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GEリバース・イノベーション戦略
1. GEにおけるグローバル戦略の捉え方の整理


                  グローカリゼーション                  リバース・イノベーション
                                          製品が、そもそも新興経済の市場向けに開発され、そ
                                          の後アメリカに代表される先進国でも販売されること
             優れた製品を自国で開発し、地域特性に合わせて一
                                          で新たな利用法も生まれる
             部改良する
                                          中国やインドなどの地域において、ハイエンドのみな
    概要       コストの最小化に不可欠なグローバル化と市場シェア
                                          らず、市場のさらなる拡大を図るため、またこれらの
             の最大化に必要なローカル化のトレードオフを最適化
                                          地域の現地企業(新興国の大手企業)が類似品を開
             する戦略
                                          発し、先進国市場に進出してくる機先を制するための
                                          戦略


             先進国が市場全体の大半を占め、その他の国には       中国やインドなどの膨大な人口を抱える国が急速に
   時代背景
             大きなビジネスチャンスがなかった時代           発展する一方、豊かな国の成長が鈍化


             中央集権的で製品中心の組織構造と経営慣行         分散型で地域市場を志向
             権限と損益責任は、先進国に本部を置く各グローバ      ここに投入される人材と資源のほとんどすべてを、地
             ル事業ユニットが統括                   域市場に配置し管理
             またR&D、製造およびマーケティングなど主要な職能    これらのローカルグロースチームにはここに損益責任
             は本社で一括管理                     を負わせる一方、地域特性に応じた製品の開発、製
             研究所と製造業務の一部は、海外人材の採用とコス      造、営業、サービスに関する権限、そして世界各国の
             ト削減のために国外に移転されたとはいえ、主に先進     自社の資源を利用できる権限が必要
             国向けが中心

                  グローバル型組織モデル                      統合ネットワーク
   組織構造
                            ※色の濃淡は権限の                    ※色の濃淡がない
                            強さを表しており、色                   =権限が個々の現地
                            が濃い程権限が強い                    法人に分散
                            =中心の色が濃く中
                            央集権的組織を表す

             問題は、グローカリゼーションとリバース・イノベーションは相容れないこと
             グローカリゼーションは今後も重要な戦略であり続けるだろう事から単純に置き換えることもできない
             多国籍企業のグローカリゼーションを成功に導いてきた、中央集権的で製品中心の組織構造と経営慣行は、分
             散型で地域市場を志向するリバース・イノベーションの足かせになる


2.ローカル・グロース・チームの誕生

         グローカリゼーション                           リバース・イノベーション
                                         リバース・イノベーションで最も重要なのは新興市場で製
長い時間をかけて出来上がった組織構造、経営慣行、態
                                         品やビジネスモデルのイノベーションが次々に生まれるよ
度でありこれを変えるのは至難の業である
                                         うに、自社に新しい形態の組織をよういすること



 新しい組織形態を開発するため、GEは何とか障害を乗り越え、成功を果たしたグループを社内から見つけ出した


発見されたGE社内の成功事例

[超音波事業ユニットが複数存在するという変則的な組織体制]
超音波事業の主要セグメントは三つあり、それぞれが全く性格が異なっているにもかかわらず、この事業を立ち上げた当初、GEではグロー
カリゼーション・モデル=垂直統合されたグローバル組織を作ろうとしていた



同事業の責任者として招聘されたオマー・イシュラクは、それぞれ業務を統合してしまうと、最大公約数しか得られずどのセグメントも成功で
きないと考え、三種類の独立事業として運営し、それぞれに損益責任を負わせ、自分に直接報告する事を義務づけた



中国でポータブル超音波診断装置の開発が始まると、イシュラクはこの新規事業とハイエンド製品を中心とした既存の三ユニットとの間には
共通点がほとんどないことに気が付き、四つ目の独立ユニットを立ち上げた
これが発展し「ローカル・グロース・チーム」(LGT)が生まれた
GEリバース・イノベーション戦略
3.ローカル・グロース・チームの五原則

      成長が見込める地域に権限を移転する
①     自律的に行動できなければLGTはグローバル事業に手足を縛られてしまい、新興国市場の顧客が抱えている問題に集中できない。
      つまり、独自の戦略、組織、製品を開発する権限が必要である。

      ゼロから新製品を開発する
②     先進国と新興国の間には、所得や社会インフラの格差、持続可能性に対する温度差が大きい事を考えると、リバースイノベーション
      はゼロからの出発でなければならない。グローバル製品のカスタマイズでは、このような大きなギャップを埋めることはできない。

      新会社と同じく、ゼロからLGTを立ち上げる
③     ゼロから組織を設計して、初めてゼロからのイノベーションが生まれる。

      独自の目的、目標、評価基準を設定する
④     イノベーション活動はそもそも先が読めない。したがって、あらかじめ設定された目標値を達成する事により、仮説を効率的に検証し
      て素早く学習する事が重要である。LGTの評価基準や価値基準は既存事業のそれとはたいてい異なる。

      経営陣はLGTを直属におく
      LGTは、経営陣の強力な支援がなければ成功しない。また、LGTを監督するビジネスリーダーには大切な役割が三つある
      ・LGTとグローバル事業の対立を仲裁する
⑤     ・LGTがグローバルR&Dセンターなどの資源を使えるようにする
      ・LGTが開発したイノベーションを先進国に導入する際、その支援に回る
      これらすべてをこなせるのは、グローバル事業ユニットのシニア・マネージャーもしくはその事業の統括責任者しかいない


4.今後の展開

・中国とインドには現在LGTが10以上ある
・GEの中国事業は2009年、25%成長する見通しであり、これはLGTにおうところが大きい
・しかしその進捗は、チームによってまちまち=医療、発電および配電など、ビジネスチャンスをつかまえて成長している事業もあれば、まだ
道半ばという事業もある
・中国とインドのR&Dセンターは、新興国が抱える問題により注目するようになったとはいえ、その資源の大部分はまだ先進国向けプロジェ
クトに使われており、道程はまだ長い
・インドにおいて最大の実験を始める=インド国内の全事業を統合し、インドだけのP&Lを作成し、また全世界のR&D資源を利用できるよう、
この新しい組織に大きな裁量を与えることに取り組んでいる


[参考]GE Company Organization Chart   Last Update April 2010

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Geリバースイノベーション戦略まとめver1.0

  • 1. GEリバース・イノベーション戦略 1. GEにおけるグローバル戦略の捉え方の整理 グローカリゼーション リバース・イノベーション 製品が、そもそも新興経済の市場向けに開発され、そ の後アメリカに代表される先進国でも販売されること 優れた製品を自国で開発し、地域特性に合わせて一 で新たな利用法も生まれる 部改良する 中国やインドなどの地域において、ハイエンドのみな 概要 コストの最小化に不可欠なグローバル化と市場シェア らず、市場のさらなる拡大を図るため、またこれらの の最大化に必要なローカル化のトレードオフを最適化 地域の現地企業(新興国の大手企業)が類似品を開 する戦略 発し、先進国市場に進出してくる機先を制するための 戦略 先進国が市場全体の大半を占め、その他の国には 中国やインドなどの膨大な人口を抱える国が急速に 時代背景 大きなビジネスチャンスがなかった時代 発展する一方、豊かな国の成長が鈍化 中央集権的で製品中心の組織構造と経営慣行 分散型で地域市場を志向 権限と損益責任は、先進国に本部を置く各グローバ ここに投入される人材と資源のほとんどすべてを、地 ル事業ユニットが統括 域市場に配置し管理 またR&D、製造およびマーケティングなど主要な職能 これらのローカルグロースチームにはここに損益責任 は本社で一括管理 を負わせる一方、地域特性に応じた製品の開発、製 研究所と製造業務の一部は、海外人材の採用とコス 造、営業、サービスに関する権限、そして世界各国の ト削減のために国外に移転されたとはいえ、主に先進 自社の資源を利用できる権限が必要 国向けが中心 グローバル型組織モデル 統合ネットワーク 組織構造 ※色の濃淡は権限の ※色の濃淡がない 強さを表しており、色 =権限が個々の現地 が濃い程権限が強い 法人に分散 =中心の色が濃く中 央集権的組織を表す 問題は、グローカリゼーションとリバース・イノベーションは相容れないこと グローカリゼーションは今後も重要な戦略であり続けるだろう事から単純に置き換えることもできない 多国籍企業のグローカリゼーションを成功に導いてきた、中央集権的で製品中心の組織構造と経営慣行は、分 散型で地域市場を志向するリバース・イノベーションの足かせになる 2.ローカル・グロース・チームの誕生 グローカリゼーション リバース・イノベーション リバース・イノベーションで最も重要なのは新興市場で製 長い時間をかけて出来上がった組織構造、経営慣行、態 品やビジネスモデルのイノベーションが次々に生まれるよ 度でありこれを変えるのは至難の業である うに、自社に新しい形態の組織をよういすること 新しい組織形態を開発するため、GEは何とか障害を乗り越え、成功を果たしたグループを社内から見つけ出した 発見されたGE社内の成功事例 [超音波事業ユニットが複数存在するという変則的な組織体制] 超音波事業の主要セグメントは三つあり、それぞれが全く性格が異なっているにもかかわらず、この事業を立ち上げた当初、GEではグロー カリゼーション・モデル=垂直統合されたグローバル組織を作ろうとしていた 同事業の責任者として招聘されたオマー・イシュラクは、それぞれ業務を統合してしまうと、最大公約数しか得られずどのセグメントも成功で きないと考え、三種類の独立事業として運営し、それぞれに損益責任を負わせ、自分に直接報告する事を義務づけた 中国でポータブル超音波診断装置の開発が始まると、イシュラクはこの新規事業とハイエンド製品を中心とした既存の三ユニットとの間には 共通点がほとんどないことに気が付き、四つ目の独立ユニットを立ち上げた これが発展し「ローカル・グロース・チーム」(LGT)が生まれた
  • 2. GEリバース・イノベーション戦略 3.ローカル・グロース・チームの五原則 成長が見込める地域に権限を移転する ① 自律的に行動できなければLGTはグローバル事業に手足を縛られてしまい、新興国市場の顧客が抱えている問題に集中できない。 つまり、独自の戦略、組織、製品を開発する権限が必要である。 ゼロから新製品を開発する ② 先進国と新興国の間には、所得や社会インフラの格差、持続可能性に対する温度差が大きい事を考えると、リバースイノベーション はゼロからの出発でなければならない。グローバル製品のカスタマイズでは、このような大きなギャップを埋めることはできない。 新会社と同じく、ゼロからLGTを立ち上げる ③ ゼロから組織を設計して、初めてゼロからのイノベーションが生まれる。 独自の目的、目標、評価基準を設定する ④ イノベーション活動はそもそも先が読めない。したがって、あらかじめ設定された目標値を達成する事により、仮説を効率的に検証し て素早く学習する事が重要である。LGTの評価基準や価値基準は既存事業のそれとはたいてい異なる。 経営陣はLGTを直属におく LGTは、経営陣の強力な支援がなければ成功しない。また、LGTを監督するビジネスリーダーには大切な役割が三つある ・LGTとグローバル事業の対立を仲裁する ⑤ ・LGTがグローバルR&Dセンターなどの資源を使えるようにする ・LGTが開発したイノベーションを先進国に導入する際、その支援に回る これらすべてをこなせるのは、グローバル事業ユニットのシニア・マネージャーもしくはその事業の統括責任者しかいない 4.今後の展開 ・中国とインドには現在LGTが10以上ある ・GEの中国事業は2009年、25%成長する見通しであり、これはLGTにおうところが大きい ・しかしその進捗は、チームによってまちまち=医療、発電および配電など、ビジネスチャンスをつかまえて成長している事業もあれば、まだ 道半ばという事業もある ・中国とインドのR&Dセンターは、新興国が抱える問題により注目するようになったとはいえ、その資源の大部分はまだ先進国向けプロジェ クトに使われており、道程はまだ長い ・インドにおいて最大の実験を始める=インド国内の全事業を統合し、インドだけのP&Lを作成し、また全世界のR&D資源を利用できるよう、 この新しい組織に大きな裁量を与えることに取り組んでいる [参考]GE Company Organization Chart Last Update April 2010