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SVOD市場におけるPaid Peering導入の影響
中央大学 実積寿也
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会( 1
研究背景
米Netflix, Inc.およびその韓国子会社であるNetflix Services Korea Ltd.が、SK Broadband,
Inc.がNetflixコンテンツの配信のために増設した(と主張する)回線費用に関し、支払い分
担義務の不存在を主張した。ソウル中央地裁は、当該主張を却下する判決を2021年6月25
日に下した。
本判決は、ネット中立性の文脈で、暗黙の前提条件とされてきた「ISPは自身の直接の顧
客ではないコンテンツ・アプリケーション事業者(CAP)に課金しない」というビジネス
慣行(zero price rule、ZPR)に一定の疑問を投げかけたものと言える。
本判決を題材に、サブスクモデル(SVOD)を採用するコンテンツ事業者が一定の市場支
配力を行使する市場において、ISP市場における競争を明示的に考慮しつつ、ZPRを維持
すること(もしくは、有料ピアリングを導入すること)の経済的効果を分析する。
◦ 本報告は、2021年度秋季(第45回)情報通信学会大会での筆者報告(Zero Price Ruleの経済合理
性について―韓国NETFLIX訴訟に関する経済分析―)を一歩深めたもの
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会( 2
NetflixとSKの論争の経緯
Netflixのコンテンツ利用急拡大に対応するため、SKが増設した日韓海底ケーブ
ルの費用の負担をNetflix側に求めたことが発端。その後、費用負担対象に韓国・
香港間ケーブル増設費用および韓国国内のSKネットワーク利用費用が包含
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
2018/4/4 NetflixとSKは、韓国のユーザーの需要に対応するため、東京
IXで相互接続を開始。日米間の海底ケーブル敷設費用はNetflix
が、日韓間の海底ケーブル敷設費用はSKが負担。その後、需要
増に対応するため、NetflixとSKはそれぞれ容量を増加。
2018/10/22 SKは、動画トラフィック激増によるコスト増を補うため、
Netflixにネットワーク使用料の支払いを要求。
2019/11/12 SKは、日韓海底ケーブルの高速化費用をNetflixに負担させる
べく、韓国通信委員会に裁定を申請(現在、この裁定は中断)。
2020/1/1 NetflixとSKは、香港で直接相互接続を開始。
2020/4 Netflixは、SKのネットワークについて交渉や支払いの義務が
ないことの確認を求め、ソウル中央地裁に提訴。
2021/6/25 ソウル中央地裁判決
1. 本件は、トラフィックの不合理な差別を禁止する「ネット
中立性」とは直接関係ない。
2. 交渉・支払義務の不存在の訴えは却下。
3. 支払い態様・金額等については当事者間の交渉で決定。
2021/9/30 SKが反訴、過去3年分のネットワーク使用料の支払いを要求。
2021/11/5 Netflixはソウル高等法院に控訴
3
類似例ではいずれもISP側の主張が勝利
The Case Against ISP Tolls (Netflix, 2014/4/24)
◦ コンテンツ事業者が有料ピアリングを強いられたケース
◦ Netflixは、コムキャストのネットワーク上での会員の映
像体験が許容できないほど低下していることを解消す
るため、コムキャストに直接相互接続の対価を支払う
ことに合意
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
Source: http://blog.netflix.com/2014/04/the-case-against-isp-tolls.html
France Telecom vs. Cogent (2012/9/20)
◦ eyeball ISPに大量のコンテンツを送り込んでいるISP
(Cogent社)が有料ピアリングを強いられたケース
◦ 問題を引き起こしていた要因の一つはCogentの顧客で
あったMegaUpload
Source: https://www.autoritedelaconcurrence.fr/fr/communiques-de-
presse/20-septembre-2012-trafic-internet-accords-de-peering
4
モデルの基本設定
先行研究のモデル(Shrimali and Kumar [2008],
Musacchio et al. [2009], Cheng et al. [2011], Hau et al. [2011],
D‘Annunzio and Russo [2015], Gaivoronski et al. [2017],
Bourreau and Lestage [2019] など)との違い
◦ Netflixは、ブロードバンド加入者から
の収入に依存するSVODモデルを採用
◦ 二面市場においてサイドペイメント
を完全に許容することと同値
◦ 先行研究では、CAPは広告モデル
(AVOD)に依存し、ネットワーク
事業者は二面市場プラットフォーム
として活動することを仮定
◦ コンテンツ事業者とネットワーク事業
者のカバーする市場範囲が異なる。
◦ 先行研究では両者の範囲が同じと、
少なくとも暗黙的には、想定されて
いる。
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
ネットワーク事業者、ISP
コンテンツ事業者
ブロードバンドサービス利用者
広告
市場
AVODモデル
ネットワーク事業者、ISP
ブロードバンドサービス利用者
SVODモデル
コンテンツ事業者
ネットワーク
事業者A
コンテンツ事業者
ネットワーク
事業者B
利用者グループ
A
利用者グループ
B
利用者グループ毎に別々
のブロードバンドネット
ワーク料金を設定するこ
とは可能だが、コンテン
ツ料金は同じであること
が求められる。
5
モデルの基本設定
単純なバンドルサービスのモデルを用いて分析
◦ SKやISP2、Netflixは一定の市場支配力を持つ。
◦ 利用者は、ブロードバンド接続と、Netflixのコンテンツを結合財として消費。
◦ SKの要求はpaを正にすること。
◦ エンドユーザーの市場は後背地付ホテリング立地競争モデル(Bourreau and Lestage, 2019)として想定
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
競争領域
独占領域
(後背地)
独占領域
(後背地)
6
四種類のモデル
Netflix以外のコンテンツを捨象
【CAP市場短期モデル】
Netflix以外のコンテンツを考慮
【CAP市場長期モデル】
他ISPへの流出を無視
【ISP市場短期モデル】
他ISPへの流出を考慮
【ISP市場長期モデル】
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
二重独占モデル
複占モデル
Netflix非加入者を考慮した二重独占モデル
Netflix非加入者を考慮した複占モデル
7
検討したシナリオ
ピアリングについて
◦ 無料ピアリング(Free Peering, Settlement-free Peering):𝑝𝑝𝑎𝑎 = 0
◦ 有料ピアリング(Paid Peering):𝑝𝑝𝑎𝑎 > 0 (SKやISP2が課金側), 𝑝𝑝𝑎𝑎 < 0 (Netflixが課金側)
◦ 非対称有料ピアリング
◦ SKのみが有料ピアリングを導入
◦ 対称有料ピアリング
◦ 両ISPが有料ピアリングを導入
料金規制について
◦ 料金規制がある場合、ISPの利用者向け料金が限界費用水準に固定
◦ 𝑝𝑝𝑆𝑆𝑆𝑆 = 𝑀𝑀𝑀𝑀𝑆𝑆𝑆𝑆 and 𝑝𝑝𝑜𝑜𝑜𝑜 = 𝑀𝑀𝑀𝑀𝑜𝑜𝑜𝑜
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
Asymmetric Paid Peering Symmetric Paid Peering
8
ネット中立性との関係
Netflix以外のコンテンツを考慮する「CAP市場長期モデル」では、各ISPがサービスを提供する利用
者は別々のグループに属することになるが、利用するOTTサービスの種類によってISPが料金格差を
つけることは、厳密なネット中立性ルールからは問題となりうる。
◦ 高品質な動画コンテンツなどを視聴しようとする場合、ブロードバンド利用者は、より高いデー
タキャップを持つプランに契約することが事実上求められる。これは利用コンテンツによる事実
上の差別価格といえる。「厳密なネット中立性ルール」は、そうしたものを含む全ての差別価格
を排除するものとして想定。
厳密なネット中立性ルールの制約は、以下で、𝑝𝑝𝑆𝑆𝑆𝑆 = 𝑝𝑝𝑜𝑜𝑜𝑜 = 0 とする料金制約として表現できる。
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会( 9
モデル
解析的な導出をメイ
ンとしつつも、それ
が困難な場合はシ
ミュレーション併用
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会( 10
Netflix以外のコンテンツを捨象
【CAP市場短期モデル】
Netflix以外のコンテンツを考慮
【CAP市場長期モデル】
他ISPへの流出を無視
【ISP市場短期モデル】 料金設定が自由であれば、有料ピアリング
(PP)の導入は資源配分に対して中立的
• SKの限界費用が、paの分だけNetflixに転嫁。利用者
が直面する価格合計は不変。
ISP料金が規制されている場合は、PP導入によ
り資源配分効率性は悪化
• SKの利潤は増大、Netflixと利用者は厚生悪化
料金設定が自由であれば、有料ピアリング
(PP)の導入は資源配分に対して中立的
ネット中立性ルールの下では、PP導入により資
源配分効率性は悪化する可能性あり
• SKの利潤は増大、Netflixと利用者は厚生悪化
他ISPへの流出を考慮
【ISP市場長期モデル】 料金設定が自由であれば、PPは対称的に導入さ
れ、資源配分には中立的
• 非対称PPに留まればSKとSK利用者の厚生は改善す
るが、それ以外は厚生悪化
• PP採用にコストが必要な場合は社会厚生悪化
ISP料金が規制されている場合は、PPは対称的
に導入され資源配分効率性は悪化
• 非対称PPに留まればSKの利潤のみが改善
• 対称PPにおいては両ISPの利潤はともに改善Netflix
および利用者の厚生は悪化
料金設定が自由であれば、PPは対称的に導入さ
れ、資源配分には中立的
• 非対称PPであればSKおよびその利用者のみが便益
を得て、社会厚生は悪化
ネット中立性ルールの下では、PPは対称的に導
入され、資源配分効率性は悪化
• 非対称でも対称でもSKとISP2の利潤のみは改善
• 非対称PPの下での総余剰への影響は決定できず
モデル分析の結果
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
二重独占モデル
複占モデル
Netflix非加入者を考慮した二重独占モデル
Netflix非加入者を考慮した複占モデル
11
ネット品質とコンテンツ品質の相互作用を考慮したモデル
補完的効果の考慮
◦ SKやISP2のネットワーク品質が高いほどNetflixの視聴者満足度が高くなる一方、Netflixのコ
ンテンツの品質が高いほどSKやISP2の利用者の満足度が高くなる
◦ SKやISP2のネットワークへの設備投資はNetflixに、Netflixのコンテンツへの投資はSKや
ISP2に対してプラスの波及効果を持つことになる。
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
この場合、波及効果の受益者
が、投資に対するリターンを
返さない場合は正の外部性が
生じていることとなり、私的
均衡では、過少な投資水準が
帰結する。この場合、有料ピ
アリングは、外部性を内部化
し、資源配分効率性を回復さ
せる手段として利用可能。
12
結論
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
モデルから得られた結論は、ISPの自由な活動が何らかの形で制約されている場合、もしくは、市場
の失敗がある場合にかぎり、有料ピアリング導入のインセンティブが発生し、多くの場合、その効
果は社会厚生の損失を発生させるというもの。
◦ SKが有料ピアリング導入を望む事実は、現状、SKが市場支配力を発揮できていないことの証左
◦ 現状を是とするのであれば、有料ピアリング禁止が正解
◦ ISPの行動に制約をかける以上、潜脱抑制目的のマイクロマネジメント継続は必須
外部経済の存在が当然に予期される以上、有料ピアリング禁止は次善解に留まる。また、政策執行
にかける資源が有限かつ稀少であることを考えれば、マイクロマネジメント継続は困難
◦ 長期的には、そもそもの制約条件(市場の寡占傾向)を除去し、可能な限り、市場メカニズムの
活用を軸とした解決策を志向することが望ましい。
◦ その場合、最善解のデザインには当事者の積極的関与が必須
その意味で、Netflixからの訴えを却下する一方で、具体的な支払水準・方法を当事者間交渉に委ねた
ソウル中央地裁の判断は、長期的な観点に立つもの?
13
ユニバーサルBBサービスへのインプリケーション
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
2022年6月13日、固定ブロードバンドを新たに日本のユニバーサルサー
ビスの対象とする電気通信事業法の改正が成立。
◦ ブロードバンド維持に必要な費用(年間約227億円)は、ユニバーサ
ルサービス基金を通じて幅広い受益者から徴収し、指定事業者に提供
されることが想定されている。
この場合、有料ピアリングという仕組みは、必要な拠出金を受益者から
集める手段と見なしうる。
◦ コンテンツ事業者に資金負担を求める場合、多国籍巨大プレイヤーの
反撃としてのジャパン・パッシングの可能性を念頭に置く必要がある。
実際、経済が縮小している日本が単独で本件について交渉力を持ちう
るか否かについては疑問も生じるところであり、国際協調は必須。
出典:総務省
14
残された課題
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
本モデルでは簡単化のためにいくつかの単純すぎる仮定を採用している。
◦ ネットワーク事業者の数を所与としている。これは短期的には現実的な仮定であるが、長期的に
は参入事業者数が増減する余地がある。
◦ 事業者及び利用者間の異質性については二重独占モデルでは一切考慮せず、複占モデルにおいて
も一次元のものしか考慮していない。
◦ 問題となっているコンテンツ事業者(Netflix)がSVOD以外のビジネスモデルを追求しないことを
前提とした。現実社会のNetflixは加入者数減少に対処するために、広告モデルへの展開を検討中
であると報道されている。
これらの仮定を緩和し、より一般的な状況にモデルを当てはめることは今後の課題である。
15
参考文献リスト
Besen, S.M. and Israel, M.A. (2013) “The evolutionof Internet interconnection from hierarchy to ‘Mesh’: Implications forgovernment regulation,”
Information Economicsand Policy, 25, 235–245.
Bourreau, M. and Lestage, R. (2019) “Net neutrality and asymmetric platform competition,”Journal of Regulatory Economics,55, 140–171.
Briglauer, W.(2019) “Specialissueon‘recent net neutrality policesinEurope and the US’,”Reviewof Network Economics,17(3), 109–114.
Cheng, H.K., Bandyopadhyay, S. and Guo, H.(2011) “The debate onnet neutrality: Apolicyperspective,” Information Systems Research, 22(1),
60–82.
Chettiar, I.M. andHolladay,J.S. (2010)“Free toinvest: Theeconomicbenefitsofpreserving netneutrality,”ReportNo.4, InstituteforPolicyIntegrity,
NewYork UniversitySchoolof Law.
Chettiar, I.M., Holladay, J.S., and Rosenberg, J. (2010) “The valueof open: Anupdate on net neutrality,” PolicyBrief No.9, Institute for Policy
Integrity, NewYork UniversitySchoolof Law.
Choi, J.P. and Kim, B.C. (2010) “Net neutrality and investment incentives,” RAND Journal of Economics, 41(3), 446–471.
Coucheney, P., Maillé, P., and Tuffin, B.(2014) “Network neutrality debate and ISPinter-relations: Traffic exchange, revenue sharing, and
disconnection threat,” Netnomics, 15(3), 155–182.
D’Annunzio, A. and Russo, A. (2015) “Net neutrality and internet fragmentation: The role of online advertising,” International Journal of Industrial
Organization, 43, 30–47.
Easley, R.F.,Guo, H., andKrämer, J. (2018) “From net neutrality to data neutrality: Atechno-economic framework and research agenda,”
Information Systems Research, 29(2), 253–272.
Economides,N.and Hermalin,B. (2012) “The economicsof network neutrality,” RANDJournal of Economics,43(4), 602–629.
Faratin, P., Clark,D., Bauer, S., Lehr, W.,Gilmore, P., and Berger, A.(2008) “Thegrowing complexity of Internet interconnection,”
Communicationsand Strategies, 72, 51–71.
Gaivoronski,A.A., Nesse, P.J., and Erdal, O.B. (2017) “Internet service provisionand content services: Paidpeering and competitionbetween
internet providers,” Netnomics,18, 43–79.
Greenstein, S., Peitz, M., and Valletti,T.(2016) “Net neutrality: Afast laneto understanding the trade-offs,” TheJournal of EconomicPerspectives,
30(2), 127–149.
Hemphill, C.S. (2008) “Network neutrality and the false promise of zero-price regulation,” YaleJournal on Regulation, 25(2), 135–179.
実積寿也 (2021) 「Zero PriceRuleの経済合理性について―韓国Netflix訴訟に関する経済分析―」情報通信学会2021年度秋季(第45
回)学会大会報告(2021/11/27 オンライン開催).
T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25)
年春季(第 回)情報通信学会大会(
実積寿也 (2022) 「固定ブロードバンドの実効速度に関する分析-2009年~2020年の計測データからの知見-」『公益事業研究』
73(2), 13–28.
Kim,M., Kim,C., and Park,Y. (2003) “Study on the casualrelationship between customer satisfaction and customer loyalty inhigh-speed Internet
service arket,” Journal of Korea ServiceManagement Society, 03(11), 67–70.
Lee, J. and Cho, Y. (2018) “Inconvenience cost of mobilecommunicationfailure: Thecase of South Korea,” TelecommunicationsPolicy, 42, 241–
252.
Lee, R.S. and Wu,T.(2009) “Subsidizingcreativity through network design: Zero-pricing and net neutrality,” Journalof EconomicPerspectives,
23(3), 61–76.
Lebourges, M. and Saavedra, C.(2011) “Lights and shadows from economicanalysis on net neutrality and Internet pricingpolicies,”
Communications&Strategies, 84(4), 75–92.
Little, I. and Wright,J. (2000) “Peering and settlement inthe Internet: Aneconomicanalysis,” Journal of Regulatory Economics,18(2), 151–173.
Muñoz, T.G., Tascón, C.G., Amaral,T.P., and Zorzano, R.L. (2013) “Customersatisfaction of mobile-Internet-users: Anempiricalapproximation
for the case of Spain,"Journal of Reviewson GlobalEconomics,2, 442–454.
Musacchio, J., Schwartz, G., andWalrand,J. (2009) “A two-sided marketanalysis of provider investment incentiveswith an applicationto the net-
neutrality issue,”Reviewof Network Economics,8(1), 22–39.
Norton, W.B.(2011) “The emerging 21st century access power peering,” Communicationsand Strategies, 84, 55–73.
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Telecommunicationsand HighTechnologyLaw, 7(1), 19–66.
Roson, R.(2003) “Incentives forthe expansion of network capacity ina “peering” free access settlement,” Netnomics,5(2), 149–159.
Schuett, F. (2010) “Network neutrality: Asurvey of the economicliterature,” Reviewof Network Economics,9(2), 1–13.
Shrimali,G. (2010) “Competitive resource sharing byInternet ServiceProviders,” Netnomics,11, 149–179.
Shrimali,G. and Kumar, S.(2008) “Bill-and-keeppeering,” TelecommunicationsPolicy, 32(1), 19–32.
Wu,T.(2003) “Network neutrality, broadband discrimination,”Journal onTelecommunicationsand HighTechnologyLaw, 2, 141–175.
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SVOD市場におけるPaid Peering導入の影響

  • 1. SVOD市場におけるPaid Peering導入の影響 中央大学 実積寿也 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 1
  • 2. 研究背景 米Netflix, Inc.およびその韓国子会社であるNetflix Services Korea Ltd.が、SK Broadband, Inc.がNetflixコンテンツの配信のために増設した(と主張する)回線費用に関し、支払い分 担義務の不存在を主張した。ソウル中央地裁は、当該主張を却下する判決を2021年6月25 日に下した。 本判決は、ネット中立性の文脈で、暗黙の前提条件とされてきた「ISPは自身の直接の顧 客ではないコンテンツ・アプリケーション事業者(CAP)に課金しない」というビジネス 慣行(zero price rule、ZPR)に一定の疑問を投げかけたものと言える。 本判決を題材に、サブスクモデル(SVOD)を採用するコンテンツ事業者が一定の市場支 配力を行使する市場において、ISP市場における競争を明示的に考慮しつつ、ZPRを維持 すること(もしくは、有料ピアリングを導入すること)の経済的効果を分析する。 ◦ 本報告は、2021年度秋季(第45回)情報通信学会大会での筆者報告(Zero Price Ruleの経済合理 性について―韓国NETFLIX訴訟に関する経済分析―)を一歩深めたもの T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 2
  • 3. NetflixとSKの論争の経緯 Netflixのコンテンツ利用急拡大に対応するため、SKが増設した日韓海底ケーブ ルの費用の負担をNetflix側に求めたことが発端。その後、費用負担対象に韓国・ 香港間ケーブル増設費用および韓国国内のSKネットワーク利用費用が包含 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 2018/4/4 NetflixとSKは、韓国のユーザーの需要に対応するため、東京 IXで相互接続を開始。日米間の海底ケーブル敷設費用はNetflix が、日韓間の海底ケーブル敷設費用はSKが負担。その後、需要 増に対応するため、NetflixとSKはそれぞれ容量を増加。 2018/10/22 SKは、動画トラフィック激増によるコスト増を補うため、 Netflixにネットワーク使用料の支払いを要求。 2019/11/12 SKは、日韓海底ケーブルの高速化費用をNetflixに負担させる べく、韓国通信委員会に裁定を申請(現在、この裁定は中断)。 2020/1/1 NetflixとSKは、香港で直接相互接続を開始。 2020/4 Netflixは、SKのネットワークについて交渉や支払いの義務が ないことの確認を求め、ソウル中央地裁に提訴。 2021/6/25 ソウル中央地裁判決 1. 本件は、トラフィックの不合理な差別を禁止する「ネット 中立性」とは直接関係ない。 2. 交渉・支払義務の不存在の訴えは却下。 3. 支払い態様・金額等については当事者間の交渉で決定。 2021/9/30 SKが反訴、過去3年分のネットワーク使用料の支払いを要求。 2021/11/5 Netflixはソウル高等法院に控訴 3
  • 4. 類似例ではいずれもISP側の主張が勝利 The Case Against ISP Tolls (Netflix, 2014/4/24) ◦ コンテンツ事業者が有料ピアリングを強いられたケース ◦ Netflixは、コムキャストのネットワーク上での会員の映 像体験が許容できないほど低下していることを解消す るため、コムキャストに直接相互接続の対価を支払う ことに合意 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( Source: http://blog.netflix.com/2014/04/the-case-against-isp-tolls.html France Telecom vs. Cogent (2012/9/20) ◦ eyeball ISPに大量のコンテンツを送り込んでいるISP (Cogent社)が有料ピアリングを強いられたケース ◦ 問題を引き起こしていた要因の一つはCogentの顧客で あったMegaUpload Source: https://www.autoritedelaconcurrence.fr/fr/communiques-de- presse/20-septembre-2012-trafic-internet-accords-de-peering 4
  • 5. モデルの基本設定 先行研究のモデル(Shrimali and Kumar [2008], Musacchio et al. [2009], Cheng et al. [2011], Hau et al. [2011], D‘Annunzio and Russo [2015], Gaivoronski et al. [2017], Bourreau and Lestage [2019] など)との違い ◦ Netflixは、ブロードバンド加入者から の収入に依存するSVODモデルを採用 ◦ 二面市場においてサイドペイメント を完全に許容することと同値 ◦ 先行研究では、CAPは広告モデル (AVOD)に依存し、ネットワーク 事業者は二面市場プラットフォーム として活動することを仮定 ◦ コンテンツ事業者とネットワーク事業 者のカバーする市場範囲が異なる。 ◦ 先行研究では両者の範囲が同じと、 少なくとも暗黙的には、想定されて いる。 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( ネットワーク事業者、ISP コンテンツ事業者 ブロードバンドサービス利用者 広告 市場 AVODモデル ネットワーク事業者、ISP ブロードバンドサービス利用者 SVODモデル コンテンツ事業者 ネットワーク 事業者A コンテンツ事業者 ネットワーク 事業者B 利用者グループ A 利用者グループ B 利用者グループ毎に別々 のブロードバンドネット ワーク料金を設定するこ とは可能だが、コンテン ツ料金は同じであること が求められる。 5
  • 6. モデルの基本設定 単純なバンドルサービスのモデルを用いて分析 ◦ SKやISP2、Netflixは一定の市場支配力を持つ。 ◦ 利用者は、ブロードバンド接続と、Netflixのコンテンツを結合財として消費。 ◦ SKの要求はpaを正にすること。 ◦ エンドユーザーの市場は後背地付ホテリング立地競争モデル(Bourreau and Lestage, 2019)として想定 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 競争領域 独占領域 (後背地) 独占領域 (後背地) 6
  • 7. 四種類のモデル Netflix以外のコンテンツを捨象 【CAP市場短期モデル】 Netflix以外のコンテンツを考慮 【CAP市場長期モデル】 他ISPへの流出を無視 【ISP市場短期モデル】 他ISPへの流出を考慮 【ISP市場長期モデル】 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 二重独占モデル 複占モデル Netflix非加入者を考慮した二重独占モデル Netflix非加入者を考慮した複占モデル 7
  • 8. 検討したシナリオ ピアリングについて ◦ 無料ピアリング(Free Peering, Settlement-free Peering):𝑝𝑝𝑎𝑎 = 0 ◦ 有料ピアリング(Paid Peering):𝑝𝑝𝑎𝑎 > 0 (SKやISP2が課金側), 𝑝𝑝𝑎𝑎 < 0 (Netflixが課金側) ◦ 非対称有料ピアリング ◦ SKのみが有料ピアリングを導入 ◦ 対称有料ピアリング ◦ 両ISPが有料ピアリングを導入 料金規制について ◦ 料金規制がある場合、ISPの利用者向け料金が限界費用水準に固定 ◦ 𝑝𝑝𝑆𝑆𝑆𝑆 = 𝑀𝑀𝑀𝑀𝑆𝑆𝑆𝑆 and 𝑝𝑝𝑜𝑜𝑜𝑜 = 𝑀𝑀𝑀𝑀𝑜𝑜𝑜𝑜 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( Asymmetric Paid Peering Symmetric Paid Peering 8
  • 9. ネット中立性との関係 Netflix以外のコンテンツを考慮する「CAP市場長期モデル」では、各ISPがサービスを提供する利用 者は別々のグループに属することになるが、利用するOTTサービスの種類によってISPが料金格差を つけることは、厳密なネット中立性ルールからは問題となりうる。 ◦ 高品質な動画コンテンツなどを視聴しようとする場合、ブロードバンド利用者は、より高いデー タキャップを持つプランに契約することが事実上求められる。これは利用コンテンツによる事実 上の差別価格といえる。「厳密なネット中立性ルール」は、そうしたものを含む全ての差別価格 を排除するものとして想定。 厳密なネット中立性ルールの制約は、以下で、𝑝𝑝𝑆𝑆𝑆𝑆 = 𝑝𝑝𝑜𝑜𝑜𝑜 = 0 とする料金制約として表現できる。 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 9
  • 11. Netflix以外のコンテンツを捨象 【CAP市場短期モデル】 Netflix以外のコンテンツを考慮 【CAP市場長期モデル】 他ISPへの流出を無視 【ISP市場短期モデル】 料金設定が自由であれば、有料ピアリング (PP)の導入は資源配分に対して中立的 • SKの限界費用が、paの分だけNetflixに転嫁。利用者 が直面する価格合計は不変。 ISP料金が規制されている場合は、PP導入によ り資源配分効率性は悪化 • SKの利潤は増大、Netflixと利用者は厚生悪化 料金設定が自由であれば、有料ピアリング (PP)の導入は資源配分に対して中立的 ネット中立性ルールの下では、PP導入により資 源配分効率性は悪化する可能性あり • SKの利潤は増大、Netflixと利用者は厚生悪化 他ISPへの流出を考慮 【ISP市場長期モデル】 料金設定が自由であれば、PPは対称的に導入さ れ、資源配分には中立的 • 非対称PPに留まればSKとSK利用者の厚生は改善す るが、それ以外は厚生悪化 • PP採用にコストが必要な場合は社会厚生悪化 ISP料金が規制されている場合は、PPは対称的 に導入され資源配分効率性は悪化 • 非対称PPに留まればSKの利潤のみが改善 • 対称PPにおいては両ISPの利潤はともに改善Netflix および利用者の厚生は悪化 料金設定が自由であれば、PPは対称的に導入さ れ、資源配分には中立的 • 非対称PPであればSKおよびその利用者のみが便益 を得て、社会厚生は悪化 ネット中立性ルールの下では、PPは対称的に導 入され、資源配分効率性は悪化 • 非対称でも対称でもSKとISP2の利潤のみは改善 • 非対称PPの下での総余剰への影響は決定できず モデル分析の結果 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 二重独占モデル 複占モデル Netflix非加入者を考慮した二重独占モデル Netflix非加入者を考慮した複占モデル 11
  • 12. ネット品質とコンテンツ品質の相互作用を考慮したモデル 補完的効果の考慮 ◦ SKやISP2のネットワーク品質が高いほどNetflixの視聴者満足度が高くなる一方、Netflixのコ ンテンツの品質が高いほどSKやISP2の利用者の満足度が高くなる ◦ SKやISP2のネットワークへの設備投資はNetflixに、Netflixのコンテンツへの投資はSKや ISP2に対してプラスの波及効果を持つことになる。 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( この場合、波及効果の受益者 が、投資に対するリターンを 返さない場合は正の外部性が 生じていることとなり、私的 均衡では、過少な投資水準が 帰結する。この場合、有料ピ アリングは、外部性を内部化 し、資源配分効率性を回復さ せる手段として利用可能。 12
  • 13. 結論 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( モデルから得られた結論は、ISPの自由な活動が何らかの形で制約されている場合、もしくは、市場 の失敗がある場合にかぎり、有料ピアリング導入のインセンティブが発生し、多くの場合、その効 果は社会厚生の損失を発生させるというもの。 ◦ SKが有料ピアリング導入を望む事実は、現状、SKが市場支配力を発揮できていないことの証左 ◦ 現状を是とするのであれば、有料ピアリング禁止が正解 ◦ ISPの行動に制約をかける以上、潜脱抑制目的のマイクロマネジメント継続は必須 外部経済の存在が当然に予期される以上、有料ピアリング禁止は次善解に留まる。また、政策執行 にかける資源が有限かつ稀少であることを考えれば、マイクロマネジメント継続は困難 ◦ 長期的には、そもそもの制約条件(市場の寡占傾向)を除去し、可能な限り、市場メカニズムの 活用を軸とした解決策を志向することが望ましい。 ◦ その場合、最善解のデザインには当事者の積極的関与が必須 その意味で、Netflixからの訴えを却下する一方で、具体的な支払水準・方法を当事者間交渉に委ねた ソウル中央地裁の判断は、長期的な観点に立つもの? 13
  • 14. ユニバーサルBBサービスへのインプリケーション T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 2022年6月13日、固定ブロードバンドを新たに日本のユニバーサルサー ビスの対象とする電気通信事業法の改正が成立。 ◦ ブロードバンド維持に必要な費用(年間約227億円)は、ユニバーサ ルサービス基金を通じて幅広い受益者から徴収し、指定事業者に提供 されることが想定されている。 この場合、有料ピアリングという仕組みは、必要な拠出金を受益者から 集める手段と見なしうる。 ◦ コンテンツ事業者に資金負担を求める場合、多国籍巨大プレイヤーの 反撃としてのジャパン・パッシングの可能性を念頭に置く必要がある。 実際、経済が縮小している日本が単独で本件について交渉力を持ちう るか否かについては疑問も生じるところであり、国際協調は必須。 出典:総務省 14
  • 15. 残された課題 T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 本モデルでは簡単化のためにいくつかの単純すぎる仮定を採用している。 ◦ ネットワーク事業者の数を所与としている。これは短期的には現実的な仮定であるが、長期的に は参入事業者数が増減する余地がある。 ◦ 事業者及び利用者間の異質性については二重独占モデルでは一切考慮せず、複占モデルにおいて も一次元のものしか考慮していない。 ◦ 問題となっているコンテンツ事業者(Netflix)がSVOD以外のビジネスモデルを追求しないことを 前提とした。現実社会のNetflixは加入者数減少に対処するために、広告モデルへの展開を検討中 であると報道されている。 これらの仮定を緩和し、より一般的な状況にモデルを当てはめることは今後の課題である。 15
  • 16. 参考文献リスト Besen, S.M. and Israel, M.A. (2013) “The evolutionof Internet interconnection from hierarchy to ‘Mesh’: Implications forgovernment regulation,” Information Economicsand Policy, 25, 235–245. Bourreau, M. and Lestage, R. (2019) “Net neutrality and asymmetric platform competition,”Journal of Regulatory Economics,55, 140–171. Briglauer, W.(2019) “Specialissueon‘recent net neutrality policesinEurope and the US’,”Reviewof Network Economics,17(3), 109–114. Cheng, H.K., Bandyopadhyay, S. and Guo, H.(2011) “The debate onnet neutrality: Apolicyperspective,” Information Systems Research, 22(1), 60–82. Chettiar, I.M. andHolladay,J.S. (2010)“Free toinvest: Theeconomicbenefitsofpreserving netneutrality,”ReportNo.4, InstituteforPolicyIntegrity, NewYork UniversitySchoolof Law. Chettiar, I.M., Holladay, J.S., and Rosenberg, J. (2010) “The valueof open: Anupdate on net neutrality,” PolicyBrief No.9, Institute for Policy Integrity, NewYork UniversitySchoolof Law. Choi, J.P. and Kim, B.C. (2010) “Net neutrality and investment incentives,” RAND Journal of Economics, 41(3), 446–471. Coucheney, P., Maillé, P., and Tuffin, B.(2014) “Network neutrality debate and ISPinter-relations: Traffic exchange, revenue sharing, and disconnection threat,” Netnomics, 15(3), 155–182. D’Annunzio, A. and Russo, A. (2015) “Net neutrality and internet fragmentation: The role of online advertising,” International Journal of Industrial Organization, 43, 30–47. Easley, R.F.,Guo, H., andKrämer, J. (2018) “From net neutrality to data neutrality: Atechno-economic framework and research agenda,” Information Systems Research, 29(2), 253–272. Economides,N.and Hermalin,B. (2012) “The economicsof network neutrality,” RANDJournal of Economics,43(4), 602–629. Faratin, P., Clark,D., Bauer, S., Lehr, W.,Gilmore, P., and Berger, A.(2008) “Thegrowing complexity of Internet interconnection,” Communicationsand Strategies, 72, 51–71. Gaivoronski,A.A., Nesse, P.J., and Erdal, O.B. (2017) “Internet service provisionand content services: Paidpeering and competitionbetween internet providers,” Netnomics,18, 43–79. Greenstein, S., Peitz, M., and Valletti,T.(2016) “Net neutrality: Afast laneto understanding the trade-offs,” TheJournal of EconomicPerspectives, 30(2), 127–149. Hemphill, C.S. (2008) “Network neutrality and the false promise of zero-price regulation,” YaleJournal on Regulation, 25(2), 135–179. 実積寿也 (2021) 「Zero PriceRuleの経済合理性について―韓国Netflix訴訟に関する経済分析―」情報通信学会2021年度秋季(第45 回)学会大会報告(2021/11/27 オンライン開催). T. JITSUZUMI@2022 46 2022/6/25) 年春季(第 回)情報通信学会大会( 実積寿也 (2022) 「固定ブロードバンドの実効速度に関する分析-2009年~2020年の計測データからの知見-」『公益事業研究』 73(2), 13–28. Kim,M., Kim,C., and Park,Y. (2003) “Study on the casualrelationship between customer satisfaction and customer loyalty inhigh-speed Internet service arket,” Journal of Korea ServiceManagement Society, 03(11), 67–70. Lee, J. and Cho, Y. (2018) “Inconvenience cost of mobilecommunicationfailure: Thecase of South Korea,” TelecommunicationsPolicy, 42, 241– 252. Lee, R.S. and Wu,T.(2009) “Subsidizingcreativity through network design: Zero-pricing and net neutrality,” Journalof EconomicPerspectives, 23(3), 61–76. Lebourges, M. and Saavedra, C.(2011) “Lights and shadows from economicanalysis on net neutrality and Internet pricingpolicies,” Communications&Strategies, 84(4), 75–92. Little, I. and Wright,J. (2000) “Peering and settlement inthe Internet: Aneconomicanalysis,” Journal of Regulatory Economics,18(2), 151–173. Muñoz, T.G., Tascón, C.G., Amaral,T.P., and Zorzano, R.L. (2013) “Customersatisfaction of mobile-Internet-users: Anempiricalapproximation for the case of Spain,"Journal of Reviewson GlobalEconomics,2, 442–454. Musacchio, J., Schwartz, G., andWalrand,J. (2009) “A two-sided marketanalysis of provider investment incentiveswith an applicationto the net- neutrality issue,”Reviewof Network Economics,8(1), 22–39. Norton, W.B.(2011) “The emerging 21st century access power peering,” Communicationsand Strategies, 84, 55–73. Nuechterlein, J.E. (2008) “Antitrust oversight of an antitrust dispute: Aninstitutionalperspective on the net neutrality debate,” Journalon Telecommunicationsand HighTechnologyLaw, 7(1), 19–66. Roson, R.(2003) “Incentives forthe expansion of network capacity ina “peering” free access settlement,” Netnomics,5(2), 149–159. Schuett, F. (2010) “Network neutrality: Asurvey of the economicliterature,” Reviewof Network Economics,9(2), 1–13. Shrimali,G. (2010) “Competitive resource sharing byInternet ServiceProviders,” Netnomics,11, 149–179. Shrimali,G. and Kumar, S.(2008) “Bill-and-keeppeering,” TelecommunicationsPolicy, 32(1), 19–32. Wu,T.(2003) “Network neutrality, broadband discrimination,”Journal onTelecommunicationsand HighTechnologyLaw, 2, 141–175. 16