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単相PWMコンバータにおける出力電圧のデッドビート制御
- 3. 従来のPI制御による出力電圧制御
制御帯域: 10 Hz 零点: 2 Hz
制御帯域: 20 Hz 零点: 4 Hz
応答性を改善するため
制御帯域を上げる
→ リプル電圧の影響で
入力電流が歪む
負荷電流𝑖𝑜 0 A → 3 A
電源電圧𝑣𝑎𝑐 AC100 V 50 Hz
平滑コンデンサ𝐶 2200 μF
出力電圧指令値 300 V
5 V/div
10 A/div
5 V/div
10 A/div
50 ms/div
50 ms/div
入力電流の歪みを無くしつつ
高速応答を実現する出力電圧
制御方法を提案
3
入力電流
出力電圧
入力電流
出力電圧
- 4. 出力電圧制御系のプラントの離散時間モデル
𝑖𝑑𝑐[𝑘] ≡
1
𝑇 𝑘𝑇
𝑘+1 𝑇
𝑖𝑑𝑐(𝑡) 𝑑𝑡
𝑘 ∈ ℤ
𝑖𝑜[𝑘] ≡
1
𝑇 𝑘𝑇
𝑘+1 𝑇
𝑖𝑜(𝑡) 𝑑𝑡
𝑣𝑑𝑐[𝑘] ≡ 𝑣𝑑𝑐(𝑘𝑇)
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 𝑇 = 𝑣𝑑𝑐 𝑘𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 = 𝑣𝑑𝑐 𝑘 +
𝑇
𝐶
𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 𝑖𝑜 𝑘
+
1
𝐶 𝑘𝑇
𝑘+1 𝑇
𝑖𝑑𝑐 𝑡 − 𝑖𝑜(𝑡) 𝑑𝑡
4
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
- 5. 出力電圧デッドビート制御則の構成
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 = 𝑣𝑑𝑐 𝑘 +
𝑇
𝐶
𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 𝑖𝑜 𝑘
プラントの離散時間モデル:
1ステップ先の制御量𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 が指令値𝑣𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘 と一致するような操作量𝑖𝑑𝑐 𝑘 を与える.
従って,𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓[𝑘] = 𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 とし,式(5)より𝑖𝑑𝑐 𝑘 について解くと
𝑖𝑑𝑐 𝑘 =
𝐶
𝑇
𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝑖𝑜 𝑘
負荷電流𝑖𝑜 𝑘 は外乱オブザーバにより推定する.
𝑖𝑜 [𝑘 + 1] = 𝑖𝑜 𝑘 とし,式(5)より𝑖𝑜 [𝑘 + 1]について解くと
𝑖𝑜 [𝑘 + 1] =
𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 + 𝑖𝑑𝑐 𝑘
𝑖𝑜 [𝑘] =
𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 − 1 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 1
𝑧−1
= 𝑒−𝑇𝑠
ZOH =
1 − 𝑒−𝑇𝑠
𝑠
5
(5)
(6)
(7)
(8)
- 6. シミュレーション結果
6
負荷電流𝑖𝑜 0 A → 3 A
電源電圧𝑣𝑎𝑐 AC100 V 50 Hz
平滑コンデンサ𝐶 2200 μF
出力電圧指令値 300 V
出力電流リミッタ ±5A
5 V/div
10 A/div
入力電流
出力電圧
50 ms/div
- 8. 補足資料① 電源周波数相違に対するロバスト性
8
電源周波数 50 Hz 𝑇 = 1 ÷ 50 ÷ 2 = 0.01 電源周波数 50 Hz 𝑇 = 1 ÷ 60 ÷ 2 ≅ 0.0083
電源周波数 60 Hz 𝑇 = 1 ÷ 50 ÷ 2 = 0.01
• 50 Hz/60 Hz両対応としたい場合,
𝑇 はPLLにより取得し可変パラメータとするとなお良い.
𝑖𝑑𝑐 (制御器出力)
- 10. 補足資料③ モデル化誤差に対する安定性
10
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 = 𝑣𝑑𝑐 𝑘 +
𝑇
𝐶
𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 𝑖𝑜 𝑘
𝑖𝑑𝑐 𝑘 =
𝐶𝑚
𝑇𝑚
𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝑖𝑜 𝑘
𝑖𝑜 [𝑘] =
𝐶𝑚
𝑇𝑚
𝑣𝑑𝑐 𝑘 − 1 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 1
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 = 𝑣𝑑𝑐 𝑘 +
𝑇
𝐶
𝑖𝑑𝑐 𝑘
𝑊 =
𝑇
𝐶
とし,式(9)をz変換すると
𝑧𝑣𝑑𝑐(𝑧) = 𝑣𝑑𝑐(𝑧) + 𝑊𝑖𝑑𝑐(𝑧)
𝑣𝑑𝑐(𝑧) =
𝑊
𝑧 − 1
𝑖𝑑𝑐 𝑧
:プラント
:制御器
:外乱オブザーバ
𝑖𝑜 𝑘 = 𝑖𝑜 𝑘 , 𝑊
𝑚 =
𝑇𝑚
𝐶𝑚
とし,式(6),(8)より
𝑖𝑑𝑐 𝑘 =
1
𝑊
𝑚
𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘 + 𝑣𝑑𝑐 𝑘 − 1 − 2𝑣𝑑𝑐[𝑘] + 𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 1
指令値𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓から制御量𝑣𝑑𝑐までの閉ループパルス伝達関数を求める.
式(12)をz変換すると
𝑖𝑑𝑐(𝑧) =
1
𝑊
𝑚
𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑧 + 𝑧−1
𝑣𝑑𝑐 𝑧 − 2𝑣𝑑𝑐 𝑧 + 𝑧−1
𝑖𝑑𝑐(𝑧)
𝑖𝑑𝑐(𝑧) =
1
𝑊
𝑚(𝑧 − 1)
𝑧𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑧 − (2𝑧 − 1)𝑣𝑑𝑐 𝑧
式(11),(14)より
𝑣𝑑𝑐 𝑧 =
𝑊
𝑧 − 1
∙
1
𝑊
𝑚(𝑧 − 1)
𝑧𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑧 − (2𝑧 − 1)𝑣𝑑𝑐 𝑧
𝑣𝑑𝑐 𝑧
𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑧
=
𝑊𝑧
𝑊
𝑚𝑧2 − 2 𝑊
𝑚 − 𝑊 𝑧 + 𝑊
𝑚 − 𝑊
従って,パルス伝達関数は
𝑣𝑑𝑐 𝑧
𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑧
=
1
𝑧
となり,𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓が1ステップ後に𝑣𝑑𝑐へ反映されるようなデッドビート応答
となることを示す.
特性方程式の根,すなわち極が単位円内に収まることで安定となるため
𝑊
𝑚 − 𝑊 ± 𝑊(𝑊 − 𝑊
𝑚)
𝑊
𝑚
< 1
が成り立ち,これを求めると安定条件は
𝑊 = 𝑊
𝑚のとき,式(16)は
3
4
<
𝑊
𝑚
𝑊
(5)
(9)
(10)
(11)
(6)
(8)
(12)
(13)
(14)
(15)
(16)
(17)
(18)
(19)
外乱𝑖𝑜 𝑘 = 0として
- 11. 補足資料④ 状態フィードバック制御としての極配置
11
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 = 𝑣𝑑𝑐 𝑘 +
𝑇
𝐶
𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 𝑖𝑜 𝑘
𝑖𝑑𝑐 𝑘 = −𝐹𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝐹𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘
𝑖𝑑𝑐 𝑘 を入力とし,ゲイン𝐹による状態フィードバックでサーボ系を構成
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 = 𝑣𝑑𝑐 𝑘 −
𝑇
𝐶
𝐹𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝐹𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘 − 𝑖𝑜 𝑘
= 1 −
𝑇
𝐶
𝐹 𝑣𝑑𝑐 𝑘 −
𝑇
𝐶
𝐹𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘 +
𝑇
𝐶
𝑖𝑜 𝑘
デッドビート制御となるように極を0に配置するため
1 −
𝑇
𝐶
𝐹 = 0
𝐹 =
𝐶
𝑇
𝑖𝑑𝑐 𝑘 = −
𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 +
𝐶
𝑇
𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘
𝑖𝑑𝑐 𝑘 =
𝐶
𝑇
(𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 ) + 𝑖𝑜 𝑘
=
𝐶
𝑇
(𝑉𝑑𝑐𝑟𝑒𝑓 𝑘 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 )
外乱𝑖𝑜 𝑘 を相殺するフィードフォワード項を追加すると
(5)
(20)
(21)
(22)
(23)
(24)
式(23)より,式(20)は
(6)
- 12. 補足資料⑤ 最小次元オブザーバとしての極配置
12
𝑖𝑜 𝑘 + 1 = 𝑖𝑜 𝑘
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 = 𝑣𝑑𝑐 𝑘 +
𝑇
𝐶
𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 𝑖𝑜 𝑘
𝑖𝑜 𝑘 = 𝑖𝑑𝑐 𝑘 −
𝐶
𝑇
(𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 )
𝑖𝑜 𝑘 + 1 = 𝑖𝑜 𝑘 + 𝐺(𝑖𝑜 𝑘 − 𝑖𝑜 𝑘 )
= 1 − 𝐺 𝑖𝑜 𝑘 + 𝐺𝑖𝑑𝑐 𝑘 −
𝐺𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 +
𝐺𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘
ζ 𝑘 = 𝑖𝑜 𝑘 +
𝐺𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘
ζ 𝑘 + 1 = 𝑖𝑜 𝑘 + 1 +
𝐺𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1
= 1 − 𝐺 𝑖𝑜 𝑘 + 𝐺𝑖𝑑𝑐 𝑘 +
𝐺𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘
= 1 − 𝐺 𝑖𝑜 𝑘 +
𝐺𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 +
𝐺2
𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝐺𝑖𝑑𝑐 𝑘
= 1 − 𝐺 ζ 𝑘 +
𝐺2
𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝐺𝑖𝑑𝑐 𝑘
1 − 𝐺 = 0
デッドビートオブザーバとなるように極を0に配置するため
𝐺 = 1
オブザーバゲイン𝐺とし,最小次元オブザーバを構成
𝑖𝑜を0次外乱として
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 1 を消去するため,ζにより次のように変数変換する
従って,最小次元デッドビートオブザーバは
ζ 𝑘 + 1 =
𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝑖𝑑𝑐 𝑘
𝑖𝑜 𝑘 = ζ 𝑘 −
𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘
𝑖𝑜 [𝑘] =
𝐶
𝑇
𝑣𝑑𝑐 𝑘 − 1 − 𝑣𝑑𝑐 𝑘 + 𝑖𝑑𝑐 𝑘 − 1
(5)
(25)
(26)
(27)
(28)
(29)
(30)
(31)
(32)
(33)
(8)
- 15. 補足資料⑧ コムフィルタを適用した制御器との類似性
15
参考文献 [1] A. Prodic, Jingquan Chen, R.W. Erickson, D. Maksimovic: “Self-tuning digital comb filter for PFC applications”,
IEEE 28th Annual Conference of the Industrial Electronics Society. IECON 02 pp.220-225, 2002
• 出力電圧のリプルの周波数成分をコムフィルタによりカット
しつつ制御帯域を広げることで高速応答を可能とする手法
が提案されている[1].
• ゼロ次ホールドはコムフィルタに積分器を組み合わせたも
のと同様な周波数特性を持つ.
• デッドビート制御器そのものは2自由度P制御と同形である.
• 定常偏差の抑制法として積分補償かフィードフォワード補償
かが両者の大きな相違点である.