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1 de 37
武田英明 朱成敏 竹崎あかね
農業・食品産業技術総合研究機構
国立情報学研究所
1
総合研究大学院大学
1
3
3
1,2
2
セマンティックWeb技術を用いた農業分野の標準語彙の構築
農業とAI 〜農業研究の面白さと難しさ〜
チュートリアル講演5
2021年度 人工知能学会全国大会 (第35回)
6月10日(木) 11:00~12:40 C会場
危機に立つ日本の農業
農業就業人口は260万人で5年前に比べて75万
人(22.4%)減少
農業就業人口の平均年齢は65.8歳
 農業人口の高齢化
[平成22年、農林水産省:農林水産統計]
 1農家当たり農地面積の増加
農業経営体の経営耕地面積は364万haとなり、5年前に比べて5万ha(1.5%)減少
1経営体当たり平均の経営耕地面積は2.2haとなり、5年前に比べて0.3ha増加
食糧の生産性の低下は基幹作業である農業分野における深刻な問題となり、
その解決策としてICTが注目される。
ICTによる農業の革新
営農システムによる作業計画の最適化、センシング技術による環境情報の収集、データ分析による知
識の継承と共有など、これまで経験と勘で行われてきた農業の様々な現場にICTシステムが導入されて
いる。
そして、導入された農業ICTシステムからは様々なデータが発生している。
 ICTによる先端農業の導入
データに基づく知識基盤農業
農業ICTシステムのデータにはあらゆる知識が含まれており、データを分析し、意思決定の手段として利
用すれば、精密で正確な知識基盤の農業が実現できる。
より効率的な営農、無人農業など、 AI農業を実現することで様々な農業分野の問題を解決できる。
 ICT農業からデータ基盤の農業へ
農業データにおける問題点(1)
農業ICTシステムから発生したデータを統合、分析することで状況の把握、作業の最適化、収穫量の
予測など国全体における方針の決定、食糧生産性の向上に繋がる。
 農業データの活用
[3] http://www.hitachi-solutions.co.jp/geomation_farm/sp/
[2] http://jp.fujitsu.com/solutions/cloud/agri/
[4] https://www.e-kakashi.com/
….
[1] http://www.aginfo.jp/PMS/
[1]
[2]
[3]
[4]
標準が
ない
データ連携・統合における基準となる
語彙の標準化が必要
しかし、これまでデータ作成において基準となる情報がなく、ベンダーそれぞれが独自で作ったデータ項
目で作成されたデータのため円滑な連携や統合が困難である。
農業データにおける問題点(2)
こういった背景から内閣府IT総合戦略本部は農業分野における情報創成・流通の促進のために農業
情報の相互運用性等の確保に資する標準化や情報の取扱いに関する政府横断的な戦略を策定し、
農業ITシステムで用いる名称に関する個別ガイドラインを発行し、推進するようになった。
 農業分野による標準語彙
しかし、当時のガイドラインは言葉を整理したものであり、階層の曖昧さや発行形式の機械可読性な
どデータの標準として用いるためには改善が必要であった。
農業ITシステムで用いる農作物の名称に関する個別
ガイドライン(試行版)
平成28年3月31日発行,
https://www.knowledge.maff.go.jp/uploads/H28-GL3.pdf
農業ITシステムで用いる農作業の名称に関する個別
ガイドライン(本格運用版)
平成28年3月31日発行,
https://www.knowledge.maff.go.jp/uploads/H28-GL1.pdf
共通農業語彙 (CAVOC : Common Agricultural Vocabulary)
農業・食品産業技術総合研究機構と国立情報学研究所は2014年11月から農業分野のICTシス
テムのデータ連携のための標準語彙を構築し、共通農業基盤(cavoc, http://cavoc.org)を通じて
推進する。
政府によって発行された既存語彙(PDF文書)をデータ化し、URIの構築と機械可読性がある形式で
加工・再発行を行う。
名称の整理だけではなく、オントロジー、シソーラス、ナレッジグラフなどセマンティックWeb技術を用いて
対象となるドメインの概念を整理し、既存語彙や関連情報との連携が可能な知識体系として構築を
行う。
ICTシステムでの利活用を考慮し、RDF, CSV, EXCELなど機械可読性がある形式での公開と、URI
やAPIなど関連サービスを開発し提供する。
 タスク
 目的
開発期間 : 2014年11月~2015年05月
1.農作業基本オントロジー
(AAO, Agriculture Activity Ontology)
http://cavoc.org/aao/
農作業基本オントロジー
1. 既存語彙の語彙
国際的な標準語彙であるAGROVOCは構造上の問題(シソーラス)と日本の状況に適合し
ていない。内閣官房によるガイドライン(PDF)は構造と「その他」など項目名に問題がある。
#代かき #代掻き
#しろかき #荒代かき
#均平化#かじり#整地
#保水#代掻き作業
2. ドメインの問題点
定義が明確ではない場合や、慣習によって名称と詳細が異
なる場合も多い。(いわゆる)暗黙知として扱われている。
→ 農作業について明確に定義を行う必要がある。
3. 利用目的
語彙の変換、営農データの分析・統計、情報の検索など
→ それぞれの概念が持つ意味に基づく階層構造が必要
 対象ドメイン : 農作業
2,3の背景から論理的構造を持つオントロジーとして構築することが最も適切だ
と判断
農作業基本オントロジー
 設計方針
- 農作業を属性を用いて定義
- 属性の値の関係から上下関係を定義
- 複数の目的を持つ多義的概念を導入
- 分類のための概念と用語
- 記述論理に基づく
- 同義語、英語名の収録
- 外部情報体系との連携
 農作業の定義
農作業を定義するために「目的」、「行為」、「対象」、「副対象」、「場所」、「手段」、「機資材」、
「対象作物」、「時期」、「作業条件」の属性を用い、その値で概念となる農作業名の定義を行う。
は種
[目的] 種子繁殖
[行為] 播く
[対象] 種子
直播
[目的] 種子繁殖
[行為] 播く
[対象] 種子
[場所] 圃場
[対象作物] イネ
湛水直播
[目的] 種子繁殖
[行為] 播く
[対象] 種子
[場所] 水田
[対象作物] イネ
 語彙の収集
統計資料、辞典などのリソース
農作業基本オントロジー
 農作業の構造化
は種
[目的] 種子繁殖
[行為] 播く
[対象] 種子
直播
[目的] 種子繁殖
[行為] 播く
[対象] 種子
[場所] 圃場
[対象作物] イネ
湛水直播
[目的] 種子繁殖
[行為] 播く
[対象] 種子
[場所] 水田
[対象作物] イネ
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:場所;
owl:allValuesFrom aaoprop:水田],
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:対象作物;
owl:allValuesFrom aaoprop:イネ]
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:場所;
owl:allValuesFrom aaoprop:圃場],
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:対象作物;
owl:allValuesFrom aaoprop:イネ]
圃場 > 水田
意味的包含関係を用いて階層構造を構築する
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:行為;
owl:allValuesFrom aaoprop:播く],
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:対象;
owl:allValuesFrom aaoprop:種子],
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:目的;
owl:allValuesFrom aaoprop:種子繁殖]
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:行為;
owl:allValuesFrom aaoprop:播く],
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:対象;
owl:allValuesFrom aaoprop:種子],
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:目的;
owl:allValuesFrom aaoprop:種子繁殖]
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:行為;
owl:allValuesFrom aaoprop:播く],
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:対象;
owl:allValuesFrom aaoprop:種子],
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty aaoprop:目的;
owl:allValuesFrom aaoprop:種子繁殖]
subClassOf
subClassOf
 URI
http://cavoc.org/aao/ns/4/A15
農作業基本オントロジー
http://cavoc.org/aao/ns/4/A15.ttl
階層構造
関連リンク
属性
名称情報
自動生成された説明文
農作業基本オントロジー
 更新履歴
- 語彙変換API
- 農作業語彙集
- データの公開(CSV・RDF)
(http://cavoc.org/)
- OWL推論(SWCLOS*)
- 農業経営統計調査の自動化
- 農業新聞の営農記事の分析
 提供サービス・関連研究
 社会的貢献
- 内閣府IT総合戦略本部が提示した「農業 IT システムで用いる農作業の名称に関する個別ガイ
ドライン(本格運用版)」 (平成28年度) 、「牛の粗飼料生産」に係る名称等に関する情報(暫
定版)」(令和2年度)などに反映
- 農業ITシステムで用いる台湾の食品安全プログラムである Traceable Agriculture
Product(TAP)に導入
- EU の Diversity International,フランスの INRA(French National Institute for
Agricultural Research)との研究協力
- 岩手県農業研究センターとの協力
Koide, S. (2011) Theory and Implementation of
Object Oriented Semantic Web Language, NII
論文,ID: 500000547373.
*
Version Date Concepts
4.03 2021-05-26 568
3.11 2020-08-24 482
3.01 2020-08-02 482
2.04 2020-07-06 475
2.01 2018-05-03 474
1.43 2017-06-13 413
1.41 2017-01-05 410
1.33 2016-09-23 374
1.31 2016-04-22 367
1.10 2016-02-12 330
1.00 2015-11-02 301
0.94 2015-05-12 177
0.88 2015-05-07 173
開発期間 : 2016年08月~2017年09月
2.農作物語彙体系
(CVO, Crop VOcabulary)
http://cavoc.org/cvo/
農作物語彙体系
1. 既存語彙の語彙
植物学的な分類(タクソノミー) と現場で用いられている農薬施用(農林水産省)、残留農薬
(厚生労働省)、栄養(文部科学省)を管理する農作物名、品種名などがある。
2. ドメインの問題点
- 農作物は植物学的に定義されているものが加工や流通において名称が変わる場合が多い(例:も
やしと大豆)。また、栽培方法によって名称が異なる場合もある(例:畑ワサビと水ワサビ)。
→ 対応関係を明確にする必要がある。
 対象ドメイン : 農作物
- 既存語彙の揺らぎ(ワサビの例)
適用農作物一覧(農林水産省)
食品分類表(厚生労働省)
日本食品標準成分表(文部科学省)
“わさび(根茎)” “わさび”
“わさびの根茎” “わさびの葉” “わさびの花”
“わさび”
→ 利用部位による分類とそれをまとめる総称を設ける。
農作物語彙体系
3. 利用目的
語彙の変換、フードチェーンにおけるデータの管理・統計、情報の検索など
→ 植物学的な定義を中心にそれぞれの概念が参照できる構造が必要
 対象ドメイン : 農作物
2,3の背景からシソーラスとして構築することが最も効率的だと判断
 設計方針
- 植物学的定義を利用(総称)
- 利用部位を下位概念とする構造
- 栽培方法は名称に表記(例:畑ワサビ)
- 既存語彙と対応関係を収録
- 同義語
- 外部情報体系との連携
 語彙の収集
適用農作物一覧(農薬使用、農林水産省)
食品分類表(残留農薬、厚生労働省)
日本食品標準成分表(栄養、文部科学省)
品種リスト(農研機構)
農作物語彙体系
オクラ(総称) オクラ(果実)
オクラ(花)
オクラ(農薬登録における適用作物名)
オクラの花(農産物等の食品分類表)
オクラ(農産物等の食品分類表)
花オクラ(農薬登録における適用作物名)
オクラ(日本食品標準成分表)
オクラ(Wikipedia日本語版)
c_8557(AGROVOC)
455045(NCBI)
 農作物の構造化
作物名(総称) 作物名(収穫部位1)
作物名(収穫部位2)
. . . .
収穫部位、栽培方法によって定義された個別の農作物が総称の下位概念となる。
(いわゆる植物名)
 URI
http://cavoc.org/cvo/ns/2/C11
農作物語彙体系
http://cavoc.org/cvo/ns/2/C11.ttl
関連リンク
名称情報
- さらに既存語彙についてもURIを構築
農作物語彙体系
http://cavoc.org/cvo/ns/syokuhin_genryou/オクラ
http://cavoc.org/cvo/ns/tekiyou_nousakumotu/オクラ
http://cavoc.org/cvo/ns/syokuhin_bunrui/オクラ
http://cavoc.org/cvo/ns/2/C823
農薬登録における適用作物名
農産物等の食品分類表
日本食品標準成分表
農作物語彙体系
農業ITシステムで用いる農作物の名称に関する個別ガイドライン
http://cavoc.org/cvo/ns/nousakumotumei_guideline/オクラ
ウィキペディア
AGROVOC
NCBI
オクラ
455045
オクラ
http://cavoc.org/cvo/ns/2/C823.ttl
 URI間のリンク
- 既存語彙についてもデータ化し、URIを構築。
- 農作物語彙体系を通じて語彙の変換、情報の問い合わせが可能。
- Wikipedia(DBpedia),AGROVOC,NCBIとの連携。
 更新履歴
- 語彙変換API
- 検索ツール
- データの公開(CSV・RDF)
(http://cavoc.org/)
- 統計調査の自動化
- 農業新聞の営農記事の分析
 提供サービス・関連研究
 社会的貢献
- 「農薬使用に関する作物分類(平成31年,農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬
対策室)」、「農業ITシステムで用いる農作物の名称に関する個別ガイドライン(第4版)」(令
和2年度)などに反映
- EU の Diversity International,フランスの INRA(French National Institute for
Agricultural Research)との研究協力
- 岩手県農業研究センターとの協力
農作物語彙体系
Version Date Concepts
2.03 2020-04-08 1,514
1.72 2020-01-14 1,446
1.61 2019-10-16 1,283
1.52 2018-05-02 1,249
1.15 2018-02-19 1,191
1.12 2018-01-10 1,191
1.05 2017-11-16 1,187
1.02 2017-10-19 1,188
1.01 2017-10-13 1,189
0.91 2017-09-14 1,198
0.82 2017-01-05 506
開発期間 : 2020年09月~2021年05月
3.ウシ用飼料オントロジー
(CFO, Cattle Feed Ontology)
http://cavoc.org/cfo/
ウシ用飼料オントロジー
1. 既存語彙
国内外の飼料成分表
2. ドメインの問題点
- 農作物が主な原料ではあるが、収穫時期や利用部位、加工・調整に
よって異なる飼料となる。特に既存語彙の目次を参照しないと名称だけ
では詳細の把握が混乱。
日本標準飼料成分表の例)
「アルファファ (1番草・開花初期) 」 → 生草
「アルファルファ (1番草・開花期) 水分50%以下」 → サイレージ
「アルファルファ (1番草・開花期) 」 → 乾草
→ 定義を明確にする必要がある。
 対象ドメイン : ウシ用飼料
- 飼料設計に主に用いられるため既存の成分情報との互換性を考慮する必要がある。
→ 既存語彙が参照できる構造が必要
ウシ用飼料オントロジー
3. 利用目的
飼料設計システムのデータ分析・連携、情報の検索
→ 飼料の定義を明確にしながら、対応関係を中心とする構造が必要
 対象ドメイン : ウシ用飼料
2,3の背景からオントロジーとして構築することが最も効率的だと判断
 設計方針
- 飼料を定義するための属性を設ける
- 定義された飼料を総称飼料名として定義
- 属性に基づいた構造化
- 詳細を名称に表記・整理、
- 既存飼料名を総称の下位概念とする
- 同義語
- 外部情報体系との連携
 語彙の収集
日本標準飼料成分票(農研機構)
公定規格(農林水産省)
NRC乳牛飼養標準(米National Research
Council)
定義方と参照方
ウシ用飼料オントロジー
 飼料の定義・構造化
原材料 利用部位
トウモロコシ
加工方法
地上部 サイレージ
種子 乾燥
乾燥・ 挽割
総称飼料名
トウモロコシ(サイレージ)
トウモロコシ穀実(乾燥)
トウモロコシ穀実(乾燥・ 挽割)
トウモロコシ穀実
トウモロコシ穀実(乾燥・挽き割り)
トウモロコシ穀実
トウモロコシ穀実(EE7%)
トウモロコシ穀実(乾燥)
トウモロコシ(サイレージ・NDF45%未満)
トウモロコシ(糊熟期・サイレージ)
飼料名
- 総称飼料名は原材料、利用部位、加工方法で定義される。
- 飼料名は原材料と利用部位、加工方法が一致する総称飼料名の下位概念となる。
(定義された概念) (既存飼料名との対応)
ウシ用飼料オントロジー
 飼料の定義・構造化
飼料
ウシ用飼料
cfo:FG601 a owl:Concept;
rdfs:subClassOf cfo:FG600
[ a owl:Restriction;
owl:onProperty cfo:対象;
owl:allValuesFrom "ウシ"];
skos:prefLabel "ウシ用飼料"@ja.
トウモロコシ(サイレージ)
cfo:FG457 a owl:Concept;
rdfs:subClassOf cfo:FG601
[ a owl:Restriction;
owl:onProperty cfo:加工方法;
owl:allValuesFrom “サイレージ”],
[ a owl:Restriction;
owl:onProperty cfo:利用部位;
owl:allValuesFrom "地上部"],
[ a owl:Restriction;
owl:onProperty cfo:原材料;
owl:allValuesFrom "トウモロコシ"];
skos:related cvo:C291;
skos:prefLabel "トウモロコシ(サイレージ)"@ja.
トウモロコシ(糊熟期・サイレージ)
cfo:FS930 a owl:Concept;
rdfs:subClassOf cfo:FG457;
skos:related cvo:C291;
skos:altLabel "Corn (Dough stage, whole country)"@en;
skos:prefLabel "トウモロコシ(糊熟期・サイレージ"@ja.
ID:FS930
ID:FG457
ID:FG601
ID:FG600
cfo:FG600 a owl:Concept;
skos:prefLabel "飼料"@ja.
サイレージ
地上部
トウモロコシ
C291
加工方法
利用部位
原材料 農作物語彙体系
農作物語彙体系
Corn (Dough stage, whole country)
英語名
ウシ
対象
別名
- それぞれの総称名と標準飼料名にはIDを付与して管理する。
- トップ概念は「飼料」とし、属性「対象」を「ウシ」とする「ウシ用飼料」がその下位概念とな
る。定義した総称は「ウシ用飼料」の下位概念となる。
- 英名と別名、農作物語彙体系の情報を追加。
ウシ用飼料オントロジー
 URI
http://cavoc.org/cfo/ns/2/FS461
http://cavoc.org/cfo/ns/2/FS461.ttl
対応する既存飼料
名称情報
飼料の定義
 更新履歴
- 語彙変換API
- データの公開(CSV・RDF)
(http://cavoc.org/)
(他、現在検討中)
 提供サービス・関連研究
 社会的貢献
- 内閣府「農業ITシステムで用いる「牛の粗飼料生産」に係る名称等に関する情報」の
次期版に協力中
ウシ用飼料オントロジー
Version Date Concepts
2.05 2021-05-11
Generic Feed Names : 636
Feed Names : 1,245
2.02 2021-05-04
Generic Feed Names : 636
Feed Names : 1,245
1.05 2020-11-16
Generic Feed Names : 602
Feed Names : 1,210
1.02 2020-10-16
Generic Feed Names : 601
Feed Names : 1,243
農業語彙のナレッジグラフ化
“イネ(サイレージ)”@ja
http://cavoc.org/cfo/ns/1/FG444
“飼料用品種水稲(完熟期・サイレージ)”@ja
http://cavoc.org/cfo/ns/1/FS1145
rdfs:subClassOf
地上部
サイレージ
owl:onProperty 加工・調整方法
owl:onProperty 加工・調整方法
owl:onProperty 利用部位
owl:onProperty 利用部位
イネ
owl:onProperty 原材料
owl:onProperty 原材料
“Rice(silage)”@en
“Rice(forage variety, full ripe stage,
silage)”@en
skos:prefLabel skos:preLabel
cfo:FG444
cfo:FS1145
skos:preLabel
skos:prefLabel
cvo:C1486
http://cavoc.org/cvo/ns/2/C1486
skos:relatedMatch
“飼料用イネ”@ja
“Forage rice plant”@en
skos:prefLabel
skos:preLabel
“사료용벼”@ko
skos:prefLabel
Oryza sativa
skos:altLabel
“イネ科”@ja
skos:scopeNote http://cavoc.org/cvo/ns/2/C1
“イネ”@ja
“Rice plant”@en
skos:prefLabel
skos:preLabel
Oryza sativa
skos:altLabel
“イネ科”@ja
skos:scopeNote
skos:broader
“벼”@ko
skos:prefLabel
skos:closeMatch
NCBI taxonomy ID : 4530
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?mode=Info&id=4530
AGROVOC ID : C_5438
http://aims.fao.org/aos/agrovoc/c_5438.html
Wikipedia(DBpedia) : イ
ネ
skos:closeMatch
http://cavoc.org/cvo/ns/tekiyou_nousakumotu/稲
skos:closeMatch
適用農作物一覧:稲
skos:closeMatch
skos:exactMatch
http://cavoc.org/aao/ns/property/対象作物/イネ
http://cavoc.org/aao/ns/3/A13
skos:relatedMatch
aao:A13
“苗箱播種”@ja
“Seeding in nursery
box”@en
skos:altLabel
http://cavoc.org/aao/ns/3/A14
“直播”@ja
“Direct seeding in paddy
field”@en
skos:altLabel skos:preLabel
aao:A14
http://cavoc.org/aao/ns/3/A15
“湛水直播”@ja
“Direct seeding in flooded paddy
field”@en
skos:altLabel
skos:preLabel
aao:A15
skos:relatedMatch
rdfs:subClassOf
http://cavoc.org/aao/ns/property/目的/種子繁殖
http://cavoc.org/aao/ns/property/対象作物/イネ
owl:onProperty 対象作物
イネ
種子繁殖
owl:onProperty 目的
Wikipedia(DBpedia) :湛水直播栽培
skos:closeMatch
農業技術事典:湛水直播
skos:closeMatch
cvo:C1
ウシ用飼料オントロジー 農作物語彙体系
農作業基本オントロジー
- 農作業、農作物、飼料に関連するあらゆる情報の利用が可能
比較
 ドメインの詳細(定義)
農作業 農作物 飼料(ウシ用)
(定義する)対象と既存
の概念が一致
例)種をまく作業は播
種
定義する対象と既存の概念が
一致しない
(①植物としての作物ではない
②加工によって変わる)
例)大豆ともやし、枝豆
(定義する)対象と既存の
概念が部分的一致
(②加工調製によって変
わる)
例)成分によって複数存
在する場合がある
概念に対する既存の定
義がない
(暗黙的に行われてきた
作業)
概念に対する既存の定義
がある
(植物学的定義)
概念に対する既存の定
義が一部ある
(植物学的定義だけでい
いものとそうではないもの
が混在)
比較
 ドメインの詳細(既存の関連リソース)
農作業 農作物 飼料(ウシ用)
(暗黙的)合意による名称 植物としての名称がある 既存の名称がある
既存の関連リソースがあ
まりない
関連する既存のリソースが
複数ある
例)複数の政府機関が
発行した名称のリスト
関連する既存のリソースが
複数ある
例)複数の団体が発行し
た飼料の成分表
→ 参照を重視 → 参照を重視
→ 概念の定義を重視 → 概念の定義を重視
 設計に必要な条件
比較
 構築手段
農作業 農作物 飼料(ウシ用)
オントロジー シソーラス オントロジー
 構築コスト
- 設計期間が長い
(定義に必要な属性値の
選択と包含関係の確認)
- 更新に手間がかかる
(属性、構造など論理的矛
盾のチェックが必要)
- 設計期間が短い
(構造が簡単)
- 更新は比較的に簡単
- 設計期間が長い
(定義に必要な属性値の
選択)
- 更新は普段は農作業
と農作物の間
(総称の属性のみ確認す
れば良い)
比較
 利活用
農作業 農作物 飼料(ウシ用)
- 標準語彙
- 語彙の変換
- 関連情報の取得
- 検索キーワードの拡張
- 広い範囲の関連検索
- 上位概念によるデータの
統合
- (属性を用いた)効率的
な探索
- (特定属性に注目した)
構造の細分化
- (属性を用いた)自然言
語処理の基盤
- 推論
- 説明可能なAI
- 標準語彙
- 語彙の変換
- 関連情報の取得
- 検索キーワードの拡張
- 低いレベルの関連検索
- 上位概念によるデータの
統合
- 標準語彙
- 語彙の変換
- 関連情報の取得
- 検索キーワードの拡張
- 関連検索
- 上位概念によるデータ
の統合
- (属性を用いた)効率
的な探索
- (特定属性に注目し
た)構造の細分化
比較
 まとめ
- 概念の定義が必要な場合はオントロジーが、対応関係など参照するだけが要
求される場合はシソーラスが適切な標準語彙の構築手段である。
- 標準語彙を目的としてオントロジーを構築する場合は、概念の定義と構造の論
理性を厳密にする必要があるため、相対的にコストがかかるが、幅広い利活用
が期待される。
- ドメインの特徴や収録する概念の数、利用場面に応じて構築手段を選択する
ことが重要である。
ドメイン専門家との協業
 3つの壁
- 分野の壁 : 知識、ドメインの慣習や観点の違いなど
→ お互いの分野についてある程度の知識必要。
共有しやすいツールの選択と十分なコミュニケーション
- 現場の壁 : 問題認識の違い
こちらが理解していたことと異なる場合も、、
→ 見学は大事です!本当大事です。
特に農業では実際の現場をみないと、わからないことが多い。
- 行政の壁 : 形式や構造が情報やデータの利用に向いてない形式で発行される場合もある。
(稀に協力的ではない場合もある。。)
→ これは頑張るしかありません。
担当者がデータの標準化と利用に前向きな方でしたらすごい力になる。
- 知識の定義、ドメインのガバナンス、検証、横展開はドメイン専門家しかできないこと。
- 各プレーヤーとの円滑な協業を通じてドメインに最も必要とされるものが作れる。
まとめ
農業分野の標準語彙の構築に関わって思った..
面白さ
難しさ
- 農業の歴史が長い分、例外や
意味の多様性が多く、対応が困
難な場合が多い。
- 日本国内では前例がなく、関連
研究や資料が不足。
- 標準語彙の必要性について共
感を得ることがなかなか難しい。
- そもそも農業そのものが難しい。
- ...などの難しさをセマンティック
Webの関連技術を活用し一つ
一つ解決していく達成感。
おわりに
http://cavoc.org/
関連語彙、データは共通農業語彙
(CAVOC, Common Agricultural
VOCabulary)にて公開中

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