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救命救急センター
救急・熱傷集中治療室・循環器集中治療室を主とした混合病棟
Ⅰ.救急科の専門性
急性の循環不全・呼吸不全状態にある救急患者を対象とし、その病態および原因疾患
を診断すると共に、救急治療を行うことを専門とする
Ⅱ.対象となる患者
1. 意識障害
2. 急性呼吸不全又は慢性呼吸不全の急性増悪
3. 急性心不全(心筋梗塞を含む)
4. 急性薬物中毒
5. ショック
6. 重篤な代謝障害(肝不全・腎不全・重症糖尿病)
7. 広範囲熱傷
8. 大手術を必要とする状態
9. 救急蘇生後
10. その他の外傷、破傷風などで重篤な状態
Ⅲ.チーム編成と病棟ベッド数 (H27 年度 4 月現在)
ICU(A チーム):12 床 ;救急センター 8床 (個室2床を含む)
熱傷センター 4床 (全個室)
フロア(B、C チーム):12 床(CCU4床+HCU8 床);CCUは全個室
Ⅳ.看護方針
固定チームナーシング;リーダーとメンバーが一定期間固定しそれぞれの役割と業務を明
確にして、チームの目標に向かいチーム活動をする
ICU、フロアは常に応援体制を持ち行動する(救急外来も含める)
熱傷センター
熱傷とは、火炎、高熱物質のほか、低温物質、化学物質、放射線による皮膚組織の損傷を
いう。その面積が体表の 30%を超えるものを広範囲熱傷または重症熱傷と呼んでいる。
受傷原因は火災、熱性流体、熱性個体、化学熱傷、電気など様々である。
熱傷の診断と治療
Ⅰ.熱傷の診断と治療方針の決定
熱傷の治療は重症度を評価することから始まる。熱傷の重症度は、①熱傷面積(%)と
創の深度、②気道熱傷などの合併損傷の有無、③年齢と基礎疾患の有無の3つの要素から
評価する。熱傷面積は手掌法と9の法則(小児では5の法則)を用いて簡便に算定し、そ
の後 Lund and Browder の図表により詳しく算定する(図Ⅰ)。創の深度は視診と疼痛の有
無により診断する(図Ⅱ)。以上の結果から表Ⅰを参考に重症度を評価する。
熱傷の深さと症状
Ⅰ度熱傷(epidermal burn:EB,紅瘢);
表皮熱傷で受傷部皮膚の発赤のみで瘢痕を残さず治癒する。日焼けなどで見られ、発
熱・灼熱感を伴い4~5日で落屑と共に治癒熱傷面積の対象にはならない。
Ⅱ度熱傷:通常これを深さにより2つに分類する。
浅達性Ⅱ度熱傷(superficial dermal burn:SDB,水疱);
水疱が形成されるもので、水疱底の真皮が赤色をていしている。通常1~2週間で表
皮化し治癒する。一般に肥厚性瘢痕を残さない。疼痛が強く水疱が破れると浸潤・ビ
ランする。
深達性Ⅱ度熱傷(deep dermal burn:DDB,水疱);
水疱が形成されるもので、水疱底の真皮が白色で貧血状を呈している。およそ3~4
週間を要して表皮化し治癒するが、肥厚性瘢痕ならびに瘢痕ケロイドを残す可能性が
大きい。感染に陥りⅢ度熱傷へ移行する。
Ⅲ度熱傷(deep burn:DB,壊死);
皮膚全層の壊死で白色レザー様、または褐色レザー様、完全に皮膚が炭化した熱傷も
含む。受傷部位の辺縁からのみ表皮化するので治癒に1~3ヵ月以上を要し植皮術を
施行しないと肥厚性瘢痕、瘢痕拘縮をきたす。痛覚の消失、皮膚の弾力は失われ、体
毛は容易に引き抜かれる。
表Ⅰ 重症度の評価方法
1.Artz の基準
1)重症熱傷
熱傷専門施設での入院加療を要する
Ⅱ度熱傷で 30%以上のもの
Ⅲ度熱傷で 10%以上のもの
顔面、手足のⅡ度熱傷
以下の合併症を有する熱傷
気道熱傷、軟部組織の損傷、骨折
電撃症、化学熱傷
2)中等度熱傷
一般病院での入院加療を要する
Ⅱ度熱傷で 15~30%のもの
Ⅲ度熱傷で 10%未満(顔面、手足は除く)
3)軽症熱傷
外来通院でよいもの
Ⅱ度熱傷で 15%未満のもの
Ⅲ度熱傷で 2%未満のもの
2.Burn Index(BI)
Ⅱ度熱傷面積(%)×1/2+Ⅲ度熱傷面積(%)
BI 10~以上であれば重症とする
3.Prognostic Burn Index (PBI)
Burn Index+年齢
120~ :致死的熱傷で救命はきわめてまれ
100~120 :救命率 20%程度
80~100 :救命率 50%程度
~ 80 :重篤な合併症、基礎疾患がなければ救命可能
Ⅱ.熱傷の病態
熱傷の病態はショック期、ショック離脱期、感染期、回復期に分類される
循環系
呼吸器系
その他
局所
熱傷性ショック 心不全 敗血症性ショック
呼吸運動障害
気道熱傷
肺水腫 呼吸器感染症
急性腎不全
敗血症
多臓器不全
体液喪失 局所の感染・植皮手術など
瘢痕拘縮
醜刑
ショック期 ショック離脱期 感染期 回復期
50時間 7日 21日
全身感染症
栄養障害
消化管潰瘍
精神障害
Ⅲ.熱傷創面からみた局所療法と選択
■Ⅰ度熱傷 → 冷却・軟膏療法
■Ⅱ度熱傷(SDB)
→ 水疱が破れていない → 処置 → 軟膏と創被覆材で水疱膜保護
→ 水疱が破れている → 処置 → 生食等で破れた創面を洗浄し汚れをとっ
たのちに軟膏と創被覆材で保護
Ⅰ~Ⅱ度(SDB)創面
Ⅱ度(SDB)創面には、血流改善や肉芽形成作用を有する軟膏類、表皮の代用と
なる創被覆材が向いている。
■Ⅱ度熱傷(DDB)→ 水疱底の色調が蒼白(真皮の下層まで損傷が及んでいることを
示す)
→ 処置 →毎日の洗浄、被覆材・軟膏類の交換
Ⅱ度(DDB)~Ⅲ度創面
抗菌力の強い軟膏、また壊死組織のみられる創面には線維素融解酵素などを含んだ
軟膏類が用いられる。
■Ⅲ度熱傷創 → 手術による外科的切除+植皮術(創被覆)
→ 処置 →自家皮膚移植・同種皮膚移植・人工真皮
Ⅳ.手術治療
熱傷の手術療法と被覆材料
手術方法
減張切開術…全周性Ⅲ度熱傷などで内圧の高い部位を切開し減圧を
はかるもの
創切除 外科的切除…分層的接線切除術、筋膜上切除術
採皮術………恵皮部より正常皮膚の採取
植皮術………分層植皮、分層網状植皮、皮弁術
↓
移植される被覆材
自家皮膚移植:患者本人の部位から採皮
(植皮片は網状・シート)
同種皮膚移植:他人の皮膚から採皮
植皮手術 異種皮膚移植:ブタ・ウシ等
人工真皮移植:ウシ等のコラーゲン(テルダーミス、ペルナック)
培養皮膚移植:自家皮膚を培養
デブリードマン
頭皮から採皮している所
採皮した皮膚を伸ばしている所
パッチ+メッシュ植皮
植皮片が伸びてきている所
中京病院熱傷センターでの治療方針
1.入院処置終了後~利尿期(refiling 期:2-3日後)まで
この時期のポイント
血管透過性亢進による脱水が根本的な病態
重症例ではこれに、熱傷による全身性炎症からくる臓器不全が加わる
脱水が改善しても、次に refiling による呼吸障害がくる
そのまま敗血症に移行する重症例もある
1)循環の管理(循環血液量と蛋白濃度を維持し、心不全・腎不全に対処する)
輸液の質:HLS輸液または細胞外液(ラクテック・ハルトマン)を用いる
蛋白製剤はFFPまたはアルブミナーを使用
開始時期:HLS、細胞外液はすぐに開始。蛋白製剤は 12-16 時間以降に開始
但し、TP<4g/dl以下になれば開始
小児は早期より開始
投与量:尿量、心拍出量、CVP、尿比重、Ht・TPが重要な参考項目
時間尿量を 0.5~2.0ml/kg に保つ
尿多:循環血液量が多い →輸液減
尿尐:循環血液量不足(CVP低い) →輸液増
腎機能障害(CVP高い、CO高い)→輸液減、利尿剤
心機能障害(CVP高い、CO低い)→輸液減、利尿剤、カテコールアミン
2)呼吸の管理
低酸素血症(気道熱傷、重症熱傷によるARDS,refiling で起こる)
[診断]SpO2でモニター。異常時あるいは定期的に血液ガスを分析
[治療]O2投与、リザーバー追加、気管内挿管し PEEP をかける
喉頭浮腫による窒息(気道熱傷、頸部Ⅲ度熱傷、全身熱傷による浮腫で起こる)
[診断]定期的BFSによる観察、症状(頻呼吸、頻脈、狭窄音)
[治療]気管内挿管による気道確保
気管支熱傷による気道狭窄、持続性肺炎
[診断]BFSによる観察、胸X-P、痰培養その他で判断
[治療]BFSによる痰・上皮除去、頻回な吸引、肺理学療法
長期化し、気管切開を必要とすることが多い
チューブやカニューレの痰詰まりによる窒息に注意
観察・チェックのポイント
非挿管患者:呼吸数、喘鳴音、SpO2
挿管、Yピース:上記+サクションチューブの抵抗
挿管、レスピレータ:上記+気道内圧、無呼吸アラーム、Etco2
3)経口摂取は積極的に早期より開始する
・誤嚥の危険性があれば経口でなく経管で栄養
(気道熱傷、頸部深達性熱傷、意識低下例)
・腸管麻痺があれば経管も行わない
・HLS輸液中はスポーツドリンク等のNa含有水
4)観察項目チェックの頻度
重症(Ⅲ度 30%以上、重症気道熱傷)であれば
・尿量と輸液量が安定するまで VS チェックは1時間毎
・アルブミン投与開始までと、開始後投与が安定するまで Ht/TP 測定 2~4 時間毎
それ以後は、頻度・項目を適宜漸減
2.Refiling 期(利尿期)以降
1)基本方針:敗血症からの臓器不全を防ぐために治療している
(血圧低下、血液ガス低値にならないように)
・上皮化できる創は上皮化させてOPE面積を減尐させる
・Ⅲ度創はできるだけ早期に(すべてを2週間以内に)デブリし、最終的にデブリし
た創に植皮する
・血管留置カテーテル類は早期に抜去し、感染源を断つ
・敗血症による臓器の障害(特に呼吸・循環)を早期に把握するため、モニターは確
実に行う
・必要熱量を投与(経口>経管>経静脈)
・可動域保持のためのリハビリ
2)呼吸管理
この時期の呼吸障害の原因:refiling による肺鬱血
敗血症によるARDS
気管支熱傷による窒息、無気肺、続発性肺炎
術後の無気肺、胸水貯留
[観察・診断]低酸素血症(SpO2低下、血液ガス分析)
肺鬱血(CVP高値)
挿管チューブ内吸引時の異常、頻呼吸、狭窄音等の症状
[治療]レスピレータ管理
BFSによる洗浄、吸引
体位変換ドレナージ、喀痰排出促進等の肺理学療法
3)循環管理
この時期の循環障害の原因:refiling による循環血液量過多
敗血症による心機能障害
呼吸障害による心機能障害
[観察・診断]血圧、尿量、CVP値、心拍出量等の指標
[治療]輸液量調節、利尿剤、カテコールアミン類の使用
4)敗血症の原因除去
カテーテル感染による敗血症
できるだけ、熱傷創から遠い場所での留置 早期抜去
術後
1)全身管理
呼吸:無気肺、胸水貯留を併発することがある
循環:術後出血
2)局所の処置
tie over は、創感染が疑われたら除去(広範囲に植皮した場合3日目が多い)
→この時期であれば植皮片の全滅を防止できる
術後のシーネ固定の目的
→1.良肢位の保持、2.患肢の安静、3.患肢の固定
よって、1.末梢血行が保たれているか、2.疼痛、浮腫は進行して
いないか、3.良肢位は保持しているかの観察が必要である。
褥瘡発生(特に踵部)に注意 回診時要観察 適宜除圧に努める
Ⅴ.軟膏について
皮膚外用剤 →基剤+主薬(配合剤・配伍剤)
*基剤による分類 →油脂性軟膏(疎水性軟膏)・乳剤性軟膏(クリーム)・水溶性軟膏
油脂性軟膏:創面保護作用、痂皮の浸軟・除去、浸出液貯留しやすい
エキザルベ、白色ワセリン、亜鉛華軟膏(ZS)、
乳剤性軟膏:経皮浸透力あり、水で洗い流せる、界面活性剤・防腐剤を含む、
びらん・潰瘍面への刺激に注意
ゲーベンクリーム、オルセノン軟膏
水溶性軟膏:浸出液吸収・創面乾燥化、伸びがよい、水で洗い流せる、刺激痛あり
テラジアパスタ、アクトシン軟膏、イソジンゲル
*配合剤による分類 →サルファ剤、抗生物質、消毒薬、非ステロイド系鎮痛消炎剤、
壊死組織除去剤、肉芽形成促進剤、創面保護・上皮形成促進剤
サルファ剤:テラジアパスタ、ゲーベンクリーム
抗生物質:バラマイシン軟膏
消毒薬:イソジン液、イソジンゲル、ユーパスタ、ヒビテン液
非ステロイド系鎮痛消炎剤:コンベック軟膏・クリーム、
アンダーム軟膏・クリーム
壊死組織除去剤:ブロメライン軟膏、
肉芽形成促進剤:フィブラストスプレー、アクトシン軟膏、プロスタンディン軟膏
オルセノン軟膏
創面保護・上皮形成促進剤:亜鉛華軟膏、アクトシン軟膏
*その他:はちみつ
軟膏類のコストの取り方について
使用した軟膏は、目算で量を測り、毎回汎用からコストを落とす
病室内に持ち込んだものは、使い始めた日に 1 瓶でコストを落とし、軟膏蓋上に「コスト
済み」と記入し、病室内で保管とする
軟膏類のストックと発注について
病棟保管の軟膏は過不足ないように日々在庫の確認をする
薬剤部にストックの尐ないはちみつや、薬剤部で製作し払い出すテラカデ等は、払い出し
までに時間がかかることもあるため、特に注意する
熱傷センター看護の特殊性
1.三次救急の指定を受けているので、県内・県外よりの重症患者の受け入れ
が多い(事前に正確な情報を得ておく必要がある)
2.重症熱傷に対する知識を深め、適切な看護ケアを行う
(ショック期・ショック離脱期・感染期・回復期)
3.突然の事故により受傷するケースが多いため、心身ともに苦痛を伴い、患
者自身が自立出来るような精神的ケアの必要性がある
4.乳児より老人までを対象としているため、年齢の特徴をとらえた看護が必
要である
5.熱傷は感染の培地となりやすいため、感染に対する知識を深める
6.社会復帰へ向けて機能障害、醜形、創の自己管理、家族の受け入れの問題
など個別性のある援助が必要とされる
熱傷センターの看護目標
熱傷患者の救命と社会復帰への援助に努める
熱傷患者の看護
熱傷は、すべてが突然の受傷であり、日常生活のなかでの発生頻度も高く、乳児から老人
までを対象とした幅広い看護が要求される。さらに、受傷後の精神的ショックをはじめと
して、全身状態の著しい変化、熱傷創面の目まぐるしい変化といった肉体的・精神的苦痛
が大きい。そこで、重症熱傷患者の看護は救命救急処置を始めとした初期治療から、手術
を経て身体の機能回復と外観が安定するまで、全身状態の観察と疼痛緩和、そして早期か
ら患者・家族を含めた精神的援助が求められる。
Ⅰ.各期の看護とポイント
ショック期(0~50 時間)~
ショック離脱期(50 時間~7 日)
感染期
(7~21 日)
回復期
(21 日~)
緊急処置の介助
観察とチェック
疼痛対策
感染対策
精神・環境の変化に対する看護
疼痛対策
感染対策
(敗血症、DIC、MOF)
栄養
手術前後の看護
精神症状の看護
ADLの拡大
痒みの対策
退院指導
拘縮変形への援助
社会復帰への援助
ショック期(受傷時より 50 時間)
患者の身体的状況
・熱傷による毛細血管の透過性が亢進し、血漿成分が血管外に漏出する。
・血管外漏出による体液の喪失や電解質の変化が見られる。
・受傷のショックが不安や恐怖を招きやすい。
看護診断:広範囲熱傷受傷による循環動態変動の危険性
看護目標
① 輸液量の適否を把握し、適切な輸液量を維持する。
② 腎臓排泄能状況を把握する。
③ 感染防止の為、身体の保清と清潔な環境を維持する。
④ 不安、緊張を緩和する。
⑤ 疼痛を緩和する。
⑥ 転落やライン類自己抜去に十分注意して安全確保に努める。
ショック離脱期(50 時間~7 日間)
患者の身体的状況
・大量輸液による細胞外液が血管内に再吸収される為、急激な循環血液量の増加が
見られる。
・上皮組織の崩壊により、細菌感染を起こしやすい状況が作られている。
看護診断:皮膚損傷による生体の防御機能の低下
看護目標
① 心不全、肺水腫の兆候を見逃さず電解質バランスを保つようにする。
② 栄養状態を改善する。
③ 身体の保清と清潔な環境を維持し、感染兆候を見逃さない。
④ 筋力の機能低下を最小限にする。
⑤ 患者の心理的変化を把握し、治療意欲を持たせるよう疼痛緩和、生活リズムをつける。
看護ポイント
1.熱傷患者の正確な情報収集
年齢、性別、受傷時間、原因、範囲(部位・気道熱傷の有無)、深さ
基礎疾患や既往歴、家族背景、社会的背景
2.初期輸液中の管理
受傷したことにより、大量の血漿成分が血管内から組織へ漏れ、浮腫を形成する。また、
Ⅱ度・Ⅲ度の創面からも浸出液となって出ていく。また、この結果血管内は高度な脱水
状態になるため、輸液はただちに開始する。
輸液の種類→乳酸化リンゲル液(ハルトマン・ラクテック)、高張食塩水(HLS輸液)
FFP
輸液量の算定には、バクスターの公式がよく用いられる。
ただし実際には尿量、モニタリングしながら増減することになる。
*バクスターの公式:4ml×熱傷面積(%)×体重(kg)/最初の 24 時間
始めの 8 時間に 1/2、次の 16 時間に 1/2 を輸液する。
コロイド:0.5ml×熱傷面積(%)×体重(kg)
例)60㎏で40%熱傷→4×40×60/2/8=600ml/h
1)尿が出るまで急速に乳酸加リンゲル液を投与
2)時間尿量 50mlで輸液量の調節
3)16 時間目より新鮮凍結血漿を投与(血漿蛋白量 6g/dl以上まで)
中京病院輸液公式
*HLS(Hypertonic Lactated Saline Solution)とは
高濃度Naを基調とした広範囲熱傷に対する輸液方法である。HLSはNa濃度が
300~150mEq/l が使用され、Na濃度に応じHLS300、HLS250、200、150 と呼ぶ。50
mEq/l きざみなのは生理的輸液変更にあたり急激な浸透圧変化を避けるためである。
HLSの使用効果は機能的Na喪失の補い、急性期の輸液総量を減らし、浮腫抑制および
腎不全の予防である。そしてrefilling期の呼吸障害を軽減する効果がある
*全身の炎症反応
心機能低下(心拍出量低下)
呼吸器障害(ガス交換の障害)
腎機能障害
血液の過凝固(DIC)
腸管麻痺・消化管潰瘍形成
参考;尿量 CVP値
尐ない 低い :循環血液量不足
→輸液増
尐ない 高い :心機能障害(CO低下)+循環血液量過剰
→輸液減、利尿剤、カテコールアミン
尐ない 高い :腎機能障害(CO正常)+循環血液量過剰
→輸液減、利尿剤、透析による除水
多い 正~高い :循環血液量過剰
→輸液減、利尿剤
多い 低い :高血糖
→血糖コントロール
3.観察
1)血圧
状態によりバイタルサインは、1 時間チェックを 48 時間まで行う。
(受傷時間より 48 時間~50 時間を原則とするが状況により対応する)
2)呼吸
喉頭浮腫により窒息の危険性、気管・気管支損傷で、気道閉塞や無気肺を起こす
可能性、低酸素血症・低換気などで血液ガス分析結果の異常が高度、意識障害を
認める場合は、気管内挿管をしたうえで積極的な呼吸管理が必要となる。
(必要であれば気管支ファイバースコープによる気道の観察を行う)
<低酸素血症>
・SpO2値・血液ガス分析で診断
・O2投与、または気管内挿管し人工呼吸器で管理
<喉頭浮腫による窒息>
・BFSで定期的に観察
・頻呼吸、頻脈、狭窄音の有無で診断
・患者が苦しいと言いはじめたら窒息直前と考える
★気管内挿管による気道確保
<気管支熱傷による気道狭窄・続発性肺炎>
・BFSによる観察、胸X-P、痰培養、その他で判断
・BFSにより痰と上皮除去、頻回な吸引、肺理学療法で治療
・長期化や気管切開を必要とすることが多い
・チューブやカニューレの痰つまりによる窒息に注意
(BFSは入院時、6時間目、24時間目を目安に実施する)
3)尿量
時間尿量、性状(溶血尿、比重)の観察を行う。
4)体温
大量輸液による急激な体温低下に注意する。
5)体重
吊り下げ式の体重計を使用し毎日測定を行う。
6)絞扼症候群(減長切開)
DDBからDBの熱傷が四肢にある場合、血行障害を起こし四肢末端が壊死に陥る。
また胸部にある場合、胸郭の拡張が妨げられ換気が困難となる。これを防ぐために
減張切開を行う。減張切開は、電気メスを使用し出血、感染徴候の有無を観察する。
7)精神的援助
突発的な原因によることが多いため、患者、家族の動揺は計り知れない。その上、
刻々と患者の様相が変化していくため、医師の説明の機会を多く持ち、病状が理解
出来るよう時間をかけ同意を得ながら、患者、家族を援助する必要がある。
自殺企図などでは、当然背景に何らかの精神的葛藤をもっており、精神疾患を有す
る場合もある。前者では自責の念が加わることも多いことを理解して援助しなけれ
ばならない。これは小児の熱傷の場合も同様であり、母親に対する精神的援助が必
要となる。持続的な疼痛に対しては、身体的にも精神的にも影響を与えるので、鎮
痛剤や鎮静剤を使用することもあるが不用意な投与は避ける。この場合バイタルサ
インの変動に十分注意する必要がある。自殺による熱傷の場合は、必ず精神科受診
する
8)環境
・ 転落や自己抜去の可能性のある患者に対する安全対策
・ 不穏症状や現状を認識できない患者に対する対応
・耐性菌感染症の予防
感染期(7 日~21 日)
患者の身体的状況
・局所の循環不全や壊死組織、浸出液により細菌の増殖に絶好の培地となる
・低蛋白血漿、貧血、免疫グロブリンの減尐により感染防御機能低下がある
看護診断:防御機能低下による敗血症への移行の可能性
看護目標
①栄養状態を改善する。
②感染を防止し、肉芽増殖の促進と植皮片の成長を図る。
③ADL を拡大し早期離床を促す。
④患者の心理的変化を把握し、治療意欲を持たせる。
⑤心的ストレスを緩和する。
看護ポイント
1.観察
1)感染による発熱
熱傷患者における感染部位として、呼吸器系、熱傷創部がもっとも多く、創感染か
ら発展する敗血症、敗血症に合併する多臓器不全(MOF)、DICが占める割合が
大きい。発熱に対し、冷却や解熱剤を使用するが、適宜、創培、喀痰培養、尿培養、
血液培養を行い菌の検出をすると同時に、創の状態や熱感、浸出液の量や性状、臭
気などに注意する必要がある。
乳剤性軟膏(ゲーベンクリーム)は、時に白血球減尐および疼痛の増強があらわれ
ることがある。
2.栄養管理
熱傷患者はショック離脱後、代謝の亢進と蛋白異化亢進に傾くため、積極的な栄養管
理が必要である。重症熱傷患者は 3000Kcalを目標とする。
*成人カロリー:25Kcal×体重(Kg)+40Kcal×%BSA
蛋白質:1.0g×体重(Kg)+3.0g×%BSA
単にエネルギー量、内容にとらわれるだけでなく、患者の希望などから食事形態を工
夫し(NST)、嗜好にあった食事を家族に作ってきてもらうよう協力を得る。
これらの栄養を経口で摂取できない場合は、経管栄養で補う。しかし、経管栄養で補
えない場合は、IVHでの投与を併用する。この際、高カロリーによる血糖値の上昇、
経管栄養剤による下痢、便秘の有無、中心静脈刺入部の観察が必要である。
・経口摂取は早期より積極的に開始
・誤嚥の危険性があれば経管で栄養
・腸管麻痺を認める時は経管栄養は行わない
・HSL輸液中はスポーツドリンクのみ経口可(Na 含有水)
回復期
患者の身体的状況
・初期より手指関節の伸展、屈伸運動を行うかで関節拘縮に違いが出る
・ボディイメージの変化や機能障害による社会復帰への不安が見られる
看護診断:リハビリによる疼痛、関節拘縮やケロイドの痒みによる ADL 拡大の制限
ボディイメージの変化による社会復帰への不安
看護目標
① ADL の拡大し自立を図る。
② 瘢痕拘縮を最小限にする。
③ 心理的ストレスを緩和する。
④ 痒みを軽減させる。
⑤ 家庭の受け入れ体制を整える。
看護ポイント
1.リハビリテーション
受傷早期から開始し継続することが大切である。
早期から、ベッド上における四肢の他動運動から始まり、離床に向け自動運動を増や
しながら自立できるよう援助する。しかし、これに疼痛が加わることで闘病意欲の減
退が見られることもあるので、患者の訴えに理解を示し、患者の意志力を引き出すよ
う関わる必要がある。
主なリハビリテーションとして、ハンドグリップによる手指の運動、うたを歌う、風
船を膨らます、補助具を使用した散歩、ラジオ体操、階段昇降、滑車運動による腋下
部位の拘縮予防がある。
ケロイドに対する痒みに対しては、冷却と軟膏塗布にて対応し夜間良眠出来るよう配
慮する。
2.退院に向けての援助
退院可能になっても、ボディイメージの変化や日常生活面での不安など精神面での影
響が大きい。患者の状態を考慮し、今後の経過・処置の必要性を説明し、尐しずつ自
己処置を進めていく。退院が予測される時点より、患者、家族を含めてパンフレット
を用いたケア方法を指導し、コメディカルと連携を取り患者が自立できるための環境
を整える。
看護の実際
熱傷患者の受け入れ準備~入院時の処置手順
*入院連絡が入ったら
1.医師から正確な患者の情報を得る(ヘリで来ることもある)
名前、性別、年齢、受傷原因と熱傷範囲、気道熱傷の有無、到着時間
2.医師に必要物品を確認する
1)熱傷ベッドの作成
2)必要物品の準備とセット
<重傷熱傷の場合>
輸液準備;静脈ライン(PV・CV)、点滴ライン、乳酸加リンゲル液(主にハルトマン)
医療機器;心電図モニター・電極(場合によっては針電極)、心拍出量測定用モニタ
ー(ビジレオモニター)、人工呼吸器(必要に応じ)、輸液ポンプ(2 台~4
台)、シリンジポンプ(1~2 台)
その他;温度センサー付きバルンカテーテルと精密尿量パック、動脈圧ライン(必要
に応じビジレオ用ライン)、気管内挿管物品、吊り下げ式体重計と体重シー
ト、セイラムサンプチューブと排液パック、救急薬品カート
熱傷創面処置物品;後記 処置の方法<必要物品>に同じ、バリカン(受傷部位によ
り)、デジカメ
*入院時の処置手順
1.バイタルサインのチェック
A.気道 → 頸部狭窄音 → 挿管
B.呼吸 → 呼吸数、呼吸様式
C.循環 → 脈拍(心電図モニター)、血圧 → ショック時 → 静脈路の確保
D.意識レベル
E.体温
2.重症度の評価
・熱傷面積(%)と創の深度、気道熱傷などの合併損傷の有無、年齢と基礎疾患の
有無
3.静脈路の確保(2本以上)
4.動脈血の採取 ・血液ガス分析、血中一酸化炭素濃度測定
5.血液型、血液一般検査の実施
6.気管支ファイバーによる喉頭、気管(支)の観察(気管内挿管の必要性を判断)
7.動脈圧ライン確保
8.尿道バルーンの留置と時間尿測定開始
9.破傷風トキソイド投与
10.体重測定、スケッチ、デジカメ撮影
11.熱傷創の処置(必要部位に減張切開)
*重症患者の場合は、患者の状態に応じ上記の処置が同時進行となる
*化学熱傷の場合は、創洗浄(シャワー浴)を行う
*どの段階までを救急外来で or 熱傷センターで実施するかは、主治医へ確認する
熱傷ベッド
必要物品:メディマット LLor メディマット、下シーツ、横シーツ、包布、タオルケット
方法:1.メディマット LLor メディマットを受傷部位に合わせて敷く
2.下シーツを敷く
3.横シーツを二つ折りにして、輪が頭部の方になるようベッド中央に敷く
体位変換に使用するため、両端は入れ込まない
4.タオルケットを包布で包む
ガーゼ交換(回診について)
ガーゼ交換は毎日行う。ガーゼ交換の利点は創観察、静菌力の更新、欠点は出血・疼痛に
よる不安、恐怖、低体温、姿勢の苦痛、疲労感、体力消耗である。
処置の順番は日勤リーダー看護師と救急科医師(入院担当)にて決定するが、基本的には
感染を避けるため非感染患者を優先する。一人の患者に医師は3~4名、直接介助の受け
持ち看護師 1 名、外回りの間接看護師 1 名が関わる。ガーゼ交換は、事前に必要物品を準
備し患者の苦痛を最小限に短時間で行えるように配慮する。
直接介助者は感染予防のためマスク、手袋、帽子、ビニールエプロン、シューズカバーを
着用。手袋は汚染した都度(体重測定し、新しいベッド作成前は必ず)交換。回診終了後
に部屋を出る時は、全て外す。また、熱傷回診時に使用するハサミは感染予防のため、清
潔用と不潔用に分ける。
処置の方法
<必要物品>
青ハサミ・青トレイ(青ハサミは青トレイに入れ清潔用として使用):トレイの中に包帯、
テープ、ECG 電極を入れておく
白ハサミ・白トレイ(白ハサミは白トレイに入れ不潔用として使用)
メディガーゼ、優肌絆(モイスキンパット使用時はトランスポア)、包帯(指2号、四肢3
号、体幹)、必要な被覆材、軟膏類、ブルーシート、体重シート、メディマット or メディマ
ット LL、下シーツ、横シーツ、包布、寝衣、オムツ、体位変換枕カバー、ECG 電極、黄
色カテーテルチップ(はちみつ使用時)
<処置前の準備>
上から、ブルーシート→体重シート→メディマット or メディマット LL→下シーツ→横シ
ーツ→オムツ・(胸帯)→メディマット LLor ブルーシート→メディマット→寝衣→包布
の順
必要時:鉗子、胸帯(S、M、L、LL)
清拭用べースン、タオル、陰部洗浄用生理食塩水
<手順>
患者が寒くないよう処置前から暖房 28℃にして部屋を暖めておく。
1、熱傷回診開始時にエプロン(感染症は青エプロン、他は白エプロン)、シューズカバー
を装着。
※感染対策のため一度部屋に入ったら処置終了まで出ない
2、掛物や枕などの余分な物を片づけベッドを一番高い高さにしてベッド柵を外す。逆流
防止のため膀胱留置カテーテルを鉗子でクランプする。(チューブの破損防止にガーゼを挟
んでクランプする)
持続経管栄養は中断する。(インスリン使用時は医師に中止の有無を確認)
3、医師とともに被覆材や軟膏を除去し陰部洗浄する。体重シート、ブルーシーツを患者
の下に敷く。
※陰部洗浄には生理食塩水を使用。余った場合は破棄し創洗浄には使用しない。
(熱傷患者の陰部洗浄には陰洗ボトルは使用しない)
4、吊り下げ式体重計で体重測定を行う。
※値を外回り看護師へ伝え、外回り看護師はその値を記録へ入力する。
患者を吊り上げた状態でシーツ交換、創洗浄の準備をする。
汚染したシーツを外しリネン BOX へ入れ、新しい手袋に交換しメディマット LL
or メディマット→下シーツ→横シーツ→オムツ→メディマット LL→メディマットの順に
敷く。
5、患者を降ろし体重シート、ブルーシーツを外し温めた生理食塩水で創洗浄を開始する。
医師が洗浄を行う間に看護師で清拭を行う。
※体重シートは専用のキック BOX へ入れる。
※鎮痛剤を使用する場合や必要物品の補充などは外回りの看護師に依頼する。
※床に落ちた物は拾わず処置終了後に片付ける。万が一触れた場合は手袋を交換する。
6、軟膏塗布/被覆後に洗浄用のメディマット LL を取り除き処置終了。
7、患者の身の回りを整え、後片付けを行う。
<処置風景>
<後片付け>
・病室内に入れたものは使用しなくても外には出さず、その患者の物としてコストをとる
・病室内に残っている被覆材等は、ビニール袋に入れ、保管する
・使用後のはさみ、抜鉤器等は軟膏をふき取った後、むやみに部屋から出さず、エスクリ
ーンの容器を部屋前まで運び、その場で浸漬する
・熱傷患者に使用した吊り下げ式体重計はスキットクロスで拭いた後、アルコールで拭く
顔面熱傷患者の挿管チューブのテープ固定
顔面熱傷は基本的に開放療法を行う。顔面は開放であるので、気管内挿管が必要な患者に
は挿管チューブの固定に工夫が必要である。当センターではたこ糸とビニール性のテープ
を使用している。テープの粘着面にたこ糸を置き、その上にもう1枚のテープを貼り付け
固定テープを作製。テープは創面への損傷が尐なく有効である。また、チューブのトラブ
ルを防ぐため、顔面の浮腫の状態により適宜テープ固定の交換を行っている(鼻中隔の欠
損に注意)。
絞扼症候群(減張切開)
目的;浮腫増強による血流障害、呼吸抑制を予防するための減圧
必要物品;電気メス・対極板、無影灯、イソジン、スプレーボトル、ガーゼ
観察;出血、血流状態、感染兆候(創の状態、臭い)の有無
ヘマトクリット・総蛋白測定
1.血液をヘマトクリット毛細管の約 2/3 入れる
2.血液がヘマトクリット毛細管から流出しないよう、毛細管の一方をタップシールで封
じる
3.ヘマトクリット遠心機の電源を入れる
4.OPENを押す
5.ロータの蓋はつまみを押しながら約45度回し開ける
6.毛細管の封をした方をロータの毛細管保護パッキンに密着するように、それぞれの溝
に対称にセットする
7.ロータの蓋のつまみを押しながら閉める
8.遠心機の蓋を閉める
9.遠心機が5分間、回転数 12000rpm に設定されているか確認する
10.STARTを押す
11.ストップランプが点灯していたら、毛細管を取り出す
12.ヘマトクリット測定機でヘマトクリット値を測定する
(1)遠心分離した毛細管を測定板の毛細管おき溝にセットする
(2)毛細管の血液(血球)の下端を0%ラインに合わせる
(3)スライド板を移動して毛細管の血漿部分の上端をカーソルの 100%ラインに合わ
せる
(4)スライド板の位置が決まったらカーソルを移動して沈殿部分(血球)の上端に
合わせる。このときの目盛り板が、ヘマトクリット値となる。
13.総蛋白値を測定する
(1)蛋白測定機のガラスの部分に蒸留水を1滴落とす
(2)測定機をのぞき陰影をWの線に合わせる
(3)蒸留水を拭き取る
(4)毛細管を分離している部分で折り、血漿をガラスの部分に落とし総蛋白値を測
定する
(5)血漿を拭き取る
(6)再度ガラスの部分に蒸留水を落とし拭き取る
温浴療法
目的;清潔、ドレナージ、軟膏吸収の促進、リハビリテーション
入浴は医師の指示によるが、一週間に1~2回行う。
方法;1.浴室の準備をする(室温調節、等張温水の準備、バスタオル、シャンプー、
ボディーソープ、軟膏処置に必要な物など)
2.ベッドで浴室に移送し、包帯・ガーゼを除去する
3.寝たままの状態、又は座位による搬送機に移動させ入浴介助を行う
4.入浴終了後、体重測定・軟膏処置を行う
5.病室へ患者を移送し、身の回りの整理整頓を行う
6.浴室の片付けを行う(浴槽の汚れをシャワーで洗い流し、その後バスマジック
リンで浴槽を洗浄する)
注意事項;①入浴時の温水には等張温水を使用する(疼痛緩和)。等張温水は 300 ㍑の温湯
に、2.5 ㎏の並塩を溶解し作る
②温浴時には、手足の屈伸運動のリハビリテーションも行う
クリニシステム(エアー・ベッド)
クリニシステムとは
微細粒子の流動の物理的原理を医学分野に応用したもので、毛細血管の循環を阻害しに
レベルまで接触圧力を低くし、患者を湯揚サポートする治療である。また、連続流動・
間欠流動の二方式で使い分ける事ができ、その選択によりICUはじめ熱傷・牽引など
広い分野に応用できる。
目的;創・採皮部の乾燥、感染予防 (本来、熱傷では疼痛緩和と褥瘡予防に使用される)
必要物品;シーツ1枚、横シーツ1枚、包布2枚、肌掛け布団
対象;受傷48時間以降、上皮化が期待出来るⅡ度創が多い患者
背部や大腿後面への植皮、または採皮する患者
方法;1.エアーベッドのフィルターシーツの上にシーツを1枚を敷く
2.横シーツを大きく縦長に広げて敷く
3.包布1枚を空で掛け、もう1枚は肌掛け布団を入れて掛ける
温度調節; ビーズの温度は26~38℃の間で任意に調節することが出来る。ビーズが
40℃以上になると自然に電源が「OFF」になり、37℃以下になった時、
再び電源が「ON」になる。
注意事項;①原則として、広範囲熱傷の受傷48時間以内は使用しない
(Na貯留性の脱水を回避する)
②不感蒸泄が増加する為、尿量・電解質を十分チェックし、適切な輸液を行う
③軟膏は使用しない(ビーズが壊れ、流動がわるくなる)
④フィルターシーツは患者がかわる時には、必ず交換する
⑤エアーベッドを降りた場合、汚染フィルターをかけたまま24時間以上継続
運転をし、翌日に交換する
⑥エアーベッド使用時は1時間前にスイッチを入れ、流動させておく。
(適切な温度になっているか確認する)
⑦エアーベッドと電気毛布は併用して使用可。但し古いエアーベッドは、エア
ーベッドの電源をOFFにして一時停止させる(古いエアーベッドに関して
は、電気毛布を使用すると、ビーズが加熱され流動が止まってしまう)
⑧不穏症状が出現する場合もあるので、患者の安全・安楽に注意する
⑨フィルターシーツからビーズが漏れていないか確認する(眼が充血する)
フィルターシーツ交換
必要物品;新しいフィルターシーツ、ビニール袋、ふるい、新聞紙、手袋、ほうき、
ちりとり、モップ
方法;1.エアーベッドの下へ新聞紙を敷きつめる
2.エアーベッドの流動を止める
3.ゴム枠を取り外す
4.汚染シーツを取り除き、ビニール袋へ入れる
5.エアーベッドを流動させふるいをかけ、固まったビーズを捨てる
6.エアーベッドの下に沈んでいる網を持ち上げ、固まったビーズを取り除き捨て
る
7.網をベッドの下まで戻す
8.ベッドの流動を止め、新しいフィルターをはめゴム枠をはめる
9.新聞紙にこぼれ落ちたビーズが床に落ちないようにまとめ、ビニール袋へ入れ
捨てる
10.エアーベッドの周りをほうきとちりとりで掃除し、モップで水拭きをする
11.終了後 30 分後より、エアーベッドを流動させておく
12.汚染シートは、処置室の洗濯機の横へ置いておく
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