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: 重回帰の結果に基づき「介入」する前に
林 岳彦
2017年3月15日(水) 18:00-20:00 生態学会自由集会
『データ解析で出会う統計的問題:原因→結果の統計モデリング』
1
国立環境研究所環境リスク・健康研究センター
生態学者のための統計的因果推論入門
【Preview版スライド】
2
特に何も考えずに集められ
た野外調査データを何も考
えずに解析して因果関係の
議論をするなんて、野外で
捕獲した野生生物をそのま
ま刺し身で喰うようなもの
です(危険が危なすぎる)
3
ジビエ→
どんな「寄生虫」や「病原
菌」にまみれているかわか
らん
調査観察データ→
どんな「交絡」にまみれて
いるかわからん
4
本日は、調査観察データの
"火の通し方"を教えます
本日の話(もくじ)
5
II. 6ステップで説明するバックドア基準入門
1. 前置き
2. バックドアパスをイメージしよう
3. まずは2変量(x,y)を考える
ネオニコチノイド系農薬のミツバチコロニーへの影響についての既往研
究論文(Budge et al. 2015)の再解析
4. 3変量(x,y,z)で見る基本的論理
5. 4変量以上の場合を見る
6. "まとめ"としてのバックドア基準
III. 環境リスク分野でのバックドア基準の”使用”例
I. なぜ「因果推論」か?
なぜ「因果推論」か? | "相関と因果は違う"
6
 散布図上の相関関係からの素朴な予測や期待と
因果効果(介入効果)がズレることがある
1年間でゲームに費やした時間
1
年
間
で
の
身
長
の
伸
び
ゲームすれば
背が伸びる!
中学二年生に対する調査データ(仮想のもの)
p < 0.001
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7
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間
で
の
身
長
の
伸
び
ゲームすれば
背が伸びる!
中学二年生に対する調査データ(仮想のもの)
p < 0.001
女子
男子
身長 ゲーム
性別
なぜ「因果推論」か? | 介入効果を考える
8
「介入の効果」は相関関係だけからでは分からない
河川中の亜鉛濃度 (μg/L)
底
生
生
物
の
種
数
亜鉛の影響で
底生生物が減少?
上流側:低BOD
下流側:高BOD
亜鉛の環境基準値
30μg/L
亜鉛と底生生物の散布図(仮想のもの)
なぜ「因果推論」か? | 介入効果を考える
9
「介入の効果」は相関関係だけからでは分からない
河川中の亜鉛濃度 (μg/L)
底
生
生
物
の
種
数
亜鉛の環境基準値
30μg/L
BODによる偽相関(交絡)の影響を統計的に除去
介入効果の議論には、他の要因による余分な影響を除
外した原因→結果の因果関係を捉えることが必須
環境基準値を守る
意味はあるのか?
なぜ「因果推論」か?| 方法論はあります
10
• RCT(ランダム化比較試験)による実験
 分野によっては方法論は浸透・進展している
生態学界隈での理解度は非常に低い (査読からしてザルすぎる)
• 重回帰分析による交絡要因の調整
• 層別化・マッチング
• 差分の差、回帰分断デザイン etc...
本日は生態学者に馴染み深い重回帰の話を中心にお話します
II. 6ステップで説明するバックドア基準入門
11
1. 前置き:交絡、内生性、バックドアパス
2. バックドアパスをざっくりとイメージしよう
3. まずは2変量(X,Y)から考える
4. 3変量(X,Y,Z)で理解する基本的ロジック
5. 4変量以上(X,Y,Z1,Z2...)では「道」に着目
6. "まとめ"としてのバックドア基準
+フォローアップ:事例と補遺
12
プレビュー版のため
途中は省略
詳細は学会会場で
議論 |「お前のそのモデルは正しいのか?」
めちゃくちゃ嬉しい!
我々は生態学者として
もっとそういう
議論こそをするべき
だと思うんです!
因果
モデル
介入効果
推定
信頼性があがる(一般化可能性の議論なども深まる)
生態学上のさらなる研究テーマが見えてくる
(査読においてもそういう議論をもっと
重視するべき!)
14
プレビュー版のため
以下も略
詳細は学会会場で

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