1. Nobunobu666さんとの議論
慶應義塾大学経済学部4年 加藤裕太

2. 主張
 以下の論拠よりリフレ政策によるデフレ脱却に反対
① デフレ脱却のメリットの大きさに懐疑的
② リフレ政策のデフレ脱却への効果に懐疑的
③ リフレ政策に伴うリスクに対して懸念がある
 今回はリフレ政策の効果を考える

3.  リフレ政策：デフレーションに陥っている経済を適
正なインフレ率に誘導する政策。具体的には金融緩
和および物価上昇期待に作用する政策群。
 リフレ政策は①金融政策による期待インフレ率の向
上②財政政策による需要増とインフレ率の向上の二
つに分けることができる
 今回の議論では単純化のため①のみを扱う物とする
②についての主張：リフレ政策への疑問

4. ゼロ金利下の量的緩和の意味
 信用チャネルは、中央銀行の資産購入による金利の
低下が投資家のasset rebalancingを誘発する事で金
利低下及び資産価格の向上をもたらす
 為替チャネルは、asset rebalancingの際に他国資産
を購入した場合に自国通貨安が起こる経路である
 実体経済チャネルは、資産価格向上および金利低下
により発生する投資増、資産効果による消費増など
による需要の増加にともなう物価の向上である
 上記の効果はゼロ金利下でも作用するのでゼロ金利
下での量的緩和自体に意味はない

5. 補題：量的緩和が意味を持つのは
 恐慌などにより市中銀行に倒産のリスクが生まれ、
過度にリスク回避的になった際に、手元の流動性を
供給するケース
 この場合、個々の投資先のリスクリターンとは別に
資金を引き揚げるインセンティブが働くので、これ
を回避するために手元流動性を供給する

6. リフレ政策の理解
 ゼロ金利下で投資されない資産は、既にリターンと
リスクが釣り合っていると考えられるため、asset
rebalanceの帰結は中央銀行の当座預金の増大である
 これに対してリフレ政策は、金融政策を通じて将来
のリターン期待の増大、リスク期待の低下を狙う政
策である
 具体的には（リスクリターンを無視した）資産の購
入やインフレターゲット、中央銀行のコミットメン
ト、財政と連動的なアプローチなど

7. リフレ政策の効果
 しかしリフレ政策の効果は曖昧である
 例えば2000年代の量的緩和は期待を形成するには至
らず、世界景気の上昇を待つことになった
 これに関して、リフレ派は期待の形成が十分ではな
かった、より期待の形成を行うべきだった、と主張
 と言っても黒田氏により追加されたのは量の増大と
長期化、より拘束力の高いコミットメントのみ
→では、なぜ円安・株高が固定されているのか？

8. なぜ円安・株高？
 これまでの金融緩和でも通貨安にはなったが、すぐ
に修正されていた。今回修正されていない理由は？
 仮説１.ドル高予測が高まった
…米雇用統計の良化・財政の崖回避
 仮説２.レジームの転換が起きた
…円の独歩高の修正、成長期待の向上
 仮説３.日銀総裁人事など材料が豊富だった
…今後は出し切り感も？
 仮説４.円安予測が高まった
…貿易収支赤字の持続など

9. Nobunobu666さんの主張：レジーム転換
 反論
前述のように他にも仮説は考えられる
そのため、判断を下すのは時期尚早である
また、論拠となるモデル、貨幣数量説については
貨幣量Mはコントロールできる変数ではなく、
貨幣需要に制限される変数であると考える
（2000年代の量的緩和→日銀当預の積み上げ）
以上の点から、円相場は何らかの追加的なショックが
ない限りは今の水準に留まり、世界経済が停滞する場
合は再び80円台に戻ると予想します