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科学的方法について


   京都大学高等教育研究開発機構
   小山田耕二


   研究の世界入門B
内容
• 科学とは
• 科学的方法
 – 仮説検証法
 – 査読
• まとめ



           研究の世界入門B
科学とは?
•   科挙で試される学問「科挙之学」の略語
•   啓蒙思想家の西周によるScienceの訳語
•   自然科学、人文科学、社会科学の総称
•   体系化された知識や経験の総称
•   自然についての体系的知識/自然科学
    – 科学教育=理科教育
• 科学的方法に基づく学術的な知識、学問

              研究の世界入門B
すべてのアメリカ人のための科学
 F. James Rutherford and Andrew Ahlgren, Science for All Americans , 1989

1.       科学的リテラシーを備えた社会の市民すべてにとって必
         要不可欠な理解や,思考の習慣についての一連の提言
     –    科学,数学,技術に関するリテラシーを包含し,教育の中心的な目
          標として注目。
     –    ○「生体細胞の主な機能はDNA 分子に暗号化されている指示に従っ
          て蛋白質分子を合成することにある。」
     –    ×「リボソーム」や「デオキシリボ核酸」といった用語,又はメッ
          センジャーRNA がどのようなものであって,それがDNA とどのよう
          な関係にあるかといった事柄
2.       実現に向けての提言
     –    カリキュラムは,その網羅する教材の絶対量を削減し、厳格な教科
          の境界線を緩和又は排除する
     –    学習すべき解答からではなくまず現象に関する疑問から始めるよう
          なアプローチを意味し,生徒たちが仮説,証拠の収集と利用,探究
          や過程に関する構想を積極的に活用できるようにし,生徒たちの好
          奇心や創造性を重視するアプローチを意味する。



                               研究の世界入門B
イギリスにおける科学教育
        Science for the 21st Century
1.   日常生活における科学と技術のインパクトを理解し
     正しく評価することができる。
2.   健康やダイエット、エネルギーの利用といった科学
     に関する事柄について、情報を得た(あるいは教育
     を受けた)人として意思決定ができる。
3.   科学についてのメディアレポートを読み、その本質
     が理解できる。
4.   そのようなメディアレポートにおいて含まれるある
     いは(しばしばより重要なのは)排除された情報を
     批判的に省察することができる。
5.   科学が関連した問題(issues)について、自信を
     持って他者との議論に参加できる。


                  研究の世界入門B
政策のための科学
(参考:『諮問第11号「科学技術に関する基本政策について」に対する答申』抜粋)




                      国は、客観的根拠(エビデンス)に基づく政策の企
                      画立案や、その評価及び検証の結果を政策に反映
                      するため、「科学技術イノベーション政策のための
                      科学」を推進する。その際、自然科学の研究者はも
                      とより、広く人文社会科学の研究者の参画を得ると
                      ともに、これらの取組を通じて、政策形成に携わる
                      人材の養成を進める。

                研究の世界入門B
政府コメントにおける「科学」
1.   2012年3月11日細野大臣は、フジテレビ系列の報道
     番組で、「科学的に安全が証明されているがれきの
     受け入れ拒否は、被災地の切り捨て」と言い切った。
2.   2012年5月19日細野大臣は、ストレステストの結果
     について、記者団に 「科学的知見に基づき作った
     判断基準は十分説明できた。 各首長の反応につい
     ては真摯に受け止めたい」 と語った。
3.   2012年8月31日橋下徹大阪市長は、大阪府と大阪市
     が開いた震災がれきの受け入れの説明会で反対意見
     が相次いだことについて「反対の人しか集まってい
     ない。事実誤認で、現在の一般的な科学論から離れ
     た見解が多い」と市役所で記者団に述べ、批判した。


              研究の世界入門B
EUストレステスト
EU理事会の   EUストレステ
  要請      スト仕様書




事業者による   各国政府の
 報告書      報告書




         公開セミナー
ピアレビュー
          での議論


                   研究の世界入門B
科学的方法
F. James Rutherford and Andrew Ahlgren, Science for All Americans , 1989


1. 物事を調査し、結果を整理し、新
   たな知見を導き出し、知見の正し
   さを立証するまでの手続きであっ
   て、(仮説検証)
2. その手続きがある一定の基準を満
   たしているもののことである。
   (査読)

                              研究の世界入門B
仮説検証
• 因果法則の定式化により立てられた
  仮説とその実証を柱とする
–       研究対象となる現象の因果関係を仮説によ
        り説明する
–       論理的整合性を保ち、仮説の真偽を経験的
        データにより実証する
    •    「根拠(証拠物件)」
    •    「推論過程」
    •    「結論」

               研究の世界入門B
仮説検証法
        坂下昭宣:社会科学方法論



• もともと自然科学における方法論であったが、社会
  科学においても採用されるようになった
• 因果法則の定式化とその実証
  – 現象の因果関係を仮説により説明
  – 仮説の真偽を経験的データにより実証


現象
観察
       仮説    概念    データ   仮説
                              適用
       構築   操作化    集計    検証
先行研究
 調査

             研究の世界入門B
社会調査について
• 人々の意識や行動などの実態をとらえるための調査
 – 量的調査は,統計調査で用いられることが多く,複数のケースからな
   る個体群の分布について興味を持つ場合に用いられる.量的データを
   収集するためには,アンケート調査などを用い,その結果の分析には,
   回帰分析などの統計手法を用いることが多い.
 – 質的調査は,ひとつまたはごく少数のケースに関心をもつ場合に用い
   られる.この調査では,質的データを取り扱い,これらを収集するた
   めの調査技法としては,フィールドワーク・参与観察法・ワーク
   ショップ・インタビューなどがある.これらの調査技法で得られた質
   的データを分析するための手法として,会話分析・内容分析・コン
   ピュータコーディングなどがある.

     質的調査                量的調査




     仮説構築                仮説検証

              研究の世界入門B
評価グリッド法
         讃井純一郎(2003)

• 質的調査では,収集・分析結果が調査者のス
  キルに依存
• 評価グリッド法は,臨床心理学者のG.A.Kelly
  が開発した面接調査手法(レパートリーグ
  リッド法)を改良・発展させたもの
• 属人的な要素を排除した質的調査手法に分類
  され,工業製品企画等多くの場面で適用
• 評価グリッド法では,人間の行動の背景には,
  認知構造と呼ばれる情報処理メカニズムが存
  在すると仮定(=認知心理学的人間モデルと
  いう枠組みを設定)
           研究の世界入門B
評価グリッド法による認知構造の可視化
     http://www.macromill.com/method/c02.html
•   認知構造としては、階層構造上で外界から
    の情報を処理し,自分の置かれている状況
    を理解し,とるべき行動を決定していると
    仮定する.
•   具体的なインタビュー方法としては,準備
    した評価対象物について評価対象間の選考
    判断を求め,以下の操作を繰り返し,被験
    者の上位,下位認識を引き出していく
    – 判断の理由を尋ねる
    – 認知構造の言語化,抽出
•   分析結果では,ラダーリング手法,ネット
    ワーク図での表現方法と組み合わせて,評
    価項目間の因果関係が階層的に表示される




                     研究の世界入門B
評価グリッド法によるインタビュー例
•   大学について、調査対象者が「東京大学」よりも「京都大学」をより
    好ましいと答え、理由として「学風が自由そうだから」を挙げた場合、
    調査者は、以下のような質問を行う
    – 上位概念を抽出するには「学風が自由であるということでしたが、あなたにとって、
      学風が自由であることにはどんな好ましい点がありますか。 」
    – 調査対象者が「知的になれそう」と回答
    – さらに上位概念を抽出するには「知的になれそうということでしたが、あなたに
      とって、知的になれそうことにはどんな好ましい点がありますか。 」
    – 調査対象者が「難問が解ける」と回答
    – 下位概念を抽出するために、「学風が自由であるということでしたが、あなたに
      とって学風が自由であるには、具体的には何がどうなっていることが必要だとお考
      えですか。」
    – 調査対象者が「いろいろな分野が連携して困難な課題に立ち向かう点」と回答
    – さらに下位概念を抽出するために、「いろいろな分野が連携して困難な課題に立ち
      向かうということでしたが、あなたにとっていろいろな分野が連携して困難な課題
      に立ち向かうには、 具体的には何がどうなっていることが必要だとお考えです
      か。」
    – 調査対象者が「研究成果が多い」と回答



                   研究の世界入門B
大学に関する認知構造の可視化
                             幸せ


                          充実した生活                    欲しいものが買える
    友人が増える


                          高い満足度
人間関係がうまくいく                                            生活が楽


周囲からの好印象           難問が解ける                            自信が出る



                         知的になれそう

                              研究成果が多い


                  特許が多い                     異分野連携が盛ん


    地域での貢献大        技術移転が多い           政財界での貢献大           自由な雰囲気



                                        東
        名            北
東             九              大          京       東            京
        古            海
北             州              阪          工       京            都
        屋            道
大             大              大          業       大            大
        大            大
学             学              学          大       学            学
        学            学    研究の世界入門B      学
仮説検証法の例
         研究ベース学習第2章,コロナ社

• アイデア
 – 自由な総合大学からは多くのすばらしい研究成果が生み出
   される
• 仮説化(変数概念への変換)
 – 大学組織の集権化・専門化がすすむほど教員一人当たりの
   論文数はより少なくなる
• 概念操作化(質問項目への変換)
 – 集権化(原因)→必修科目が多いですか?
 – 専門化(原因)→学部の数は多いほうですか?
 – 教員一人当たりの論文数(結果)→教員は年間殿程度論文を
   出版していますか?




              研究の世界入門B
Excel散布図を使った検証
• 縦軸と横軸に2項目の大きさを対応させ、データを点
  でプロットしたもの
   – 必修科目数と論文数との関係を散布図で表現
   – 学部数と論文数との関係を散布図で表現
• 確からしさは決定係数(0.0~1.0)で表現
大学名  必修科目数 学部数       論文数
北海道      5       2    4.440299
東北       1       2    2.604768
東京       1       1    1.805732
名古屋      3       5    5.860313
京都       4       5    6.769041
大阪       1       2    2.426428
九州       4       1    2.992099
東京工業     1       2    2.021525
一橋       1       3    3.560307
筑波       5       2    3.793893
金沢       4       5    5.928479
神戸       4       2    3.357371
広島       5       2    3.690512
慶應       5       3    4.811682
早稲田      1       5    4.897048
同志社      2       4    4.461144
立命館      1       1    1.390609
南山       2       2    2.508387   研究の世界入門B
Excel回帰分析を使った検証Ⅰ
• 原因を表す変数と結果を表す変数の間に式をあてはめ目
  的変数が説明変数によってどれくらい説明できるのかを
  定量的に分析すること
   –   必修科目数を説明変数として指定(X1)
   –   学部数を説明変数として指定(X2)
   –   論文数変数として指定(Y)
   –   確からしさは決定係数(0.0~1.0)で表現
大学名  必修科目数 学部数       論文数              概要

北海道      5       2    4.440299            回帰統計
東北       1       2    2.604768        重相関 R 0.951283
                                      重決定 R2 0.90494
東京       1       1    1.805732
                                      補正 R2  0.892265
名古屋      3       5    5.860313        標準誤差 0.289078
京都       4       5    6.769041        観測数          18
大阪       1       2    2.426428        分散分析表
九州       4       1    2.992099                 自由度       変動       分散観測された分散比       有意 F
東京工業     1       2    2.021525        回帰             2 11.93283 5.966414 71.39734 2.16E-08
                                      残差            15 1.253495 0.083566
一橋       1       3    3.560307        合計            17 13.18632
筑波       5       2    3.793893
金沢       4       5    5.928479                係数     標準誤差        t       P-値    下限 95%       上限 95%     下限 95.0% 上限 95.0%
                                      切片    0.075124 0.351067 0.213988 0.833438 -0.67316     0.823406    -0.67316 0.823406
神戸       4       2    3.357371        必修科目数 0.531537 0.06227 8.535946 3.84E-07 0.398811      0.664263    0.398811 0.664263
広島       5       2    3.690512        学部数   0.835522 0.071166 11.74043 5.83E-09 0.683834     0.987209    0.683834 0.987209
慶應       5       3    4.811682
早稲田      1       5    4.897048
同志社
立命館
         2
         1
                 4
                 1
                      4.461144
                      1.390609        Y  0.531X1  0.835 X 2  0.075
                                 研究の世界入門B
南山       2       2    2.508387
Excel回帰分析を使った検証Ⅱ
       • 元旦からの時間と清涼飲料水の売上高との関係を散布図で表現
       • 回帰分析を使って放物線近似を実施する
                – 元旦からの月数を説明変数として指定(X)
                – 元旦からの月数の二乗を説明変数として指定(X2)
                – 売上高を目的変数として指定(Y)
元旦からの月数            売り上げ                                          元旦からの月数 二乗              売り上げ
 10.89361197        60.78021                                      12.73815958 162.2607    42.91874
 1.802147893        21.41597                                      3.695827066 13.65914    38.78478
 2.837797423        32.71949                                      1.761970297 3.104539    16.98748
 9.224646632        64.36713                                      6.904897101 47.6776     67.10349
 1.073903617        11.01583                                       12.2907907 151.0635    50.10958
 9.573420881        64.68149                                      7.156443842 51.21469    60.93947
 4.565155036        47.89863                                      10.04307268 100.8633    64.08001
  6.73898129        66.06095                                      10.10541268 102.1194    58.30743
 7.847991441        66.41851                                      6.519100972 42.49868    59.76066
 12.23419941        53.17354                                      2.897920454 8.397943    33.98598
 3.041810023        38.01071                                      8.032964356 64.52852    64.33884
 6.319166653        63.78903                                      9.365301696 87.70888    61.99145
 3.368901457        39.51801                                      1.393542934 1.941962    11.37233
 12.34278059        45.18109                                      9.674889149 93.60348    59.76878
 7.746552172        66.02482                                      8.475122963 71.82771    65.55876
 12.26662558        49.69176                                      2.501252778 6.256265    26.07022
    1.8214939       24.36855                                       7.65113043 58.5398     62.08379
 9.765946279
  12.7917737
                    60.48072
                    46.45526
                               Y  1.10 X 2  18.76 X  12.49    6.916819254 47.84239    58.85354
                                                                  5.222492888 27.27443     57.8813
 2.963396902        39.35665             研究の世界入門B                  3.91704669 15.34325    49.41787
RSM : Response Surface Methodology

• A response surface approximates a response y which
  is estimated using n design variables(x1,x2,…,xn) as
   –     y=f(x1,x2,…,xn) + ε
• There is no restriction on the function form, and
  quadratic polynomial functions are often employed
• RSM is applied to an optimization of a product
  development process or an decrease in dispersion




                           研究の世界入門B
Construction of a response surface
               using a least square method


• A response surface approximates a response y
  which is estimated using two design
  variables(x1,x2) as
   – y=β0+ β1x1 + β2x2 + β3x12 + β4x22 + β5x1x2
• A substitution is made as
   – x12 =x3 x22 =x4 x1x2 =x5
   – y=β0+ β1x1 + β2x2 + β3x3 + β4x4 + β5x5


   Coefficients(β0 β1β2 β3β4β5) are estimated from more
           than six design points (y, x1 x2 x3 x4 x5)
                                  研究の世界入門B
Matrix expression of regression equations


 y1        1   x11 x12  x1 p      0         1 
                                              
 y2        1   x21 x22  x2 p      1        2 
  
         =
                           ×     
                                               +
                                                   
                                                
           1   xk1 xk 2  xkp                
y                                  p          k
 k

   y                 X                  β           ε

                         研究の世界入門B
Estimation of a coefficient vector β
   • The coefficient vector which minimizes the squared error
                     summation is estimated as



L     ( y  X )T ( y  X )
         T

  ( yT   T X T )( y  X )  yT y   T X T y  yT X   T X T X

  y y  2 X y   X X
     T         T   T       T   T
                                          L
                                                2 X T y  2 X T X b  0
                                           b
  yT y  2 T X T y  ( X )T X

                                      b = (XTX)-1XTy
                               研究の世界入門B
A model construction process using RSM

 Set a parameter range




                               応答値
 Select design points                x2       x1
                                          0

 Calculate responses


 Estimate a surface                                Min

                                     x2       x1
 Calculate a minimum                      0

                         研究の世界入門B
Optimization exercise
-Estimation of the most cold region in tohoku




                   研究の世界入門B
Exercise using a climate dataset
•   Obtain a dataset on average temperature from a climate data server in Japan
    Meteorological temperature Agency
    (http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.phpe )
•   Construct a response surface of the which is estimated using two design
    variables(Longitude, Latitude)
•   Estimate a Longitude and a Latitude which minimize the temperature
•   Specify a location using the estimated Longitude and Latitude in Google map
•   Obtain an average temperature at the specified location to confirm the accuracy


Average temperature at Dec. 1, 2000                                  緯度         経度
                                           盛岡                 -0.3   39.69833    141.165
                                           仙台                  3.6   38.26167   140.8967
                                           青森                  0.5   40.82167   140.7683
                                           山形                  3.2     38.255    140.345
                                           秋田                  2.7   39.71667   140.0983
                                           福島                  4.5   37.75833     140.47
                                           角館                  0.9   39.60333   140.5567
                                           八戸
                                       研究の世界入門B               -0.1   40.52667   141.5217
査読とは
          研究ベース学習第4章,コロナ社


• 査読の目的
 – 投稿された論文に学問的な価値があるかどう
   かを判断する
 – 論文を掲載する雑誌の品質を保つ
• 査読の担当
 – 「査読者」あるいは「審査員」「レフェ
   リー」などと呼ばれる
 – 論文が扱うのと同じ専門分野にいる研究者
 – 「ピア・レビュー」のしくみとも呼ばれる
   (ピアとは「同業者」の意)。

              研究の世界入門B
査読者の選任と依頼
• 複数者査読
 – 論文の原稿が投稿されると,投稿先の雑誌の編集委員会で査読
   者の候補を選び,その人が了解すれば編集委員会から原稿を渡
   す。公平を期すため,査読者は二名以上選ぶことが多い。
• 匿名査読
 – 査読者の名前は投稿者には明かさないことがほとんどである。
   理由としては,投稿者に「感情的しこり」が起きたりしないよ
   う,審査の公平性を確保するためである。あわせて,審査する
   側にとっての公平性を確保するために,投稿者の名前も査読者
   に明かさない場合もある。
• ボランティアベース
 – 査読者には現金などの報酬は支払われない場合が多い(特に
   「学会誌」の場合)。これは学会誌での査読を含め,学会活動
   は無報酬で(「ボランティア」として)行うとされているため
   である。ただし学会の外部にいる者に査読を頼む場合には報酬
   を支払う場合もある。
             研究の世界入門B
査読結果
• 査読者は原稿を読み,コメントをつけた上で,
  以下のような評価を下す。
 – 無修正で掲載を許可する
 – 修正を条件として掲載を許可する。
 – 修正の後,再査読を要求し,その上で掲載できるかどうかを判
   断する。
 – 掲載を不許可とする。
• 編集委員会は査読者のコメント・評価をもとに
  審査し,査読結果をまとめる。
• 編集委員会から投稿者に査読結果を伝え,投稿
  者はそれに応じて修正などを行う。
• 最終的に編集委員会がOKを出せば掲載に至る。

             研究の世界入門B
論文査読報告書書式例

– 原著論文としての全体的評価
 • 新規性・有用性・信頼性
– 総合評価の判断理由
 • どのような問題に対してどのような仮説を与え、
   その解決方法の有用性をどのように検証したか?
 • 有用性が客観的に見て十分担保されているか?
– 論文修正のための詳細コメント
 • 採録のための条件
 • 論文をよくするための事務的照会

          研究の世界入門B
論文査読報告書例
                                                          平成21年6月20日
                            研究の世界A クラスシンポジウム 2009
                                         査読結果
論文番号:rwa2008-paper-24
論文題目:BMI指標の落とし穴
全体評価     (1~5の実数値から選んで下さい)
●新規性      4   ●有用性      2   ●信頼性   2   ●総合評価   3
総合評価の判断理由
本研究では、XXX(仮説)することによりXXX(問題)を解決するための手法を提案しておりその意義は高いものと考えます。しかしながらXXXに見ら
れるように提案手法の検証に不十分さが存在し今後検討すべきところが残っていると判断します。
著者へのコメント (より良い論文や発表にするためのコメント等)
●採録条件
1. XXXについて、関連研究を十分に調査の上、提案手法の優位性について述べてください。
●事務的照会
1. 以下のように書き換えたほうがわかりやすいと思います。
ジョージ・ワシントンは米国の最も偉大な大統領であった。 → ジョージ・ワシントンは米国の初代の大統領であった。
黒い目のきれいな子供 → 黒目がきれいな子供




                                       研究の世界入門B
不採録
• 再投稿が勧められる場合とそうでない場合がある。
 – 再投稿を勧められた場合は,論文を(大幅に)改訂すれば,次回には採録
   される可能性はある。
 – そうでない場合は他の投稿先を考えた方がよい。査読側から別の投稿
   先を勧められる場合もある。
 – なお不採録になったとしても,それは必ずしも研究が否定されたこと
   を意味するわけではない。
• 不採録で得られるもの
 – 論文を改訂するのに大いに役立つ。そのようなコメントをもらえる機
   会があっただけでも投稿したことには意義があったといえるだろう。




               研究の世界入門B
条件付き採録
• 査読の結果として,採録するために必要な条件(採録条件)が示され
  る
• たとえば「実験の設定が不明であるため信頼性が読み取れない(だ
  から設定を明らかにせよ)」,「次の文献を参照するべきである」
  など,具体的に修正すべき箇所が指摘される。
• 提示された採録条件を吟味して,(修正期間が定められていれば期
  限内に)論文を修正して,改訂稿を提出すると再度査読が行われる。
  このとき採録条件を満たしていると判断されればもちろん採録とな
  り,条件が満たされていないと判断されると不採録になる。
• 条件付き採録で改訂稿を提出する際には,採録条件にどのように対
  応したのかを示す回答書を同時に提出する。回答書では,条件ごと
  に指摘されたことに答え,改訂稿ではどのように対応したかを示す。
  指摘されたことが的外れである(査読者が誤解している)こともある
  かもしれない。その場合は(なぜ誤解されたのかをふまえて)自分の
  見解を丁寧に説明する。



             研究の世界入門B
採録条件に対する回答書
    http://www2.iee.or.jp/~ias/ronbuniinkai/SYUSA/Manual20061003.pdf


• 2名の査読者からの修正項目・照会事項 に対して、個々
  の項目・事項とそれに対する回答とが明確に対をなすよ
  うに記述する
• 論文のどこを修正したのか明瞭に回答する
• 修正箇所が多い場合には修正論文に太字等でその場所が
  明確にわかるようにする




                             研究の世界入門B
回答書の例
          http://www2.iee.or.jp/~ias/ronbuniinkai/SYUSA/Manual20061003.pdf

                                                                             平成21年6月25日
研究の世界Aクラスシンポジウム編集委員会担当者殿
                                                                   投稿論文受付番号: 024
論文タイトル:BMI指標の落とし穴
拝復 標記の拙論文に対し、貴重なご意見やご指摘を賜り、誠にありがとうございます。頂きました
照会事項について下記の通り回答いたします。
                                         記
査読者1
1) XXXについて、関連研究を十分に調査の上、提案手法の優位性について述べてください。 (査読
者からの照会事項を項目ごとに再記する)
【回答】ご指摘の箇所についてお答えいたします。・・・この件については・・・のように考えてお
ります。しかしながら、このような御指摘を頂いたのは、表現が不適切であり誤解を招いたものと考
えます。・・・そこで検討の結果、本文中の「***(変更前)」という表現を「***(変更後)
」のように変更し、明確化を図りました。
・・・以下同様




                                  研究の世界入門B
インパクトファクター(IF)について

•IFとは
 •ISI社の調査対象のある雑誌に掲載された論文の平均
  的な被引用数
    前年と前々年に発表された論文が引用された数

        前年と前々年に発表された論文数
 •特定の研究分野における雑誌の影響度を測る客観的
  指標として利用

 • 全世界の約10万の学術雑誌中5686誌が対象
 • 日本で発行される英文科学雑誌のうちIFが算定され
   ているのは、157誌

                研究の世界入門B
まとめ
• 科学は証拠を要求する
• 科学は説明し、予測する
• 科学的方法は仮説検証と査読から構成さ
  れる
• 科学知識は変更を余儀なくされるもので
  ある
• 科学はすべての疑問に完全に答えること
  はできない
• 科学的妥当性は0/1ではなく0.0~1.0

          研究の世界入門B

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研究の世界入門B 科学的方法

  • 1. 科学的方法について 京都大学高等教育研究開発機構 小山田耕二 研究の世界入門B
  • 2. 内容 • 科学とは • 科学的方法 – 仮説検証法 – 査読 • まとめ 研究の世界入門B
  • 3. 科学とは? • 科挙で試される学問「科挙之学」の略語 • 啓蒙思想家の西周によるScienceの訳語 • 自然科学、人文科学、社会科学の総称 • 体系化された知識や経験の総称 • 自然についての体系的知識/自然科学 – 科学教育=理科教育 • 科学的方法に基づく学術的な知識、学問 研究の世界入門B
  • 4. すべてのアメリカ人のための科学 F. James Rutherford and Andrew Ahlgren, Science for All Americans , 1989 1. 科学的リテラシーを備えた社会の市民すべてにとって必 要不可欠な理解や,思考の習慣についての一連の提言 – 科学,数学,技術に関するリテラシーを包含し,教育の中心的な目 標として注目。 – ○「生体細胞の主な機能はDNA 分子に暗号化されている指示に従っ て蛋白質分子を合成することにある。」 – ×「リボソーム」や「デオキシリボ核酸」といった用語,又はメッ センジャーRNA がどのようなものであって,それがDNA とどのよう な関係にあるかといった事柄 2. 実現に向けての提言 – カリキュラムは,その網羅する教材の絶対量を削減し、厳格な教科 の境界線を緩和又は排除する – 学習すべき解答からではなくまず現象に関する疑問から始めるよう なアプローチを意味し,生徒たちが仮説,証拠の収集と利用,探究 や過程に関する構想を積極的に活用できるようにし,生徒たちの好 奇心や創造性を重視するアプローチを意味する。 研究の世界入門B
  • 5. イギリスにおける科学教育 Science for the 21st Century 1. 日常生活における科学と技術のインパクトを理解し 正しく評価することができる。 2. 健康やダイエット、エネルギーの利用といった科学 に関する事柄について、情報を得た(あるいは教育 を受けた)人として意思決定ができる。 3. 科学についてのメディアレポートを読み、その本質 が理解できる。 4. そのようなメディアレポートにおいて含まれるある いは(しばしばより重要なのは)排除された情報を 批判的に省察することができる。 5. 科学が関連した問題(issues)について、自信を 持って他者との議論に参加できる。 研究の世界入門B
  • 6. 政策のための科学 (参考:『諮問第11号「科学技術に関する基本政策について」に対する答申』抜粋) 国は、客観的根拠(エビデンス)に基づく政策の企 画立案や、その評価及び検証の結果を政策に反映 するため、「科学技術イノベーション政策のための 科学」を推進する。その際、自然科学の研究者はも とより、広く人文社会科学の研究者の参画を得ると ともに、これらの取組を通じて、政策形成に携わる 人材の養成を進める。 研究の世界入門B
  • 7. 政府コメントにおける「科学」 1. 2012年3月11日細野大臣は、フジテレビ系列の報道 番組で、「科学的に安全が証明されているがれきの 受け入れ拒否は、被災地の切り捨て」と言い切った。 2. 2012年5月19日細野大臣は、ストレステストの結果 について、記者団に 「科学的知見に基づき作った 判断基準は十分説明できた。 各首長の反応につい ては真摯に受け止めたい」 と語った。 3. 2012年8月31日橋下徹大阪市長は、大阪府と大阪市 が開いた震災がれきの受け入れの説明会で反対意見 が相次いだことについて「反対の人しか集まってい ない。事実誤認で、現在の一般的な科学論から離れ た見解が多い」と市役所で記者団に述べ、批判した。 研究の世界入門B
  • 8. EUストレステスト EU理事会の EUストレステ 要請 スト仕様書 事業者による 各国政府の 報告書 報告書 公開セミナー ピアレビュー での議論 研究の世界入門B
  • 9. 科学的方法 F. James Rutherford and Andrew Ahlgren, Science for All Americans , 1989 1. 物事を調査し、結果を整理し、新 たな知見を導き出し、知見の正し さを立証するまでの手続きであっ て、(仮説検証) 2. その手続きがある一定の基準を満 たしているもののことである。 (査読) 研究の世界入門B
  • 10. 仮説検証 • 因果法則の定式化により立てられた 仮説とその実証を柱とする – 研究対象となる現象の因果関係を仮説によ り説明する – 論理的整合性を保ち、仮説の真偽を経験的 データにより実証する • 「根拠(証拠物件)」 • 「推論過程」 • 「結論」 研究の世界入門B
  • 11. 仮説検証法 坂下昭宣:社会科学方法論 • もともと自然科学における方法論であったが、社会 科学においても採用されるようになった • 因果法則の定式化とその実証 – 現象の因果関係を仮説により説明 – 仮説の真偽を経験的データにより実証 現象 観察 仮説 概念 データ 仮説 適用 構築 操作化 集計 検証 先行研究 調査 研究の世界入門B
  • 12. 社会調査について • 人々の意識や行動などの実態をとらえるための調査 – 量的調査は,統計調査で用いられることが多く,複数のケースからな る個体群の分布について興味を持つ場合に用いられる.量的データを 収集するためには,アンケート調査などを用い,その結果の分析には, 回帰分析などの統計手法を用いることが多い. – 質的調査は,ひとつまたはごく少数のケースに関心をもつ場合に用い られる.この調査では,質的データを取り扱い,これらを収集するた めの調査技法としては,フィールドワーク・参与観察法・ワーク ショップ・インタビューなどがある.これらの調査技法で得られた質 的データを分析するための手法として,会話分析・内容分析・コン ピュータコーディングなどがある. 質的調査 量的調査 仮説構築 仮説検証 研究の世界入門B
  • 13. 評価グリッド法 讃井純一郎(2003) • 質的調査では,収集・分析結果が調査者のス キルに依存 • 評価グリッド法は,臨床心理学者のG.A.Kelly が開発した面接調査手法(レパートリーグ リッド法)を改良・発展させたもの • 属人的な要素を排除した質的調査手法に分類 され,工業製品企画等多くの場面で適用 • 評価グリッド法では,人間の行動の背景には, 認知構造と呼ばれる情報処理メカニズムが存 在すると仮定(=認知心理学的人間モデルと いう枠組みを設定) 研究の世界入門B
  • 14. 評価グリッド法による認知構造の可視化 http://www.macromill.com/method/c02.html • 認知構造としては、階層構造上で外界から の情報を処理し,自分の置かれている状況 を理解し,とるべき行動を決定していると 仮定する. • 具体的なインタビュー方法としては,準備 した評価対象物について評価対象間の選考 判断を求め,以下の操作を繰り返し,被験 者の上位,下位認識を引き出していく – 判断の理由を尋ねる – 認知構造の言語化,抽出 • 分析結果では,ラダーリング手法,ネット ワーク図での表現方法と組み合わせて,評 価項目間の因果関係が階層的に表示される 研究の世界入門B
  • 15. 評価グリッド法によるインタビュー例 • 大学について、調査対象者が「東京大学」よりも「京都大学」をより 好ましいと答え、理由として「学風が自由そうだから」を挙げた場合、 調査者は、以下のような質問を行う – 上位概念を抽出するには「学風が自由であるということでしたが、あなたにとって、 学風が自由であることにはどんな好ましい点がありますか。 」 – 調査対象者が「知的になれそう」と回答 – さらに上位概念を抽出するには「知的になれそうということでしたが、あなたに とって、知的になれそうことにはどんな好ましい点がありますか。 」 – 調査対象者が「難問が解ける」と回答 – 下位概念を抽出するために、「学風が自由であるということでしたが、あなたに とって学風が自由であるには、具体的には何がどうなっていることが必要だとお考 えですか。」 – 調査対象者が「いろいろな分野が連携して困難な課題に立ち向かう点」と回答 – さらに下位概念を抽出するために、「いろいろな分野が連携して困難な課題に立ち 向かうということでしたが、あなたにとっていろいろな分野が連携して困難な課題 に立ち向かうには、 具体的には何がどうなっていることが必要だとお考えです か。」 – 調査対象者が「研究成果が多い」と回答 研究の世界入門B
  • 16. 大学に関する認知構造の可視化 幸せ 充実した生活 欲しいものが買える 友人が増える 高い満足度 人間関係がうまくいく 生活が楽 周囲からの好印象 難問が解ける 自信が出る 知的になれそう 研究成果が多い 特許が多い 異分野連携が盛ん 地域での貢献大 技術移転が多い 政財界での貢献大 自由な雰囲気 東 名 北 東 九 大 京 東 京 古 海 北 州 阪 工 京 都 屋 道 大 大 大 業 大 大 大 大 学 学 学 大 学 学 学 学 研究の世界入門B 学
  • 17. 仮説検証法の例 研究ベース学習第2章,コロナ社 • アイデア – 自由な総合大学からは多くのすばらしい研究成果が生み出 される • 仮説化(変数概念への変換) – 大学組織の集権化・専門化がすすむほど教員一人当たりの 論文数はより少なくなる • 概念操作化(質問項目への変換) – 集権化(原因)→必修科目が多いですか? – 専門化(原因)→学部の数は多いほうですか? – 教員一人当たりの論文数(結果)→教員は年間殿程度論文を 出版していますか? 研究の世界入門B
  • 18. Excel散布図を使った検証 • 縦軸と横軸に2項目の大きさを対応させ、データを点 でプロットしたもの – 必修科目数と論文数との関係を散布図で表現 – 学部数と論文数との関係を散布図で表現 • 確からしさは決定係数(0.0~1.0)で表現 大学名 必修科目数 学部数 論文数 北海道 5 2 4.440299 東北 1 2 2.604768 東京 1 1 1.805732 名古屋 3 5 5.860313 京都 4 5 6.769041 大阪 1 2 2.426428 九州 4 1 2.992099 東京工業 1 2 2.021525 一橋 1 3 3.560307 筑波 5 2 3.793893 金沢 4 5 5.928479 神戸 4 2 3.357371 広島 5 2 3.690512 慶應 5 3 4.811682 早稲田 1 5 4.897048 同志社 2 4 4.461144 立命館 1 1 1.390609 南山 2 2 2.508387 研究の世界入門B
  • 19. Excel回帰分析を使った検証Ⅰ • 原因を表す変数と結果を表す変数の間に式をあてはめ目 的変数が説明変数によってどれくらい説明できるのかを 定量的に分析すること – 必修科目数を説明変数として指定(X1) – 学部数を説明変数として指定(X2) – 論文数変数として指定(Y) – 確からしさは決定係数(0.0~1.0)で表現 大学名 必修科目数 学部数 論文数 概要 北海道 5 2 4.440299 回帰統計 東北 1 2 2.604768 重相関 R 0.951283 重決定 R2 0.90494 東京 1 1 1.805732 補正 R2 0.892265 名古屋 3 5 5.860313 標準誤差 0.289078 京都 4 5 6.769041 観測数 18 大阪 1 2 2.426428 分散分析表 九州 4 1 2.992099 自由度 変動 分散観測された分散比 有意 F 東京工業 1 2 2.021525 回帰 2 11.93283 5.966414 71.39734 2.16E-08 残差 15 1.253495 0.083566 一橋 1 3 3.560307 合計 17 13.18632 筑波 5 2 3.793893 金沢 4 5 5.928479 係数 標準誤差 t P-値 下限 95% 上限 95% 下限 95.0% 上限 95.0% 切片 0.075124 0.351067 0.213988 0.833438 -0.67316 0.823406 -0.67316 0.823406 神戸 4 2 3.357371 必修科目数 0.531537 0.06227 8.535946 3.84E-07 0.398811 0.664263 0.398811 0.664263 広島 5 2 3.690512 学部数 0.835522 0.071166 11.74043 5.83E-09 0.683834 0.987209 0.683834 0.987209 慶應 5 3 4.811682 早稲田 1 5 4.897048 同志社 立命館 2 1 4 1 4.461144 1.390609 Y  0.531X1  0.835 X 2  0.075 研究の世界入門B 南山 2 2 2.508387
  • 20. Excel回帰分析を使った検証Ⅱ • 元旦からの時間と清涼飲料水の売上高との関係を散布図で表現 • 回帰分析を使って放物線近似を実施する – 元旦からの月数を説明変数として指定(X) – 元旦からの月数の二乗を説明変数として指定(X2) – 売上高を目的変数として指定(Y) 元旦からの月数 売り上げ 元旦からの月数 二乗 売り上げ 10.89361197 60.78021 12.73815958 162.2607 42.91874 1.802147893 21.41597 3.695827066 13.65914 38.78478 2.837797423 32.71949 1.761970297 3.104539 16.98748 9.224646632 64.36713 6.904897101 47.6776 67.10349 1.073903617 11.01583 12.2907907 151.0635 50.10958 9.573420881 64.68149 7.156443842 51.21469 60.93947 4.565155036 47.89863 10.04307268 100.8633 64.08001 6.73898129 66.06095 10.10541268 102.1194 58.30743 7.847991441 66.41851 6.519100972 42.49868 59.76066 12.23419941 53.17354 2.897920454 8.397943 33.98598 3.041810023 38.01071 8.032964356 64.52852 64.33884 6.319166653 63.78903 9.365301696 87.70888 61.99145 3.368901457 39.51801 1.393542934 1.941962 11.37233 12.34278059 45.18109 9.674889149 93.60348 59.76878 7.746552172 66.02482 8.475122963 71.82771 65.55876 12.26662558 49.69176 2.501252778 6.256265 26.07022 1.8214939 24.36855 7.65113043 58.5398 62.08379 9.765946279 12.7917737 60.48072 46.45526 Y  1.10 X 2  18.76 X  12.49 6.916819254 47.84239 58.85354 5.222492888 27.27443 57.8813 2.963396902 39.35665 研究の世界入門B 3.91704669 15.34325 49.41787
  • 21. RSM : Response Surface Methodology • A response surface approximates a response y which is estimated using n design variables(x1,x2,…,xn) as – y=f(x1,x2,…,xn) + ε • There is no restriction on the function form, and quadratic polynomial functions are often employed • RSM is applied to an optimization of a product development process or an decrease in dispersion 研究の世界入門B
  • 22. Construction of a response surface using a least square method • A response surface approximates a response y which is estimated using two design variables(x1,x2) as – y=β0+ β1x1 + β2x2 + β3x12 + β4x22 + β5x1x2 • A substitution is made as – x12 =x3 x22 =x4 x1x2 =x5 – y=β0+ β1x1 + β2x2 + β3x3 + β4x4 + β5x5 Coefficients(β0 β1β2 β3β4β5) are estimated from more than six design points (y, x1 x2 x3 x4 x5) 研究の世界入門B
  • 23. Matrix expression of regression equations  y1  1 x11 x12  x1 p   0   1           y2  1 x21 x22  x2 p   1  2     =      ×    +          1 xk1 xk 2  xkp      y     p  k  k y X β ε 研究の世界入門B
  • 24. Estimation of a coefficient vector β • The coefficient vector which minimizes the squared error summation is estimated as L     ( y  X )T ( y  X ) T  ( yT   T X T )( y  X )  yT y   T X T y  yT X   T X T X  y y  2 X y   X X T T T T T L  2 X T y  2 X T X b  0  b  yT y  2 T X T y  ( X )T X b = (XTX)-1XTy 研究の世界入門B
  • 25. A model construction process using RSM Set a parameter range 応答値 Select design points x2 x1 0 Calculate responses Estimate a surface Min x2 x1 Calculate a minimum 0 研究の世界入門B
  • 26. Optimization exercise -Estimation of the most cold region in tohoku 研究の世界入門B
  • 27. Exercise using a climate dataset • Obtain a dataset on average temperature from a climate data server in Japan Meteorological temperature Agency (http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.phpe ) • Construct a response surface of the which is estimated using two design variables(Longitude, Latitude) • Estimate a Longitude and a Latitude which minimize the temperature • Specify a location using the estimated Longitude and Latitude in Google map • Obtain an average temperature at the specified location to confirm the accuracy Average temperature at Dec. 1, 2000 緯度 経度 盛岡 -0.3 39.69833 141.165 仙台 3.6 38.26167 140.8967 青森 0.5 40.82167 140.7683 山形 3.2 38.255 140.345 秋田 2.7 39.71667 140.0983 福島 4.5 37.75833 140.47 角館 0.9 39.60333 140.5567 八戸 研究の世界入門B -0.1 40.52667 141.5217
  • 28. 査読とは 研究ベース学習第4章,コロナ社 • 査読の目的 – 投稿された論文に学問的な価値があるかどう かを判断する – 論文を掲載する雑誌の品質を保つ • 査読の担当 – 「査読者」あるいは「審査員」「レフェ リー」などと呼ばれる – 論文が扱うのと同じ専門分野にいる研究者 – 「ピア・レビュー」のしくみとも呼ばれる (ピアとは「同業者」の意)。 研究の世界入門B
  • 29. 査読者の選任と依頼 • 複数者査読 – 論文の原稿が投稿されると,投稿先の雑誌の編集委員会で査読 者の候補を選び,その人が了解すれば編集委員会から原稿を渡 す。公平を期すため,査読者は二名以上選ぶことが多い。 • 匿名査読 – 査読者の名前は投稿者には明かさないことがほとんどである。 理由としては,投稿者に「感情的しこり」が起きたりしないよ う,審査の公平性を確保するためである。あわせて,審査する 側にとっての公平性を確保するために,投稿者の名前も査読者 に明かさない場合もある。 • ボランティアベース – 査読者には現金などの報酬は支払われない場合が多い(特に 「学会誌」の場合)。これは学会誌での査読を含め,学会活動 は無報酬で(「ボランティア」として)行うとされているため である。ただし学会の外部にいる者に査読を頼む場合には報酬 を支払う場合もある。 研究の世界入門B
  • 30. 査読結果 • 査読者は原稿を読み,コメントをつけた上で, 以下のような評価を下す。 – 無修正で掲載を許可する – 修正を条件として掲載を許可する。 – 修正の後,再査読を要求し,その上で掲載できるかどうかを判 断する。 – 掲載を不許可とする。 • 編集委員会は査読者のコメント・評価をもとに 審査し,査読結果をまとめる。 • 編集委員会から投稿者に査読結果を伝え,投稿 者はそれに応じて修正などを行う。 • 最終的に編集委員会がOKを出せば掲載に至る。 研究の世界入門B
  • 31. 論文査読報告書書式例 – 原著論文としての全体的評価 • 新規性・有用性・信頼性 – 総合評価の判断理由 • どのような問題に対してどのような仮説を与え、 その解決方法の有用性をどのように検証したか? • 有用性が客観的に見て十分担保されているか? – 論文修正のための詳細コメント • 採録のための条件 • 論文をよくするための事務的照会 研究の世界入門B
  • 32. 論文査読報告書例 平成21年6月20日 研究の世界A クラスシンポジウム 2009 査読結果 論文番号:rwa2008-paper-24 論文題目:BMI指標の落とし穴 全体評価 (1~5の実数値から選んで下さい) ●新規性 4 ●有用性 2 ●信頼性 2 ●総合評価 3 総合評価の判断理由 本研究では、XXX(仮説)することによりXXX(問題)を解決するための手法を提案しておりその意義は高いものと考えます。しかしながらXXXに見ら れるように提案手法の検証に不十分さが存在し今後検討すべきところが残っていると判断します。 著者へのコメント (より良い論文や発表にするためのコメント等) ●採録条件 1. XXXについて、関連研究を十分に調査の上、提案手法の優位性について述べてください。 ●事務的照会 1. 以下のように書き換えたほうがわかりやすいと思います。 ジョージ・ワシントンは米国の最も偉大な大統領であった。 → ジョージ・ワシントンは米国の初代の大統領であった。 黒い目のきれいな子供 → 黒目がきれいな子供 研究の世界入門B
  • 33. 不採録 • 再投稿が勧められる場合とそうでない場合がある。 – 再投稿を勧められた場合は,論文を(大幅に)改訂すれば,次回には採録 される可能性はある。 – そうでない場合は他の投稿先を考えた方がよい。査読側から別の投稿 先を勧められる場合もある。 – なお不採録になったとしても,それは必ずしも研究が否定されたこと を意味するわけではない。 • 不採録で得られるもの – 論文を改訂するのに大いに役立つ。そのようなコメントをもらえる機 会があっただけでも投稿したことには意義があったといえるだろう。 研究の世界入門B
  • 34. 条件付き採録 • 査読の結果として,採録するために必要な条件(採録条件)が示され る • たとえば「実験の設定が不明であるため信頼性が読み取れない(だ から設定を明らかにせよ)」,「次の文献を参照するべきである」 など,具体的に修正すべき箇所が指摘される。 • 提示された採録条件を吟味して,(修正期間が定められていれば期 限内に)論文を修正して,改訂稿を提出すると再度査読が行われる。 このとき採録条件を満たしていると判断されればもちろん採録とな り,条件が満たされていないと判断されると不採録になる。 • 条件付き採録で改訂稿を提出する際には,採録条件にどのように対 応したのかを示す回答書を同時に提出する。回答書では,条件ごと に指摘されたことに答え,改訂稿ではどのように対応したかを示す。 指摘されたことが的外れである(査読者が誤解している)こともある かもしれない。その場合は(なぜ誤解されたのかをふまえて)自分の 見解を丁寧に説明する。 研究の世界入門B
  • 35. 採録条件に対する回答書 http://www2.iee.or.jp/~ias/ronbuniinkai/SYUSA/Manual20061003.pdf • 2名の査読者からの修正項目・照会事項 に対して、個々 の項目・事項とそれに対する回答とが明確に対をなすよ うに記述する • 論文のどこを修正したのか明瞭に回答する • 修正箇所が多い場合には修正論文に太字等でその場所が 明確にわかるようにする 研究の世界入門B
  • 36. 回答書の例 http://www2.iee.or.jp/~ias/ronbuniinkai/SYUSA/Manual20061003.pdf 平成21年6月25日 研究の世界Aクラスシンポジウム編集委員会担当者殿 投稿論文受付番号: 024 論文タイトル:BMI指標の落とし穴 拝復 標記の拙論文に対し、貴重なご意見やご指摘を賜り、誠にありがとうございます。頂きました 照会事項について下記の通り回答いたします。 記 査読者1 1) XXXについて、関連研究を十分に調査の上、提案手法の優位性について述べてください。 (査読 者からの照会事項を項目ごとに再記する) 【回答】ご指摘の箇所についてお答えいたします。・・・この件については・・・のように考えてお ります。しかしながら、このような御指摘を頂いたのは、表現が不適切であり誤解を招いたものと考 えます。・・・そこで検討の結果、本文中の「***(変更前)」という表現を「***(変更後) 」のように変更し、明確化を図りました。 ・・・以下同様 研究の世界入門B
  • 37. インパクトファクター(IF)について •IFとは •ISI社の調査対象のある雑誌に掲載された論文の平均 的な被引用数 前年と前々年に発表された論文が引用された数 前年と前々年に発表された論文数 •特定の研究分野における雑誌の影響度を測る客観的 指標として利用 • 全世界の約10万の学術雑誌中5686誌が対象 • 日本で発行される英文科学雑誌のうちIFが算定され ているのは、157誌 研究の世界入門B
  • 38. まとめ • 科学は証拠を要求する • 科学は説明し、予測する • 科学的方法は仮説検証と査読から構成さ れる • 科学知識は変更を余儀なくされるもので ある • 科学はすべての疑問に完全に答えること はできない • 科学的妥当性は0/1ではなく0.0~1.0 研究の世界入門B