBTブームが起きたとされる“2012 年”以前と以後の地上波ドラマにおける性的マイノリティ(主として男性同性愛者)の描かれ方や設定を比較し、その「変化」と「課題」を明らかにすることを目的としている。
2、方法
本研究では両者を明らかにするために、①作品を 2000 年〜2011 年と 2012 年〜2021 年に分けた年表の作成、②ドラマの内容に関する調査(2000 年代のドラマに 見られた 4 つのパターンと比較する)、③当事者調査(インターネット上の当事者の 語りをまとめる)の 3 つの調査を行い、それぞれの分析を行った。
3、結果
①の年表から、変化に関しては作品数の増加や描かれる性的マイノリティの多様化、当事者の関わりがより推進されている等の結果が、課題に関しては描かれる性 的マイノリティの中に偏りがあるという結果が得られた。②のドラマ分析からは変化として、2012 年以前に見られた 4 つのステレオタイプ的なパターンを克服してお り、よりリアルな同性愛者像になってきたのではないかという結果が得られた。③の当事者の語りからは、②のリアルな同性愛者像になってきたという裏付けが得られ、課題に関しては『性を排除』することで異性愛者に「受け入れられやすい」同 性カップルのみが描かれるという指摘や、ポジティブに描かれるドラマと人権が保障されない現実とのギャップに『消費されている』と感じることもあるということ、 ドラマ外のメディアにおいて依然偏見に晒されているという結果が得られた。
4、考察
それぞれの結論から、当事者の介入や発信が大きな要因となり、近年の性的マイノリティが登場するドラマは表象と設定に関して 2012 年以前と比べて確実に変化があることが判明した。そして、地上波ドラマという場が多様な議論が存在する社 会的な場となっており、その中で原作やドラマ制作に関わる当事者とインターネッ ト上で評価する当事者の「当事者」と「作品」の両者で「相互のコミュニケーショ ン」が発生することで意識が擦り合わされ、地上波ドラマが現実の男性同性愛者とフィクションを繋ぐ『ミッシングリンク』となっていることを証明できた。一方で 新たに、地上波ドラマでは「性が排除」されているという問題も判明した。
⚠︎プレゼンテーション内では、『ミッシングリンク』などの「考察」よりも、3つの調査の「結果」(作品数の増加や描かれる性的マイノリティの多様化、当事者の関わり、描かれ方がポジティブになってきていること、当事者の感じる課題点)に重点を置いています。