中毒診療にまつわるエトセトラ

中毒診療にまつわる
エトセトラ

第12回宮崎救急プライマリケアカンファレンス

みなさまお疲れ様です
本日のカンファレンスについてのお願いがあります。

これまで皆さんが経験したことや苦労したこと
こんなことが疑問なんだよね、ということを
どんどん出して頂き
カンファに参加したみんなで
色々なことをシェアしたいと
考えています

では、早速ですが
恒例の質問タイムです

みなさんの学生時代を振り返ってみて
（何年前？とは聞きませんので）

「中毒」の講義ってありました？

それぞれの立場から
コメントをお願いします
消防・救急
看護師
薬剤師
医師
学生

僕はあんまり記憶ないんですよねぇ～

 有機リン中毒→アトロピンとPAM
 パラコート→酸素禁忌
 キノコ中毒→肝障害、致死率高い
（病棟実習の時に担当）

多分、このくらいでしょう

急性中毒の５大原則
1.全身管理
2.吸収の阻害
3.排泄の促進
4.解毒薬・拮抗薬
5.精神科的評価＆治療
上條吉人先生の講義資料より抜粋

全身管理について
「AB&3Cs」を考える
A：Airway 気道
B：Breathing 呼吸
C：Circulation 循環
C：CNS 中枢神経
C：Complications 合併症

気道管理の目的

 舌根沈下→閉塞
 咽頭反射の減弱→誤嚥
 刺激性ガス等により浮腫・攣縮・閉塞

呼吸管理
【酸素化障害】
化学性肺炎：刺激性物質や誤嚥

【換気障害】
呼吸中枢抑制：睡眠薬、麻薬等
呼吸筋麻痺：フグ毒、トリカブト毒、有機リン中毒

循環管理
【高血圧】麻薬、抗コリン薬、抗ヒスタ
ミン薬

【低血圧】Ca拮抗薬、B遮断薬、ヒ素等

【不整脈】 Ca拮抗薬、B遮断薬、ジギタ
リス
有機リン、カーバメイト農薬、抗うつ薬
等

中枢神経管理
 昏睡
→基本は覚めるのを待つ
鑑別目的のｱﾈｷｾｰﾄ®投与はあり
 不穏・興奮
→ｾﾚﾈｰｽ® 、ﾄﾞﾙﾐｶﾑ® 、ﾌﾟﾛﾎﾟﾌｫｰﾙ®等々
 痙攣
→ｾﾙｼﾝ® 、ﾄﾞﾙﾐｶﾑ® 、ﾌｪﾉﾊﾞｰﾙ®等々

中毒における３大合併症

1. 誤嚥性肺炎 Aspiration pneumonia

2. 異常体温 Abnormal body temperature

3. 挫滅症候群/コンパーメント症候群
Crush syndrome/Compartment syndrome

原則として、抗菌薬は不要

発見時体位も関与？
仰臥位＞側臥位＞腹臥位で合併率高い

 ARDSへの移行

【高体温】
 悪性症候群

【低体温】
 α1遮断作用によるshivering阻害
 中枢体温調整機能（D2受容体、
5-HT2受容体）への影響？

昏睡により、長時間同じ姿勢で放置

筋肉の挫滅

ﾐｵｸﾞﾛﾋﾞﾝやK等筋肉の腫脹
の放出
区域内圧上昇に
血圧低下、不整脈よる血行障害
腎不全等
神経・筋障害

吸収の阻害
1. 胃洗浄
2. 腸洗浄
3. 活性炭
4. 緩下剤

胃洗浄
Q.自施設で施行してます？
かなりControversyなところ！
薬物中毒＝胃洗浄ではない

胃洗浄の方法
1. 経鼻胃管では効果少ない
→36～40Frの胃管使用
1. 1回の洗浄量は200～300ml程度
2. 水道水で可。体温程度に加温すること
3. 左側臥位、頭を約15°程度下げる
4. 洗浄液が綺麗になるまで繰り返す
→５～2０Lすることも度々・・・

腸洗浄の適応
 活性炭に吸着されにくい
 腸管吸収が遅い
 有効な治療方法がない致死的中毒例
 Body Packer

服用後1時間以内が理想

大事なのは診察室を汚さないこと！

活性炭が無効な薬物
 アルコール類
 酸、アルカリ
 灯油、ガソリン
 重金属

緩下剤の目的
① 消化管通過時間の短縮
② ソルビトールの甘みで、活性
炭を服用しやすくする
③ 活性炭による便秘予防

単独では使用しない（意味なし）

排泄の促進
1. 血液浄化法
2. 尿アルカリ化
3. 活性炭反復投与
4. 強制利尿

血液浄化法
 血液透析法
分布容積が小さい
半減期が比較的長い
蛋白結合が少ない
水溶性、小分子量
メタノール
アスピリン
リチウム
エチレングリコール

血液浄化法
 血液灌流（吸着）法
カラム内に活性炭を含有
分子量や蛋白結合率はあまり関係ない
適応となる薬物は以下の通り
カルバマゼピン
フェノバルビタール
フェニトイン
テオフィリン

尿アルカリ化
実際の現場で有効なのは次の２つ
①中等度までのアスピリン中毒
②TCA中毒（三環系抗うつ薬）

※フェノバルビタールでも有効だが
活性炭反復投与の有効性が勝る

尿ｐHの目標は7.5以上に保つ

活性炭反復投与
MDAC:Multiple Dose Activated Charcoal

方法：活性炭25ｇを2～４時間毎に繰り返し投与

 腸肝循環する薬物
 分布容積の小さい薬物
 徐放製剤

MDACが有効な薬物
 テオフィリン、キニーネ、アスピリン、アレ
ビアチン
 フェノバルビタール、βブロッカー
 カルバマゼピン

解毒薬・拮抗薬
 有効な解毒薬が存在すれば投与するが
必須という訳ではない
 表を初療室等においておくのが便利
 中毒センターの利用も一つの手（有
料）

宮崎大学附属病院内に
常備している解毒薬

 PAM
 アトロピン（大量）
 シアノキット
 亜硝酸アミル
 アセチルシステイン（千寿）
 バル

One pill,One Kill!!
たった１錠でも
乳幼児を死に至らしめる薬物のこと
 Ca拮抗薬、β遮断薬 樟脳
 三環系抗うつ薬 クロルプロマジン
 経口糖尿病薬 クロロキン
 麻薬 キニン系抗不整脈薬
 テオフィリン 経皮吸収パッチ
（ニコチン、ニトログリセ
リン）

「急性中毒の標準治療」
日本中毒学会HP http://jsct.umin.jp/page037.html

強制利尿体温管理
血液浄化法呼吸管理
消化管除染痙攣対策
・胃洗浄循環管理
・活性炭
・緩下剤
・腸洗浄

次回予告
① 原因薬剤が不明なとき
～トキシドロームという考え方
～
② 原因薬剤の絞り込み方
③ 「トライエージ」について
④ 各論：特徴的な薬物について

ご清聴ありがとうございました

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