八戸市郊外にある「金吹沢ラジウム鉱泉」の廃墟を舞台にした21日間のアートプロジェクト企画。 テーマは「聖地巡礼」。 聖地とは「日常の世界とは時間の流れが異なる場所」という解釈に基づき、通常とは異なる時間の体験を目指す。 念頭に置いたのは修道院生活や湯治。 芸術公舎主催イベント「みちのくアート巡礼CAMP2015」にてプレゼン済み。

1. 檀原 照和
Dambala Tell-Kaz

2. Radium
Water
Commune

3. 聖域
• 聖域とは時間の止まった場所である
なぜ？
誰も立ち入ることが出来ないから。
→経済発展や社会の進歩から距離を置いた空間
即ち聖域とは、無時間的な空間である
→伝統はあるが、世俗的な意味での歴史が更新されない

4. 巡礼とは、
歴史の真空地帯に行くこと

6. 金
吹
沢
ラ
ジ
ウ
ム
鉱
泉


11. 金吹沢鉱泉は大正期に
なってから本格利用が
始まった歴史の浅い温泉
• 湯治施設にも係わらず、歴史がない
• 温泉にありがちな伝説（動物にまつわる湯の発見話など）
がない
・沸かし湯ということもあってか、行楽的な要素が極端
に少ない

12. 期間限定のアートプラットフォームをつくる
檀原は企画者兼プロデューサーとして関わる

13. 温泉療養の期間は概ね3週間
「湯治は、七日一回り、三回りを要す」

14. ありあまる時間はなにをもたらすか？
• 入浴と食事以外、とくにやることのない日々
• 毎日顔を合わせ、裸の付き合いをする同宿の湯治客
• 周囲には木々の緑と沼以外、とりたてて何もない
• この環境で生まれる「かりそめのコミューン」は、どん
な世界を見せてくれるのか？

15. 金吹沢庭園の配置

18. 利用者 時代 表象
タタラ踏み（刀鍛冶・貨幣
鋳造）
中世・近世（？） 金吹神社の湧水
藩主（鷹狩り） 江戸期（？） 杉の大木
病人・怪我人（主に老人） 大正時代以降 診療所、温泉施設
憩いの場の利用者 1970年代以降 森、桜並木、野草
（周辺地域：戦後開拓団） 終戦後 牧場
金吹沢の利用者とその表象

19. 五つの表象は、すべて沼
をとりまくように配置さ
れている

22. 白堰神社
• 由来が定かではない神社。
• 沼の龍を祀っていると言われるが、龍の伝説はすでに絶
えて久しい。
→八戸は妖怪伝説が多い町だが、この沼の龍の話は知ら
れていない
• 記憶が失われた場所

25. 水を中心に利用されてきた人外の聖域だった
• 鷹狩りの休息地として
• 刀剣や貨幣鋳造の地金づくりの拠点として
限られた者だけが使ってきた特別な場所
→伝説・伝承が立ち消えている
→大正期に利用が始まった湯治場、 戦後まで手つかずだった里山

26. 巡礼に奥行きを与える八戸の文化背景

27. 近代以降の東北研究は柳田国男の『遠野物語』に端を
発するが、八戸と遠野は縁が深い。
• 青森の東半分および岩手の北半分を治めた南部藩。
• 八戸の根城南部氏は、1627年に盛岡南部（本家筋）の命令で遠野
へと国替えさせられた。つまり、八戸は遠野の故地に当たる。
• 八戸で語られていたことが遠野でも語り伝えられている。
• →カッパの民話が多い遠野だが、『遠野物語』収録のカッパ噺
の多くは、実は八戸から引き継がれているという 。

28. 八戸観光コンベンション協会主宰の口寄せ
駅前で死者と対話
• 八戸観光コンベンション協会は2009〜2013年にかけて、
市内在住のイタコによる口寄せを継続的に主宰している。
• 恐山まで行かなくていい便利さが好評で県内外から応募
があり、初年度は約４００件（霊）を呼び出した。１０
年度から７〜１１月の毎月１〜５日を「イタコの日」と
定例化して力を入れた結果、３９８件の依頼を受けた。
• 東日本大震災のあった2011年は「亡くなった肉親の声を
聞きたい」という被災者の依頼を含めて、６月から１０
月までに計３２９件を呼び出した。

30. 金吹沢は長いこと、特別な人間だけが
立ち入ることの出来る場所、つまり
「時間が更新されない場所」だった。
その中心にラジウム水をたたえた沼がある。