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広がれ、こども⾷堂の輪!全国ツアー in みやぎ
開催報告
⽇時:2017 年 6 ⽉ 8 ⽇ 13:30〜16:30
会場:宮城県庁 2階講堂
地域の誰もが関われるこども⾷堂を
⼦どもの6⼈に⼀⼈が貧困状態と⾔われています。宮城県では平成2
8年に「宮城県⼦どもの貧困対策」を策定し、すべての⼦どもが夢と希
望をもって成⻑できる環境を⽬指しています。
こども⾷堂の相次ぐ開設は全国でも注⽬を集めています。地域のさま
ざまな⽅が運営に携わることで、地域づくりの効果も⽣み、お腹と⼼を
満たす地域の居場所として広がりを⾒せています。ここでは⼦どもや保
護者の SOS に気づき、早期の⽀援につなげる役割も期待できます。これ
らの動きが県内全域に広がり、さらに開設されるよう、県としても⽀援
をしたい。今⽇のこのイベントをきっかけに、こども⾷堂が特別な取り
組みではなく、地域住⼈の誰もが関われるよう理解が深まることを願い
ます。
こんにちは。栗林知絵⼦です。
⼦どもの居場所作りを⾏うNPO法⼈、豊島⼦どもWAKUWAKUネッ
トワークの代表で、今回の全国ツアーの呼びかけ⼈、⾔い出しっぺでもあり
ます。ですが私は、福祉や教育業界の⼈間ではありません。地域の主婦です。
そんな私がなぜ、こども⾷堂を始めたのかをお話しし、私たちにできること
を⼀緒に考えたいと思います。
「貧困と⼦どもの問題はつながっているのでは?」
1. 開会挨拶
宮城県知事 村井嘉浩⽒
2. 基調講演
「こども⾷堂が地域で果たす役割」 栗林知絵⼦さん
「広がれ、こども⾷堂の輪!」全国ツアー実⾏委員会代表
特定⾮営利活動法⼈ 豊島⼦どもWAKUWAKUネットワーク 代表
私は、新潟県⻑岡市に⽣まれ育ちました。⼈の関わりと⾃
然がとても豊かな⼟地です。就職と同時に上京しました。2
度ほど、「もう嫌だ、帰りたい!」と思いました。そんな⼀
⼈寂しい夜に思い出したのは、⼩さいときに思いっきり遊び
まわったことや、正⽉に親戚中が集まってご飯を⾷べたこと。
楽しい思い出を辿ると、ちょっと元気になって次の⽇も会社
に⾏ける気がしたものでした。
結婚し、池袋で⼦育てをスタート。私がふるさとの記憶に
励まされたように、わが⼦にも思いっきり遊んだという「⼼
の宝物」を作ってあげたい、と思いました。そこで、豊島区
が始めたあそびば事業(プレーパーク)に関わり始めます。
わが⼦のためにと思って始めた活動ですが、ここではいろいろな⼦に出会いました。「昨⽇から何も⾷
べていないから、何か⾷べるものがほしい」という⼦、「前は⾞の中で暮らしてた。後部座席の⾜元で寝
るんだ」という⼦。わが⼦が育つ町に、あまりにも想像もつかない暮らしをする⼦がいることに愕然とし
ました。
そんなとき、テレビで年越し派遣村の報道を⾒ました。仕事と住まいがない⼈が、⽇⽐⾕公園で炊き出
しを待つ。同じ⽇本のできごとなのかと衝撃を受けました。
貧困問題に関⼼を持つようになると、テレビの向こうの問題と、⾃分の町の問題がつながって⾒え始め
ました。「⼦どもの貧困」というキーワードが社会でやりとりされるようになり、やはり、貧困と⼦ども
の問題はつながっているんだと確信を持ちました。
「団らん」を地域で作ればいい
こども⾷堂を始めたきっかけは、⼀⼈の少年です。プレーパークで以前から知っている中3の男の⼦、
夏休みの夜にスーパーで偶然⾒かけました。「オレ、⾼校⾏けないかも」とつぶやいたのを放っておけず、
そのまま⾃宅へ。「ここがウチだから。本当に勉強したくなったらおいで」と⾔って別れると、5分後、
本当に⽞関に⽴っていました。「ほんとに教えてくれるの?」。
9⽉から毎⽇⼀緒に受験勉強をしました。そのうち、安⼼していろいろと話すようになりました。⼩3
で両親が離婚、⺟⼦家庭で⺟はダブルワークをしていること。そのころから勉強につまずいたこと。⼀⽇
500円もらい、好きな時に⾷べ物を買う暮らしをしていること。「ウチで毎⽇ごはん⾷べなよ。500
円は貯めて、好きなもの買えば?」おせっかい⼼を発揮した。「栗ばぁの家って家族みんなでごはん⾷べ
るの?気持ちワル」と⾔った。
私は毎⽇団らんを経験して⼤⼈になりました。でも、今はそれを知らない⼦がいるのです。このまま⼤
きくなり、果たして温かい家庭や団らんを築けるのだろうか。なんとかしたいと思いました。ダブルワー
クのお⺟さんは仕事を真⾯⽬に頑張って遅くなる。団らんを家族だけの責任にせず、地域で作ればよい
のでは。
⼀⽅、受験勉強はプレーパークの⼤学⽣ボラを巻き込み、最終的に都⽴⾼校に⾒事合格。その過程で感
じたことは、⼩学校でつまずいた⼦は誰にも配慮されないまま中3になり、そこで「都⽴⾼校には⼊れな
いよ」と先⽣に⾔われてしまう。もっと早く、なんとかならないか。地域で集会室を借り、⼩中学⽣が来
られる学習会ができないか。
同じころ、地域の⼀軒家で⼀⼈暮らしの男性を気にかけていました。奥さんは⾃宅でパン屋を開いて
いたが病気で亡くなり、息⼦家族も引っ越して、現在⼀⼈暮らし。「賑やかだった家にひとり。ご飯を⾷
べる気も、新聞を読む気もしない」。つぶやきを聞くと、放っておけず、おかずを作っては持参し⼀緒に
⾷べていた。そのうち、「⼦どもの貧困はピンとこないが、⼀⼈で⾷べている⼦がいるならウチでこども
⾷堂やってみたい」。じゃぁ、やろう。と、5年前にこの家を会場にこども⾷堂と学習⽀援をスタート。
NHK「あさイチ」の番組に取り上げたもらいました。私⾃⾝、年越し派遣村の映像を⾒て動き出した
のですが、こども⾷堂の映像を⾒て、同じように何かを感じてもらえるかもと思った。実際、放送後に
「私たちもやりたい」という声が聞こえ始め、今ではこんなツアーもできるようになった。
困っている⼦どもは「地域」にしかいない
⼦どもの貧困は地域にある、ということをまず知ってほしい。私が活動を始めたころ7⼈に⼀⼈と⾔わ
れた⼦どもの貧困が、今は6⼈に⼀⼈。継続的に貧困率が上昇しています。虐待も同じ。ひとり親家庭、
外国籍家庭であることが多いです。⽇本の特⻑は乳幼児の貧困率の⾼さ。⼦育ては⼀般に年齢が上がる
ほどお⾦がかかるが、乳幼児期にすでに貧困状態であれば、⼦どもは必要なものを買ってほしいとか、習
い事をしたいとか、⾔えなくなる。すると「どうせ⾃分なんて」と考えるようになってしまう。地域で⺟
を孤⽴させない、話せる関係を作る、さらに⼦どもの居場所をさまざまな形で作り、⼤⼈と話せる関係を
作ることが重要。ここで「声」をキャッチできるから。
⽇本財団の調査では、⼗分な環境で育てられない家庭を放置した場合、2.9 兆円の損失と 1.1 兆円の財
政負担が⽣じるとしています。これらを負担するのは誰でしょう。これから⼤⼈になり納税者となる⼦
どもたちです。現状の格差を放置することは、今の
⼦どもにツケを回すことになるのです。
また、恵まれない境遇の⼦どもへの⼈的資本投資
は、成⻑後よりも就学前の時期にあてることの効果
が⾮常に⾼いという研究も発表されています。ここ
に、地域の私たちにできることがあります。恵まれ
ない環境の⼦は地域にしかいません。休⽇も⾞や電
⾞で遠くへ遊びに⾏くことがないからです。地域に
⼦どもの居場所を作りましょう、成果を⽣むはずで
す。
できることを持ち寄ろう。ニーズから⽀援を⽣み出そう。
私たちの活動を紹介します。まず、プレーパーク。⼦どもの「やってみたい」を実現する場所です。な
い遊具は⾃分たちで作り、⾃然の素材で遊びます。勉強や運動だけではない、さまざまな「ものさし」で
褒めてもらえる場所です。関わる⼤⼈が⼦どもの⽇常をさりげなくサポートし、⼦どもは⼤事にされて
「⼈を頼る⼒」を⼿に⼊れます。
学習⽀援。普通の家庭のように学校からみんなここへ帰ってきます。貧困の⼦だけではなく誰が来ても
いいんです。それは⾏政でなく住⺠がやっているから。外国籍の⼦が来れば、そのお⽗さんお⺟さんも、
⽇本語を学びたくて来る。ガンと闘っているお⺟さんは、「もし⾃分がいなくなっても、娘が地域に⽀え
られて⽣きていけるように」と連れてくる。⼤学⽣ボラは、経済事情で参考書を買えない⼦に出会うこと
で何かを考えるようになります。街の縮図のように混沌と、ごちゃまぜな、居場所です。
こども⾷堂で、⼦どもはさまざまな体験をします。お弁当作り、旅⾏、バーベキューも。地域内がつな
がることで、⼦どもにいろいろなことをさせてあげられる。お⺟さんが「地域に⼤事にされている」と実
感することで、⼦どもも変わっていきます。お寺、碁会所などでも開きます。それぞれの場に応じた開催
⽅法を取っています。
こんなふうに、さまざまな⼈がつながることで、街に⼩さい単位でセーフティネットの網ができてい
く。困っている⼦を連れて⾏く場所、つなぐ選択肢が増えるのは⼤事なことです。
現在、全国に約 500 ヵ所のこども⾷堂があり、ネットワークができつつあります。キャッチした⼦ど
もの声をどう⽀援につなげるかが⼤切。
これだけ急速に広がったのは、地域の主婦が「ごはんを作るくらいなら⼿伝える」「そんな場所ならや
ってみたい」と思えるから。地域でやっていれば、ないものは誰かが調達したり、困ったときに誰かにつ
ながったりできる。住⼈⾃⾝の元気にもつながる。住⼈主体だからこそ、。街が耕されます。さらに、⼦
どもだけでなくさまざまに孤⽴しているひとをつなぎ、ニーズから⽀援を作り出す「⽀援のプラットフ
ォーム」となれるでしょう。
⾏政は縦割りで困るという話がよく出ますが、縦割り⾏政に私たちが横串を刺すことはできます。住⼈
が⼦どもを真ん中につながり、⾏政と地域をつなぐ役割を果たせる。できることを持ち寄り、⾏政と対等
なパートナーシップを築けばいいと思います。こんな街なら、⼦どもが将来ふるさとに戻ってくるので
は。
貧困状態にある⼦どもは、最たる弱者。⼀⼈で⽣きられず、困ってると⾔えない存在です。その声をど
うキャッチするか。将来、この豊かな⽇本から⼦どもの貧困という問題をなくしたい。今、動き出してい
る⼤⼈は増えています。もっと広げていきましょう。こども⾷堂で地域の⼤⼈の意識を変えられる。する
と、⼦どもが変わり、未来が輝くでしょう。
栗)それぞれの⾃⼰紹介と活動紹介をお願いします。
地域の「秘めた⼒」を掘り起こす 〜ていざんこども⾷堂〜
⾨)⽯巻で活動するNPO法⼈TEDIC(テディック)の⾨⾺です。東⽇本⼤震災の被災地である⽯巻
市出⾝です。⽣まれ育った⼟地が被災したことがきっかけで、⼦どもに関わるNPO法⼈を⽴ち上げま
した。⼦どもは⾃分にとって「町の後輩」だと思っています。
震災直後、避難所で出会った中 3 の男の⼦の「震災が起きて救われた」という⼀⾔が、活動のきっか
け。震災前に不登校で引きこもり、⽗親はリストラから飲酒や暴⼒などの家庭環境。被災し避難所に⼊っ
たとき、外部から⼊ったボランティアが先⼊観抜きで⾃分と向き合ってくれたことに救われたと話しま
した。この⼦は震災が起きるまで、助けて、という声さえ上げられずにいたんだと気づきました。さらに、
震災がなくても街には苦しんでいる⼦どもがいるのではと思いました。「震災が起きて救われた」という
⾔葉を聞きたくない、そんなことを⾔わなく
ていい街にしたいという思い。
そこで、夜の居場所でごはんや勉強や遊び
をする「トワイライトスペース」、不登校児
の⽇中の居場所である「ほっとスペース」を
開設。しかし、必要性は強く感じるのに、⾃
分たちで多くの場所を運営するのには限界
がある。「地域の⼈もどうにかしたいと思っ
ているのでは? 僕たちが直接運営しなく
ても、つながってサポートすればいいので
は?」と考えました。
3. パネルディスカッション
「広がる!みやぎのこども⾷堂を知ろう」
パネリスト
⾨⾺ 優さん NPO法⼈ TEDIC代表
⼤橋 雄介さん NPO法⼈ アスイク代表
⻘⽊ ふく⼦さん せんだいこども⾷堂コーディネーター
コーディネーター 栗林 知絵⼦さん
⽯巻市には⼩中学⽣が約 1 万⼈。そのうち、就学援助を受ける家庭の⼦は 1000 ⼈、⽣活保護家庭は 80
⼈です。他にも、何らかの要因で親が⼦どもの⾯倒を⾒られない、世帯収⼊はあるが⼦どもは貧困状態、
というケースもあり、ひとくくりにはできません。僕たちのところに紹介される⼦どもに会うと、「もっ
と⼿前で⽀援が受けられなかったのか」といつも思う。普段から助けられる⼈が近くにいれば。
貞⼭地域の住⼈や学校と話し合うなかで、先⽣が「学校だけで全部の⼦どもを⽀えられない。地域の⼒
を借り、⼀緒に⽀える仕組みを模索している」と提案があり、ここで栗林さんの「あさやけこども⾷堂」
が思い浮かびました。これだ!と思った。先⽣に相談すると、とんとん拍⼦に事が運び、開設となった。
社協や地域福祉コーディネーターに相談して⼈とつながり、今では住⼈主体の動きになりつつある。
学校の先⽣も顔を出してくれます。⼦どもたちは、料理を⼿伝ったり遊んだり、⾃由に過ごします。
貞⼭こども⾷堂は参加に条件を設けず「誰でもおいで」のスタイル。毎回 50~60 ⼈。17 時から始め、
19 時に保護者が迎えに来ます。迎えが来られない⼦は、20 時まで居残りができ、ここでは個別の話がで
きたりもします。20 時になっても迎えが来ないと、今度はスタッフの地域住⼈が⼀緒に帰ってくれます。
これは地域住⼈がやっているからこそできること。このおかげで参加できている⼦どもは確実にいる。
遅くまで保護者が帰ってこない家の⼦は、地域住⼈が⾃発的に預かってくれるなど、当初考えていなか
ったことが始まっている。僕たちはこども⾷堂しかやっていないが、新たな動きが⽣まれている。
経済的な貧困以外の困りごとも⽀える必要があります。誰がいつ、どんな状況で困難にであうか分から
ないから。⼀つでも多くの居場所があるといい。誰かとつながり、ポロリと声をこぼせることで、何かに
つながり⼈⽣を変えられる可能性がある。どこにどんな環境に⽣まれても、当たり前に⽣きていける社
会にしたい。
⽀援の「⼊り⼝」の⼀つとして 〜多賀城こども⾷堂〜
⼤)NPO法⼈アスイクの⼤橋です。震災後、貧困状態にある⼦どもを⽀えようと活動を始めました。
主な事業は学習⽀援ですが、単に勉強を教えるだけでなく、。孤⽴する家庭や⼦どもとつながる⼀つの⼊
り⼝だと考えています。関係作りのなかで⾒えてくる課題が多くあります。
こども⾷堂は、学習⽀援事業で連携するみやぎ⽣協の有志メンバーの声かけによって始めました。ま
ずは 1 ヵ所で⽉に⼀回、試験的に実施しました。やってみたら、学習⽀援に⾜が遠ざかっていた⼦ども
が久しぶりに現れたり、⼦どもと⼤⼈、⼦どもと⼦どもの関係性が近くなったりと、いいことがいくつか
ありました。⼦どもの⽀援にはさまざまな⼊り⼝があるといいと感じました。
そこで、多賀城市の福祉系部局や、パーソナルサポートセンターと連携を取り、多賀城のみやぎ⽣協で
去年の 6 ⽉から週⼀回の開催を始めました。⽣活困窮等の参加条件を設け、⼩学⽣から⾼校⽣とその保
護者を対象にし、無料で事前申し込み制としました。個別の参加者を、困りごとがあったときにサポート
につなげることを⽬的にしたかったからです。
最初はなかなか参加者がなく、災害公営住宅全⼾
にチラシを⼊れたりして周知活動を⾏いました。こ
こでつながった1家族が参加し、その後つながりか
ら 8 家族ほどが参加するようになりました。中学⽣
は、実はごはんよりも勉強を教えてもらいたくて来
ることが分かったので、チラシには「学習⽀援」もう
たうようにしました。実際、学年の⾼い⼦たちはその
ほうが来やすいようです。
⼦ども⾷堂の活動を、以前から⾏っている学習⽀
援活動と⽐較してみると、このようなことがありま
す。
・ボランティアが集まりやすい:ごはんを作る、とい
うのは⽇常⽣活の⼀部だからだと考えられます
・⾷材寄付などの問い合わせが多い:地域の農家、パン屋さんなど
・⼩さい⼦どもと保護者が参加しやすい
・ネットワークが広がりやすい
⼀⽅で、課題も浮かびました。
・参加につながりにくい:学習⽀援より差し迫ったニーズではない? 知らない⼈と⾷べる抵抗感? ご
はんを作らない/⾷べさせられない親だと思われたくない?
・調理と⽚付けに時間と⼿間がかかり、⼦どもとの接点が少なくなる
・定員を増やしにくい
・学年の⾼い⼦の参加につなげるには⼯夫が必要
試⾏錯誤中ではあるが、相対的貧困の家庭が、さらに困窮している家庭の⼦を⽀えている現実がある。
みんなで⽀える地域を作りたい。
栗)⽣の声を聞くと⼼が動きますね。私たちの⼦ども⾷堂でも、ある主婦の⽅が、ご主⼈と⼆⼈でテレビ
⾒ながら無⾔でご飯を⾷べる毎⽇で、⽉ 2 回のこども⾷堂は楽しみなのよと(笑)。こどもの声を聞きなが
らのごはんは幸せね。と⾔ってくれます。
さて次の⻘⽊さんは、私と同じ、地域の⼀⼈のお⺟さんです。
お⺟さんが「安⼼」を持ち帰る 〜せんだいこども⾷堂〜
⻘)せんだいこども⾷堂の⻘⽊です。仕事は保育園の栄養⼠で、家庭では⼦ども 3 ⼈の⺟です。仙台こど
も⾷堂では、会計や⾷材のやり取り、現場ではキッチンを担当しています。
せんだいこども⾷堂は、代表の⾨間の思いで⽴ち上げた団体です。震災から 5 年になる新学期に向け
て、おいしいごはんを⼀緒に⾷べて新しい環境に送り出したいという思いでした。
私も私で、ごはんくらいご近所さんとワイワイ⾷べられるといいよね、と思っていました。東京でこど
も⾷堂の動きが聞こえてきていて、なんとなく、オバチャンにもできる活動のような匂いを感じていま
した。私も⾨間さんも受験⽣を抱え、次の春には⼦どもの⼿が離れ、困っている⼦どもたちを⽀える活動
ができればいいなと思っていました。⾨間は、助成⾦を申請し、⼈を集め、着々と準備をしていました。
娘の受験について東京へ⾏き、旧来の友⼈である栗
林さんに会いました。テレビや記事で活躍を⾒て、すご
いなぁと思っていたのです。⼦どもに「私の50代の⽬
標にするよ!」と⾔ったら、次⼥が「何⾔ってるの、い
つかとか⾔ってないで、今やりなよ」と背中を押してく
れました。 せんだいこども⾷堂はコアメンバー13
⼈、全員仕事を持っていて、普段はSNSでやり取りし
ています。事務所はありません。ボランティアは約35
⼈、社会⼈も学⽣もいて、単発で来てくれる⼈も継続参
加の⼈もいます。応援してくれる企業や団体は約20、
⾷材の寄付などを頂きます。活動は3ヵ所を交代で開
催しています。什器等は会場の備品を活⽤し、不⾜分は
購⼊していますが、会場が1ヵ所でないため備品の管理が課題です。⾷材について、お⽶は寄付を頂いて
います。余分にいただく場合は他の⼦ども⾷堂と分け合います。野菜も農園のご寄付をいただいていま
す。事前にやり取りし、今採れる野菜を聞いてから献⽴を⽴てることが多いです。⾁や⿂はそうそういた
だくことはありません(笑)。助成⾦や寄付⾦等で購⼊します。おやつは、お寺からおさがりをいただくこ
とが多くあります。メニューはキッチンスタッフが考えます。季節や伝統⾏事に寄り添いたいと考え、秋
にはハラコ飯、冬には鍋物などをしました。ブラジル五輪のときはブラジル料理も。味噌醸造店のご厚意
で味噌づくりワークショップを開いたり、チラシやランチョンマットはイラストレーターの⽅がかわい
らしく作ってくれたり、さまざまな⽅の協⼒をいただいています。
参加者は、⼩さい⼦どもとお⺟さんが多いのが、うちの特徴かもしれません。経済的な困窮に限定はし
ていません。お⺟さんが来たいと思ってきてくれます。スタッフが⼦育て経験があることが⼤きいのか
も。スタッフとおしゃべりして、安⼼を持ち帰ってくれているのかなと思います。リピーターさんも多い
です。おばあちゃんと孫、⾼校⽣と姪っ⼦ちゃん、という⼈もいます。ポロリとこぼれる会話から、いろ
いろな困難が伝わってくることもあります。
こども⾷堂の可能性について感じることを話
します。⼦どもを対象に始めましたが、お⺟さん
にとってもいい場所になっているのではという
こと。またスタッフも温かいものをもらえるこ
と。地域でやっていると、住⼈やお年寄りともつ
ながれること。参加者のポロリとこぼれる本⾳
から必要に応じて専⾨機関につなぐことができ
るというのも⼤きいと思います。
本来は地域のお宅で⼦どもを⾒てあげられれ
ばいいと思います。昔はよくあったかも。私⾃⾝も、学校の近くのおうちにいつも寄っていて、そこのお
⺟さんは⼦どもどうしの噂にすごく詳しかったりして(笑)。でも、今は、⾃宅に毎⽇よその⼦を⼊れると
いうのは難しいこと。でもそれが、こども⾷堂なら実現できます。お祭り的にやるのでもいい。⽴ち上げ
るのはハードルが⾼くても、まずは混ざってみればいいと思います。私も、グループに⼊って活動するう
ちに、⾃分の地域でもやってみたくなり、折⽴地区で始めることにしました。学校や⺠⽣委員さんも協⼒
してくれて、皆さんの思いを集めて形になりそうです。
⾏政と⺠間、得意分野を持ち寄って⽣まれる⽀援
栗)たっぷりお話が聞けました。ところでこども⾷堂をやっていると、「それは⾏政がやることじゃない
の?」といわれることがある。そのあたりは、皆さんいろいろな⽴場で活動されていますが、⾏政との連
携についてどのように考えておられますか。
⾨)こども⾷堂が居場所かどうかは⼦どもが決めること。別の遊び場でもいいですよね、これがまず前提
です。
僕たちは⾏政とのつながりは⾮常に濃い。僕の携帯はひっきりなしに鳴っています、児相、ソーシャル
ワーカーさんなどから。
⾏政の縦割り問題がよく⾔われます。これって教育?福祉?どっち?とか。栗林さんの話にあったよう
に、⾏政の中でつながるかどうかじゃなくて、⺠間が⼊ることで横串が刺さる、でok。いろいろな団体
がいろいろな場所でパイプ的役割を果たせば、気づいたときにはみんなつながっている、それでいいと
思います。
⼤)⾏政、⺠間それぞれ得意があります。こども⾷堂は⾏政の外で⺠間がやるほうがうまくいくんじゃな
いか。そのうえで、⾏政の得意な分野といかにつながるか、活⽤するか、ということです。
⾏政は情報を多く持っていて、問題意識を持っている⽅も多い。⾏政、⺠間どちらも、困難な⼦どもの
繋ぎ先がなくて困っている場合も。お互いに得意分野で連携を取れるといいですね。
⻘)学校で読み聞かせに⾏ったりすると、ちょっと⼼配な⼦をみつけることがあります。困っている⼦
は、困ってますって⾔えないから困っている。だから、おばちゃんパワーでケアしたい、プレーパークや
こども⾷堂へ誘う。寂しい思いをする⼦が減ればいいという思いで動いています。
栗)住⼈ができることと、⾏政ができることは異
なっていますよね。いいことを持ち寄って、すべ
ての⼦どもが笑顔になれる⽅法を考えたいもので
す。最後にひとことずつ、いかがですか。
「ごはん」の先にあるもの、「ごはん」の周りにいる⼈たち
⾨)こども⾷堂の活動を通して、地域には⼦どものことを思っている⼤⼈がこんなにもたくさんいると
いうことを知りました。普段きつい感じのするおっちゃんやおばちゃんも、⼦どものことになるととて
も柔軟に対応してくれた。⼦どものことになるとエネルギーが⽣まれるようです。地元が⼤好き、⼦ども
は地域の宝物、財産、というのが根本にあると思います。潜在能⼒、温められていたものが、たまたま花
開いた瞬間がこども⾷堂だった。
⾃分たちでやらなきゃ!じゃなくて、地域の⼈が持つ⼒を信じることが実はベースだった。ここで育っ
た⼦どもは、地元が⼤好きになるんじゃないかと希望を持っています。
⼤)多賀城のこども⾷堂は対象を制限しているが、やってみて、実は制限しないほうがよかったかなと、
今は思っています。しぼるべき事業はもちろんあるが、こども⾷堂はもっと⾃由であるべきかもしれな
い。⼦どもを通していろいろな⼈がつながるために。
⼦どもが求めているものって何だろうと考えます。ごはんだけでなく、誰かと関わりたいという気持
ち。⾷事の⼀歩先にあるものを考えていきたい。
⻘)私は、いとこ13⼈くらいいて、ワイワイごはんを⾷べて遊んで、していました。⼦どもがいっぱい
いて、わーって遊べる⾵景。ごはんを⾷べるだけじゃなくて、ごはんを⾷べる機会に⼦どもや⼈が集まっ
てワイワイする。その⾵景を作っていきたいです。
栗)⾨⾺さんと⼤橋さんって、私から⾒たら⼦ども世代。すごく応援したい。⼤橋さんが「こうすればよ
かった」と⾔いましたが、私たちこの取り組みに税⾦を使っていません。勝⼿に好きで、やっている。だ
から失敗したと思ったらみんなで考えて、変えればいいと思います。
街の⼦どもたちがどうすればもっと笑顔になれるかを考え、⾏動する。そのプロセスがまちづくりその
ものです。⼤⼈がやってみたいことを楽しそうにやっている街で育った⼦たちは、もっと⺠主的な社会
を作っていくのでは。
いろんなやり⽅があって、⼦どもにとって選択肢は多いほうがいい。あのオバチャンは苦⼿だけど、あ
っちはお兄ちゃんがいるからいいな、っていう⼦もいますよね。だから、⼤⼈どうしがあのやり⽅はダメ
だとか批判しないでいよう。みんな違ってみんないい、は⼤⼈もそう。どのやり⽅もアリだ、という社会
にしましょう。
みやぎの⼦どもを⽀える活動、ここからつながり、始めよう。
せんだいこども⾷堂⽴ち上げてから1年、いまや約30ヵ所でこども⾷堂が宮城県内で⽴ち上がって
います。たくさんの関⼼が寄せられていることを実感します。参加、協⼒する⼤⼈も増えました。
困難を抱える⼦どもには3つの孤独があると⾔われています。家庭、学校、そして地域での孤独。
そんな⼦どもたちの抱える孤独に対して、私たち⼤⼈にはたくさんのできることがあります。
毎朝学校へ⾏く⼦どもたち、地域の⼦どもたちの名前を覚え、「〇〇ちゃん、おはよう」「〇〇くん、⾏
ってらっしゃい」と声をかける。それだけで、その
⼦が何か苦しい、⾟いことに遭った時、毎朝声をか
けてくれた地域の皆さんの顔を思い出すかもしれ
ない。胸の内の苦しさを私たちに伝えてきてくれる
かもしれない。ほんの⼩さなことから、⼦どもたち
の命、⽣きることを⽀えていけるのではないかと思
います。
今⽇は300名以上のご参加がありました。とて
も⼼強いです。同じ志を持つこれほどのたくさんの
⼈が集まることはそんなにありません。ぜひお互い
に語りあって、交流をしてください。この場から、
宮城の⼦どもたちを⽀えるためにご⼀緒できれば
さいわいです。
参加者数:316⼈(宮城県職員を除く)
4. 閉会挨拶
⾨間 尚⼦ さん
せんだいこども⾷堂 代表

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