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東洋大学 産業組織論 :
技術と研究開発競争I (13/15)
原泰史
今日のポイント
• 練習問題のこたえあわせ
• 研究開発とは?
講義スケジュール (前期, 前半)
• 1. 4/8: オリエンテーション(産業組織論ってなんだろう?)
2. 4/15: 経済学で使う数学を振り返る & 産業組織分析の基礎 I
• (泉田・柳川 pp.22-28、長岡・平尾 pp.1-16)
• 3. 4/22: 経済学で使う数学を振り返る & 産業組織分析の基礎 II
• (泉田・柳川 pp.28-44、長岡・平尾 pp.1-16)
• 4. 4/29: 独占企業の価格設定 I
• (泉田・柳川 pp.45-54、長岡・平尾 pp.43-68)
• 5. 5/13: 独占企業の価格決定 II
• (泉田・柳川 pp.54-68、長岡・平尾 pp.43-68)
• 6. 5/20: 自然独占と規制 I
• (泉田・柳川 pp.69-76、長岡・平尾 pp.247-272)
• 7. 5/27: 自然独占と規制 II
• (泉田・柳川 pp.77-87、長岡・平尾 pp.247-272)
• 8. 6/3: 中間テスト
講義スケジュール (前期, 後半)
• 9. 6/10: 参入の経済効果 I (泉田・柳川 pp.87-96)
10. 6/17: 参入の経済効果 II (泉田・柳川 pp.96-106)
11. 6/24: 休講 (学会での研究発表のため)
12. 7/1: ゲーム理論 (泉田・柳川 pp.107-121)
• 21:20 の便でアブダビにいくので, 19:50-21:20 のクラスのみ補講実施 (8/5)
• 13. 7/8: 技術進歩と研究開発競争 I (長岡・平尾 pp.187-198)
14. 7/15: 技術進歩と研究開発競争 II (長岡・平尾 pp.199-206)
15. 7/22: 期末試験
• 公式な試験日は7/29 ですが、国際学会@ドイツ に出席する必要があるため講義
内に期末試験を行います.
• 16. 8/5 : 補講 (2部のみ; 19:50-21:20)
• 期末試験の解説を行う予定なので, 1部のひとで興味のある方は参加してください
教科書
• 泉田・柳川 (2010)
『プラクティカル産業組織論』
有斐閣アルマ
• 長岡・平尾 (2013)
『産業組織の経済学 第二版』
日本評論社
今日の内容
• 前半 :
• 練習問題の答え合わせ
• レポートについて
• 研究開発とは
• 後半:
• 研究と技術開発
• 長岡・平尾 pp.199-206
レポートについて
レポートの内容
• 1.テーマ : 独占/寡占企業の市場調査レポート
• 自分の身近にある独占/寡占企業について調査し、
• (1) 何故独占や寡占状態にあるのか
• (2) 企業が属する市場の経済的な規模, 成長率
• (3) どのような財/サービスが提供されているのか
• (4) どのようにして価格が設定されているのか
• (5) 独占によってどのようなメリット/デメリットが供給者/需要者それぞれに発生して
いるのか
まとめなさい.
• 2.提出期間
• 《必須》2014年 7月8日(火) ~ 7月15日(火)14:40 〆切
• ToyoNet Ace 経由で提出
• 3.対象者と配点
• 対象: 産業組織論 履修者
• 配点: max 25点
レポートの内容
• (2) 形式と提出
• Word または LaTeX 形式で作成し,
Toyonet ACE にアップロードすること。
メールやLINE では提出を受け付けない
• ただし, 以下の様式を守ること
• A4 長辺縦型,横書き,MSP 明朝 10.5pt,行間 1
行,余白 上下左右 25mm,頁番号 中央下部
• 書籍を引用した場合、それを明記すること
• (3) 文字数の目安と枚数
最低 5,000字以上
(英字 2,500 word 以上,
なお5,000/2,500word 以下は採点しない)
• レポートの記述様式 [おすすめ]
• (1) はじめに
• (2) [取り上げる企業名]
• (3) [企業]が属する産業の詳細
• (4) なぜ [企業] は独占, 寡占を維持できて
いるのか
• (5) [企業] の価格設定方法
• (6) [企業] の独占による消費者への影響
• (7) おわりに
(8) 参考文献
練習問題
• 男性 (プレイヤー1) と女性 (プレイ
ヤー2) がデートの行き先として、ビア
ガーデンか映画を選ぶかの選択肢を
もっている。女性は映画を好み、男性
はビアガーデンを好む。
• しかし、デートのため二人にとって
別々にそれぞれが好きなものを観る
より、一緒に出かけることのほうが大
切である。
• このとき、利得行列は右のように与え
られる。
• 男性と女性が相談することなしに相
手と独立してゲームの行き先を選択
しなければならないときのナッシュ均
衡を求めなさい。
ビアガー
デン
映画
ビアガー
デン
2,1 -1,-1
映画 -1,-1 1,2
プレイヤー2
プレイヤー1
練習問題の答え
• ナッシュ均衡1: (ビヤガーデン, ビヤ
ガーデン)
• プレイヤー2 がビヤガーデンを選ぶとす
る
• このとき、プレイヤー1 の利得は
• 映画を選ぶと -1
• ビヤガーデンを選ぶと 2
よってプレイヤー1 はビヤガーデンを選択す
る
• プレイヤー1 がビヤガーデンを選ぶとす
る
• このとき、プレイヤー2 の利得は
• 映画を選ぶと -1
• ビヤガーデンを選ぶと 2
よってプレイヤー2 はビヤガーデンを選択す
る
これより、(ビヤガーデン, ビヤガーデン) は
ナッシュ均衡となる
ビアガー
デン
映画
ビアガー
デン
2,1 -1,-1
映画 -1,-1 1,2
プレイヤー2
プレイヤー1
練習問題の答え
• ナッシュ均衡2: (映画, 映画)
• プレイヤー2 が映画を選ぶとする
• このとき、プレイヤー1 の利得は
• 映画を選ぶと -1
• ビヤガーデンを選ぶと 1
よってプレイヤー1 は映画を選択する
• プレイヤー1 が映画を選ぶとする
• このとき、プレイヤー2 の利得は
• 映画を選ぶと 2
• ビヤガーデンを選ぶと -1
よってプレイヤー2 は映画を選択する
これより、(映画, 映画) はナッシュ均
衡となる
ビアガー
デン
映画
ビアガー
デン
2,1 -1,-1
映画 -1,-1 1,2
プレイヤー2
プレイヤー1
練習問題の答え
• ナッシュ均衡ではないパターン1:
(ビアガーデン, 映画)
• プレイヤー2 が映画を選ぶとする
• このとき、プレイヤー1 の利得は
• ビアガーデンを選択した場合 -1
• 映画を選択した場合 1
となり、ビアガーデンは選択されない.
• プレイヤー1 がビアガーデンを選ぶと
する
• このとき, プレイヤー2 の利得は
• ビアガーデンを選択した場合 1
• 映画を選択した場合 -1
となり、プレイヤー2 はビアガーデンを選
択し映画は選択されない.
よって, (ビアガーデン, 映画) はナッシュ
均衡ではない.
ビアガー
デン
映画
ビアガー
デン
2,1 -1,-1
映画 -1,-1 1,2
プレイヤー2
プレイヤー1
練習問題の答え
• ナッシュ均衡ではないパターン2: (映画,
ビアガーデン)
• プレイヤー2 がビアガーデンを選ぶとする
• このとき、プレイヤー1 の利得は
• ビアガーデンを選択した場合 2
• 映画を選択した場合 -1
となり、プレイヤー1 は ビアガーデンを選択した
ほうが利得が高くなるので映画は選択されない.
• プレイヤー1 が映画を選ぶとする
• このとき, プレイヤー2 の利得は
• ビアガーデンを選択した場合 -1
• 映画を選択した場合 2
となり、プレイヤー2 は映画を選択したほうが利
得が高くなるのでビアガーデンは選択されない.
よって, (映画, ビアガーデン) はナッシュ均衡では
ない.
ビアガー
デン
映画
ビアガー
デン
2,1 -1,-1
映画 -1,-1 1,2
プレイヤー2
プレイヤー1
研究開発 (1)
二種類のイノベーション
• プロダクト・イノベーション
• 生産物に係わるイノベーション
• プロセス・イノベーション
• 生産技術に係わるイノベーション
• 多くの場合、プロダクト・イノベーションの後、プロセス・イノベー
ションによる精錬化が行われる
プロダクト・イノベーションとプロセス・イノ
ベーションの関係
• 産業発展の初期
• 製品概念は不安定で、熟練に依存し
て様々な商品が提案される
• プロダクト・イノベーションが多く発生す
る
• 生産工程は各人の技能に依存した
バッチ生産
• 産業の中期
• 特定の製品概念が市場で有力となる:
「ドミナントデザイン」
• ドミナントデザインをベースに、それを
効率よく生産するためのプロセスイノ
ベーションが実施される
• プロダクト・イノベーションからプロセ
ス・イノベーションへ主眼が移行し、大
量生産システムが確立される
時間
イ
ノ
ベ
ー
シ
ョ
ン
の
頻
度
プロダクト・イノベーション
プロセス・イノベーション
(Abernathey, 1979) – Productivity Dilemma
• プロダクトイノベーションとプロセス・イノベーションの進展によって、
大規模かつ効率的な生産が実現され、生産性は向上する
• 一方、技術選択の幅は狭まり、工程についても製品についても大き
な革新は起こりにくく成る
• 生産性の向上とイノベーションとの間にはトレードオフの関係がある
技術戦略
• 独自の技術力 (経営資源)を基板とした競争優位の構築を目指す際
の研究開発活動の指針
• プロダクト・イノベーションを優先するべきか、プロセス・イノベーションを優先
するべきか。
• 研究人材をどのように育成するか。
• 研究テーマの優先順位をどのように設定するか。
• 技術分野の違いによる技術の重要度の違いを見極める方法。
• 知的財産権をどのように管理すべきか。
技術戦略の重要性
• 事例1: NEC
• 通信機事業専門の企業から、コンピュータや半導体・ICの技術開発を行い大
企業に成長した
• 事例2: キヤノン
• カメラの開発・製造が主だったが、技術開発の結果複写機、プリンター、半
導体製造など多角化に成功
• 事例3: シャープ
• シロモノ家電から、電卓、半導体や液晶ディスプレイに多角化
• 「世界の亀山ブランド」
技術と競争優位
• 独自の技術を「経営資源」のひ
とつとして確保する
• 技術の優位性と競争優位性は
イコールではない
• 技術的に優れていても、社会的
に受け入れられなければイノ
ベーションとはならない
• 技術力を基盤とした競争優位の
確立こそ重要
Xerox Alto
Apple I
Intermission
• レポート
• 企業と市場の調査
• 期末試験 : 7/22
• 定期試験時にヨーロッパ出張がはいるので、15回目で実施します。
• 講義資料のアップロード先
• Facebook Page
• https://www.facebook.com/toyo.io.2014
• SlideShare
• http://www.slideshare.net/yasushihara/presentations
• Toyonet-Ace
成績について
• 中間試験: 25点 (換算)
• レポート : 25点
• 期末試験: 50点
• 宿題 : +α点
の合算点で評価する予定
テスト対策
• 期末試験
• 火1: 9:20-10:20 [60分]
• 火7: 20:10-21:10 [60分]
• 試験範囲
• 教科書
• スライド(いままでに配ったもの)
• 問題の形式
• 持ち込み可
• 数学の問題
• 論述式の問題
研究開発(2)
技術進歩と産業の技術革新
• 日米の研究開発費比較
• 規模の大きな企業が集
中的に研究開発を行う
• 電気・電子・通信機械産
業、自動車産業、業務用
機械産業、医薬品産業、
化学産業などで集中的
に投資が行われている
• 医薬品の研究開発投資
額は低い
• インターネット・ソフトウェ
ア企業のR&D 投資額は
極めて低い
日本企業 研究
開発費
対売上比率
武田薬品 4545 29.5
第一三共 1851 21.9
アステラ
ス
1596 16.5
エーザイ 1266 20.0
塩野義 530 23.2
大日本住
友
530 20.0
協和発酵
キリン
468 11.3
米国企業 研究
開発費
対売上比率
ファイザー 8887 15.5
ジョンソンア
ンドジョンソン
8007 11.3
メルク 6699 21.3
イーライリ
リー
4959 19.8
ブリストル・マ
イヤーズスク
イブ
4180 16.9
アムジェン 3283 19.6
アボット 3145 8.9
財としての知識
• 消費の非競合性
• ある知識を特定の目的に利用することは企業内の他の用途への利用を阻
害しない
• 知識の開発と利用には企業レベルで規模の経済が働く
• 知識の生産を阻害しないのであれば、知識の利用の価格をゼロにして知識
の利用をできるだけ広く行うことが社会効率的
• 排除可能性が弱いこと
• リバースエンジニアリング
• サプライヤーとの技術共有
• 得られた知識を公知にすることへのインセンティブ
• 技術のスピルオーバー
技術利用と研究開発へのインセンティブ
• 技術の利用へのインセンティブ: 市場
の大きさと競争
• 新技術の投入とそれによる市場開拓は
企業に多大な利益をもたらす
• プロセス・イノベーションによる生産コスト
の低下も、プロダクト・イノベーションによ
る新製品の導入も企業に利潤増加の効
果を与える
• 新技術導入から得られる利潤
= v (各消費者の支払い意欲) * q (企
業の当該製品の売上数量)
• 技術革新からの利益は技術を活用できる
市場の規模が大きいほど高くなる
• 企業間競争は技術導入を促す
• 先駆的に優れた技術を先んじて導入
することにより、収益性を他社に比べ
て向上させることができる
• 独占的な企業も、優れた技術を有す
る後発企業によって独占を失う可能
性がある
• Levin (1987)
• 市場シェアが高いマーケットほど、積
極的にバーコードスキャナーを導入し
た
• 生産費用を削減する新技術導入の収
益性には市場規模も重要な役割を果
たす
技術利用と研究開発へのインセンティブ
• 技術の利用へのインセンティブ:サ
ンクコスト
• 企業は新技術と旧技術をどのように
使い分けるか
• 企業の既存の生産技術: O
• より優れた生産技術 : N
• 旧生産技術の導入費用 : IO
• 新生産技術の導入費用 : IN
• 旧生産技術による粗利益: Πo
• 新生産技術による粗利益: ΠN
• 企業はすでに旧技術を導入してお
り, 新技術の採用によって旧技術を
導入するために利用した費用がサ
ンクコストになるとする
• このとき、新技術を導入するかは旧
技術に対する追加効果が導入費用
を上回るかで決まる
Π 𝑁 − Π 𝑂 > 𝐼 𝑁
• 新たに新技術の導入を検討している
企業の場合、新技術が旧技術と比較
して多くの利潤をもたらす場合のみ
新技術を選択する
Π 𝑁 − Π 𝑂 > 𝐼 𝑁 − 𝐼 𝑂
• これから新技術を導入する企業のほ
うが、新技術を導入する条件がより
満たされやすい
• 大手企業ほど新たな技術へのキャッ
チアップに遅れてしまう
技術利用と研究開発へのインセンティブ
• 技術の利用へのインセンティブ: 置き換え効果
• 既存技術から企業が得ている利潤が小さいほど、競合関係にある新技術の
導入やそのための研究開発への誘因は高い (置き換え効果)
研究開発からの利益 = 新技術からの利益 – 新技術の利用による旧技術の収益低下
• 既存事業からの収益が低い企業ほど、既存製品を凌ぐ新製品を導入する
誘因、あるいはそのための研究開発をする誘因が高くなる
• これにより、シェアの逆転が発生する (etc…: アサヒとキリン)
技術利用と研究開発へのインセンティブ
• 技術の利用へのインセンティ
ブ: 生産技術の革新
• 既存技術の利用が競争的で利
益を得られない場合、新技術
を研究開発するインセンティブ
が高くなる
• 限界費用が c1 から c2 まで低
下するケースを考える c1
c2
D
DMR
F
B D
技術利用と研究開発へのインセンティブ
• 技術 c1 が多数の企業によって利用され
ている場合、得られる利益は0 となる
• 技術革新によって限界費用が c1 -> c2 と
なった場合, 企業は価格を c1 のままにす
る
• 企業の利潤はB+D
• 企業が c1 を独占していた場合, 技術革新
前の利潤は F
• 技術革新後の利潤は B+F
• 技術革新による利潤は B
• 旧技術 c1 を独占していたほうが企業利益
の水準そのものは高い (F+B > B+D) が, 技
術革新からの利益事態は逆に小さくなる
(B<B+D)
c1
c2
D
DMR
F
B D
技術開発の専有可能性と研究開発競争
• イノベーションを実現すれば、企業は大きな利潤を獲得できる
• 優れたイノベーション {他社が真似できないほど独創的な商品であり,
競争的な価格や商品を設定できない財} であれば, 他社は市場に参
入できず企業は独占的に利潤を獲得できる.
• 研究開発へのインセンティブは、社会的余剰のうち研究開発を行っ
た企業がどれだけ利益として獲得できるか, 専有可能性の強さに依
存する.
• 技術を特許権や企業秘密, 研究技法などで守ることができれば企業
は優位性を確保し続けることができる
先行優位性と技術開発
• 技術開発の結果新たな先行優
位性が獲得出来る場合, すなわ
ち, 研究開発によって技術や市
場が「先取り」出来る場合、研究
開発へのインセンティブは高ま
る
• 例. 特許制度
• 最初に研究開発に成功した企業が
収益を「総取り」することができる
• 例. スタチン
• 「安全に」LDL コレステロール値を
下げることができる薬
• 1970年代から開発が開始
• 日本の三共が最初に開発を手がけ
る
• 最初に市場で販売したのはメルク
• 結果, メルクが先行者利益を獲得
• その後, より優れたスタチンを発売し
たファイザーやアストラゼネカがより
多くの利益を獲得
独占の持続の可能性
• (Gilbert and Newbery 1982)
• 先取りすることが重要な場合, 既存企業のほう
が新規参入企業とくらべて研究開発への誘因
が高くなる
• 例
• 企業 A : すでに独占的な地位にある企業
• 企業 B : 新規参入企業
• 企業 A は自社が開発に先行して成功すれば特許に
よる市場の独占を守ることができる
• 企業 B に開発を先んじられた場合, 複占となり競争
する必要が生じる
• 利得の設定
• 企業 A : Π 𝐴
• Π 𝑀 𝑖𝑓 先行した場合得られる利潤
• Π 𝐴𝐷 𝑖𝑓 技術開発に遅れて企業B に参入を
許した場合の利潤
• 企業 B : Π 𝐵
• Π 𝐴𝐷 𝑖𝑓 技術開発に成功して参入し複占を
実現した時の利潤
• 利得
• 企業A : Π 𝐴 = Π 𝑀 − Π 𝐴𝐷
• 企業B : Π 𝑩 = Π 𝐵𝐷
• このとき, 独占利潤は複占利潤の和より大きくな
るため
Π 𝑀 > Π 𝐴𝐷 + Π 𝐵𝐷
これより, 企業 B の利得と組み合わせて
Π 𝐴 = Π 𝑀 − Π 𝐴𝐷 > Π 𝐵𝐷
よって、企業 A のほうが研究開発への誘因は
高くなる
• 技術の先取りにより独占が守れる場合, 研究
開発が積極的に行われる
• 例. 既存の自動車メーカーと新規参入企業
• 例. 製薬会社とジェネリック医薬品
今日のまとめ
• レポートは来週までに提出です
(今回は必ず Web で提出してください)
• 来週は試験の予告編です
連絡方法
• 東洋大には 9:00-10:30 と, 19:50-21:20 しかいません
• 非常勤のためオフィスアワーを設定できませんので、以下の手段で
ご連絡ください。
• ツイッター @harayasushi
• フェイスブック : https://www.facebook.com/toyo.io.2014
• LINE : @harayasushi (LINE は東洋大内では遮断されているようです)
次回予告
14. 7/15: 技術進歩と研究開発競争 II (長岡・平尾 pp.199-206)
+ 期末試験の予告編 (≒ 前期 後半のまとめ)
15. 7/22: 期末試験
16. 8/5 : 補講 (期末試験の解決編)
Thanks.

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#東洋大学産業組織論 I 技術と研究開発競争 (13/15)

  • 3. 講義スケジュール (前期, 前半) • 1. 4/8: オリエンテーション(産業組織論ってなんだろう?) 2. 4/15: 経済学で使う数学を振り返る & 産業組織分析の基礎 I • (泉田・柳川 pp.22-28、長岡・平尾 pp.1-16) • 3. 4/22: 経済学で使う数学を振り返る & 産業組織分析の基礎 II • (泉田・柳川 pp.28-44、長岡・平尾 pp.1-16) • 4. 4/29: 独占企業の価格設定 I • (泉田・柳川 pp.45-54、長岡・平尾 pp.43-68) • 5. 5/13: 独占企業の価格決定 II • (泉田・柳川 pp.54-68、長岡・平尾 pp.43-68) • 6. 5/20: 自然独占と規制 I • (泉田・柳川 pp.69-76、長岡・平尾 pp.247-272) • 7. 5/27: 自然独占と規制 II • (泉田・柳川 pp.77-87、長岡・平尾 pp.247-272) • 8. 6/3: 中間テスト
  • 4. 講義スケジュール (前期, 後半) • 9. 6/10: 参入の経済効果 I (泉田・柳川 pp.87-96) 10. 6/17: 参入の経済効果 II (泉田・柳川 pp.96-106) 11. 6/24: 休講 (学会での研究発表のため) 12. 7/1: ゲーム理論 (泉田・柳川 pp.107-121) • 21:20 の便でアブダビにいくので, 19:50-21:20 のクラスのみ補講実施 (8/5) • 13. 7/8: 技術進歩と研究開発競争 I (長岡・平尾 pp.187-198) 14. 7/15: 技術進歩と研究開発競争 II (長岡・平尾 pp.199-206) 15. 7/22: 期末試験 • 公式な試験日は7/29 ですが、国際学会@ドイツ に出席する必要があるため講義 内に期末試験を行います. • 16. 8/5 : 補講 (2部のみ; 19:50-21:20) • 期末試験の解説を行う予定なので, 1部のひとで興味のある方は参加してください
  • 5. 教科書 • 泉田・柳川 (2010) 『プラクティカル産業組織論』 有斐閣アルマ • 長岡・平尾 (2013) 『産業組織の経済学 第二版』 日本評論社
  • 6. 今日の内容 • 前半 : • 練習問題の答え合わせ • レポートについて • 研究開発とは • 後半: • 研究と技術開発 • 長岡・平尾 pp.199-206
  • 8. レポートの内容 • 1.テーマ : 独占/寡占企業の市場調査レポート • 自分の身近にある独占/寡占企業について調査し、 • (1) 何故独占や寡占状態にあるのか • (2) 企業が属する市場の経済的な規模, 成長率 • (3) どのような財/サービスが提供されているのか • (4) どのようにして価格が設定されているのか • (5) 独占によってどのようなメリット/デメリットが供給者/需要者それぞれに発生して いるのか まとめなさい. • 2.提出期間 • 《必須》2014年 7月8日(火) ~ 7月15日(火)14:40 〆切 • ToyoNet Ace 経由で提出 • 3.対象者と配点 • 対象: 産業組織論 履修者 • 配点: max 25点
  • 9. レポートの内容 • (2) 形式と提出 • Word または LaTeX 形式で作成し, Toyonet ACE にアップロードすること。 メールやLINE では提出を受け付けない • ただし, 以下の様式を守ること • A4 長辺縦型,横書き,MSP 明朝 10.5pt,行間 1 行,余白 上下左右 25mm,頁番号 中央下部 • 書籍を引用した場合、それを明記すること • (3) 文字数の目安と枚数 最低 5,000字以上 (英字 2,500 word 以上, なお5,000/2,500word 以下は採点しない) • レポートの記述様式 [おすすめ] • (1) はじめに • (2) [取り上げる企業名] • (3) [企業]が属する産業の詳細 • (4) なぜ [企業] は独占, 寡占を維持できて いるのか • (5) [企業] の価格設定方法 • (6) [企業] の独占による消費者への影響 • (7) おわりに (8) 参考文献
  • 10. 練習問題 • 男性 (プレイヤー1) と女性 (プレイ ヤー2) がデートの行き先として、ビア ガーデンか映画を選ぶかの選択肢を もっている。女性は映画を好み、男性 はビアガーデンを好む。 • しかし、デートのため二人にとって 別々にそれぞれが好きなものを観る より、一緒に出かけることのほうが大 切である。 • このとき、利得行列は右のように与え られる。 • 男性と女性が相談することなしに相 手と独立してゲームの行き先を選択 しなければならないときのナッシュ均 衡を求めなさい。 ビアガー デン 映画 ビアガー デン 2,1 -1,-1 映画 -1,-1 1,2 プレイヤー2 プレイヤー1
  • 11. 練習問題の答え • ナッシュ均衡1: (ビヤガーデン, ビヤ ガーデン) • プレイヤー2 がビヤガーデンを選ぶとす る • このとき、プレイヤー1 の利得は • 映画を選ぶと -1 • ビヤガーデンを選ぶと 2 よってプレイヤー1 はビヤガーデンを選択す る • プレイヤー1 がビヤガーデンを選ぶとす る • このとき、プレイヤー2 の利得は • 映画を選ぶと -1 • ビヤガーデンを選ぶと 2 よってプレイヤー2 はビヤガーデンを選択す る これより、(ビヤガーデン, ビヤガーデン) は ナッシュ均衡となる ビアガー デン 映画 ビアガー デン 2,1 -1,-1 映画 -1,-1 1,2 プレイヤー2 プレイヤー1
  • 12. 練習問題の答え • ナッシュ均衡2: (映画, 映画) • プレイヤー2 が映画を選ぶとする • このとき、プレイヤー1 の利得は • 映画を選ぶと -1 • ビヤガーデンを選ぶと 1 よってプレイヤー1 は映画を選択する • プレイヤー1 が映画を選ぶとする • このとき、プレイヤー2 の利得は • 映画を選ぶと 2 • ビヤガーデンを選ぶと -1 よってプレイヤー2 は映画を選択する これより、(映画, 映画) はナッシュ均 衡となる ビアガー デン 映画 ビアガー デン 2,1 -1,-1 映画 -1,-1 1,2 プレイヤー2 プレイヤー1
  • 13. 練習問題の答え • ナッシュ均衡ではないパターン1: (ビアガーデン, 映画) • プレイヤー2 が映画を選ぶとする • このとき、プレイヤー1 の利得は • ビアガーデンを選択した場合 -1 • 映画を選択した場合 1 となり、ビアガーデンは選択されない. • プレイヤー1 がビアガーデンを選ぶと する • このとき, プレイヤー2 の利得は • ビアガーデンを選択した場合 1 • 映画を選択した場合 -1 となり、プレイヤー2 はビアガーデンを選 択し映画は選択されない. よって, (ビアガーデン, 映画) はナッシュ 均衡ではない. ビアガー デン 映画 ビアガー デン 2,1 -1,-1 映画 -1,-1 1,2 プレイヤー2 プレイヤー1
  • 14. 練習問題の答え • ナッシュ均衡ではないパターン2: (映画, ビアガーデン) • プレイヤー2 がビアガーデンを選ぶとする • このとき、プレイヤー1 の利得は • ビアガーデンを選択した場合 2 • 映画を選択した場合 -1 となり、プレイヤー1 は ビアガーデンを選択した ほうが利得が高くなるので映画は選択されない. • プレイヤー1 が映画を選ぶとする • このとき, プレイヤー2 の利得は • ビアガーデンを選択した場合 -1 • 映画を選択した場合 2 となり、プレイヤー2 は映画を選択したほうが利 得が高くなるのでビアガーデンは選択されない. よって, (映画, ビアガーデン) はナッシュ均衡では ない. ビアガー デン 映画 ビアガー デン 2,1 -1,-1 映画 -1,-1 1,2 プレイヤー2 プレイヤー1
  • 16. 二種類のイノベーション • プロダクト・イノベーション • 生産物に係わるイノベーション • プロセス・イノベーション • 生産技術に係わるイノベーション • 多くの場合、プロダクト・イノベーションの後、プロセス・イノベー ションによる精錬化が行われる
  • 17. プロダクト・イノベーションとプロセス・イノ ベーションの関係 • 産業発展の初期 • 製品概念は不安定で、熟練に依存し て様々な商品が提案される • プロダクト・イノベーションが多く発生す る • 生産工程は各人の技能に依存した バッチ生産 • 産業の中期 • 特定の製品概念が市場で有力となる: 「ドミナントデザイン」 • ドミナントデザインをベースに、それを 効率よく生産するためのプロセスイノ ベーションが実施される • プロダクト・イノベーションからプロセ ス・イノベーションへ主眼が移行し、大 量生産システムが確立される 時間 イ ノ ベ ー シ ョ ン の 頻 度 プロダクト・イノベーション プロセス・イノベーション
  • 18. (Abernathey, 1979) – Productivity Dilemma • プロダクトイノベーションとプロセス・イノベーションの進展によって、 大規模かつ効率的な生産が実現され、生産性は向上する • 一方、技術選択の幅は狭まり、工程についても製品についても大き な革新は起こりにくく成る • 生産性の向上とイノベーションとの間にはトレードオフの関係がある
  • 19. 技術戦略 • 独自の技術力 (経営資源)を基板とした競争優位の構築を目指す際 の研究開発活動の指針 • プロダクト・イノベーションを優先するべきか、プロセス・イノベーションを優先 するべきか。 • 研究人材をどのように育成するか。 • 研究テーマの優先順位をどのように設定するか。 • 技術分野の違いによる技術の重要度の違いを見極める方法。 • 知的財産権をどのように管理すべきか。
  • 20. 技術戦略の重要性 • 事例1: NEC • 通信機事業専門の企業から、コンピュータや半導体・ICの技術開発を行い大 企業に成長した • 事例2: キヤノン • カメラの開発・製造が主だったが、技術開発の結果複写機、プリンター、半 導体製造など多角化に成功 • 事例3: シャープ • シロモノ家電から、電卓、半導体や液晶ディスプレイに多角化 • 「世界の亀山ブランド」
  • 21. 技術と競争優位 • 独自の技術を「経営資源」のひ とつとして確保する • 技術の優位性と競争優位性は イコールではない • 技術的に優れていても、社会的 に受け入れられなければイノ ベーションとはならない • 技術力を基盤とした競争優位の 確立こそ重要 Xerox Alto Apple I
  • 22. Intermission • レポート • 企業と市場の調査 • 期末試験 : 7/22 • 定期試験時にヨーロッパ出張がはいるので、15回目で実施します。 • 講義資料のアップロード先 • Facebook Page • https://www.facebook.com/toyo.io.2014 • SlideShare • http://www.slideshare.net/yasushihara/presentations • Toyonet-Ace
  • 23. 成績について • 中間試験: 25点 (換算) • レポート : 25点 • 期末試験: 50点 • 宿題 : +α点 の合算点で評価する予定
  • 24. テスト対策 • 期末試験 • 火1: 9:20-10:20 [60分] • 火7: 20:10-21:10 [60分] • 試験範囲 • 教科書 • スライド(いままでに配ったもの) • 問題の形式 • 持ち込み可 • 数学の問題 • 論述式の問題
  • 26. 技術進歩と産業の技術革新 • 日米の研究開発費比較 • 規模の大きな企業が集 中的に研究開発を行う • 電気・電子・通信機械産 業、自動車産業、業務用 機械産業、医薬品産業、 化学産業などで集中的 に投資が行われている • 医薬品の研究開発投資 額は低い • インターネット・ソフトウェ ア企業のR&D 投資額は 極めて低い 日本企業 研究 開発費 対売上比率 武田薬品 4545 29.5 第一三共 1851 21.9 アステラ ス 1596 16.5 エーザイ 1266 20.0 塩野義 530 23.2 大日本住 友 530 20.0 協和発酵 キリン 468 11.3 米国企業 研究 開発費 対売上比率 ファイザー 8887 15.5 ジョンソンア ンドジョンソン 8007 11.3 メルク 6699 21.3 イーライリ リー 4959 19.8 ブリストル・マ イヤーズスク イブ 4180 16.9 アムジェン 3283 19.6 アボット 3145 8.9
  • 27. 財としての知識 • 消費の非競合性 • ある知識を特定の目的に利用することは企業内の他の用途への利用を阻 害しない • 知識の開発と利用には企業レベルで規模の経済が働く • 知識の生産を阻害しないのであれば、知識の利用の価格をゼロにして知識 の利用をできるだけ広く行うことが社会効率的 • 排除可能性が弱いこと • リバースエンジニアリング • サプライヤーとの技術共有 • 得られた知識を公知にすることへのインセンティブ • 技術のスピルオーバー
  • 28. 技術利用と研究開発へのインセンティブ • 技術の利用へのインセンティブ: 市場 の大きさと競争 • 新技術の投入とそれによる市場開拓は 企業に多大な利益をもたらす • プロセス・イノベーションによる生産コスト の低下も、プロダクト・イノベーションによ る新製品の導入も企業に利潤増加の効 果を与える • 新技術導入から得られる利潤 = v (各消費者の支払い意欲) * q (企 業の当該製品の売上数量) • 技術革新からの利益は技術を活用できる 市場の規模が大きいほど高くなる • 企業間競争は技術導入を促す • 先駆的に優れた技術を先んじて導入 することにより、収益性を他社に比べ て向上させることができる • 独占的な企業も、優れた技術を有す る後発企業によって独占を失う可能 性がある • Levin (1987) • 市場シェアが高いマーケットほど、積 極的にバーコードスキャナーを導入し た • 生産費用を削減する新技術導入の収 益性には市場規模も重要な役割を果 たす
  • 29. 技術利用と研究開発へのインセンティブ • 技術の利用へのインセンティブ:サ ンクコスト • 企業は新技術と旧技術をどのように 使い分けるか • 企業の既存の生産技術: O • より優れた生産技術 : N • 旧生産技術の導入費用 : IO • 新生産技術の導入費用 : IN • 旧生産技術による粗利益: Πo • 新生産技術による粗利益: ΠN • 企業はすでに旧技術を導入してお り, 新技術の採用によって旧技術を 導入するために利用した費用がサ ンクコストになるとする • このとき、新技術を導入するかは旧 技術に対する追加効果が導入費用 を上回るかで決まる Π 𝑁 − Π 𝑂 > 𝐼 𝑁 • 新たに新技術の導入を検討している 企業の場合、新技術が旧技術と比較 して多くの利潤をもたらす場合のみ 新技術を選択する Π 𝑁 − Π 𝑂 > 𝐼 𝑁 − 𝐼 𝑂 • これから新技術を導入する企業のほ うが、新技術を導入する条件がより 満たされやすい • 大手企業ほど新たな技術へのキャッ チアップに遅れてしまう
  • 30. 技術利用と研究開発へのインセンティブ • 技術の利用へのインセンティブ: 置き換え効果 • 既存技術から企業が得ている利潤が小さいほど、競合関係にある新技術の 導入やそのための研究開発への誘因は高い (置き換え効果) 研究開発からの利益 = 新技術からの利益 – 新技術の利用による旧技術の収益低下 • 既存事業からの収益が低い企業ほど、既存製品を凌ぐ新製品を導入する 誘因、あるいはそのための研究開発をする誘因が高くなる • これにより、シェアの逆転が発生する (etc…: アサヒとキリン)
  • 31. 技術利用と研究開発へのインセンティブ • 技術の利用へのインセンティ ブ: 生産技術の革新 • 既存技術の利用が競争的で利 益を得られない場合、新技術 を研究開発するインセンティブ が高くなる • 限界費用が c1 から c2 まで低 下するケースを考える c1 c2 D DMR F B D
  • 32. 技術利用と研究開発へのインセンティブ • 技術 c1 が多数の企業によって利用され ている場合、得られる利益は0 となる • 技術革新によって限界費用が c1 -> c2 と なった場合, 企業は価格を c1 のままにす る • 企業の利潤はB+D • 企業が c1 を独占していた場合, 技術革新 前の利潤は F • 技術革新後の利潤は B+F • 技術革新による利潤は B • 旧技術 c1 を独占していたほうが企業利益 の水準そのものは高い (F+B > B+D) が, 技 術革新からの利益事態は逆に小さくなる (B<B+D) c1 c2 D DMR F B D
  • 33. 技術開発の専有可能性と研究開発競争 • イノベーションを実現すれば、企業は大きな利潤を獲得できる • 優れたイノベーション {他社が真似できないほど独創的な商品であり, 競争的な価格や商品を設定できない財} であれば, 他社は市場に参 入できず企業は独占的に利潤を獲得できる. • 研究開発へのインセンティブは、社会的余剰のうち研究開発を行っ た企業がどれだけ利益として獲得できるか, 専有可能性の強さに依 存する. • 技術を特許権や企業秘密, 研究技法などで守ることができれば企業 は優位性を確保し続けることができる
  • 34. 先行優位性と技術開発 • 技術開発の結果新たな先行優 位性が獲得出来る場合, すなわ ち, 研究開発によって技術や市 場が「先取り」出来る場合、研究 開発へのインセンティブは高ま る • 例. 特許制度 • 最初に研究開発に成功した企業が 収益を「総取り」することができる • 例. スタチン • 「安全に」LDL コレステロール値を 下げることができる薬 • 1970年代から開発が開始 • 日本の三共が最初に開発を手がけ る • 最初に市場で販売したのはメルク • 結果, メルクが先行者利益を獲得 • その後, より優れたスタチンを発売し たファイザーやアストラゼネカがより 多くの利益を獲得
  • 35. 独占の持続の可能性 • (Gilbert and Newbery 1982) • 先取りすることが重要な場合, 既存企業のほう が新規参入企業とくらべて研究開発への誘因 が高くなる • 例 • 企業 A : すでに独占的な地位にある企業 • 企業 B : 新規参入企業 • 企業 A は自社が開発に先行して成功すれば特許に よる市場の独占を守ることができる • 企業 B に開発を先んじられた場合, 複占となり競争 する必要が生じる • 利得の設定 • 企業 A : Π 𝐴 • Π 𝑀 𝑖𝑓 先行した場合得られる利潤 • Π 𝐴𝐷 𝑖𝑓 技術開発に遅れて企業B に参入を 許した場合の利潤 • 企業 B : Π 𝐵 • Π 𝐴𝐷 𝑖𝑓 技術開発に成功して参入し複占を 実現した時の利潤 • 利得 • 企業A : Π 𝐴 = Π 𝑀 − Π 𝐴𝐷 • 企業B : Π 𝑩 = Π 𝐵𝐷 • このとき, 独占利潤は複占利潤の和より大きくな るため Π 𝑀 > Π 𝐴𝐷 + Π 𝐵𝐷 これより, 企業 B の利得と組み合わせて Π 𝐴 = Π 𝑀 − Π 𝐴𝐷 > Π 𝐵𝐷 よって、企業 A のほうが研究開発への誘因は 高くなる • 技術の先取りにより独占が守れる場合, 研究 開発が積極的に行われる • 例. 既存の自動車メーカーと新規参入企業 • 例. 製薬会社とジェネリック医薬品
  • 36. 今日のまとめ • レポートは来週までに提出です (今回は必ず Web で提出してください) • 来週は試験の予告編です
  • 37. 連絡方法 • 東洋大には 9:00-10:30 と, 19:50-21:20 しかいません • 非常勤のためオフィスアワーを設定できませんので、以下の手段で ご連絡ください。 • ツイッター @harayasushi • フェイスブック : https://www.facebook.com/toyo.io.2014 • LINE : @harayasushi (LINE は東洋大内では遮断されているようです)
  • 38. 次回予告 14. 7/15: 技術進歩と研究開発競争 II (長岡・平尾 pp.199-206) + 期末試験の予告編 (≒ 前期 後半のまとめ) 15. 7/22: 期末試験 16. 8/5 : 補講 (期末試験の解決編)